ここは日本の何処かにある楽園、幻想郷。外界と隔離された不思議な場所だ。
その結界を管理している博麗神社では今、只ならぬ事態に陥っていた。
これは博麗の巫女とGとの決闘の顛末を描いた文章である。
───────────────────────────────────
この私、博麗 霊夢は今まで様々な異変を解決してきていた。
今まで、相手に恐怖というものを抱いた事はない。そう、今まで。
この瞬間、私は今朝貰い、そして読み終わってすら無い新聞を丸めて構え、
完全な臨戦態勢というものを取っていた。何故かと聞かれればこう即答する。
「ヤツが…………Gが現れた」
恐ろしい、最早それ以外の何者でもない黒光りするヤツは、
日課の掃除を終え、ようやく休憩しようと思った昼下がりにヤツは現れた。
その姿は霊夢は噂にしか聞いていなかった。友人である魔理沙や、
人里での会話を稀に聞くことでしか知らなかった。寧ろ、
虫如きに何故そこまで恐れる必要があるのだろうかと懐疑したほどだ。
だがあの異様なまでの艶、何処ぞの烏天狗にも匹敵するのではという速さ、
どれを取っても恐怖でしか無い。今はヤツを仕留めようとしている…が、
「速いのよね……そしてあの小柄で薄い肉体、あちこち隙間に入られて、うざったいったらありゃしないわよ」
しかしながらGは只それだけの虫では無い。寧ろこれは氷山の一角。
もっと恐ろしい能力を秘めているのだと考えると倒せるかどうかも怪しい。
だがここで仕留めないでどうする。私は博麗の巫女。虫如きに負けていては異変解決の巫女の名が汚れてしまう。
第一、ここで例の新聞記者が来て仕舞えばこの話は新聞のネタにされ、私の評判は地に落ちる。
そうなれば参拝客も来ない、賽銭も集まらない、それどころか山の神社の巫女に笑われる。
それだけは避けなければ……
と、そう考えていた私の電流が走る。
(別にヤツを始末出来なくても追い払えれば問題ないわ。そうよ、何難しい事考えてたのかしら)
根本的な所を考え直し、私は行動に出る。まずは全ての戸と窓を開け、ヤツの逃走経路を確保する。
こうすれば後はヤツを隙間から誘き寄せれば良い…………ただその手段だけが思い付かない。
ヤツの好物を使う?いいや、私は好物を知らない。ならばどうすれば良い?
そう思案している私の体は非常に無防備であった。そして気配に気づかなかったのが不味かった。
不快感を凝縮したような羽音が聴こえた。そして視界に黒い物体が入ってきた、否、飛び込んできた。
その瞬間、私は命の危機というものを感じた。即座に体をうねらせてバク宙をし、畳へと着地した。
今、避けなければどうなっていた?頭をフル回転させて思考を張り巡らせる。
「コイツ……的確に口を狙って来ていた………」
避けなければ口の中にダイレクトイン、正にブルの一撃。そうなれば私は………
いや、考えるのも恐ろしい。にしても人の弱点を理解してそれをピンポイントで狙撃する。
このGは相当の手練れなのかもしれない。今まで何人もの人間を葬ってきたのだ。
「でも………突破口は見えて来たわよっ!!」
ヤツはまた隙間から私の口を狙い飛んでくるだろう。となればするのは一つ。
口に飛び込もうとする隙だらけの黒光りボディに渾身の一撃、文々。新聞を叩きつける。
だがこの作戦は失敗すれば口にヤツが入ってくる。そうなればジ・エンドだ。
捨て身でこの作戦を実行するか?いや、これは最終手段。命を賭けるのは最終手段に取っておこう。
ならば今はどの作戦を使う?どこで聞いた話だか忘れたが、外の世界にはゴ○ジェットという、
Gを始末するのに非常に特化したスプレーがあるらしい。だがそんな便利な物は無い。
いっその事弾幕で倒す?いや、ヤツは相当な知能の持ち主、全て掻い潜り口にホールインワンしようとする。
「………ホールインワン?そうよ!その手が有ったわ!」
私はある作戦を思い付くと、直ぐさま台所へと走り、木で出来た、まだ使って間も無い洗いたての器を持ってきた。
そしてそれを空いていた左手に装備する。作戦はこうだ。ヤツは素早いとは言え、
目で追いつけない程ではない。あの烏天狗よりはよく見れば断然遅かった。だから反応できた。
そしてさっき気が付いた。ヤツは飛んでくる前に少し止まり、ジャンプするのに力を溜める。
その隙を狙って器で封じる。だがこの作戦にはリスクがある。それは近付かなければヤツを封じれない。
それにその隙というのも非常に短く、精々一秒程度。これを外せば私は一巻の終わりである。
だが宙を動くGを叩き落とすよりは十二分に確率がある。そしてこの作戦は成功する自信がある。
持ち前の運。私は自分で言うのもアレだが運がとても良い。ならば作戦が成功するのは必至だ。
「いざ尋常に………勝負!!」
それが最初で最後になるであろうGとの命運を懸けた決戦の開始の合図であった。
Gが背後の箪笥の隙間から出てきたのを瞬時に感じ取り、振り返る。そして助走をつけたGは、
口に狙いを定めて力を溜める。その隙を私は見逃さなかった。器をとんでもない速さでGに叩きつけ、捕獲。
この時の器の速度は幻想郷最速の天狗よりも速かったと、そう思った。
「………やった……のよね。これで、終わった?」
Gは僅かな隙間からでも出てくる。器を全力で押し付けて空気も通れないようにする。
これで諸悪の根源は博麗神社にて封印された…………………が、大切な問題を私は忘れていた。
「これ……………どうしよう」
少しでも隙間を開ければGは抜け出す。だが隙間を開けないとGは倒せない。
(な…何という……二律背反!!!)
不味い、非常に不味い。朝に来た魔理沙はもう随分前に帰った。
この時間帯で確実にやって来るのは誰も居ない。だが気分屋な誰かが来ない限り、このGは始末できない。
先の戦いでほぼ運を使い果たしたようなものだ。これが正に運の尽き、このまま根比べを続けることになるのか……
「お〜い!!霊夢〜!あたいが遊びに来てやったぞ!!」
「!…この声はまさか………チルノ?!」
突如現れたのは霧の湖を中心に活動している氷の妖精、チルノだった。
コイツならGを凍らせて外に放り出すことくらい容易いだろう。それに砕いて仕舞えばヤツは即死。
ここでやって来てくれたのがチルノで無ければどうしようもなかっただろう。
「チルノ!最強のあんたの腕を見込んで頼みたいことがあるわ」
「このさいきょーのあたいに頼みってなんだ!!」
「私が押さえているこの器を、凍らせてくれないかしら」
チルノは最強と言われて煽てられればほとんど何でもやってくれるのが良い所だ。
流石馬鹿というか、チルノというか。ともかく頼みは聞いてくれそうだ。心配する必要は無かった。
「よーし!!じゃあ凍らせるぞ〜!!」
「バッチコーイ!!」
「……………………霊夢!手、離さないと一緒に凍っちゃうぞ?」
はっ!!!!!不味い不味い不味い不味い不味い!!最悪の事態だ!
私はこの手を離さないとチルノに凍らせてもらえないし、手を離せばGは出てしまう。
(なんという………二律背反!!)
私は必死に策を練る。どうすればこの二律背反を回避できるか…………!
よく考えてみれば離しても一瞬ならばヤツは出て来れないはずだ。ならばこうすれば………
「じゃっ、じゃあチルノ、私が手を離したその瞬間に凍らせることは出来るわよね、最強だし」
「勿論出来るぞ!!なんて言ったって、あたいはさいきょーだからな!!」
「よし!なら早速実行するわよ……3……2……1……0!!」
0と言った瞬間に手を離し、手が安全な域まで動かせた時、器は瞬時に氷塊と化した。
そして私は言葉に表せないような喜びを感じ、そして震えた。それは感動から?それとも喜び?
だがその希望は一瞬にして打ち砕かれた。背後から近付いてくるもう一匹の仲間に気が付かなかった。
ナニカが背中に飛びついた感覚を覚え、戦慄した。先程の震えは喜びなんかでは無い。本能が警告していたのだ。
「チルノッ!!今すぐ私の背中に居る黒いのを凍らせて!!」
焦りと感覚に任せたその発想は、チルノに言うには不十分だったと言い終わって気付いた。
そして言い直そうとした時にはもう遅かった。
「よーし!!じゃあ本気出しちゃうぞ!!凍符『パーフェクトフリーズ』!」
「やっ……」
その瞬間、博麗神社境内は極寒の世界へと変わった。もう4月だと言うのにこの状態。
魔理沙が見たら異変だと思い直ぐに冥界へ行ってしまうほどだった。
寒さ対策をしている訳がない霊夢は、チルノの本気の冷気に当てられ凍りつく。
だがこれほどの寒さ、Gは確実に凍って動けなくなる。自身が凍ってしまう前に素早く立ち上がり、
背中のヤツを振り落とし、氷塊諸共窓の外、もう二度と来ないように全力で投げる。
それはある者から見れば流星のように美しい氷だったと言う。そのまま霊夢は倒れ込み、寒さによって気絶した。
「ありゃ、倒れちゃった。ま、あたいは楽しかったから帰るか!!」
そう言いチルノは極寒の博麗神社から出て行く。博麗神社の雪が収まるのは、その二時間後であった。
───────────────────────────────────
「んで、この有り様か。そりゃあ災難だったな、霊夢」
「災難って……レベルじゃ………無い…わよ……ゴホッ」
あれ程の冷気に二時間も当てられた霊夢は案の定風邪を引き、それを魔理沙に看病されていた。
まぁ風邪で済んだのは彼女の豪運のお陰なのか、はたまたそれは偶然だったのか、それは誰にも分からない。
「しかし、その霊夢が投げたヤツは一体何処へ落ちたんだろうな。もしかしたらまだ生きてたりして…なんてな!」
「そんなこと…ある筈ないでしょ………ゴホッ…凍ったら幾らアイツでも…一溜りもないわ……」
後日、山の上の神社でヤツが出てきたのはまた別のお話。
まさか霊夢が投げたあのGの筈はない………とは言い切れないが。
「ま、なんとか追い払えて良かったな!ちなみに私はマスパで消し炭にしたぜ?」
「そ……その手があった……ゴホッゴホッ」
その結界を管理している博麗神社では今、只ならぬ事態に陥っていた。
これは博麗の巫女とGとの決闘の顛末を描いた文章である。
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この私、博麗 霊夢は今まで様々な異変を解決してきていた。
今まで、相手に恐怖というものを抱いた事はない。そう、今まで。
この瞬間、私は今朝貰い、そして読み終わってすら無い新聞を丸めて構え、
完全な臨戦態勢というものを取っていた。何故かと聞かれればこう即答する。
「ヤツが…………Gが現れた」
恐ろしい、最早それ以外の何者でもない黒光りするヤツは、
日課の掃除を終え、ようやく休憩しようと思った昼下がりにヤツは現れた。
その姿は霊夢は噂にしか聞いていなかった。友人である魔理沙や、
人里での会話を稀に聞くことでしか知らなかった。寧ろ、
虫如きに何故そこまで恐れる必要があるのだろうかと懐疑したほどだ。
だがあの異様なまでの艶、何処ぞの烏天狗にも匹敵するのではという速さ、
どれを取っても恐怖でしか無い。今はヤツを仕留めようとしている…が、
「速いのよね……そしてあの小柄で薄い肉体、あちこち隙間に入られて、うざったいったらありゃしないわよ」
しかしながらGは只それだけの虫では無い。寧ろこれは氷山の一角。
もっと恐ろしい能力を秘めているのだと考えると倒せるかどうかも怪しい。
だがここで仕留めないでどうする。私は博麗の巫女。虫如きに負けていては異変解決の巫女の名が汚れてしまう。
第一、ここで例の新聞記者が来て仕舞えばこの話は新聞のネタにされ、私の評判は地に落ちる。
そうなれば参拝客も来ない、賽銭も集まらない、それどころか山の神社の巫女に笑われる。
それだけは避けなければ……
と、そう考えていた私の電流が走る。
(別にヤツを始末出来なくても追い払えれば問題ないわ。そうよ、何難しい事考えてたのかしら)
根本的な所を考え直し、私は行動に出る。まずは全ての戸と窓を開け、ヤツの逃走経路を確保する。
こうすれば後はヤツを隙間から誘き寄せれば良い…………ただその手段だけが思い付かない。
ヤツの好物を使う?いいや、私は好物を知らない。ならばどうすれば良い?
そう思案している私の体は非常に無防備であった。そして気配に気づかなかったのが不味かった。
不快感を凝縮したような羽音が聴こえた。そして視界に黒い物体が入ってきた、否、飛び込んできた。
その瞬間、私は命の危機というものを感じた。即座に体をうねらせてバク宙をし、畳へと着地した。
今、避けなければどうなっていた?頭をフル回転させて思考を張り巡らせる。
「コイツ……的確に口を狙って来ていた………」
避けなければ口の中にダイレクトイン、正にブルの一撃。そうなれば私は………
いや、考えるのも恐ろしい。にしても人の弱点を理解してそれをピンポイントで狙撃する。
このGは相当の手練れなのかもしれない。今まで何人もの人間を葬ってきたのだ。
「でも………突破口は見えて来たわよっ!!」
ヤツはまた隙間から私の口を狙い飛んでくるだろう。となればするのは一つ。
口に飛び込もうとする隙だらけの黒光りボディに渾身の一撃、文々。新聞を叩きつける。
だがこの作戦は失敗すれば口にヤツが入ってくる。そうなればジ・エンドだ。
捨て身でこの作戦を実行するか?いや、これは最終手段。命を賭けるのは最終手段に取っておこう。
ならば今はどの作戦を使う?どこで聞いた話だか忘れたが、外の世界にはゴ○ジェットという、
Gを始末するのに非常に特化したスプレーがあるらしい。だがそんな便利な物は無い。
いっその事弾幕で倒す?いや、ヤツは相当な知能の持ち主、全て掻い潜り口にホールインワンしようとする。
「………ホールインワン?そうよ!その手が有ったわ!」
私はある作戦を思い付くと、直ぐさま台所へと走り、木で出来た、まだ使って間も無い洗いたての器を持ってきた。
そしてそれを空いていた左手に装備する。作戦はこうだ。ヤツは素早いとは言え、
目で追いつけない程ではない。あの烏天狗よりはよく見れば断然遅かった。だから反応できた。
そしてさっき気が付いた。ヤツは飛んでくる前に少し止まり、ジャンプするのに力を溜める。
その隙を狙って器で封じる。だがこの作戦にはリスクがある。それは近付かなければヤツを封じれない。
それにその隙というのも非常に短く、精々一秒程度。これを外せば私は一巻の終わりである。
だが宙を動くGを叩き落とすよりは十二分に確率がある。そしてこの作戦は成功する自信がある。
持ち前の運。私は自分で言うのもアレだが運がとても良い。ならば作戦が成功するのは必至だ。
「いざ尋常に………勝負!!」
それが最初で最後になるであろうGとの命運を懸けた決戦の開始の合図であった。
Gが背後の箪笥の隙間から出てきたのを瞬時に感じ取り、振り返る。そして助走をつけたGは、
口に狙いを定めて力を溜める。その隙を私は見逃さなかった。器をとんでもない速さでGに叩きつけ、捕獲。
この時の器の速度は幻想郷最速の天狗よりも速かったと、そう思った。
「………やった……のよね。これで、終わった?」
Gは僅かな隙間からでも出てくる。器を全力で押し付けて空気も通れないようにする。
これで諸悪の根源は博麗神社にて封印された…………………が、大切な問題を私は忘れていた。
「これ……………どうしよう」
少しでも隙間を開ければGは抜け出す。だが隙間を開けないとGは倒せない。
(な…何という……二律背反!!!)
不味い、非常に不味い。朝に来た魔理沙はもう随分前に帰った。
この時間帯で確実にやって来るのは誰も居ない。だが気分屋な誰かが来ない限り、このGは始末できない。
先の戦いでほぼ運を使い果たしたようなものだ。これが正に運の尽き、このまま根比べを続けることになるのか……
「お〜い!!霊夢〜!あたいが遊びに来てやったぞ!!」
「!…この声はまさか………チルノ?!」
突如現れたのは霧の湖を中心に活動している氷の妖精、チルノだった。
コイツならGを凍らせて外に放り出すことくらい容易いだろう。それに砕いて仕舞えばヤツは即死。
ここでやって来てくれたのがチルノで無ければどうしようもなかっただろう。
「チルノ!最強のあんたの腕を見込んで頼みたいことがあるわ」
「このさいきょーのあたいに頼みってなんだ!!」
「私が押さえているこの器を、凍らせてくれないかしら」
チルノは最強と言われて煽てられればほとんど何でもやってくれるのが良い所だ。
流石馬鹿というか、チルノというか。ともかく頼みは聞いてくれそうだ。心配する必要は無かった。
「よーし!!じゃあ凍らせるぞ〜!!」
「バッチコーイ!!」
「……………………霊夢!手、離さないと一緒に凍っちゃうぞ?」
はっ!!!!!不味い不味い不味い不味い不味い!!最悪の事態だ!
私はこの手を離さないとチルノに凍らせてもらえないし、手を離せばGは出てしまう。
(なんという………二律背反!!)
私は必死に策を練る。どうすればこの二律背反を回避できるか…………!
よく考えてみれば離しても一瞬ならばヤツは出て来れないはずだ。ならばこうすれば………
「じゃっ、じゃあチルノ、私が手を離したその瞬間に凍らせることは出来るわよね、最強だし」
「勿論出来るぞ!!なんて言ったって、あたいはさいきょーだからな!!」
「よし!なら早速実行するわよ……3……2……1……0!!」
0と言った瞬間に手を離し、手が安全な域まで動かせた時、器は瞬時に氷塊と化した。
そして私は言葉に表せないような喜びを感じ、そして震えた。それは感動から?それとも喜び?
だがその希望は一瞬にして打ち砕かれた。背後から近付いてくるもう一匹の仲間に気が付かなかった。
ナニカが背中に飛びついた感覚を覚え、戦慄した。先程の震えは喜びなんかでは無い。本能が警告していたのだ。
「チルノッ!!今すぐ私の背中に居る黒いのを凍らせて!!」
焦りと感覚に任せたその発想は、チルノに言うには不十分だったと言い終わって気付いた。
そして言い直そうとした時にはもう遅かった。
「よーし!!じゃあ本気出しちゃうぞ!!凍符『パーフェクトフリーズ』!」
「やっ……」
その瞬間、博麗神社境内は極寒の世界へと変わった。もう4月だと言うのにこの状態。
魔理沙が見たら異変だと思い直ぐに冥界へ行ってしまうほどだった。
寒さ対策をしている訳がない霊夢は、チルノの本気の冷気に当てられ凍りつく。
だがこれほどの寒さ、Gは確実に凍って動けなくなる。自身が凍ってしまう前に素早く立ち上がり、
背中のヤツを振り落とし、氷塊諸共窓の外、もう二度と来ないように全力で投げる。
それはある者から見れば流星のように美しい氷だったと言う。そのまま霊夢は倒れ込み、寒さによって気絶した。
「ありゃ、倒れちゃった。ま、あたいは楽しかったから帰るか!!」
そう言いチルノは極寒の博麗神社から出て行く。博麗神社の雪が収まるのは、その二時間後であった。
───────────────────────────────────
「んで、この有り様か。そりゃあ災難だったな、霊夢」
「災難って……レベルじゃ………無い…わよ……ゴホッ」
あれ程の冷気に二時間も当てられた霊夢は案の定風邪を引き、それを魔理沙に看病されていた。
まぁ風邪で済んだのは彼女の豪運のお陰なのか、はたまたそれは偶然だったのか、それは誰にも分からない。
「しかし、その霊夢が投げたヤツは一体何処へ落ちたんだろうな。もしかしたらまだ生きてたりして…なんてな!」
「そんなこと…ある筈ないでしょ………ゴホッ…凍ったら幾らアイツでも…一溜りもないわ……」
後日、山の上の神社でヤツが出てきたのはまた別のお話。
まさか霊夢が投げたあのGの筈はない………とは言い切れないが。
「ま、なんとか追い払えて良かったな!ちなみに私はマスパで消し炭にしたぜ?」
「そ……その手があった……ゴホッゴホッ」
霊夢の白熱っぷりがとても楽しかったです
必死さが伝わってきました