この作品は上海アリス幻樂団様「東方Project」の二次創作です。
紅魔色数遊戯
「・・・暇ね。」
紅魔館。レミリアは呟いた。
「さようでございますか。」
瞬間、従者の咲夜が横に現れる。相変わらずクールな彼女。
「えぇ。何か面白いことはないかしら?」
「面白いこと、ですか。お言葉ですがお嬢様、お嬢様の仰る面白いことというのは大半がトラブルの原因になります。ここは主らしく従者の仕事を手伝うなり事務作業の一つでもされてみてはいかがでしょうか?」
クスリと微笑みながら答えた。対象に、レミリアの顔は曇る。
「あんたに言ったのが間違いだったのかしら・・・」
ため息一つ。薫る風流れるこののどかな昼下がり。しかし、会場の雰囲気は一変することになる。
「お姉さま!!暇ならこれで遊びましょ!!」
勢いよく部屋の扉を開けてきたのは、レミリアの妹、フランドール。彼女の手には、赤い箱が握られている。
「フラン、それは何?」
「UNOよ!!」
UNO。1971年のアメリカで考案された、世界的に愛されているカードゲームである。四つの色、十の数字、その他特殊なカードを使い繰り広げられるUNOは、運も実力も試される、なかなか奥が深いゲームなのだ。
「いいわね、じゃあ三人でやりましょう。」
「美鈴も誘いましょ!!」
「フラン、美鈴は門番の仕事が・・・」
「いいじゃないの!!お客なんてそうそう来ないと思うわ!!」
「うーん・・・」
「お嬢様、確かに警備上不安なのはわかりますが、門の前で堂々とお昼寝されるよりかはましだと存じますわ。」
「そうね。呼んでくるわ。」
レミリアは部屋を出て、門に向かった。
「にしても妹様、このUNOはどちらで?館にありましたっけ。」
「えぇ。この前早苗が遊びに来たでしょう?その時にくれたの!!皆で遊んだら盛り上がるって。」
「なるほど、あの子が。」
「どーもぉ。」
レミリアの横には美鈴。
「案の定寝てたわ。連れてきて正解だったわね。」
「ちょッ!!お嬢様、それは言わない約束では・・・」
レミリアによるカミングアウトに
「ほぉう・・・」
咲夜の目の色が変わった。
「いや、これは仕方なく・・・」
「えぇ。大丈夫よ。」
動揺する美鈴。咲夜は優しい眼差しで方に手を置いた。
「夕飯のおかず一品抜きね。」
「そんなぁぁぁぁっ!?」
こうして部屋に四人が集結した。一同がルールの確認を進める。
◇◇◇◇
「「さーいしょはグー!!じゃーんけーんポン!!」」
レミリアが勝ち、続いて咲夜、フラン、美鈴の順になった。
それぞれに七枚ずつカードがいきわたり、一番最初のカードは、赤の6。
「いくわよ。」
最初に置いたのは、赤の2。
「次が私ですね。」
咲夜は色を変えて黄色の2を置いた。
「次はこれね!!」
フランドールは黄色の8。
「なら私はこれを出します。」
黄色の4。これで一巡した。全員一枚ずつ場に出すことができている。
「二巡目ね。次はこれにするわ。」
黄色の7を重ねた。
続いて、咲夜、フラン・・・とターンが回り、三巡目が終わる。四巡目、レミリアが動きを見せた。
「皆、順当にカードを出せているけど、ここからはそうもいかなくなるわよ。」
「「!?」」
にやりと笑い、レミリアが場に出したのは、青色のカード。禁止のマークが描かれたそのカードは、次の人のターンをスキップすることができる。
「お嬢様っ!?なぜこのような仕打ちを!?この十六夜、何か気に障るようなことでも・・・」
普段からクールな咲夜が絶望の表情を見せた。
「どうか恨まないで頂戴、咲夜。私もね、勝ちにいきたいの。」
「お姉さま・・・咲夜になんて仕打ちを!!」
「フラン、仕方のないことよ、貴女のターンを進めなさい。」
「くっ・・・」
フランが青の3を置き、美鈴にターンが回る。
「・・・咲夜さん、貴女の無念は私が晴らします。」
「美鈴!?」
「ほぉう、この私に何をするというのかしら?」
「お嬢様ッ!!これをッ!!」
美鈴が場に叩きつけたのは、同じく青色で、長方形が二つ重なった記号のカード。端には、+2の文字。
「お嬢様!!このドロー2カードの効果により、貴女はカードを二枚引き、咲夜さんにターンを回さなければならないッ!!」
「くっ・・・仕方ないわね。」
レミリアはカードを二枚引き、咲夜の順番が来た。
「美鈴、感謝するわ。さて、私も前線復帰ね。これを。」
青の4を置いた。
「あははは!!」
フランのターンが来たとき、彼女は高笑いを始めた。
「お姉さま、正しい勝負の引っ搔き回し方を教えてあげるわ!!」
黒いカード。四色で構成された楕円の模様。
「これは!?」
「これはカードの色を変えることができるカードよ!!このカードを使用し、次の色を、黄色に変更するわ!!」
「「何ですって!?」
「ははははは!!さぁ、皆どうする?」
「・・・妹様。」
「・・・美鈴?」
「詰めが甘いですよ。この勝負を引っ掻き回すのは、この紅美鈴ですッ!!いでよ!!ドロー4カード!!」
同じく黒いカードだが、先ほどのドロー2に似ている。四色の長方形が重なったカード。
「またか、美鈴っ!!」
「恨まないでください。これは私の為。このカードの効果はご存じですねッ!?」
「えぇ。色はどうするのかしら?」
「赤(紅)を選びます!!」
このカードは、先ほどのフランの出したカードのように、色を変更することができるという効果の他に、次にターンを迎える相手に問答無用でカードを四枚も引かせることができる代物。しかも、その時点でそのターンを終了させるという強力なカードである。
(美鈴・・・この私を二度も陥れるか。これが運命なの・・・?いや、このカードは確か・・・)
「さぁお嬢様、カードを四枚引くのです!!」
「いや、美鈴。私はまだ諦めない!!」
「お嬢様!?」 「お姉さま!?」
「私はコールするわ!!“チャレンジ“!!」
「くッ!?」
チャレンジ。それは、ドロー4カードを使った人物の次のプレイヤーにだけ与えられた特権。チャレンジをコールされたら、ドロー4を出したプレイヤーは、次のターンの人物にのみ、手札を明かす必要があり、ドロー4以外に場に出すことができたカードが無いのかを確認することができる。
「・・・やはりね、美鈴!!あなたはドロー4以外に出すことのできるカードを持っている!!私の勝ちよ!!」
「な、なぜ・・・」
「私を欺けると思わないことね!!さぁ、チャレンジの効果は知っているでしょう?」
「・・・仕方ない。」
山札から六枚カードを引いた。しかし、このチャレンジは、失敗した場合、コールした者が六枚引くことになっている。レミリアは、この賭けに勝ったのだ。
「さぁ、ゲーム続行よ!!」
赤の4を叩きつけ、再び進んでいく。
「くっ、出せるカードが無い!?」
咲夜のターン。しかし、出せるカードが無い。
「咲夜、そういう時は分かっているわね?」
「えぇ、妹様。この十六夜、カードを一枚引きましょう。」
引いたのは黄色の9。出すことが出来ないので、咲夜のターンは終わる。
「さぁ、次は私ね!!」
赤の5を意気揚々と置いた。
「ねぇ、フラン。本当にそれでいいの?」
「・・・何を言っているのかしら、お姉さま。ハッタリなら効かないわ!!」
鋭い目つきでフランに揺さぶりをかけた。
「・・・かかったわね!!さぁ、カードを二枚引きなさい!!」
「なんでそんな・・・はっ!?」
彼女は気づいたようだ。自身の犯したたった一つのミス。
「気づいたようね。そう、貴女はUNO宣言をしていない!!」
「「そ、そんな・・・」」
「・・・いいの、仕方のないこと。私が忘れていたのが悪いんだから。貴女達が・・・お姉さまの毒牙にかからなくて・・・良かった。」
「「妹様ぁあぁぁぁ!!」」
フランはその場に倒れこみ、美鈴と咲夜がその横でショックを受けている。
「ねぇ、なんで私が悪いみたいな扱いを受けているのかしら!?しかもこんなので死なれちゃ困るわ。」
「もう、お姉さまノリ悪いんだから!!」
「はいはい、次のターンを始めて頂戴。」
九巡目。フランのターン。
「UNOよ!!そして、ターンは逆転する!!」
声高らかにUNOを宣言し、場に出したのは、上向きと下向きの二つの矢印が描かれた黄色のカード。
「このカードの効果で、次は咲夜のターンになるわ!!」
「妹様ッ!?」
「ごめんね、美鈴。でも、貴女のこと、愛しているわ。」
フランは美鈴の首元に唇を重ねた。
「妹様ぁぁぁぁッ!!」
「もう演劇はいいから・・・」
レミリアのツッコミが入り、咲夜にターンが回る。
「美鈴、悲しむことは無いわ。いでよ!!黄色のスキップカード!!」
宣言通り、黄色のスキップカードを叩きつけた。レミリアのターンはスキップされ、美鈴に回る。
「咲夜っ!?私を飛ばすというの!?」
「美鈴は私を助けてくれた。だから今度は私が彼女を助けるんです!!」
「咲夜さん!!」
ターンが逆転して、次に動きを見せたのは十二巡目。
「美鈴!!さっきのお返しをしてやるわ!!」
レミリアがドロー4を叩きつけた。
「色は緑。さぁチャレンジする?」
「いえ、ここは素直に引きます。」
美鈴の手札が四枚増え、次はフランのターン。しかし、彼女に出せるカードはなく、一枚引いた。そして咲夜のターン。
「さぁ、順番はまた逆転しますわ!!」
緑のリバースカードを叩きつけた。
「甘いわ!!あなたもよ!!」
「しまった!?」
咲夜もまた、UNO宣言を忘れ、カードを二枚引いた。
「咲夜!!私が助ける!!青のリバースカード!!」
咲夜のターン。
「妹様!!いでよ、黄色リバース!!」
「「二連続リバース!?」」
「咲夜!!そしてUNOよ!!」
フランが出したのは赤のリバースカード。しかも今度は宣言をしている。
「ありがとうございます、妹様。この十六夜も、UNOです!!」
これにより、フランと咲夜が残りのカードが一枚になった。
「まだ負けてないんだから!!」
「いきますよ妹様!!」
レミリアは一枚引いて、美鈴は赤の9。
「ないっ・・・?」
「私も・・・」
「美鈴・・・まさか貴女に流れが・・・」
なんと、赤の9以降三人が誰もカードを出すことが出来ずに、カードを引いたのだ。
「その通りッ!!この紅美鈴にッ!!神は味方しているッ!!」
「またもっ!?」
フランはまた一枚引いた。
「UNOよ美鈴!!」
咲夜がかろうじてカードを出すも、次の自分のターンでは出せなかった。
美鈴の猛攻により、いよいよ誰が勝つかわからないまま、ターンは進む。そして、運命の時が来た。三十巡も近くなった時。
「まだまだ続きますよ!!」
順番は逆転することなく、
美鈴の攻撃はまだ続いていた。黄色の9。
「また・・・美鈴の追い上げが強い!!」
「さっきまで負けていたのに・・・」
「このままでは負けてしまうわ!!」
再び三人連続でカードを出せないケース。彼女の勢いは止まらない。
しかし、この世には、“盛者必衰”という言葉がある。
「私の手札も減ってきたが・・・いよいよ出せるものがなくなってしまった・・・」
ついに美鈴も出せるカードが無くなった。一枚引いた。
「いや、まだこの私に味方している!!」
その引いた一枚が、場に出せるカードだった。黄色の1。だが、この瞬間から、彼女の勢いは止まる。
「来たわ!! UNO!!」
フランが緑の1を。ついに彼女らにも機会が巡ってきた。美鈴の猛攻は激しかったが、残り三名の手札の枚数に追いつくことは叶わなかったのだ。
「緑の8。UNOよ、美鈴!!」
「緑の5、私もUNOだ。美鈴!!神はもう貴様を見放したようだな!!」
「いやッ!!まだ!!まだだッ!!」
「いいえ、貴女は負けたのよ。その数ではお嬢様にも、妹様にも、私にも、貴女は勝てない。」
「そんなことはあり得ない!!この勝負に勝つのはこの私!!紅美鈴なのだッ!!」
しかし、出せるカードは手札にない。一枚引いても、そのカードは黄色の7。緑の5がおかれた場に出すことは出来ない。
勝者は三人の内の誰かになるだろう。
(くっ、緑も5もない・・・引くしかないのね。でも、まだチャンスがある!!)
(妹様が出せなければ勝てる!!)
(私も・・・危ういわね。でも・・・!!)
フランはカードを引いた。緑の0。
「UNOよ!!まだチャンスがある!!」
喜びを隠さないフラン。瞬間、咲夜の身体が震えだした。
「は、はははははは!!勝者は!!この十六夜ですわ!!」
緑の0の上、咲夜が叩きつけたのは、緑の4。瞬間。咲夜の手札は無くなった。咲夜が勝ったのだ。
「「な、何ぃぃぃっ!?」」
「妹様が緑の1を出した時点で、神はこちら側に歩みを進めていたのです!!美鈴が一枚引いて出せなかった時点で、ほぼ私の勝ち!!神は私に味方したのですわぁぁぁぁっ!!」
「「咲夜ぁぁぁぁぁっ!!」」 「咲夜さぁぁぁん!!」
狂ったような高笑いが部屋に響き渡る。しかし、その高笑いは、一人の少女の声によって止まった。
「本当にそうかしら!?」
扉が開いている。そこにいたのは。
「ぱ、パチュリー様っ!?」
「さっきから上が騒がしいと思って魔法を使って覗いてみれば・・・UNOで盛り上がっちゃって。全員、テンションが異常だったわよ。こういうゲームはね、どんな時も冷静で、いちいち表情や声、行動に表さないポーカーフェイスが勝つのよ。」
「・・・なかなか仰いますね、パチュリー様っ!!なら私と勝負ですわ!!」
「もし私が勝ったら?」
「一週間、なんでも言うこと聞きますわ。お嬢様を揶揄う、でもいいですわ。」
「おい咲夜こら。」
「おあいにく、そんな趣味は無いわ。」
「聞けよ。」
レミリアの声は届いていないようだ。
「なっ・・・さすが動かない大図書館。お嬢様ごとき揶揄っても楽しさを覚えないとは・・・」
「ごときとはなんだごときとは。」
「はっ!!もしや、私を触手の苗床にしたいのですね!!普段からパチュリー様がされているように!!」
突然顔を赤らめ、体をクネクネさせている。
「そんな趣味もないわね。まぁ、勝った時考えるわ。」
パチュリーはため息を一つ。
「かしこまりましたわ。ちなみに、私が勝ったら?」
「あなたの代わりにレミィを揶揄ったり、一回ぐらいは触手に弄ばれてやってもいいわ。」
「・・・聞けって言ってるでしょうが!!」
「「わー!?」」
レミリアのグングニルが二人を襲った。
「確かに私たちも熱くなりすぎたわ。だから二人の勝負で変なこと賭けないで頂戴。」
「かしこまりました、お嬢様。」
「分かったわよ。」
そんなこんなで第二ラウンドはパチュリーと咲夜の一騎打ちとなった。
「ねぇ、パチュリー。」
「ん、どうしたの、フラン。」
「小悪魔はどうしたの?」
「こあならさっき負かしてきたわよ。それこそ、UNOで。」
「こあちゃんまで!!」
「そう絶望することは無いわ美鈴。今頃のんきに本棚の整理をしているでしょう。」
「そうですか、ならよかった・・・」
「第一、貴女たち熱くなりすぎなのよ。特に美鈴、貴女あんなキャラじゃないでしょうに。」
「え、えへへ。」
思い出したのか、美鈴だけでなく、四人が恥ずかしさに顔を赤らめた。
「さ、始めましょう?咲夜。」
「望むところです!!
◇◇◇◇
十数分後
「・・・無様ね。」
「そんな・・・私が・・・負けた?」
パチュリーの圧勝。中盤ごろまでは咲夜が圧倒し、パチュリーが敗れるのも時間の問題だと思われていた。しかし、咲夜がドロー4を仕掛け、パチュリーのチャレンジに敗れた時から、猛攻が始まった。
「あの時・・・私がチャレンジに勝てていれば・・・」
「あ、そうそう。別にあの時、勝とうとしてチャレンジをコールしたのではないわ。負ける想定で進めていたからむしろ奇跡。それよりも、貴女の手札を知る必要があったからあえてチャレンジしたの。手札さえ割れれば貴女の動き方は見当がつく。その通りに動いた結果よ。」
「そんな・・・」
「だから言ったでしょう?さっきみたいにバカ騒ぎしていたら、勝てるものも勝てないって。」
「・・・参りましたわ。何なりとご命令ください。」
「そうね・・・じゃあ。」
パチュリーはUNOのカードを手に微笑んだ。
小悪魔も混ぜて紅魔館の全員で遊びましょう。私も久しぶりに楽しめたから。それでいいでしょう?」
「「わーい!!」」
この後、紅魔館の住人たちは、一晩中UNOで盛り上がったそうな。また、この盛り上がりが高じて、紅魔館主催のUNOの大会が定期的に人里で開かれるほどになったのは、また別のお話。
紅魔色数遊戯
「・・・暇ね。」
紅魔館。レミリアは呟いた。
「さようでございますか。」
瞬間、従者の咲夜が横に現れる。相変わらずクールな彼女。
「えぇ。何か面白いことはないかしら?」
「面白いこと、ですか。お言葉ですがお嬢様、お嬢様の仰る面白いことというのは大半がトラブルの原因になります。ここは主らしく従者の仕事を手伝うなり事務作業の一つでもされてみてはいかがでしょうか?」
クスリと微笑みながら答えた。対象に、レミリアの顔は曇る。
「あんたに言ったのが間違いだったのかしら・・・」
ため息一つ。薫る風流れるこののどかな昼下がり。しかし、会場の雰囲気は一変することになる。
「お姉さま!!暇ならこれで遊びましょ!!」
勢いよく部屋の扉を開けてきたのは、レミリアの妹、フランドール。彼女の手には、赤い箱が握られている。
「フラン、それは何?」
「UNOよ!!」
UNO。1971年のアメリカで考案された、世界的に愛されているカードゲームである。四つの色、十の数字、その他特殊なカードを使い繰り広げられるUNOは、運も実力も試される、なかなか奥が深いゲームなのだ。
「いいわね、じゃあ三人でやりましょう。」
「美鈴も誘いましょ!!」
「フラン、美鈴は門番の仕事が・・・」
「いいじゃないの!!お客なんてそうそう来ないと思うわ!!」
「うーん・・・」
「お嬢様、確かに警備上不安なのはわかりますが、門の前で堂々とお昼寝されるよりかはましだと存じますわ。」
「そうね。呼んでくるわ。」
レミリアは部屋を出て、門に向かった。
「にしても妹様、このUNOはどちらで?館にありましたっけ。」
「えぇ。この前早苗が遊びに来たでしょう?その時にくれたの!!皆で遊んだら盛り上がるって。」
「なるほど、あの子が。」
「どーもぉ。」
レミリアの横には美鈴。
「案の定寝てたわ。連れてきて正解だったわね。」
「ちょッ!!お嬢様、それは言わない約束では・・・」
レミリアによるカミングアウトに
「ほぉう・・・」
咲夜の目の色が変わった。
「いや、これは仕方なく・・・」
「えぇ。大丈夫よ。」
動揺する美鈴。咲夜は優しい眼差しで方に手を置いた。
「夕飯のおかず一品抜きね。」
「そんなぁぁぁぁっ!?」
こうして部屋に四人が集結した。一同がルールの確認を進める。
◇◇◇◇
「「さーいしょはグー!!じゃーんけーんポン!!」」
レミリアが勝ち、続いて咲夜、フラン、美鈴の順になった。
それぞれに七枚ずつカードがいきわたり、一番最初のカードは、赤の6。
「いくわよ。」
最初に置いたのは、赤の2。
「次が私ですね。」
咲夜は色を変えて黄色の2を置いた。
「次はこれね!!」
フランドールは黄色の8。
「なら私はこれを出します。」
黄色の4。これで一巡した。全員一枚ずつ場に出すことができている。
「二巡目ね。次はこれにするわ。」
黄色の7を重ねた。
続いて、咲夜、フラン・・・とターンが回り、三巡目が終わる。四巡目、レミリアが動きを見せた。
「皆、順当にカードを出せているけど、ここからはそうもいかなくなるわよ。」
「「!?」」
にやりと笑い、レミリアが場に出したのは、青色のカード。禁止のマークが描かれたそのカードは、次の人のターンをスキップすることができる。
「お嬢様っ!?なぜこのような仕打ちを!?この十六夜、何か気に障るようなことでも・・・」
普段からクールな咲夜が絶望の表情を見せた。
「どうか恨まないで頂戴、咲夜。私もね、勝ちにいきたいの。」
「お姉さま・・・咲夜になんて仕打ちを!!」
「フラン、仕方のないことよ、貴女のターンを進めなさい。」
「くっ・・・」
フランが青の3を置き、美鈴にターンが回る。
「・・・咲夜さん、貴女の無念は私が晴らします。」
「美鈴!?」
「ほぉう、この私に何をするというのかしら?」
「お嬢様ッ!!これをッ!!」
美鈴が場に叩きつけたのは、同じく青色で、長方形が二つ重なった記号のカード。端には、+2の文字。
「お嬢様!!このドロー2カードの効果により、貴女はカードを二枚引き、咲夜さんにターンを回さなければならないッ!!」
「くっ・・・仕方ないわね。」
レミリアはカードを二枚引き、咲夜の順番が来た。
「美鈴、感謝するわ。さて、私も前線復帰ね。これを。」
青の4を置いた。
「あははは!!」
フランのターンが来たとき、彼女は高笑いを始めた。
「お姉さま、正しい勝負の引っ搔き回し方を教えてあげるわ!!」
黒いカード。四色で構成された楕円の模様。
「これは!?」
「これはカードの色を変えることができるカードよ!!このカードを使用し、次の色を、黄色に変更するわ!!」
「「何ですって!?」
「ははははは!!さぁ、皆どうする?」
「・・・妹様。」
「・・・美鈴?」
「詰めが甘いですよ。この勝負を引っ掻き回すのは、この紅美鈴ですッ!!いでよ!!ドロー4カード!!」
同じく黒いカードだが、先ほどのドロー2に似ている。四色の長方形が重なったカード。
「またか、美鈴っ!!」
「恨まないでください。これは私の為。このカードの効果はご存じですねッ!?」
「えぇ。色はどうするのかしら?」
「赤(紅)を選びます!!」
このカードは、先ほどのフランの出したカードのように、色を変更することができるという効果の他に、次にターンを迎える相手に問答無用でカードを四枚も引かせることができる代物。しかも、その時点でそのターンを終了させるという強力なカードである。
(美鈴・・・この私を二度も陥れるか。これが運命なの・・・?いや、このカードは確か・・・)
「さぁお嬢様、カードを四枚引くのです!!」
「いや、美鈴。私はまだ諦めない!!」
「お嬢様!?」 「お姉さま!?」
「私はコールするわ!!“チャレンジ“!!」
「くッ!?」
チャレンジ。それは、ドロー4カードを使った人物の次のプレイヤーにだけ与えられた特権。チャレンジをコールされたら、ドロー4を出したプレイヤーは、次のターンの人物にのみ、手札を明かす必要があり、ドロー4以外に場に出すことができたカードが無いのかを確認することができる。
「・・・やはりね、美鈴!!あなたはドロー4以外に出すことのできるカードを持っている!!私の勝ちよ!!」
「な、なぜ・・・」
「私を欺けると思わないことね!!さぁ、チャレンジの効果は知っているでしょう?」
「・・・仕方ない。」
山札から六枚カードを引いた。しかし、このチャレンジは、失敗した場合、コールした者が六枚引くことになっている。レミリアは、この賭けに勝ったのだ。
「さぁ、ゲーム続行よ!!」
赤の4を叩きつけ、再び進んでいく。
「くっ、出せるカードが無い!?」
咲夜のターン。しかし、出せるカードが無い。
「咲夜、そういう時は分かっているわね?」
「えぇ、妹様。この十六夜、カードを一枚引きましょう。」
引いたのは黄色の9。出すことが出来ないので、咲夜のターンは終わる。
「さぁ、次は私ね!!」
赤の5を意気揚々と置いた。
「ねぇ、フラン。本当にそれでいいの?」
「・・・何を言っているのかしら、お姉さま。ハッタリなら効かないわ!!」
鋭い目つきでフランに揺さぶりをかけた。
「・・・かかったわね!!さぁ、カードを二枚引きなさい!!」
「なんでそんな・・・はっ!?」
彼女は気づいたようだ。自身の犯したたった一つのミス。
「気づいたようね。そう、貴女はUNO宣言をしていない!!」
「「そ、そんな・・・」」
「・・・いいの、仕方のないこと。私が忘れていたのが悪いんだから。貴女達が・・・お姉さまの毒牙にかからなくて・・・良かった。」
「「妹様ぁあぁぁぁ!!」」
フランはその場に倒れこみ、美鈴と咲夜がその横でショックを受けている。
「ねぇ、なんで私が悪いみたいな扱いを受けているのかしら!?しかもこんなので死なれちゃ困るわ。」
「もう、お姉さまノリ悪いんだから!!」
「はいはい、次のターンを始めて頂戴。」
九巡目。フランのターン。
「UNOよ!!そして、ターンは逆転する!!」
声高らかにUNOを宣言し、場に出したのは、上向きと下向きの二つの矢印が描かれた黄色のカード。
「このカードの効果で、次は咲夜のターンになるわ!!」
「妹様ッ!?」
「ごめんね、美鈴。でも、貴女のこと、愛しているわ。」
フランは美鈴の首元に唇を重ねた。
「妹様ぁぁぁぁッ!!」
「もう演劇はいいから・・・」
レミリアのツッコミが入り、咲夜にターンが回る。
「美鈴、悲しむことは無いわ。いでよ!!黄色のスキップカード!!」
宣言通り、黄色のスキップカードを叩きつけた。レミリアのターンはスキップされ、美鈴に回る。
「咲夜っ!?私を飛ばすというの!?」
「美鈴は私を助けてくれた。だから今度は私が彼女を助けるんです!!」
「咲夜さん!!」
ターンが逆転して、次に動きを見せたのは十二巡目。
「美鈴!!さっきのお返しをしてやるわ!!」
レミリアがドロー4を叩きつけた。
「色は緑。さぁチャレンジする?」
「いえ、ここは素直に引きます。」
美鈴の手札が四枚増え、次はフランのターン。しかし、彼女に出せるカードはなく、一枚引いた。そして咲夜のターン。
「さぁ、順番はまた逆転しますわ!!」
緑のリバースカードを叩きつけた。
「甘いわ!!あなたもよ!!」
「しまった!?」
咲夜もまた、UNO宣言を忘れ、カードを二枚引いた。
「咲夜!!私が助ける!!青のリバースカード!!」
咲夜のターン。
「妹様!!いでよ、黄色リバース!!」
「「二連続リバース!?」」
「咲夜!!そしてUNOよ!!」
フランが出したのは赤のリバースカード。しかも今度は宣言をしている。
「ありがとうございます、妹様。この十六夜も、UNOです!!」
これにより、フランと咲夜が残りのカードが一枚になった。
「まだ負けてないんだから!!」
「いきますよ妹様!!」
レミリアは一枚引いて、美鈴は赤の9。
「ないっ・・・?」
「私も・・・」
「美鈴・・・まさか貴女に流れが・・・」
なんと、赤の9以降三人が誰もカードを出すことが出来ずに、カードを引いたのだ。
「その通りッ!!この紅美鈴にッ!!神は味方しているッ!!」
「またもっ!?」
フランはまた一枚引いた。
「UNOよ美鈴!!」
咲夜がかろうじてカードを出すも、次の自分のターンでは出せなかった。
美鈴の猛攻により、いよいよ誰が勝つかわからないまま、ターンは進む。そして、運命の時が来た。三十巡も近くなった時。
「まだまだ続きますよ!!」
順番は逆転することなく、
美鈴の攻撃はまだ続いていた。黄色の9。
「また・・・美鈴の追い上げが強い!!」
「さっきまで負けていたのに・・・」
「このままでは負けてしまうわ!!」
再び三人連続でカードを出せないケース。彼女の勢いは止まらない。
しかし、この世には、“盛者必衰”という言葉がある。
「私の手札も減ってきたが・・・いよいよ出せるものがなくなってしまった・・・」
ついに美鈴も出せるカードが無くなった。一枚引いた。
「いや、まだこの私に味方している!!」
その引いた一枚が、場に出せるカードだった。黄色の1。だが、この瞬間から、彼女の勢いは止まる。
「来たわ!! UNO!!」
フランが緑の1を。ついに彼女らにも機会が巡ってきた。美鈴の猛攻は激しかったが、残り三名の手札の枚数に追いつくことは叶わなかったのだ。
「緑の8。UNOよ、美鈴!!」
「緑の5、私もUNOだ。美鈴!!神はもう貴様を見放したようだな!!」
「いやッ!!まだ!!まだだッ!!」
「いいえ、貴女は負けたのよ。その数ではお嬢様にも、妹様にも、私にも、貴女は勝てない。」
「そんなことはあり得ない!!この勝負に勝つのはこの私!!紅美鈴なのだッ!!」
しかし、出せるカードは手札にない。一枚引いても、そのカードは黄色の7。緑の5がおかれた場に出すことは出来ない。
勝者は三人の内の誰かになるだろう。
(くっ、緑も5もない・・・引くしかないのね。でも、まだチャンスがある!!)
(妹様が出せなければ勝てる!!)
(私も・・・危ういわね。でも・・・!!)
フランはカードを引いた。緑の0。
「UNOよ!!まだチャンスがある!!」
喜びを隠さないフラン。瞬間、咲夜の身体が震えだした。
「は、はははははは!!勝者は!!この十六夜ですわ!!」
緑の0の上、咲夜が叩きつけたのは、緑の4。瞬間。咲夜の手札は無くなった。咲夜が勝ったのだ。
「「な、何ぃぃぃっ!?」」
「妹様が緑の1を出した時点で、神はこちら側に歩みを進めていたのです!!美鈴が一枚引いて出せなかった時点で、ほぼ私の勝ち!!神は私に味方したのですわぁぁぁぁっ!!」
「「咲夜ぁぁぁぁぁっ!!」」 「咲夜さぁぁぁん!!」
狂ったような高笑いが部屋に響き渡る。しかし、その高笑いは、一人の少女の声によって止まった。
「本当にそうかしら!?」
扉が開いている。そこにいたのは。
「ぱ、パチュリー様っ!?」
「さっきから上が騒がしいと思って魔法を使って覗いてみれば・・・UNOで盛り上がっちゃって。全員、テンションが異常だったわよ。こういうゲームはね、どんな時も冷静で、いちいち表情や声、行動に表さないポーカーフェイスが勝つのよ。」
「・・・なかなか仰いますね、パチュリー様っ!!なら私と勝負ですわ!!」
「もし私が勝ったら?」
「一週間、なんでも言うこと聞きますわ。お嬢様を揶揄う、でもいいですわ。」
「おい咲夜こら。」
「おあいにく、そんな趣味は無いわ。」
「聞けよ。」
レミリアの声は届いていないようだ。
「なっ・・・さすが動かない大図書館。お嬢様ごとき揶揄っても楽しさを覚えないとは・・・」
「ごときとはなんだごときとは。」
「はっ!!もしや、私を触手の苗床にしたいのですね!!普段からパチュリー様がされているように!!」
突然顔を赤らめ、体をクネクネさせている。
「そんな趣味もないわね。まぁ、勝った時考えるわ。」
パチュリーはため息を一つ。
「かしこまりましたわ。ちなみに、私が勝ったら?」
「あなたの代わりにレミィを揶揄ったり、一回ぐらいは触手に弄ばれてやってもいいわ。」
「・・・聞けって言ってるでしょうが!!」
「「わー!?」」
レミリアのグングニルが二人を襲った。
「確かに私たちも熱くなりすぎたわ。だから二人の勝負で変なこと賭けないで頂戴。」
「かしこまりました、お嬢様。」
「分かったわよ。」
そんなこんなで第二ラウンドはパチュリーと咲夜の一騎打ちとなった。
「ねぇ、パチュリー。」
「ん、どうしたの、フラン。」
「小悪魔はどうしたの?」
「こあならさっき負かしてきたわよ。それこそ、UNOで。」
「こあちゃんまで!!」
「そう絶望することは無いわ美鈴。今頃のんきに本棚の整理をしているでしょう。」
「そうですか、ならよかった・・・」
「第一、貴女たち熱くなりすぎなのよ。特に美鈴、貴女あんなキャラじゃないでしょうに。」
「え、えへへ。」
思い出したのか、美鈴だけでなく、四人が恥ずかしさに顔を赤らめた。
「さ、始めましょう?咲夜。」
「望むところです!!
◇◇◇◇
十数分後
「・・・無様ね。」
「そんな・・・私が・・・負けた?」
パチュリーの圧勝。中盤ごろまでは咲夜が圧倒し、パチュリーが敗れるのも時間の問題だと思われていた。しかし、咲夜がドロー4を仕掛け、パチュリーのチャレンジに敗れた時から、猛攻が始まった。
「あの時・・・私がチャレンジに勝てていれば・・・」
「あ、そうそう。別にあの時、勝とうとしてチャレンジをコールしたのではないわ。負ける想定で進めていたからむしろ奇跡。それよりも、貴女の手札を知る必要があったからあえてチャレンジしたの。手札さえ割れれば貴女の動き方は見当がつく。その通りに動いた結果よ。」
「そんな・・・」
「だから言ったでしょう?さっきみたいにバカ騒ぎしていたら、勝てるものも勝てないって。」
「・・・参りましたわ。何なりとご命令ください。」
「そうね・・・じゃあ。」
パチュリーはUNOのカードを手に微笑んだ。
小悪魔も混ぜて紅魔館の全員で遊びましょう。私も久しぶりに楽しめたから。それでいいでしょう?」
「「わーい!!」」
この後、紅魔館の住人たちは、一晩中UNOで盛り上がったそうな。また、この盛り上がりが高じて、紅魔館主催のUNOの大会が定期的に人里で開かれるほどになったのは、また別のお話。
パチュリーがやっぱり強いの好きだわ
それはともかく、久しぶりにUNOがやりたくなるようなお話でした。良かったです
盛り上がっている紅魔館メンバーがかわいらしくてよかったです