壊れていた。
フランドールは確かめるように何度もレミリアの顔に手を這わせた後、周囲の者を呼び寄せた。駆け付けた者達は唯一レミリアの傍にいたフランドールに当然、事態の説明を求める。フランドールは張り詰めた表情の彼女達を一瞥すると嘆息し口を開いた。
「何があったかって? 見ての通りだよ」
自分達を殺そうとした人間に彼女は名前を与えていた。
門番にはいつも楽しげに話しかけ、魔法使いには友になることを求めた。
ならば自分は?
自分は何を与えられた?何を話しかけられ、何を求められた?
与えられたのは地下室で、説かれたのは自身の危険性だった。
そうして何も破壊しないように求められた。
今までは姉のその行為に対し、フランドールに大きな不満はなかった。
レミリアが外出し、フランドールは部屋をめちゃくちゃに破壊する。
そうしているうちに帰ってきたレミリアが実力行使でそれを諫める。
二人きりの時はそれが日常だった。一見歪ながらもそれはそれで二人の関係は上手くいっていた。
けれど、二人でなくなった時から、フランドールはこれまで以上に周囲の物を破壊するようになっていた。
「お姉さまが憎かったから、私が、壊した」
そう言うとフランドールはレミリアの光の映らない瞳を覗き込み、もう一度嘆息した。
結局、誰もフランドールにそれ以上のことは何も言わなかった。
罵られるか。
幽閉されるか。
その場で殺されるか。
それぐらいは、フランドールは覚悟していた。
日頃、他者と接することがほとんどないフランドールにとって、彼女達はあくまでレミリアのものという認識であったし、レミリアのためにここにいるのだから彼女達が自分を殺したいと思ってもおかしくはない。そう考えていた。
しかし、フランドールのその予想は外れ、彼女達は、今までと同様にまるで何事もなかったかのようにフランドールに接している。いつものように、遠くも近くもない距離で。
何故、誰も私を殺さないんだろう?
地下室に置かれたベッドに仰向けになりながら、フランドールは心の中で呟いた。
それは物心ついたときから、フランドールの頭を何度もよぎる思考だった。
永遠に解けない命題のようなそれは常に頭の片隅にこびりつき、早くこれを解かなければという強迫観念はいつもフランドールを追い立てていた。
それはフランドールを暗闇の中にたった一人放り出す。
だから、出口を見つけて早くそこから逃れたかった。
けれどいつまでたっても答えは見つからず、未だに自分は彷徨っている。
そもそも出口なんか初めからないんじゃないか。
レミリアを壊した直後からフランドールはそう思い始めていた。
それこそが正しい答えだと心のどこかで肯定する一方で、そう結論付けることを拒絶するようにフランドールは固く眼を閉じる。
お前には姉のことも外の世界のことも永遠に理解できない。
もう一人の自分にそう言われているようで、そしてそれをいつか自分が認めてしまいそうで心の底から恐ろしかった。
「そんなわけ……ないじゃないか」
呻き声のような自身の声が鼓膜を震わせる。
ふと視線を感じ目蓋を開くと、すぐ傍にいるレミリアがフランドールを見ていた。
思わず縋るように、ゆっくりとその腕に手を伸ばして、触れた。
しかし、レミリアからの反応はない。
それが今の二人にとっての日常となっていた。
普通に食事をして、呼吸をして、睡眠をとる。ただ、それだけだ。
言葉はいつも一方通行で、無い表情からは何一つ読み取れない。
レミリアが何も感じていないということをフランドールは事あるごとに再確認させられていた。
以来、フランドールは自身の心の臓を掌に触れさせる。
握り締めこそしないものの、触れて、離して、代わりに自分の体の一部を掌で握り込んで破壊する。
そうしてこんなものかと思いを巡らせる。
けれど結局は肉体の物理的な痛みは解っても、レミリアの心が破壊された痛みを自分には到底理解できないであろうことはフランドールにもわかっていた。
そして、この行為に何の意味もないことも。
自嘲気味に笑うとフランドールはレミリアから手を離して、いつものように自分の一部を破壊する。そうして、急速に復元していく自分の体をぼんやりと見やった。
これはレミリアの心を壊してからずっとしている儀式のようなものだった。フランドールにとっては自身の心を安定させるためのものだったが、最近ではそれも効いているのかは疑わしかった。
もう、誤魔化せないんじゃないか、そんな考えがよぎり、いっそう、狂ってしまおうかと心にもないことを考えてみる。もしそうなれば、どんなに楽だろうかと思いめぐらす。
けれど、フランドールは隣にある温もりを手放す気は一切なかった。
今のレミリアならば誰でも簡単に殺すことが出来るだろう。それだけがフランドールの意識を正常な状態の縁の縁に繋ぎとめていた。
フランドールは今までと同様に大半を地下室で過ごしていた。
違うのはフランドールが部屋の主ではなく、その所有者はレミリアに変わったことだった。フランドールはレミリアが自分に施した以上の強力な結界を周囲の壁と扉の内外に施した。
フランドールにとってかつての地下室は能力を弱める檻になるとともに、なくてはならない入れ物となっていた。
誰にも触れられないように。
誰にも奪われないように。
彼女の言うように。
大切なものならちゃんと、仕舞っておかなければいけない。
むやみに触れてはいけない。決して傷つけてはいけない。
自分のような者なら殊更に。
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「結界を壊す前に一言言って欲しかったなぁ」
ある日、壊れた封印の前にいた馴染みの顔にフランドールは呆れた声で言い放った。
「一応見舞いに来たって咲夜には言ったぞ。壊すとは言ってないけど。お前を待ってろって言われたけど、いつ戻るかわからなかったしな」
「おかげ様で私の結界がいかにちゃっちいかはよく理解できたけどね。咲夜に会ったならもういろいろと聞いているかもしれないけれど、今のお姉さまは霊夢達と話せる状態じゃないよ」
「そうみたいだな。でも、このままじゃないんだろ?」
「どういう意味?」
「だから。レミリアは前みたく戻るんだろ?」
「……もどらないよ。そう、二人ともお姉さまが気に入っていたもんね。そう思いたいんだろうけど、でもずっと同じ。何も変わらないよ。私が壊したんだから」
話しかけても、触れても、何もない。
以前のように、嫌味を言われることも、激しく怒られることも、弾幕で喧嘩をすることも。そう、なにもないのだ。
レミリアから笑いかけられた記憶はフランドールにはない。
暴れた時には動けなくなるまで痛めつけられたことは度々あったが、それでも、まるで自分が存在しないかのように扱われたことだけはなかったとフランドールは思い返す。
一瞬、かつてレミリアから与えられた痛み以上のものを感じてフランドールは胸を押さえた。
すると魔理沙が信じられないことを口にした。
「いや、でもさっき思いっきり突き飛ばされたけど」
「え?」
「咄嗟に防御魔法していなかったら多分死んでた」
「どういうこと?」
この馬鹿がね、と霊夢が話し始めると魔理沙が焦ったように口止めしようとしたのでフランドールは腕力で魔理沙の頭を上から押しつぶす。
呻き声を上げる魔理沙は無視して、フランドールは霊夢に次の言葉を促した。
「レミリアに反応がないのが面白くないとか言って――」
「眠っているだけだと思ったんだよ!」
「キスを――」
そこまで言いかけて、霊夢は言葉を飲み込んだ。一気にフランドールの魔力が増幅したからだ。それが二人に――おもに魔理沙に叩きつけられる。
「キス?」
「いや、ちょっとまて! 違う! 正確には『しようとした』だ! 未遂!」
それを聞くと魔力は抑えられたが、剣呑な眼差しでフランドールは魔理沙を睨む。
「なんで?意味わかんないよ。魔理沙ってお姉さまのことそこまで好きだったの?」
「い、いきなりお前……」
「やっぱりそうなんだ」
「ち、違う。いや、好きだけど……つ、つまりそう言う好きじゃなくて」
真赤になりあーうーと言葉にならない魔理沙の返事に、フランドールは低い声で答えた。
「そう……それなら戦うしかないね」
「ちょっと、何言ってんのよ」
「大丈夫。私も魔理沙は嫌いじゃないよ。だから弾幕で勝負して諦めてもらうだけ」
「そうじゃなくて! 魔理沙はレミリアをからかっただけ! 『眠り姫はキスすると起きるんだよな』とか訳のわかんないこと言っておふざけでしようとしたんだって。アンタも魔理沙が人前でそんなことできるわけないって冷静に考えたらわかるでしょう?」
「……」
言われてみればそうだ。紅魔館で宴会があった時に屋根の上から一人その様子を見ていたが、恋愛の話題が出るたびに魔理沙は押し黙っていた。
好きな人がいるのか咲夜に尋ねられたら「魔法使いの恋人は魔導書だぜ!」と何故か涙ぐみながら話していたくらいだ。
「何もしてない?」
「してない! なにも!」
「なら、いいよ……」
3者ともそれぞれの思いでホッとする。
フランドールは先ほどの魔理沙が言ったことが引っかかっていた。
「ねえ、本当にお姉さまに突き飛ばされたの?」
「本当だぜ。本気でするつもりじゃなかったってのに」
などとぶつぶつ言っている魔理沙を霊夢は呆れたように見た後、フランドールに向かって微笑んだ。
「でもさ、安心した」
「安心?」
「魔理沙の言うように、ちゃんと心はあるんだって思ったから」
その言葉にフランドールは眼を見開いた。
「不逞な輩にレミリアが容赦するとは思えないしね。魔理沙だってわかったから、突き飛ばしただけで済ませてあげたんでしょ」
「いや、おまえ、突き飛ばしただけって……あれ当たってたら確実にこなごなになってたんですけど……」
「吸血鬼の身体能力まで考慮に入れられなくなるほど嫌だったのかもね」
「……本気じゃないとはいえショックなんだぜ」
「もっとも、弾幕やった時は本気で殺されるかと思ったけど」
「こんな状態のお姉さまに弾幕?」
「ショック療法ってやつよ。まぁ結界が残っていたせいで、威力は半減してたけど」
「……今度、私のいないところでやったら、霊夢を壊しちゃうかもよ?」
「あら、こうしてレミリアの反応が見れたんだから結果としてはいい方向に行ったじゃない。感謝してほしいくらいだわ。それにしても、あんたレミリアそっくりね」
「え?」
「あぁ、ほら、何膝抱え込んでんのよ魔理沙。もう帰るわよ。じゃあね、フラン。いい兆候が見れたし、これからもちょくちょく来てあげるわ。弾幕しにね」
そう言いながら霊夢はずりずりと魔理沙を連れて部屋から出て行った。
部屋に残されたフランドールは先ほどの霊夢達の言葉を思い返す。
部屋の奥に座り込んでいる姉のもとに行くと、いつものようにレミリアは焦点の結んでいない瞳でゆっくりとフランドールを見上げてきた。
そこに感情の色はない。
でも、確かにあの巫女は「ある」といった。
「お姉さま……」
「……」
「私が、分かる?」
「……」
レミリアの前にフランドールは座り込み二人の目線が同じになる。
フランドールがレミリアに躊躇いがちに手を伸ばしてその腕を引き寄せると、なんの抵抗もなく腕の中に温かな体が収まった。
震えながらその背中に触れる。
「嫌じゃ……ないの?」
黙ったままのレミリアをじっと見てから、そのままもう一度引き寄せた瞬間に、嗚咽が漏れた。
「壊れ……て、壊しちゃっ……て、もう……無く……なったんじゃ……ないかっ……て、もう……二度と……会えないんだって……っ……思って……た」
レミリアの心を壊してから初めて流れた涙だった。
あの夜、掌で何かを触れた記憶はフランドールに一切ない。けれど、自分が招いた結果であることは明らかで、無理にでも理由を探して事実をただ受け入れるしかなかった。
「ごめん……。ごめん……なさい」
何度も馬鹿みたいに同じ言葉を繰り返す。
レミリアはフランドールを突き飛ばしも、抱きしめもしなかった。
ただ、黙って傍にいてフランドールの全てを受け止めていた。
なんだ、それなら霊夢の言葉どおりじゃないかと、それがいつもの彼女だったとフランドールは泣きながら笑った。
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「イザヨイサクヤ」
「はい?」
「綺麗な響きだねぇ。好きだよ、その名前。ネーミングセンスのないお姉さまがつけたとはとても思えないね」
「そうですか。ふふ。ありがとうございます。初めて私を名前で読んでくださいましたね」
「そうだっけ?別に咲夜のことが嫌いだったわけじゃないよ。興味がなかっただけだから気にしないで。今は……今もよくわからないけれど、名前は好きだと思う」
「できれば私自身を好きになっていただけると嬉しいですが。けれど、そうなるにはお互いもう少し時間が必要ですね。それと切っ掛けも。どうやら、あの二人が来たことでその切っ掛けは生まれたようですが」
「真っ暗で何も見えないから今はもっと明かりが欲しい。もっと、知りたいんだ。お姉さまのことも、咲夜達のことも」
「それは良かった。でも、結果として妹様が私をお嫌いになる可能性もありますよね」
「え? まぁ、無いとは言い切れないね」
「私の名前を好きだと言ってくださったお返しに、私もこれだけは言っておきます。私も妹様のお名前が好きですよ。私の場合は親近感みたいなものでしょうか」
「ふ~ん?」
「音感とかでなく。あなたも、私と同じだからです」
「え?」
「あなたの名前もお嬢様から与えられたものだと、門番から聞いたことがあります」
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「ねぇ門番」
「おや、妹様。どうされましたか? 難しい顔をして」
「門番はお姉さまとたくさん話をしていたね」
「あなたともそれなりに話をしてきたつもりでいましたが、私の名前もお忘れで」
「あぁ、えっと……メイリン?」
「大丈夫あってますよ。そうですね。その日はもう過去形になってしまいましたが。でも、いつの日かまたお嬢様が話し掛けてくださると私は信じていますよ」
「メイリンはお姉さまが好きなんだ」
「ええ」
「お姉さまって、どんな人?」
「そうですねぇ。強くて、誇り高くて――」
「うん」
「少々融通がきかない」
「あぁ、最後は私も全面的に同意する。でも、前半はともかく後半はお姉さまの前で言ったら半殺しにされるんじゃない?」
「だから内緒で妹様に愚痴を零しているんですよ」
「あは。そっか。ねぇ、いつもお姉さまはどんな話をしていたの」
「それはもう、いろいろと。外に行けば、あれが美しかったとか、これが美味しかったとか。そういえば、人間の詩なんかを教えてもらったこともありましたね」
「詩?」
「えぇ。なんでも人間から教えてもらったんだとか。ただ、それが、神を主題にした詩でしてね。吸血鬼としてどうなんですってご意見したんですけれど、『それがどうした。美しいものは美しい。そんなくだらない価値観は犬にでも食わせておけ』と。紅魔館に犬はいないんですがね」
「あはは。何と言うか、お姉さまらしいね、とても。それで、どんな詩だったの?」
「忘れました」
「……お姉さまがそれを聞いたら、完膚なきまでに殺されるね」
「だから、これもご内密に」
「また?まぁ、いいけどさ。他には? 他にはどんな話をしていた?」
「う~ん。何を上げるか迷います。お嬢様とは何百年もの間、一緒にいましたからねぇ。あげていたらそれこそ何百年と話題が尽きないくらいにたくさんのお話をしてきました。あぁ、けれど最後は、毎回同じことを私に聞かれていましたね」
「同じこと?」
「えぇ、あなたのことを。あなたが今日は何を見て、何を話して、何を愛したのか。そんなことを」
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「パチュリー・ノーレッジ」
「あら、妹様。珍しいわね私を名前で呼ぶなんて。でも、私を呼ぶ時はファーストネームで構わないわ」
「そう。私は慣れていないから」
「呼んでいれば直ぐに慣れるわ。で、私に会いに? それとも、この図書館にかしら」
「両方。パチュリー――の顔を見るついでに図書館に。本を探しているんだけど」
「ついでが逆だけれど、妹様の優しさと受け取っておくわ。それで、何の?」
「詩……人間の作ったやつがいい」
「そこの本棚に置いてあるやつがそうね」
「ありがとう」
「随分熱心に読んでいるみたいだけれど、どう? 妹様。読みたいものは見つかった?」
「私が読みたいものはわからないんだけれど、好きな詩は見つけた」
「よくわからないわね。どれ? あぁ ……ふふ」
「何?」
「別に。やっぱり、あなた達は姉妹なんだなと思っただけよ」
「……霊夢と同じことを言うんだね。あぁ、だから、なのかな。だから皆私を殺さないんだろうね。私が好きな人の妹だから」
「それは、そのとおりね。あとは、殺すにはやっかいな類だったから」
「くっ、あはははははははっ……そっか……はは、そうだよね。馬鹿みたいだ私。でも、うん……仕方ないね」
「あなたにとっては『仕方ない』なのね。自分を殺したいなんて真っ向から言ってくる相手にそれはどうかと思うけれど」
「仕方ないんだ。それに、そういう裏表のない言葉は嫌いじゃないよ。言われていることは最低だけれど、さすがお姉さまの親友だなって思った」
「誉められているのかしら? まぁ、もっとはっきり言わせてもらえば、レミリアを壊したせいで自分まで壊れかけている子供に何を言えっていうの? そういうことよ」
「え?」
「本当。この世で一番やっかいなのは悲しくても泣けない吸血鬼ね」
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ベッドに横になりながらフランドールは頭上から聞こえる静かな呼吸に耳を傾けて、穏やかな鼓動を頬から感じていた。レミリアの腕の中で安心している自分をフランドールは不思議に思う。
いや、安心よりは懐かしい、という感情が一番近いのかもしれない。
もしかしたら、ずっと昔に、自分はレミリアにこうしてもらった時があったのだろうか。
ふと、外の世界での会話がフランドールの脳裏に浮かんだ。
もしかしたら、お姉さまは495年の長い間も自分を愛し続けてくれてたんだろうか。
何も知らず、ずっと壊すことしかできなかった自分を。
無意識に震える掌が動いてフランドールの胸奥にある心の臓をつかんだ。
だが、数拍の鼓動に触れただけで、それは掌から離される。
もし、愛されているのなら……とフランドールはその仮定の先を考える。
それならば、ずっと言う事が叶わなかった言葉を今なら口に出しても許されるだろうか。
臆病で懐疑的なもう一人の自分は、今はいない。
そのことに安堵しながら、フランドールはレミリアの耳元に顔を寄せてその言葉を伝えた。
「ねぇ、無口で優しいお姉さま。一番好きだよ。誰よりも愛してる。だからあなただけは……私を壊して、いいよ」
体を離す間際、自分の背中に触れているレミリアの腕に一瞬力が込められたのをフランドールは感じた、気がした。
暗い話だけど、希望的観測もあるのでバランスがとれているんじゃないかと思いました。