Coolier - 新生・東方創想話

輪廻を廻る流星

2012/08/09 23:15:08
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※携帯からなので改行がおかしいかもしれません
後々PCで修正致します










輪廻転生はこの世とあの世の理だ。
生が死に。死が生に。
死は生故に在り、生は死故に在る。
それらふたつは対となり、この世とあの世を廻り続ける。


如何なる生もいずれは死と成り、如何なる死もいずれは生と成る。

その理の内に無き物。
死に成らぬ生。生に成らぬ死。

それらは最早、生では、死では無い。
生きぬ物。死なぬ物。
それは不生と、不死と呼ばれる。

不死は生に非ず。不生は死に非ず。

生は死と成り、生へと成る。
不死は死と成らず、生へと成らず。
故に、不死は生に非ず。

不生も然り。
死は生と成り、死へと成る。
不生は生と成らず、死へと成らず。
故に、不生は死に非ず。


輪廻から外れた物は、いつまでもその命を燃やすか、凍り付かせているか、どちらかだ。

彼女は消えぬ炎に焼かれている。
永劫終わらぬ、不死という業の炎。
不死鳥の炎に。


輪廻を廻る物の内、一際速い物が在る。
閃光のように強く、一瞬にして燃え尽きる物。か弱き物だというのに、とてもきれいに輝く物。

彼女は流星の如く走り廻る。
刹那に消えるひとつの光。
強く、か弱く輝く閃光。


輪廻を廻る物の内、光り続ける物。
いつかは終わる輝きを、長々と続けている物。
永劫燃える炎にも、刹那に消える閃光にも成れぬ物。

彼女は光を羨んでいる。
光が消えるのを恐れている。
自らが羨む光が。



鳴く夜雀も黙る丑三つ時の竹林に、
相対するみっつの人影があった。

ホウキに乗ったふたりの少女。
月を背負った白と紅の少女。

先に仕掛けたのは、ホウキに乗ったふたりの内ひとり、霧雨魔理沙だった。

「アリス、しっかり掴まってろよ」

にやりと笑ってそう呟いた魔理沙は、高速でホウキを飛ばし、その軌道に大量の弾をばらまいた。

アリスと呼ばれた少女は、魔理沙の突然の行動に苛立っているようで、不機嫌な顔で苦言を呈した。

「相手がどんな攻撃をしてくるかもわからないのよ?まずは相手の出方を…」
「お前はいっつもまどろっこしいんだよ。やられる前にやっちゃえばいい。
面倒事はナシでさ」
「それでよく勝ってきた事ね。単純馬鹿」

アリスは魔理沙を罵りながらも、描かれた弾幕を広げるように弾を放つ。

魔理沙の弾幕が紅白の少女に――藤原妹紅に襲い来る。

妹紅は鋭い眼光でそれを一瞥し、抱き止めでもするかのように両手を広げた。そして。

熱い光と共に、妹紅の両手から炎が振り撒かれ、魔理沙の弾幕を消し飛ばし、光弾を撃ち込もうとしている魔理沙を襲う。

高速で延びる炎に、魔理沙は呑まれそうになったが、アリスが張っていた弾幕と魔理沙の光弾に、炎が押し留められた事で、なんとか回避出来た。

「危ない危ない…さすがに牽制の弾は弾かれちゃうか」
「言わんこっちゃない、私が防がなかったら、今頃あんたは黒焦げよ?」
「お前もそうなってたぜ?」
「私はあんたを見捨てて落ちる事も出来たわよ」
「へーへー、あんがとさん…っと!」

気が付けば、魔理沙とアリスは四方を炎の球に囲まれていた。白く輝く火球は、ふたりのまわりを隙間無く覆っている―――ように見える。しかし、魔理沙はその中に、なんとか抜けられるような間を見つけ出した。

どうやら、妹紅と名乗ったこの少女は、「弾幕ごっこ」というモノをよく理解しているらしい、と魔理沙は思った。そして、揺らめく炎の間、その先に見える妹紅の姿を、好戦的な眼で睨み、陽炎に向けて叫んだ。

「へへ、弾幕ごっこの先輩サマが教えてやるよ…「なんでもあり」の恐ろしさ、ってぇのをさ!」

アリスが止める間もなく、魔理沙はホウキの後ろに魔方陣を展開し、そこから大量の光線を撃ち出した。

莫大な推進力を得たホウキは、超高速で前方へと―――妹紅の許へと飛ぶ。

魔理沙は身を守る為の結界を張ると同時に、ホウキの柄の先に魔力を集中させ、それを鋭く尖らせる。



それは最早ホウキではない。



槍。



一直線の虹を描き飛来する、最も速く、鋭い槍だ。

炎を突き抜け、虹の槍が、ホウキが、妹紅の許へ飛ぶ。

妹紅は予測出来ぬ事態に驚き、とっさに目をつむってしまう。
槍のようなホウキが超高速で飛来してきている、というこの状況で、怯まぬ者はあまり居ないだろう。

そして―――


ばちん、


という音と共に、ホウキの先に付いていた弾が妹紅に当たり、弾けた。

「はい、お前の負け」

楽しそうな魔理沙がそう宣言する。
呆れ顔のアリスがため息をつく。

妹紅はわけもわからず座りこむ。

「これが弾幕ごっこだよ。
人目を惹いて、キレイで、相手に弾が飛ぶならなんでもいいのさ。体当たりでもな」

いたずらっぽく笑う魔理沙。
その様子を見たアリスが、苦虫を噛み潰したような顔で言う。

「体当たりはキレイじゃないわ。
野蛮だし、服が汚れるし。
そもそも弾幕じゃないわよ」
「またお前はカタい事を…勝ったんだし、楽しかったからいいだろ?
っと、お前、大丈夫かよ?」

いまだにへたりこんでいる妹紅の存在に気付き、魔理沙が声をかけた。

「ん、少し驚いただけよ。
永く生きてるからって婆様になっちゃいないわ」

冗談で返し、すっくと立ち上がる妹紅。

「無理もないわね。あんな攻撃に晒されて、腰を抜かさない自信は私には無いわ」
「なんだ、臆病だな。私だったら打ち返してやるぜ」
「あんたはマスタースパークを喰らった事が無いからわかんないでしょうね。一度、鏡に向けて撃ってみたらどうかしら?」
「鏡にレーザーを反射させて、拡散させたら強そうだな。帰ったら試してみるか」

ふたりの気の抜けたやりとりを聞いていた妹紅が口を開いた。

「あんたらが本当に輝夜の奴を倒したっての?なんだか信じられない……ん、いや…?」

口許に手を当て、考える素振りを見せる妹紅。

「いや…あいつだから、私だからこそ、かな?」

妹紅と輝夜が今まで行ってきたのは、本当の殺し合いだ。
相手を圧倒する質量の弾幕を撃ち、徹底的に潰す。肉を裂き、骨を砕き、四肢を分かつ。

弾幕ごっこには、そのようなおぞましさは無い。美しき弾幕を張り、そこに隙間を開いてやり、相手がそれを見つけ出すかどうか。自分が相手の弾幕に、隙を見付けられるかどうか。
一種の知恵くらべであり、ここ幻想郷で共通する唯一の文化だ。


そんな闘いに身を置いてきたからこそ、ぶっ飛んだような考えを思い付くのだろう。自分や輝夜に勝てたのだろう。

ならば、自分もそんな弾幕で、到底考え付かないような弾幕で、輝夜の度肝を抜いてやろうではないか。
「弾幕ごっこ」というもので。

その日を境に、妹紅と輝夜の殺し合いから、血飛沫や肉片が消えた。
かわりに、七色と紅の光が飛び交うようになった。

一面を覆う光と、そこに空いた夜闇。
それは、妹紅が教えてもらったもの。

閃光の如く飛んできた先輩に教えてもらった光景だ。






竹の海の上を、かつて槍だったホウキが飛ぶ。
妹紅に打ち勝った魔理沙とアリスは、魔法の森を目指していた。

戦いのさなかでもいがみあっていたふたりは、空の上でもそのようだ。

「だから、なんであんな不確かな方法を取ったのよ。あれでもし迎撃されていたらね…」
「もうその話はいいだろ!?
終わった事をいつまでもさぁ、それお前の悪い所だぜ!?」
「あんたが考えなさすぎなんでしょ?
巻き添えで死ぬのは私なの」
「でも、結局ふたりとも生きてるぜ?
そもそもアリス、お前はもう妖怪なんだから、簡単にゃ死なないだろ」
「あんたはか弱い人間よ?
簡単に死ねるの。いつまでも命知らずじゃ、すぐに死ぬ事になるわよ?」

アリスの言葉に、魔理沙はすこし黙っていたが、八卦炉から一発、弾を撃ち出した。暗い夜空を昇っていく弾は、上に向けて流れる流星に見える。

宵闇に呑まれていくそれを見送ると、魔理沙は前を向いたまま話しだした。

「私はさ、天を走る星になりたいんだ。それもただの流れ星じゃなくて、空を貫いて、天を越えて、あの世を抜けて昇っていく星にさ。
途中で堕ちるとしても、闇に喰われるとしても、太陽に焼かれるとしても、
消えて無くなるそれまでの間、精一杯キレイに輝いていたいんだ。
立ち止まったらもう昇れないんだ。
そこでずっと光ってるしかない。
私にとっちゃ、止まることは消えることと同じなのさ」

静かに紡がれる魔理沙の言葉に、アリスはすこし驚いていた。
お調子者の魔理沙が、こんな形で饒舌になることは少ない。

アリスはすこし黙っていたが、やがて口を開く。

「高く上がりすぎちゃ、誰からも見えなくなるわ…あんたの輝きも。
それを望むっていうの?」
「強く輝きながら、高く高く昇ってくんだ、とても目立つだろう?
目を奪われないやつはいないはずさ。
私は一瞬で良いから、私の光をみんなの眼に放つんだ。
眼と心に焼き付いて離れないような、キレイな光を。
私の光が誰かに残っているなら、私はどこまでも輝き続けてやる。
それが見えなくなっても、心には輝きが残っているんだ。私の光は無くならない。ただ見えないだけさ」

アリスはただ、そう、と一言答えただけだった。それを聴いて、魔理沙はやっと振り向く。

「なんか照れくさいな。
もうこんな話いいだろ?やめだ、やめ。あ、ほら、着いたぜ」

気が付くと、見慣れた屋根が近づいてきていた。アリスの家のすぐ前に降り立った魔理沙は、

「そんじゃ、私は帰るぜ。
なかなか楽しい夜だったな」

と言って笑い、背を向けた。
しかし、魔理沙はいつまで経ってもホウキに跨がろうとしない。

魔理沙、と、アリスは怪訝そうに声をかける。
魔理沙は背を向けたまま、消え入りそうな声で呟いた。

「アリス――お前は、さ。
私の光が見えなくなっても――残しておいてくれるか?
私の輝きを――焼き付けておいてくれるか?」

声が震えていた。
やはり、怖いのだろう。
自分の光が、輝きが、自分が、忘れ去られてしまうのが。
誰かの心に残らないことが。 

「魔理沙……」

呼び掛けに返るのは、小さな嗚咽のみ。それを聴いたアリスは、ゆっくりと口を開いた。

「馬鹿ね、あんたの輝きが残らないわけないでしょう。
眩しすぎるくらいに強いあんたの光が、焼き付かないわけないでしょう。
私も、他のやつらも―――あんたを忘れられるわけ、ないじゃない」
「っ………!」

魔理沙が息を詰まらせる。
しばらく息を止めたあと、魔理沙は話しだした。

「そう、だよな――そうだよな!
当たり前だよな!ははっ、やっぱり!」

ずっと沈んでいた声色は、もう無い。

いつもの魔理沙だ。眩しく輝く。

「っじゃ、私は帰るぜ!
そんじゃぁな、アリス!」
「待ちなさい」

言葉とは裏腹に、優しい声でアリスは静止をかける。

「っと、なんだよ、まだなんかあんのか?」
「輝いてんのはあんただけじゃない。
他のやつらも――私も――目一杯光っている。
あんた、それを残さなかったりしたら、承知しないわよ?
他人にだけじゃなく、あんたも光を焼き付けなさい?」
「わかってるぜ、そんなこと!
残しといてやるよ、お前らのちっちゃな光もさ!」

じゃあな、と言葉を残し、ホウキに乗った魔理沙の背中が離れていく。





気付けば、暗く淀んでいた空は晴れ、満天の星空が現れていた。


まるで鏡のようだ。

幻想郷の光たちを映し出す。




魔理沙の輝きは天を昇れるだろうか。
私の星はいつまでそれを見ていられるだろうか。



しばらく、ここでみんなの輝きを見ていよう。

すこしずつ夜空を昇る、多くの流星たちに、アリスは何かの願い事を呟いた。

幻想郷の、地球のまわりを廻り続ける、たくさんの輝きへ向けて。
七月七日に投稿出来ればよかったなぁ。

もこたん&魔理沙がメインなのを書こうとしたら、いつの間にかマリアりになっていたでござる。

最初の不死云々はその名残。

次はギャグを書きたいです。
naka
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