Coolier - 新生・東方創想話

そうだ、耳を触ろう

2009/09/02 00:04:49
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※この作品は作品集83「貴方の心はすぐ傍に」の続編的な位置づけには
 なっていますが、読んでいなくても特に問題はないと思います。





どたどたばたん!




「お姉ちゃん、ただいまー!!」
「おかえり、こいし。今日のおやつは何、ですか。
 今日は良質な卵が手に入ったのでホットケーキを焼こうと思っています。」
「本当!?うわぁ、楽しみ!
 ……ってちょっと待て!今心読んだ!?
 お姉ちゃんいつの間に私の心読めるようになったの!?」
「油断大敵です。心が緩んで第三の瞳が開いてますよ。」
「嘘!?」
「嘘です。」
「ひどい!騙された!もうお嫁にいけない!」
「大げさですよ。それにいざとなったら私がもらってあげますから。」
「本当!?今聞いたよ!訂正するって言おうとしても口ふさいじゃうよ!口で!」
「何をする気ですかあなたは。」

お互いに、馬鹿な冗談を言い合うことが出来るのが嬉しくてたまらないといった様子である。
この前までは何処かお互いに距離を置いたような感じの二人だったが、
先の誕生日の一件依頼、こいしは気兼ねなくさとりに甘えるようになっていた。

「えへへ、お姉ちゃん~。」

さとりの膝にちょこんと座ってぐりぐりと顔をこすりつける。

「もう、甘えん坊ですね、こいしは。」

苦笑交じりに言うさとりも、満更ではないといった表情である。
自分の膝の上で猫のように丸まるこいしの頭を撫でてやる。
ぽかぽかの地霊殿に、それに負けず劣らずの暖かい光景が広がっていた。


--------------------------------------------------------------------------------------


しばらくの間、二人で他愛のないお喋りをしていたが、ふと気付いたようにこいしがさとりに声を掛ける。

「ねえ、お姉ちゃん。」
「何ですか、こいし。」
「それっていっつもやってるけど癖なの?」
「はい?」

なんのことです?言った感じのさとり。

「お姉ちゃん、ちょっと手持無沙汰になるといっつも自分の耳いじってるよ。」

話してる最中もちらちらとこいしはさとりの方を見ていたが、
少し話に間が空いたりした時はほとんど右手は自分の耳を触っている。
それもただ触るだけじゃなく、引っ張ったり耳たぶを耳の穴に入れようとしたりと色々やっている。
こいしとしては気になって仕方がない。

「ほら、また触ってる。」
「え、本当ですか?」

さとりが自分の手を見ると、確かに自分の耳のところにあった。
癖というものは無意識で行っているので、本人は得てして気付かないものである。

「それって気持ち良いの?」
「いや、別に気持ち良いとかそういう訳では……。
 自分では意識したことないですし。」
「ふうん。」

まあいっか、と話に戻るこいし。
さとりも右手を降ろしてこいしの話を聞く体制に入った。





話が少し途切れたのでさとりの方を見ると、やはり自分の耳をいじくっていた。
こいしも今度は指摘することはなく、じっとその行動を見つめていた。
注視している一点はさとりの耳。
自分の耳など鏡でしか見たことがないから断言はできないが、普通よりも耳たぶがかなり大きく見える。
大きいだけでなく、形も整っているしすごく綺麗で柔らかそうだ。

(胸は揉むと大きくなるって言うけど、耳もそうなのかなぁ?)

いや、それとも……。

(分かった!お姉ちゃん、栄養が全部耳にいったからこんなにちっちゃいんだ!)

心を読まれでもしたらトラウマ弾幕必至なことを考えるこいし。
段々と思考が変な方向に向かっていく。

(お姉ちゃんの耳、もちもちしてて柔らかそう……)

「……?ああ、またやってましたか。いけませんね、確かに癖になってるようです。」

じーっと自分の耳を見つめているこいしに気付き、さとりが少しバツの悪そうな顔をして手を降ろす。

「あ、いや別にいいんじゃない?癖なんて誰にでもあるし。
 それよりもお姉ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけどいいかな?」
「お願い?何ですか?」

そう。こいしはすでにさとりの癖などどうでも良くなっていた。
今考えていることはただ一つの正義。



「お姉ちゃんの耳、私にも触らせて!っていうかむしろいじらせて!」



ずいずいっと身を乗り出すこいし。

「ちょ、ちょっと顔が近いですよこいし。というか私の耳なんか触ってどうするんですか。」
「だってお姉ちゃんがずっと触ってるから私も触りたくなったの!ね、お願い!」
「ほ、ほら、それなら自分の耳を触ればいいじゃないですか。」
「自分のなんかじゃ駄目!お姉ちゃんのがいいの!」
「い、いや、でもですね……。」

あたふたと反論するさとり。
癖で自分で触ってたのはともかく、他人に耳を触られるのは恥ずかしい。

「お姉ちゃん……どうしても駄目?」

上目遣いで見つめて目をウルウルさせるこいし。
無意識である。無意識の能力の賜物である。
無意識って便利。

「……駄目なんかじゃないですよ。」

さとり、撃沈。


--------------------------------------------------------------------------------------


「じゃ、じゃあ触るよ!」
「え、ええ。」

半ば興奮気味に姉の耳に手を伸ばす。


ふに


「ひゃう……。」
「う、うわあ。すごい柔らかい!」


ふにふにふに


夢中になって耳たぶをいじくるこいし。
まさに天にも昇る触り心地であった。
柔らかいだけでなく、指にしっかり残る弾力もある。

(こ、これこそ世界に一つだけの鼻……いや、耳!)

「うーん、でも何か違うような……。」
「あ、あの、こいし……?もうそろそろ……。」
「ううん、まだ駄目。」

懇願するようなさとりの声をばっさりと切り捨てる。
そして考える。

(そういえば、お姉ちゃんは指先で摘まんだりはしてなかったなぁ。
 もっと、こう……)

さとりが耳をいじっていた様子を思い出す。
人差し指と中指の付け根で耳たぶを挟み込むように引っ張ってみたり、
人差し指を耳の裏に引っ掛けて、親指の裏でこするように触ってみたりする。


さすさすさす


(……!こ、これよ!これだわ!)

明らかに先ほどとは違う感触にこいしの指はさらに速度を増す。
指先で触るよりも耳たぶの感触をより鮮明に感じることが出来るし、
適度にさとりの耳が冷たいのも、触り心地の良さに拍車をかける。

なんていうか、これはやばい。
手が自然に動いて耳たぶをいじり続けてしまう。

(本当に癖になっちゃうかも……)

耳をいじくる手は止めず、ちらっとさとりの方を見てみると
何かに耐えるかのようにきゅっと目を瞑り、
両手を臍のあたりで組んで握りしめていた。
ちなみに頬は真っ赤である。

(や、やばい。お姉ちゃん可愛すぎる……!)

こいしのテンションはますます上がっていく。
あと一回溜めればスーパーハイテンションだ。

「あ、あのねこいし、いい加減に離してくれると嬉しいのだけど……。」
「だ~め、こんなに気持ちいいのに、お姉ちゃんばっかり今までずるいよ!」

(う、うう、一体どうすれば……)

途方にくれるさとり。いや、別に嫌かどうかと言われればそんなことはないのだが、何だかむずがゆい。
恥ずかしさとむずがゆさと、ちょっと嬉しいという気持ちがごちゃ混ぜになって、
どうして良いのか分からなくなってしまう。

観念するように閉じていた目を開くと、視界にこいしの横顔が入った。当然、耳も。
それを見た瞬間、さとりに反撃のアイデアが閃いた。
こいしはさとりの耳をいじくるのに夢中で気付いていない。

(……うん、こいしばかりじゃずるいわよね)

全く無防備なその耳を見て、さとりは笑みを深くする。
指で触るつもりはない。こいしと同じことをしても面白くない。
さとりはこいしの耳にそっと顔を寄せて……




ぱく




その耳たぶを口に含んだ。所謂甘噛み。



「わひゃあぁああ!!!!???」



突如自分の耳を襲った感触にこいしはこれ以上ない程驚いて、
さとりから飛びのいて尻もちをついてしまった。

どーん、という音が響く。

さとりも余りの反応の大きさにびっくりしたが、慌てて椅子から立ってこいしに手を伸ばす。

「こ、こいし、大丈夫!?」
「い、い、い、いきなり何するのよぉ、お姉ちゃん!」

顔を真っ赤にして涙目で叫ぶこいし。

「ごめんなさい、そんなに驚くとは思わなかったものだから……。」

(……あれ?)

さとりの中で違和感が沸き起こる。
確かに突然だったとはいえ、あそこまで驚くだろうか?

(もしかして……)

さとりは倒れているこいしの耳に手を伸ばし、耳たぶを触る。

「うひゃう!」

それだけでこいしは過剰反応気味に後ろに飛びのいてしまう。
さとりの中で、疑念が確信に変わる。

「こいし……ひょっとして耳が弱いの?」
「う、うん……。」

知らなかった。
まさかこいしの弱点が耳だったなんて。
だから先ほども自分の耳でなく私の耳を触ろうとしたのか。

「ふふ、ふふふ……。」
「お、お姉ちゃん?目が怖いよ?」
「そんなことないですよ。決して、先ほど離してくれといくら頼んでも
 離してくれなかったことなんてちっとも気にしてないですよ。
 さ、こっちにいらっしゃい。」
「や、やだー!絶対何かされる気がする!」

「ほら、こっちを向きなさい。」

さとりはこいしの顔を掴んで自分の方に向けさせる。
こいしは目をぎゅっと瞑って自分の耳を両手で抑える。
そんな様子にさとりはくすっと笑みをこぼす。




――ちゅっ――




「へ?」
「はい、これでおあいこですね。」
「お、お、お、お姉ちゃん!?」
「さて、そろそろ私はホットケーキを焼いてくるわね。
 手を洗って待ってなさいな。」

そう言って、さとりはまるで鼻歌でも歌いだしそうな上機嫌のまま台所へと姿を消した。

こいしはその光景を呆然としながら見つめていた。
やっとのことで我に返って立ちあろうとしたが、足に力が入らずそのまま
へなへなとソファーに座り込んでしまった。

まだ先ほどの甘い感触が残っている唇を指でなぞる。
それだけで自分の体温がさらに上昇していくのが分かった。


「お姉ちゃんの馬鹿ぁ……。おあいこどころじゃないよ……。」


嬉しさと悔しさが入り混じった一言だった。


--------------------------------------------------------------------------------------


さとりはホットケーキを焼きながら先ほどの出来事を思い返していた。
最後のこいしの反応が予想以上に可愛かったので、思わず顔が緩む。
とはいえ、少しやりすぎてしまったかもしれない。
涙目でこちらを見上げてくるこいしが余りに可愛くて、ついあんなことをしてしまった。

ふと、思う。
そういえば今日はこいしの心を読めないことに全く不安を感じなかった。
それどころか、その状況を楽しんでいる自分がいる。

自分は変わったのだろうか?それともこいしが変わったのだろうか?
恐らく両方だろう。だがそれは決して悪いことではないと思う。


(こうやって、少しずつでも今のあの子のことを知っていけたらいいですね……)


「さて、とりあえずはおいしいホットケーキを持っていって、ご機嫌を取るとしますか。」


さとりは焼き上がったホットケーキを手に、こいしが待っているであろう自分の部屋へと向かった。



~Fin~
「そうだ、さとりんの耳を触ろう」

毎度のごとく変な電波を受信しましたrenifiruです。
何となく癖で耳をいじっていた時に唐突にこの話を書こうと思いました。
最初はこいさとだったはずなのに、何故か途中からさとこいになってしまいました。ちゅっちゅさせたのはさすがにやり過ぎだったかもしれません(汗)

最後に、このような話を読んでくださってありがとうございました!

追記:
>>12様
誤字指摘ありがとうございます。
取り急ぎ、修正させていただきました。

追記2:
( Д )  ......._。......_。......_。 コロコロコロ…

点数とコメント数を見て我が目を疑いました。
疑い過ぎて飛び出ました。
こんなにたくさんのコメントを頂けたのは初めてなので心から焦っています。
全てにレス返しをしたいところですが、長くなってしまいそうなので一言。
読んで頂いた皆様、本当にどうもありがとうございました!
renifiru
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コメント



0.3520簡易評価
7.100名前が無い程度の能力削除
パルスィ「耳キャラといったら私よ!」
いやお見事でした。萌え殺されました。
9.100名前が無い程度の能力削除
あ、甘い!ごちそうさまでした。
10.100名前が無い程度の能力削除
甘々な姉妹ですね~。
なんだかホットケーキが食べたくなりました。
12.100名前が無い程度の能力削除
>トラウマ弾幕必死
  ↓
トラウマ弾幕必至
14.100名前が無い程度の能力削除
さぁ、もっとちゅっちゅを!
19.100煉獄削除
二人が凄く……良いですね。
耳を弄られているさとりの反応とか、こいしは耳が
弱点とか可愛くて溜まりませんねぇ。
面白かったですよ。
20.80名前が無い程度の能力削除
耳と聞いて1番に鈴仙さんが浮かんだ僕はまだまだ甘いということか…
そしてさとり様の作ったホットケーキも甘くて美味しそう
この作品はもっと甘いwww
21.70削除
素晴らしいお話です。正直言って、興奮しました。
24.100名前が無い程度の能力削除
甘っ!
リバおいしいです
26.100名前が無い程度の能力削除
口から砂糖が溢れ出ようが血液が砂糖水になろうがこのSSを読むのをやめない!
35.100名前が無い程度の能力削除
さて、部屋中に散乱した砂糖を片づけるか…
37.100名前が無い程度の能力削除
ブラックコーヒーをのんでいたらいつのまにかガムシロップになっていた。
何を言っているのか(ry
39.100名前が無い程度の能力削除
甘いなぁ
だがそれが(ry
42.100名前が無い程度の能力削除
( ゜∀ ゜)ウフフ!ウフフフ!
あま~いホットケーキごちそうさまでした
45.100名前が無い程度の能力削除
さとこいは良いものだ。なんて砂糖の多いホットケーキなんだろう
46.100七人目の名無し削除
ただ耳を触っているだけなのに妙にえろいですね。けど、それにも増して微笑ましい。
49.100名前が無い程度の能力削除
あ、甘すぎる…ぜ…(ガクッ
50.100名前が無い程度の能力削除
例えるならそう、水飴一パック一気のみの甘さ。ガムシロップ一リットルでも可。
52.80名前が無い程度の能力削除
>世界に一つだけの鼻
その発想はなかったw
56.100喉飴削除
ぐはっ!
甘い……あまーい!
読みやすいですし、面白いですし、甘いですし……うん、最高でした。
62.100名前が無い程度の能力削除
こ…これがちゅっちゅの力か…
63.100名前が無い程度の能力削除
鼻からイチゴシロップ出た・・・
65.100名前が無い程度の能力削除
甘すぎて俺の耳たぶが甘くなっちまった・・・
69.90名前が無い程度の能力削除
飛び出ている眼が三つということはあなたはやはり三人目の古明(ry
糖分過剰摂取のせいで私の頭はさとこいで一杯です
70.100名前が無い程度の能力削除
さとこいはやはりいいですね
76.100名前が無い程度の能力削除
こいさとこいさと!!!
最高にほっこり出来ました
ありがとうございます!
84.90名前が無い程度の能力削除
ほへおほえほへおえへぽ!!!
91.100名前が無い程度の能力削除
癒しを……ありがとう……(吐糖
96.100名前が無い程度の能力削除
ヒャッハー!