お茶を片手にさくらさくら、だなんて口ずさんで居てみれば。
鳥居をくぐって我が親友様のご登場。
幻想郷元最速なんて、謙遜、はたまた、未練なのかは知らないけれど。
参道を、抉るがごとくの超特急滑空と、きたもんで。
白黒魔女の箒が起こすつむじ風とは、こりゃまたとっても凄まじく。
あれよあれよと、舞い散るさくらは、縁側にまで吹き付けなさる。
びゅーびゅー、ひらひら、顔、髪、袴を彩る花びら、口の中まで吹き込んで。
「おかげで私は真っピンクときたもんだ」
湯飲みの中身も花びらいっぱい。
一つ二つなら風流とは言えたけど、こんなの飲んだら、喉につかえて仕方ない。
「おっす、霊夢、どうしたんだ今日は紅白じゃなくて、真っピンクだぜ?」
だぜ? っとか言いつつ、さっぱりきっぱり悪びれる気配すらなく、
白い歯をキランっなんて、輝かせちゃうもんだから。
湯飲みの中身についての、素直に文句を言うのも癪すぎて、
「白と紅まぜたら桃色になるでしょうが、混ざったんじゃないのさっきの突風で」
ため息混じらせ言ってもみれば。
打って変わって、深刻そうなお顔をしなさる白黒魔女さん。
「実はな霊夢、今日はお前に謝らなきゃいけないことがあって来たんだ」
何この落差。白い歯キランとか五秒前のあんたはどこに行ったんだい。
とか魔理沙を相手に、考えちゃっても仕方ない。
真っ直ぐなようでひねくれて、ひねくれていて真っ直ぐさん。
それが私の親友様、魔理沙という人だったりしちゃうのだから。
「ああ、そうなの。何かは知らないけど、突っ立ってないで座ったら? お茶あるよお茶」
「あのな、実はさっき夢を見たんだがな。お前を妊娠させちまったんだ」
「うん?」 何か微妙な事言いだしたよ? なんかおかしいよねそれ色々。
「だからな、私はお前を妊娠させちまったんだ」
「うん、わかったけど、それはまた随分とアクロバティックな夢よねえ」
「ほんとごめんな」
「うん?」
「気にしてないのか?」
「気にするも何も、夢の話しでしょ?」
「ああ、さっき見た夢なんだが」
「別に他人の夢にケチなんか付けないよ私。面と向かって言われると、微妙だけど」
「ほんとか?」
「そこまで気にはしないでしょ普通。
だって夢ならまあ、そういう理不尽で非現実的な事もあるじゃない。
私だってあれだよ。間違って魔理沙殺しちゃった夢見たこと有るし。
でも普通そういう夢は、喋らないよね。夢に見た相手には」
「え、殺したって私をか? あ、やっぱ怒ってるのか霊夢?
だよな、親友にな酷い事したしな……夢とはいえほんと、ごめんな」
「いやいや例えだって。怒ってないけどさ。なんか困っちゃうな今日はちょっと。
あのさ魔理沙、これ冗談とかじゃなくて、本気で謝ってるんだ?」
「ジョークとかじゃなくて私は真剣だぜ!」
真っ直ぐ素直さん。目がマジです。
嘘はいっぱい吐いても、魔理沙は絶対に顔まで作れない奴だし。
こういうお目々で、真剣だぜっと宣うなら、それは、うん、真剣なんだろうなあ。
でも夢の内容で私に謝られるにしても、内容が内容だけに、真剣に謝られるとか、もの凄く微妙だよねえ。
そこをまず、気づいて欲しい気がするんだけど、どうなのこれ魔理沙ねえ?
「私は誰よりも霊夢の事を大切な友達だと思ってるんだ。だから謝りに来たんだぜ」
「うんうん、もうわかったって、許す許す、というか最初から気にしてない言ったよね」
「私って親友失格だよな。自己嫌悪だぜ」
「まあ、そうそう親友ね。私女の子で、魔理沙も女の子、あくまで友達ね友達、だよね?」
「当たり前だろ? やっぱ失格って言いたいのか?」
「いやいや、そうじゃなくてね。あの一応というか、念のためというか、
私女の子で、魔理沙も女の子、と、ちょっとそこの認識だけね、確認したかったかな? というかね。わかるでしょ意味?」
「ああ、わかるぜ。社会的にはそうだけど、もし霊夢がそれでも良いって言うなら、私は責任取るぜ?」
「あの話しちょっと飛んだの今? 意味わからないよ?
いやまあ、ちょっと意味わかった気もするんだけど、あんまわかりたくない雰囲気だったよ?」
「回りから色々言われるだろうけどな。絶対霊夢を守りきってみせるから、安心しろ」
「なんだか私、ますます安心できない感じだよそれ」
「ほんとごめんな、わかってくれるように、順を追って説明から」
「説明? なんの説明?
いやもう私的には、良いんだけどこの話しは終わりでさ。終わりにしようよこの微妙な話し」
「ちゃんと謝りたいから聞いてくれよ。頼むから!」
「……ああ、そう? そんな怒鳴るほどの事なのそれ? じゃあ聞くけど」
「実はな。私が神社に来たらだな。なんだか霊夢の様子がおかしいから、ああこれは悪い霊に取り付かれたんだなと思って、私は霊夢の服を脱がせたんだ」
「あの魔理沙魔理沙」
「なんだ、まだ途中だぜ?」
「うん途中なんだろうねそりゃ。わかるよそれは。つまり夢の説明でしょそれ」
「だぜ」
「別に夢の内容は説明しなくてもいいよ?」
「どうしてだ?」
「いや……どうしてって、ねえ……あんまりこう、友達の口から面と向かって言われたい事じゃないじゃないの。わかるでしょ、ここまで言えば?」
「ああ、もちろんその部分も含めて、どうしてちゃんと安全にしなかったのか、を説明しようと思ってだな。霊夢にわかって貰おうとだな」
「また話し飛んだよねえ絶対今。だから、そういうんじゃなくてさ」
「大丈夫大丈夫、そういう部分は、ぼかして言うからさ」
「なんかそれもっと嫌だわ、なんとなく」
「ん?」
「ん? はむしろ私の方なんだけど、もういいよ。止めようこの話しね」
「でもそれじゃ、私の気が済まないんだ。ちゃんと謝らせてくれよ霊夢」
「いや謝られてる私の気は済んでるから、もう良いって。最初から気にしてないし」
「わかってくれ、けじめなんだ」
「うん、そういうのは、あんたの良い所だと思うし、私も好きな部分でもあるんだけどけどー。けじめ、って魔理沙だけの都合だよね。でしょ?」
「やっぱ自分勝手か私?」
「うん、自分勝手かな、今はね」
「そっかごめんな……嫌いにならないでくれよな、こんな私でも」
「いやだっからさ、深刻に考え過ぎなんだって魔理沙はね。真っ直ぐなのは良いんだけど、たかが夢くらいでねえ。どうでもいいのよそんなの」
「ああ、そうだな。自分勝手と言われて、目が覚めた気分だぜ。ありがとな霊夢」
「改まって礼なんて言わないでよ。私とあんたの付き合いでしょうが。
ほら、こっち座りなさいって、お茶冷めちゃってるよ」
「おうよ、今日も茶菓子な、持って来てやったんだぜ。感謝しろよー」
にこにこ魔女さん、エプロンポケットまさぐれば。
そこから出でたる、笹包み。
あんことお餅の甘い匂い、居ても立っても、居られない。
二人で包みを剥き剥き剥き。
顔を出しませ大福さん。真っ白米粉が、ぱらぱらぱらぱら。
ぱくぱく食べれば、なんとも幸せ、春の午後。
「ねえ魔理沙知ってる? 人間って甘い物食べてるときって、緊張とかストレスが下がったりするらしいよ。
だから甘い物好きな人は、怒ったりし難くて、疲れにくいんだってさ」
「ほお、言われてみればそうかもなあ。今なら何でも許せそうな気がするぜ」
「だよねえ。紅い霧が出まくってても、冬が終わらなくても、神社が壊されても、どうでも良い気がしてくるくらいね」
「あっはっはー、そりゃ無いだろー、霊夢はすぐぶち切れるぜ絶対」
「かもねー、でもあと三個くらい食べれば余裕でスルーできるよ、それくらい」
「じゃあ霊夢に私の一個やるから、ちょっと訊いておくかな一応」
「あ、ありがと、でも訊いておくって何を?
またさっきみたいのは嫌だよ?」
「ああ全然違うって、ああいうヘビーな話しじゃなくてだな。
お前からしたら、そんな事なら、いちいち話さなくてもどうでもいいよ、
とかいうレベルの話しだろうけどな」
「まあ魔理沙って、大ざっぱに見えて、実は変な細かいとこ拘ったりするしねえ」
「ああ、そういうレベルだと思うんだが。一応、親しき仲にも礼儀ありって言うしな。
一言入れておこうと思っただけなんだが、お前の抱き枕にメイド服着せてみても良いか?」
「だき?」
「ああ」
「まくら?」
「ああ」
「私の抱き枕って、魔理沙の家にそれが有って、私の姿をしてると、いうわけ?」
「もちろんな。当たり前だろ。いや巫女装束も良いんだけど、買ってからしばらく経つし、イメチェンしようかとよ。色々考えて、とりあえずメイド服かなとな」
魔理沙さん お前は何を 春の午後。 by 博麗 霊夢
「ああ霊夢、あと出来ればな。猫耳カチューシャ付けたいなと思ってたんだが、いいよな?」
親友が 何か言ってる 春の午後 by 博麗 霊夢
「どうした霊夢? 大福が詰まったか? 頬張りすぎなんだよお前はさー、あっはっはー」
「あ、ごめん、ちょっとあの、心の俳句詠んじゃってただけだから。うんたぶん私大丈夫?」
「大丈夫か霊夢ほんとに? 詰まってないか?」
「うん、あの、詰まった、のかな? 詰まったのかどうか、わからないくらい、なんかこう、口の中から味が消えたてただけだから、平気、平気」
「でさ、巫女装束とメイド服でも、どっちでも良よな? 別に気にしないだろ?」
「あ、あー、うん、なんか、投げやりになっちゃって悪いんだけど、今現在の精神状態的に、もうどうでもいいや、それで、うん、好きにしていいよ?」
「猫耳カチューシャも構わないよな? 精神的に大丈夫そうか?」
「ああ、あのもう犬耳でもウサ耳でもご自由にどうぞ? うん。魔理沙の好きにすればいいよね?」
「まあ、どうでもいい話しだったな、聞くまでも無かったな。親友だもんな」
「う、うん、親友、だよ? だよね? 友達ね? そう思って良いんだよね私ね?」
「当たり前だろ。ほらもう一個大福食えよ。ちなみに私の抱き枕なら、霊夢の好きに着せ替えしてくれて構わないぜ」
「あ、うん、ありがと。大福はすごく嬉しいよ。
でもね魔理沙、私はあんたの抱枕とか持ってないからね」
「そうだったのか? この前、出たの知らないのか? 今なら文文。新聞の契約で貰えるぜ。
でも新聞の通販で、代えの衣装もセットで買うと安くなるから、衣装も欲しいならそっちがお得なんだよな」
「ああ、文の奴がそういう事してたんだ。なんか最近、来ないなと思ってたんだわ……」
「じゃあ霊夢、今から注文するか?」
「いやいや私はいらないよ、あんたの抱き枕は」
「なんでだよ。やっぱなんか怒ってんのか? ほんとはウサ耳がいいのか? メイド服はやめとくか? やっぱ腋が出ないと嫌なんだろほんとは?」
「そうじゃなくて、ぜんぜんそうじゃなくてさ。メイド服とか耳とか腋とか、どうでもいいから、
ちょっと聞いて貰える魔理沙? 私やっと、気づいたんだけどさっきね」
「なんだ?」
「なんと言えば良いかこう。私と魔理沙が考える親友の定義というか定理というものに、
ものすごーい、ギャップ? みたいなのを感じるのよね。感じない魔理沙は?」
「うーん、霊夢が何を言いたいのか、いまいちわからんなあ」
「別に魔理沙がね、なんというか、そういう人だっていうのは、個人それぞれの生き方だし、
私がどうこう言いたい訳じゃないのは、わかって欲しいんだけど。
私がね。考える親友っていうのは、抱き枕が当たり前とかそう言うんじゃないのよね。
いや、魔理沙にそういうのを止めろとか言ってるわけじゃないよ?
それは自由だと思うし、私が思うってだけだからね」
「ああじゃあ霊夢的には恋人以上で抱枕はOKみたいな感じってことなのな? 古風だな」
「こ、古風なの? 古風とかいう問題なのかな、私の問題なのこれ?」
「そりゃそうだろ、今時の恋人なんていったら、抱き枕じゃなくて、本体抱けばいいわけだしな」
「ああ、そういう理屈なんだ。そうなんだろうね、魔理沙的にはね。
うん、なんか納得しちゃったな。そういう意味では古風だわ、たぶん私。
でもそういう魔理沙も、たかが夢で、結構気にしてたじゃない?」
「だってそりゃな、いくら夢だって、そういうのはせめて恋人以上になって、婚約してからだろ。
親友の段階じゃまだ早いよな? それにまだ私ら十代だぜ」
「あー、うん、ずれてるんだけど、魔理沙さん的には、そうなんだろうなーと。と思う。
あとなんか、段階っていうのが凄く気になっちゃったわ。
段階あるんだね、魔理沙的には親友よりまだ上の段階がね」
「あるだろそりゃ?」
「うん、あるんだろうねえ。
でもね、ちょっと言いにくいんだけど、魔理沙に言わないとだめかなやっぱ。
こういうのは早い内にハッキリさせておくべきだと思うし。
その方が二人の人生にとっても良いだろうしね」
「え、なんだ、いきなり改まって、どうした霊夢」
「あのね、良く聞いてね魔理沙。あなたはね、私にとってすごくすごく大事な人だっていうのは、もう言うまでもないし、
それは魔理沙がどういう人で有ろうと変わらないし、ずっと一緒に居たいなと思ってるよ。
魔理沙も私の事、いっぱいいっぱい思ってくれてるの知ってるし、なんだかんだ賽銭ゼロの私が、餓死しないで食いつないでいけてるのは、魔理沙の差し入れのおかげよね。
あなたには感謝の言葉をどれだけ捧げても足りないわ。
だからこそね。魔理沙には、今言っておかなきゃならない。
私としてはもう、魔理沙とは今の時点で最終段階に来てるから、これ以上ステップアップは考えられないのよ」
「え……霊夢、そうだったのか、ああ、OKに決まってるだろ! 最終段階OKだ」
「え」 なんか両手握られちゃいましたよ?
「意外だな。奥手っぽいからなお前さ、私もあんまり強引に行くのはどうかな、とか思ってたんだけど、そうだったのか最終段階だったのかお前も」
「あれ、ちょっと待って魔理沙、なんか、あれれ?」
「ああだから、霊夢は、色々気にするなとか、抱き枕好きにしろとかな、言ってたのな。
うん、私はいつでも良かったんだけどな。早く言ってくれよまったく」
「あれれれ? 待って待って魔理沙、なんか違ってる違ってる」
「おいおい今更、照れる事ないだろ、ほら大福やるからさ、残り全部食えよ霊夢」
「あ、うん、ありがと」
どっさりと、両手一杯の大福ちゃんたちの愛らしい姿に、思わずにんまりしちゃうけれど、あれだよね。なんかとんでもない事が進行してるよねこれ。
「美味いだろこの大福?」
「うん、おいしいおいしい。けどねあの魔理沙、違うよ今のは」
「いいって霊夢、わかってるから、あーでも実際、照れるよな、いざこうなるとな。あー、なんか急に恥ずかしくなってきたぜ。
どうするお前、言われるぞ、式には呼んでねーとか、みんなによ、照れるよなあ。いやあ、じゃ、すぐに役所いってくるからさ。」
「式場? 役所?」
「今更とぼけるなって、かわいい奴だな。三年前から用意してあるんだぜ婚姻届け、いつでも出せるように記載済み、もちろんもちろん、お前の分もな。模写は得意なんだぜ。あ、印鑑だけ借りてくわー」
「あのちょっと魔理沙ー?」
ああ魔理沙 社務所突入 ああ魔理沙
我が両手 大福いっぱい 夢一杯
止めなきゃだけど あんこおいしい
印鑑を 携さう友の あの笑顔
飛び去る空よ あんこおいしい
ああ魔理沙 大変な物 盗んだな
見事盗られり 我が人生よ
ああ、あんこ あんこおいしい ああ、あんこ
純粋に面白かったです。
あぁ、本当に良い。久し振りにSSで笑いました。
とりあえず魔理沙は霊夢の話を理解してあげてwww
こういう風にトントントンと読めるような文体(?)は好きですね。
いやぁ、面白かったです。
二人くっつくと爆笑のすれ違いになるという‥落語の名手が語る『こんにゃく問答』を思わせるような見事な話芸です!
まあ‥霊夢もここは運が無かったって事で、
諦めて魔理沙を嫁に迎えてあげて下さい‥人間諦めが肝心!(大爆笑)
「話」と「話し」の正しい使い分けが出来ていなかったりするのがもったいないです。
自分のような少し細かい人間は、こういった深く考えさせる事をせずに、
会話のテンポで読ませる作品を読んでいる時に誤字を見つけると
「ん?これは…」
と、立ち止まって考えてしまうので、
せっかくの作品のテンポの良さが半減してしまいます。
その他のストーリー、会話のテンポは最高です。個人的には心の俳句の一句目がツボでした。
博霊霊夢→博麗霊夢
書き方が独特でしたが抵抗なく読めました。
霊夢のつっこみ?が秀逸
ご指摘ありがとうございました。名字を修正しました。
なーんか違和感ある、とは感じてたんですが、
言われてみてやっと何が違うのか気づきました。
テンポ良いですねえ。
霊夢のツッコミ&俳句が最高でした。
噛み合わない会話ってあるよね!あるよね!
この、まるで柳の如く霊夢の言葉をさらりさらりと受け流し、噛み砕き、間違った方向へ解釈する魔理沙の脳内構造を是非見せて頂きたく。
非常に笑わせて頂きました、有難う御座います。
>>11氏が言われるように、「話し」が気になった
「話」は名詞形→話を聞く 話がかみ合わない 話にならない
「話し」は動詞形→話し合う 話し方 話し言葉
霊夢饅頭で…目を覚まwww
……ですよね?