注意 ・少々キャラの性格に違和感があるかもしれません
・ほんの少しだけ百合があるかもしれません
・さとりの第三の目を使って読んだ内容は()の中身で表します
・そのため少々読みにくいかもしれません
・少々独自設定、無理やりなところがあるかもしれません
地霊殿の管理者なんてやっているが、実際はその仕事の大半は書類関係である。そして今私の机の上には山のように書類がつまれており、コレを見るだけでうんざりしてくる。朝から頑張ってはきたが流石に疲れてきたのでそろそろ休憩にしてもいい頃だろう。時間もちょうど3時頃だしおやつ休憩だ。実は昨日地霊殿のちょっと有名な洋菓子店で数量限定のケーキを買ってきたのだ。小さめのものでイチゴのショート・チョコレート・モンブランの3つである。私の計画としては今ひとつ食べて、晩御飯のあとのデザートにひとつ、そして明日仕事を終わらせたあとに最後の一つを食べようと考えている。普段大人びて見られることの多い私だけれどやっぱり女の子、甘いものは大好きなのだ。とりあえず冷蔵庫からケーキを3つ持ってきてどれを食べようか考えていると
「さとり様ー。仕事の報告に来ましたー。
(ん?なにかいい臭がする……。ケーキかな?そういえば最近食べてないな……)」
「うっ」
……調度良くお燐が現れた。しかもケーキを食べたいらしい。だけどこのケーキは限定品で私が苦労して手に入れたもの、いくらかわいいお燐といえどあげるわけにはいかない。どれだけお燐がねだってきてもコレばかりは譲れない。
「コレ報告書です。あれ?そのケーキさとり様のものですか?
(あぁやっぱりケーキかぁ……。でもさとり様のものだからもらったりしたら悪いし……。でも美味しそうだなぁ……)」
「……お燐はケーキ好きですよね?」
「え!?いや好きですけど、今お腹いっぱいですし……大丈夫ですよ?
(食べたいけどコレはさとり様のだから……。でも……)」
心の声というのは厄介である。その人が本当に思っていることを嘘偽りなくありのままうつすからだ。つまりお燐は今心の底からケーキを食べたいが、私のためにやむなく我慢しようとしているのである。コレは非常に良心が痛む。ねだってくるのならまだしも、健気にも我慢しようとしているお燐を無視することは……流石にできない。けどケーキは食べたいし……。
「しょ、勝負しませんか?」
「勝負ですか?」
「はいそうです、勝負です。勝負に勝てたらケーキをひとつあげちゃいます」
これが妥協点だろう。これなら勝てば良心も痛まないし、負けたら……悲しいけどお燐が喜んでくれるならそれはそれで構わない。……よくないけど。
「じゃあ何の勝負にします?」
「そうですね……。じゃんけんなんてどうでしょう?
(さとり様優しいから私にくれようとしてるのかな?でもやっぱり悪いし……。じゃんけんならさとり様絶対負けないし。よしグーを出す、グーを出す……)」
「……分かりました」
「では……、じゃんけんぽん!……あれ?」
宣言通り、とはいえ心の声ではあるがグーを出したお燐に対し私は……チョキを出した。いくらケーキが食べたくてもこんな健気なお燐を差し置いて一人で食べることは私にはできなかった。ケーキは諦めよう……、お燐も普段お空のことで苦労してるしこれくらいのご褒美?はあってもいいだろう。
「さ、さとり様……?」
「……お燐が勝ったので約束通りその中から一つ好きなのを持って行ってください」
「でも……」
「普段苦労してるんですからこういう時ぐらい我儘になってもいいんですよ?私はあなたの飼い主で……家族なんですから」
「さとり様……ありがとうございます、大好きです!」
お燐は心からそう言ってモンブランをもって嬉しそうに行ってしまった。ケーキは減ってしまったけど、お燐の笑顔も見れたしこれはこれでよかったのかもしれない。とりあえず今から食べる分と仕事が終わったら食べる分は残ってるし問題はない。とりあえず今から食べるケーキを選んでから
「美味しそうなケーキだねー、私はチョコが好みかな?」
「……おかえりなさい、こいし。あといきなり後ろから声をかけてはいけないと教えたはずですよ?驚かせてしまいますから」
「ただいまー!けどお姉ちゃん全然驚かないよ?」
「それは私がこいしのお姉ちゃんだからです」
「わーい!お姉ちゃん大好きー!」
「私も大好きですよ」
「だからチョコレートのケーキを」
「ダメです」
「じゃあじゃんけんして勝ったら頂戴!」
「……こいし?いつからここにいましたか?」
「わかんない!」
こいしのことだから本当に覚えていないんだろうけど、おそらくさっきお燐とじゃんけんした時にはここにいたのだろう。ならばお燐にくれたんだから私にも頂戴と言えばいいのだろうが……、ただ単にじゃんけんがしたいのか、何も考えていないのか、おそらく両方ではあろうが。
「そういえばお姉ちゃんのじゃんけんで勝てるのって私だけじゃないのかな?」
「残念ですがこいし、それは2つの意味で間違いです。私にじゃんけんで勝てる人は少ないですがいますし、あなたは決して私にじゃんけんでは勝てませんよ」
「えーなんでー?お姉ちゃんは私の心は読めないんだから同じ条件のはずだよ?」
「残念ですが……いえ違いますね。とても喜ばしいことですが私は世界中で唯一あなたにじゃんけんで絶対勝てる存在なのですよ?」
「そこまで言うなら勝負だー!じゃんけんぽん!」
こいしはグーを出したのに対し……私はパーを出した。つまり宣言通り私の勝ちである。これで私はお姉ちゃんのメンツとチョコレートケーキを同時に守ったのだ。
「お姉ちゃんすごーい!どうして勝てたの!?」
「それはですね……私があなたのお姉ちゃんだからです!」
「お姉ちゃんすごーい!」
……本当にこれに尽きるのだ。昔の話になるが、ある日こいしは突然第三の目を閉じた。突然というのは語弊があるかもしれない。さとり妖怪なら誰しもこの第三の目がなければいいのにと思ったことがあるだろう。ひょっとしたら常に思っている者もいるかもしれない。それだけこの目を持つというのは大変なことなのだ。ならなぜ第三の目を閉じないか?答えは簡単で、当たり前のように見えていたものが見えなくなるのが恐ろしいからだ。現に私もこいしが第三の目を閉じてしばらくはこいしとどう接すればいいのかわからなかった。相手が何を考えているかわからない、普通は当然のことなのだが私にとっては初めてのことだった。これがこいしでなく、他の人物だったなら到底関わることはできなかっただろう。でも心が読めなくなった相手は世界で唯一の妹である。私は心が読めなくなって、こいしのことがわからなくなった分こいしのことを知ろうとした。世界中で誰よりもこいしのことを理解できるようになりたいと思って努力した。だって私はこいしのお姉ちゃんなのだから。そしてこの結果の一つが今のじゃんけんである。わたしはもう第三の目を使わなくても……なんとなくとはいえこいしのことが解るのだ。
「……さてこいし、残念ですが私の勝ちですのでチョコレートケーキは諦めてください」
「……はーい、残念だけどしょうがないよねー」
さてこいしにもじゃんけんで勝ったことだし、ケーキを食べて仕事の続きを……
「……こいし?チョコレートケーキががないのですが、知りませんか?」
「えー?知らないよー?」
「そうですか、ところで口の周りにチョコレートが付いてますよ?」
「え?ほんと?……とれた?」
「はいとれました。それでチョコレートケーキはあなたが食べちゃったんですね?」
「う……、そうみたい……。ごめんなさい……」
どうやらこいしは私のチョコレートケーキを食べてしまったようだ。これは別に珍しいことではない、こいしが何も考えず自分の欲望のままに無意識に動いてしまうのはよくあることだ。これは怒ってなおるのならいいのだが、なにぶん無意識での行動であり、しかも能力に由来するものなのでそうはいかないようなのである。怒るのと叱るのは違うのである。そして怒っても仕方ないし、叱ってもなおすことができないのなら……私はどうすればいいのだろう?
「……こいし?今やったことがいけないことだというのはわかっていますね?」
「……はい」
「反省していますか?」
「……はい、ごめんなさい」
「わかりました。でもこいし、私だからしょうがないといって許すことができますが他の人はそうはいきません。それに私もいつもあなたをかばえるわけではありません。それがわかっているのならもういっていいですよ、私は怒っているわけではないですし」
「お姉ちゃん……。今度ケーキ買ってくるから!本当にごめんなさい!」
そう言い残してこいしは部屋から出ていった。悪気はない、反省してる、叱ってもなおらない。なら私はどうすればいいのだろうか?私の大きな悩みの一つである。それはそうとして私のケーキはとうとう一つになってしまった……。とにかく今ひとつ食べよう。そして仕事に復帰しようと考えて私は残ってるイチゴのショートケーキを
「さとり様ー、もうそろそろおやつの時間なんですが何かありませんかー?あ、美味しそうなケーキ!」
「……あらお空、残念だけどこのケーキは私のものよ?」
「えー。さとり様だけずるいですよー。私もケーキ食べたいです!」
「ダメなものはダメです」
「じゃあ勝負して勝ったらください!」
ここではっきりダメとはいえないのが私の甘いところなのかもしれない。結果や思惑はともかくこの前に私はお燐とこいしにチャンスを上げてるので、お空にそれがないのは不公平じゃないか?最後の1個だしこれは絶対に食べたいけど、それはあくまで私の都合でお空には関係ないんじゃないか?そんなことを考えてしまう。こういうことを考えだすともう断れなくなってしまうのだ。
「……わかりました。何の勝負にしますか?弾幕ごっこはあまりしたくないのですが」
「私もさとり様を傷つけたくありませんし……。そうだ、じゃんけんなんてどうです?」
「……いいでしょう」
じゃんけんですか……。今までのことを考えると正直嫌な予感しかしないですし、お空とはあまりじゃんけんはしたくないのですが。さっきこいしにも話しましたが私にじゃんけんで勝てる人物は少ないですが確かにいて、お空はその中の一人です。昔じゃんけんをした時はお空がだそうとしていたチョキを直前でど忘れして何も考えずに出したパーに私のグーが負け、その結果プリンを取られてしまったことがあるのだ。こんなかんじなので正直お空とはあまりじゃんけんをしたくないのですが、次に勧めてくる勝負が何かわからないのなら少なくても五分五分のじゃんけんなら悪くないような気がする。
「じゃあいきますよー!
(よし!グーをだそう)」
「いいですよ」
「じゃんけん……」
お空が直前まで考えていることを覚えてくれてるよう祈りつつ、私はパーを出した。
「ぽん!」
「……えーっとお空?」
「何ですかさとり様?」
「どうしてこうなったの?」
「うにゅ?」
前例があったのでお空がひょっとしたらグーを出すのを忘れてチョキを出すかもしれないとは覚悟していた。けど実際にお空がだしたのは……
「どうして右手、いや正確には第三の足ですが……というよりも制御棒を出しているんですか?」
「……うにゅ?」
だめだ……この子何も覚えてない……。私のパーに対してお空は制御棒……これは果たしてどっちの勝ちなのだろうか?
「よくわかんないですけど私の勝ちなのでケーキもらいますね?」
「……なんでそうなるんですか?」
「だってさとり様のパーと私の制御棒だったら私の制御棒のほうが強いですよ?」
「いやじゃんけんはそういう勝負じゃないですよ?……あれ?そういう勝負でしたっけ?」
グーがチョキに勝つのは石がはさみで切れないから、チョキがパーに勝つのはハサミが紙を切るから、パーがグーに勝つのは紙が石を包むから。なんで包んだら勝ちなのかはよくわかりませんが、確かにじゃんけんは『強い方の勝ち』ではある。お空の言ってることは必ずしも間違っているとは言えないのかもしれない。
「で、でもお空?じゃんけんはグー・チョキ・パーの中から選ばないとダメなんです」
「うーん……じゃあ……」
お空はそう言って制御棒を取り外して右手でチョキを出した。
「さとり様、これで私の勝ちですよ?」
「……お空?それは後出しですよ?」
「最初から出したかもしれないじゃないですかー!
「……そうなのですか?」
「覚えていないです」
心を呼んでも本当に覚えていないらしい。それなのに空は自分がチョキを出していたと信じきってしまっている。つまり、実際はどうあれお空の中では制御棒に隠れた右手は最初からチョキを出していたことになっているのだ。
「……お空、本当にチョキをだしてたんですね?嘘じゃないんですね?」
「はい!私はきっとチョキを出してました!」
「……わかりました。じゃあそのケーキは約束通りお空にあげます。そのかわり今度からはじゃんけんで右手を出しちゃいけませんよ?」
「やったー!ありがとうございます!さとり様大好きです」
「私もですよ」
きっとお空は右手のことは忘れてしまうだろうけど、そしたらまた覚えてもらえばいいのだ。教育は日々の繰り返しである。ケーキは……たぶん私がうまく説得すればお空にあげずにすんだだろうけど、結局私は甘いのである。長年お姉ちゃんというものをやっているからか、お燐とこいしがケーキを食べたのにお空の分だけない、という訳にはいかなかったのだ。それにお空の言うことにもほんの少しだけ納得してしまったこともある。結果的には3つあったはずのケーキはなくなってしまい、残ったのは山積みの仕事だけになってしまったのだ。
「……はー、仕方ないですし仕事の続きをしますか」
でも不思議とケーキを取りに行く前よりは元気が湧いてきていた。みんなの笑顔が見れたからだろうか?みんなに大好きといってもらったからだろうか?そんなことを考えながら残っている仕事に再びとりかかりはじめた。
・ほんの少しだけ百合があるかもしれません
・さとりの第三の目を使って読んだ内容は()の中身で表します
・そのため少々読みにくいかもしれません
・少々独自設定、無理やりなところがあるかもしれません
地霊殿の管理者なんてやっているが、実際はその仕事の大半は書類関係である。そして今私の机の上には山のように書類がつまれており、コレを見るだけでうんざりしてくる。朝から頑張ってはきたが流石に疲れてきたのでそろそろ休憩にしてもいい頃だろう。時間もちょうど3時頃だしおやつ休憩だ。実は昨日地霊殿のちょっと有名な洋菓子店で数量限定のケーキを買ってきたのだ。小さめのものでイチゴのショート・チョコレート・モンブランの3つである。私の計画としては今ひとつ食べて、晩御飯のあとのデザートにひとつ、そして明日仕事を終わらせたあとに最後の一つを食べようと考えている。普段大人びて見られることの多い私だけれどやっぱり女の子、甘いものは大好きなのだ。とりあえず冷蔵庫からケーキを3つ持ってきてどれを食べようか考えていると
「さとり様ー。仕事の報告に来ましたー。
(ん?なにかいい臭がする……。ケーキかな?そういえば最近食べてないな……)」
「うっ」
……調度良くお燐が現れた。しかもケーキを食べたいらしい。だけどこのケーキは限定品で私が苦労して手に入れたもの、いくらかわいいお燐といえどあげるわけにはいかない。どれだけお燐がねだってきてもコレばかりは譲れない。
「コレ報告書です。あれ?そのケーキさとり様のものですか?
(あぁやっぱりケーキかぁ……。でもさとり様のものだからもらったりしたら悪いし……。でも美味しそうだなぁ……)」
「……お燐はケーキ好きですよね?」
「え!?いや好きですけど、今お腹いっぱいですし……大丈夫ですよ?
(食べたいけどコレはさとり様のだから……。でも……)」
心の声というのは厄介である。その人が本当に思っていることを嘘偽りなくありのままうつすからだ。つまりお燐は今心の底からケーキを食べたいが、私のためにやむなく我慢しようとしているのである。コレは非常に良心が痛む。ねだってくるのならまだしも、健気にも我慢しようとしているお燐を無視することは……流石にできない。けどケーキは食べたいし……。
「しょ、勝負しませんか?」
「勝負ですか?」
「はいそうです、勝負です。勝負に勝てたらケーキをひとつあげちゃいます」
これが妥協点だろう。これなら勝てば良心も痛まないし、負けたら……悲しいけどお燐が喜んでくれるならそれはそれで構わない。……よくないけど。
「じゃあ何の勝負にします?」
「そうですね……。じゃんけんなんてどうでしょう?
(さとり様優しいから私にくれようとしてるのかな?でもやっぱり悪いし……。じゃんけんならさとり様絶対負けないし。よしグーを出す、グーを出す……)」
「……分かりました」
「では……、じゃんけんぽん!……あれ?」
宣言通り、とはいえ心の声ではあるがグーを出したお燐に対し私は……チョキを出した。いくらケーキが食べたくてもこんな健気なお燐を差し置いて一人で食べることは私にはできなかった。ケーキは諦めよう……、お燐も普段お空のことで苦労してるしこれくらいのご褒美?はあってもいいだろう。
「さ、さとり様……?」
「……お燐が勝ったので約束通りその中から一つ好きなのを持って行ってください」
「でも……」
「普段苦労してるんですからこういう時ぐらい我儘になってもいいんですよ?私はあなたの飼い主で……家族なんですから」
「さとり様……ありがとうございます、大好きです!」
お燐は心からそう言ってモンブランをもって嬉しそうに行ってしまった。ケーキは減ってしまったけど、お燐の笑顔も見れたしこれはこれでよかったのかもしれない。とりあえず今から食べる分と仕事が終わったら食べる分は残ってるし問題はない。とりあえず今から食べるケーキを選んでから
「美味しそうなケーキだねー、私はチョコが好みかな?」
「……おかえりなさい、こいし。あといきなり後ろから声をかけてはいけないと教えたはずですよ?驚かせてしまいますから」
「ただいまー!けどお姉ちゃん全然驚かないよ?」
「それは私がこいしのお姉ちゃんだからです」
「わーい!お姉ちゃん大好きー!」
「私も大好きですよ」
「だからチョコレートのケーキを」
「ダメです」
「じゃあじゃんけんして勝ったら頂戴!」
「……こいし?いつからここにいましたか?」
「わかんない!」
こいしのことだから本当に覚えていないんだろうけど、おそらくさっきお燐とじゃんけんした時にはここにいたのだろう。ならばお燐にくれたんだから私にも頂戴と言えばいいのだろうが……、ただ単にじゃんけんがしたいのか、何も考えていないのか、おそらく両方ではあろうが。
「そういえばお姉ちゃんのじゃんけんで勝てるのって私だけじゃないのかな?」
「残念ですがこいし、それは2つの意味で間違いです。私にじゃんけんで勝てる人は少ないですがいますし、あなたは決して私にじゃんけんでは勝てませんよ」
「えーなんでー?お姉ちゃんは私の心は読めないんだから同じ条件のはずだよ?」
「残念ですが……いえ違いますね。とても喜ばしいことですが私は世界中で唯一あなたにじゃんけんで絶対勝てる存在なのですよ?」
「そこまで言うなら勝負だー!じゃんけんぽん!」
こいしはグーを出したのに対し……私はパーを出した。つまり宣言通り私の勝ちである。これで私はお姉ちゃんのメンツとチョコレートケーキを同時に守ったのだ。
「お姉ちゃんすごーい!どうして勝てたの!?」
「それはですね……私があなたのお姉ちゃんだからです!」
「お姉ちゃんすごーい!」
……本当にこれに尽きるのだ。昔の話になるが、ある日こいしは突然第三の目を閉じた。突然というのは語弊があるかもしれない。さとり妖怪なら誰しもこの第三の目がなければいいのにと思ったことがあるだろう。ひょっとしたら常に思っている者もいるかもしれない。それだけこの目を持つというのは大変なことなのだ。ならなぜ第三の目を閉じないか?答えは簡単で、当たり前のように見えていたものが見えなくなるのが恐ろしいからだ。現に私もこいしが第三の目を閉じてしばらくはこいしとどう接すればいいのかわからなかった。相手が何を考えているかわからない、普通は当然のことなのだが私にとっては初めてのことだった。これがこいしでなく、他の人物だったなら到底関わることはできなかっただろう。でも心が読めなくなった相手は世界で唯一の妹である。私は心が読めなくなって、こいしのことがわからなくなった分こいしのことを知ろうとした。世界中で誰よりもこいしのことを理解できるようになりたいと思って努力した。だって私はこいしのお姉ちゃんなのだから。そしてこの結果の一つが今のじゃんけんである。わたしはもう第三の目を使わなくても……なんとなくとはいえこいしのことが解るのだ。
「……さてこいし、残念ですが私の勝ちですのでチョコレートケーキは諦めてください」
「……はーい、残念だけどしょうがないよねー」
さてこいしにもじゃんけんで勝ったことだし、ケーキを食べて仕事の続きを……
「……こいし?チョコレートケーキががないのですが、知りませんか?」
「えー?知らないよー?」
「そうですか、ところで口の周りにチョコレートが付いてますよ?」
「え?ほんと?……とれた?」
「はいとれました。それでチョコレートケーキはあなたが食べちゃったんですね?」
「う……、そうみたい……。ごめんなさい……」
どうやらこいしは私のチョコレートケーキを食べてしまったようだ。これは別に珍しいことではない、こいしが何も考えず自分の欲望のままに無意識に動いてしまうのはよくあることだ。これは怒ってなおるのならいいのだが、なにぶん無意識での行動であり、しかも能力に由来するものなのでそうはいかないようなのである。怒るのと叱るのは違うのである。そして怒っても仕方ないし、叱ってもなおすことができないのなら……私はどうすればいいのだろう?
「……こいし?今やったことがいけないことだというのはわかっていますね?」
「……はい」
「反省していますか?」
「……はい、ごめんなさい」
「わかりました。でもこいし、私だからしょうがないといって許すことができますが他の人はそうはいきません。それに私もいつもあなたをかばえるわけではありません。それがわかっているのならもういっていいですよ、私は怒っているわけではないですし」
「お姉ちゃん……。今度ケーキ買ってくるから!本当にごめんなさい!」
そう言い残してこいしは部屋から出ていった。悪気はない、反省してる、叱ってもなおらない。なら私はどうすればいいのだろうか?私の大きな悩みの一つである。それはそうとして私のケーキはとうとう一つになってしまった……。とにかく今ひとつ食べよう。そして仕事に復帰しようと考えて私は残ってるイチゴのショートケーキを
「さとり様ー、もうそろそろおやつの時間なんですが何かありませんかー?あ、美味しそうなケーキ!」
「……あらお空、残念だけどこのケーキは私のものよ?」
「えー。さとり様だけずるいですよー。私もケーキ食べたいです!」
「ダメなものはダメです」
「じゃあ勝負して勝ったらください!」
ここではっきりダメとはいえないのが私の甘いところなのかもしれない。結果や思惑はともかくこの前に私はお燐とこいしにチャンスを上げてるので、お空にそれがないのは不公平じゃないか?最後の1個だしこれは絶対に食べたいけど、それはあくまで私の都合でお空には関係ないんじゃないか?そんなことを考えてしまう。こういうことを考えだすともう断れなくなってしまうのだ。
「……わかりました。何の勝負にしますか?弾幕ごっこはあまりしたくないのですが」
「私もさとり様を傷つけたくありませんし……。そうだ、じゃんけんなんてどうです?」
「……いいでしょう」
じゃんけんですか……。今までのことを考えると正直嫌な予感しかしないですし、お空とはあまりじゃんけんはしたくないのですが。さっきこいしにも話しましたが私にじゃんけんで勝てる人物は少ないですが確かにいて、お空はその中の一人です。昔じゃんけんをした時はお空がだそうとしていたチョキを直前でど忘れして何も考えずに出したパーに私のグーが負け、その結果プリンを取られてしまったことがあるのだ。こんなかんじなので正直お空とはあまりじゃんけんをしたくないのですが、次に勧めてくる勝負が何かわからないのなら少なくても五分五分のじゃんけんなら悪くないような気がする。
「じゃあいきますよー!
(よし!グーをだそう)」
「いいですよ」
「じゃんけん……」
お空が直前まで考えていることを覚えてくれてるよう祈りつつ、私はパーを出した。
「ぽん!」
「……えーっとお空?」
「何ですかさとり様?」
「どうしてこうなったの?」
「うにゅ?」
前例があったのでお空がひょっとしたらグーを出すのを忘れてチョキを出すかもしれないとは覚悟していた。けど実際にお空がだしたのは……
「どうして右手、いや正確には第三の足ですが……というよりも制御棒を出しているんですか?」
「……うにゅ?」
だめだ……この子何も覚えてない……。私のパーに対してお空は制御棒……これは果たしてどっちの勝ちなのだろうか?
「よくわかんないですけど私の勝ちなのでケーキもらいますね?」
「……なんでそうなるんですか?」
「だってさとり様のパーと私の制御棒だったら私の制御棒のほうが強いですよ?」
「いやじゃんけんはそういう勝負じゃないですよ?……あれ?そういう勝負でしたっけ?」
グーがチョキに勝つのは石がはさみで切れないから、チョキがパーに勝つのはハサミが紙を切るから、パーがグーに勝つのは紙が石を包むから。なんで包んだら勝ちなのかはよくわかりませんが、確かにじゃんけんは『強い方の勝ち』ではある。お空の言ってることは必ずしも間違っているとは言えないのかもしれない。
「で、でもお空?じゃんけんはグー・チョキ・パーの中から選ばないとダメなんです」
「うーん……じゃあ……」
お空はそう言って制御棒を取り外して右手でチョキを出した。
「さとり様、これで私の勝ちですよ?」
「……お空?それは後出しですよ?」
「最初から出したかもしれないじゃないですかー!
「……そうなのですか?」
「覚えていないです」
心を呼んでも本当に覚えていないらしい。それなのに空は自分がチョキを出していたと信じきってしまっている。つまり、実際はどうあれお空の中では制御棒に隠れた右手は最初からチョキを出していたことになっているのだ。
「……お空、本当にチョキをだしてたんですね?嘘じゃないんですね?」
「はい!私はきっとチョキを出してました!」
「……わかりました。じゃあそのケーキは約束通りお空にあげます。そのかわり今度からはじゃんけんで右手を出しちゃいけませんよ?」
「やったー!ありがとうございます!さとり様大好きです」
「私もですよ」
きっとお空は右手のことは忘れてしまうだろうけど、そしたらまた覚えてもらえばいいのだ。教育は日々の繰り返しである。ケーキは……たぶん私がうまく説得すればお空にあげずにすんだだろうけど、結局私は甘いのである。長年お姉ちゃんというものをやっているからか、お燐とこいしがケーキを食べたのにお空の分だけない、という訳にはいかなかったのだ。それにお空の言うことにもほんの少しだけ納得してしまったこともある。結果的には3つあったはずのケーキはなくなってしまい、残ったのは山積みの仕事だけになってしまったのだ。
「……はー、仕方ないですし仕事の続きをしますか」
でも不思議とケーキを取りに行く前よりは元気が湧いてきていた。みんなの笑顔が見れたからだろうか?みんなに大好きといってもらったからだろうか?そんなことを考えながら残っている仕事に再びとりかかりはじめた。
こいし?
温かい家庭な感じが良かったです
のほほーんとした地霊殿のひとコマという中で、それぞれのキャラクターらしさがでていて良かったです。
こいしがかわいくて一安心
点数なんて気にしてはだめだ
点数が高いからと言って誰もが評価するわけではない
私はあなたの作品が好きですよ
そしてえーき様ww
まあ作者さんのモチベーションが上がるなら点数くらいいくらでもいれますよ。
また作品読みたいですし。
こまえーき要素が気になるなぁ…(チラッ
作者さんが点数を気にするのは分かるけど、点数なんて水物。
時の運でいかようにも変わると思いますよ。
ほっこり地霊殿がよかったです。そして小町ェ…
自信を持って下さい、ほのぼのとした感じのとても良い作品でしたので。
陰ながら応援してますよ
最後はさとりも報われたようで、素敵なお話でした。
お姉ちゃんしてるさとり可愛い!
欲を言えば、もうちょこっとだけこまえーきを掘り下げてほしかったです。
そしてあとがきの四季様www
最後にさとりも報われてみんな幸せ。とても素敵です。
能力のせいで嫌われるさとり様は本当は優しい子なのよ
うんうん
3さん
私の中のさとり様はこのイメージなので多分今後の作品もこんなかんじだと思います。
5さん
誤字報告ありがとうございます。気をつけないと……。
8さん
未だにタグは困っていまして……。こういうのを不快に思う人もいるかな?というのでつけておいたのですが……、いらなかったかな……。
11さん
……文章力よりアイデアで勝負しているので、今後はがんばろう!
19さん
ありがとうございます。でもやっぱり正直なところ多くの人に読んでもらいたい、楽しんでもらいたいという思いはあります。そして投稿してから2週間は自分の文章の感想が増えてるかチェックして一喜一憂するのも楽しいのですw
これからもそんな感じでのんびり書いていこうかなと思ってます。
30さん
『また読みたい』。その一言が本当に嬉しいです。
41さん
応援ありがとうございます。
48さん
……不幸な話は書くのがしんどいです。幾つか考えてますが……。
52さん
なんかほのぼの日常ばっかり書いてる気がするなぁ……。読者が砂糖吐くような甘いssも書きたいのですが(というより読むのはそういうのが好み)。正直そこは実力不足でした。
62さん
そのへんのくだりは投稿5分前くらいに思いついて書きなおしたというのは内緒w
とりあえず点数にびっくりしています。皆さんが言うように点数はあまり気にしなくてもいいようですがやっぱ高いと嬉しいし、感想は今後の方向性にも繋がります。あと見てて楽しいですし。私はこのサイトで小説読む時は『タグ』『点数』『作者』で読むかどうかだいたい決めていて、お気に入りの作者はかなりいます。いつか私も誰かにとってそういう作者になるというのが今のところ最終目標です。
このごろ食べていませんが……。