妖怪の山の麓にある森の中を、ナズーリンが愛用のロッドを持ちながら歩いていた。
普段から宝探しの為に外を出歩いているので、それ自体は珍しい事でも何でもない。
しかし、今日は何故か聖白蓮も同行している。
「あー、聖。物珍しいのは分かるんだが、あまり離れないようにしてくれないかな」
興味深そうに辺りを見回している白蓮に対し、不安になったナズーリンが声を掛けた。
白蓮を心配して言っている訳ではなく、はぐれたりでもして、後で村紗達にうるさく言われるのを避けるためだ。
「あ…申し訳ありません。珍しくて、つい…」
少しはしゃぎ気味になっていた事を恥ずかしく思いながら、開いていた距離を縮める。
その様子を感じ取って一安心すると、ナズーリンは再びロッドをかざして宝探しを始めた。
こうして白蓮が着いてくる事になった経緯を思い出しながら──
事の発端は昼食が終わった後に遡る。
いつものように宝探しに出かけようとしていたナズーリンに、白蓮が声を掛けてきたのである。
「あの…ナズーリン。私も一緒に行っても良いでしょうか?」
その言葉を聞いた時、ナズーリンは一瞬何を言っているのか理解できなかった。
白蓮から話しかけてくる事自体が珍しいのに、その上に宝探しへ着いて行きたいと言っているのだ。
確かに同じ場所に暮らしているし、封印される前から面識はあるが、二人はそれほど親しい訳でもない。
それは避けている訳でも嫌っている訳でもなく、ただ話す機会が少ないと言うだけなのだが、
そんな間柄だと言う事もあって、ナズーリンもどうしたものかと戸惑っていた。
「え…着いて、って、一体何に?」
何かの聞き間違いかもしれない、という淡い期待を込めながら、念の為に尋ね返す。
「ですから、その…私も、宝探しに行ってみたいな、と…」
少し恥ずかしそうにしながら、白蓮がはっきりと答えた。
どうやら聞き間違いではなかったようで、ナズーリンは頭を抱えてしまう。
別に同行する事自体は構わないのだが、なんの目的があるのだろうか。
「聖も物好きだね…別に良いんだけど、面白い事なんてないと思うよ」
目的は分からなかった為、ただ興味本位で言っているだけだろうと思っていたが、
真剣そうな面持ちの白蓮を見て考えを改めて、着いて来る事を了承する。
興味本位で言っているだけなら断るつもりだったのだが、そういう訳ではなさそうだ。
「本当ですか?それじゃあ、よろしくお願いしますね」
断られるかも知れないと不安に思っていた白蓮は、それを聞いて嬉しそうに言った。
「…で、この事は御主人様達には伝えたのかい?」
すぐにでも出発しそうな様子の白蓮を見て、念の為に確認する。
何も言わずに外出でもしようものなら、寺は大騒ぎになるのは間違いないだろう。
「あ、そうでした。言ってきますので、少し待っててくださいね」
「大事な事なんだから、忘れないで欲しいな…」
どうやらすっかり忘れていたようで、少し慌て気味に出掛ける事を伝えに行く。
飽きれながらそう言って、待ってる間に予定を練り直していた。
「元から危険な場所には行かないが…聖なら、ちょっとやそっとでどうにかなる事もないか…」
しかし考えてみれば、聖はナズーリンより遥かに強いので、多少の危険はものともしないだろう。
ならば別に、そこまで気を遣わず予定通りで問題ない、と結論付けた。
「怪我にだけ注意しておけば、問題もないだろう」
そんな事を考えながら待っていると、大して時間も掛からない内に白蓮が戻ってきた。
もっと掛かると思っていたナズーリンは少し驚きながら、どうだったのか尋ねる。
「おかえり。許可は出たのかい?」
「えぇ、ナズーリンが一緒なら大丈夫だと、星が…」
どうやら寅丸に確認を取りに行ったらしく、それなら時間が掛からないのも納得できた。
白蓮が一人で出かけるのなら反対しただろうが、寅丸はナズーリンを信頼し切っているので、
そのナズーリンが一緒なら何の心配も要らないと判断したのだろう。
互いの実力差を考えれば、守る側というよりは守られる側なのだが、深くは聞かずに出発する事にした。
寅丸が許可を出したのなら、村紗や一輪も納得するはずだからだ。
「…少し不安ではあるが、まぁ問題はないか。なら、行くとしよう」
「はい、行きましょう!」
ようやく出発となり、ナズーリンが寺を後にすると、その後を追って楽しそうに白蓮も続くのだった。
歩きながら出かける前の出来事を思い出し終えると、ナズーリンはペンデュラムを使って宝の位置を確認した。
すると程なくして、目当ての物がすぐ近くにある事を知らせてくる。
「む…どうやら、目的地はこの近くのようだ」
それを聞いて、いつの間にか近付いてきていた白蓮が、ペンデュラムを覗き込みながら嬉しそうに言った。
「そうなんですか?楽しみですね」
「あまり期待はしない方が良いよ、基本的にガラクタの方が多い。まぁ、とりあえず行ってみようか」
楽しみにしている白蓮に対し、ナズーリンがそう言いながら歩き出す。
宝の場所は分かっても、その宝がどんな物なのかまでは分からない。
なので、過度な期待はしないようにしているのだ。
「この辺りだな…聖、少し下がっていてくれ」
「はい、分かりました」
目的地に到着すると、辺りを見回して安全を確認してから宝を掘り出す準備をする。
何が起こるか分からないので、白蓮を下がらせておくと、ロッドを構えた。
「さて、何が出てくるか…棒符『ビジーロッド』!」
スペルカードを発動すると、ロッドから放たれた弾幕が地面を掘り起こして行く。
普段はこのような事はしていないのだが、せっかく白蓮がいるのだからと趣向を凝らしたのである。
「わぁ…こんな事も出来るんですね、凄いです」
それを見た白蓮は少し驚いて、ぱちぱち、と拍手をしながらナズーリンに言った。
多少なりとも楽しんでもらえた事に安心しながら、掘り当てたお宝が何だったのか確認する。
「またこれか…まぁ、売れるだけマシではあるが」
掘り起こされた物の中からそれを見つけると、それを観察して宝の正体を特定する。
白蓮も慌てて駆け寄ると、後ろから覗き込んでナズーリンに尋ねた。
「変わった石ですね…これが、ナズーリンの言っていた?」
「あぁ、恐らくね。古銭と呼ばれるものだよ」
白蓮の問いに答えながら、部下のネズミ達に掘り出した古銭を集めさせる。
物自体はそこまで珍しくはない古銭だが、人里の店に買い取って貰える場所があるので、
まったく価値のない品物と言うわけでもない。
その店の店主は変わり者なのか変人なのか、こういった古い品を多く取り扱っていた。。
「古銭…銭という事は、お金でしょうか?今でも使えるんですか?」
「さすがに使えはしないよ、そうでなければ古銭なんて言われないさ…
換金できる事を考えれば、使えると言っても間違いじゃないがね」
違いがよく分からずに尋ねてくる白蓮に、ナズーリンがそう解説する。
買出しに行く事もほとんどなく、経済面は主にナズーリンが管理している為、
金銭に関する知識はあっても実物を見た事は少ないのだ。
「なるほど…だから、宝物なんですね」
その説明で納得したように頷きながら、古銭をまじまじと観察する。
珍しくない品であっても、初めて見た物であれば珍しいのも無理はない。
「そういう事だね…それじゃあ、次に向かうとしようか」
「あ、はい。分かりました、行きましょう」
一通り古銭の回収を終えた事を確認して、ナズーリンが再び宝の場所を探し始める。
白蓮も、次はどんな物が見つかるのか期待しながら、それが終わるのを待っていた。
次の目的地を目指して歩いている最中に、ナズーリンが聖に話し掛ける。
「そういえば聖は、どうして私に着いて来るなんて言ったんだい?」
出発した時からずっと疑問に思っていた事を、改めて尋ねた。
普段からあまり話す事もなく、接点もあまりない自分と一緒にいても、
白蓮にとって楽しいとは思えなかったし、何の得があるのか分からかったからだ。
「あ、えぇと…それはその。あまり、二人でお話した事がないでしょう?」
本人もそんな現状を自覚していたようで、少し躊躇いながら理由を話し始める。
「あぁ…まぁ、そうだね」
今までの生活を思い返しながら、ナズーリンも頷いた。
確かに同じ屋根の下で暮らしてはいるが、部屋は離れていて家にいない事も多いため、
あまり外に出る機会のない白蓮と会う事は少なかった。
仮に家にいてもナズーリンは寅丸についているか、一人でいる事がほとんどなので、
白蓮どころか他の面々ともあまり交流はないのである。
「ですから、これを機に少しでも仲良くなれたら良いな、と思ったんです。
封印される前の頃より、何と言うか…声を掛けやすくなったように感じたので…」
気を悪くさせないかと不安そうにしながら、白蓮は理由を説明した。
確かにあの頃は今ほど平和でもなく、寅丸の監視をする事で手一杯だった為、
いつも気を張っていて話し掛けづらかったと言われてしまっても仕方ないだろう。
寅丸が妖怪であるという事を気付かれないよう、ナズーリンなりに必死だったのだ。
「…なるほど…物好きだな、聖は。私より、他の連中を構ってやった方が喜ばれるんじゃないか?」
素直に仲良くなりたいと言われて、照れているのを隠すように素っ気無く言い返した。
だが実際のところ、ナズーリンも多少はそんな風に考えているのも確かである。
寅丸以外には友好的でなく、積極的に関わる事も避けていたのだから当然だ。
「そんな事はありません。私はもっと、ナズーリンと仲良くなりたいんです。
私にとって、皆は家族も同然ですから…それは勿論、貴方だって例外じゃありません。
だから私はもっと貴方の事を知りたいと思うし、楽しい事を分かち合いたいと思います」
真面目な表情で、真っ直ぐにナズーリンを見つめながら白蓮は言葉を紡いでいく。
自分は気にした事もなかったが、白蓮はずっと仲良くなるきっかけはないかと、考えていたのだろう。
何故、自分の為にそこまで真剣になれるのか…それは考えるまでもなく、家族だからだ。
「家族……」
白蓮の言葉を聞いて、小さな声でぽつりとそう呟いた。
「…迷惑だと思われるかも知れませんが…それでも私は、そうでありたいと思うんです。
それに私だけでなく、村紗達とも仲良くして欲しいと思います。…そういうのは、嫌…ですか?」
自分の一方的な思いを押し付けている事もあり、先程の態度とは打って変わって、不安そうに尋ねてくる。
間違いなく本心から言っている事ではあるが、相手が嫌がるような事はしたくないという思いも強いようだ。
「ん、あー…いや、別に、そんな事は…」
「本当ですか?」
相手が本心からぶつかってきた以上、本心で答えるのが筋だとは思っていても、
実際に相手へ伝えようとするのは、かなりの度胸と勇気が必要だ。
ナズーリンも何とか自分の意思だけでも伝えようとするが、照れくささもあって言い切る事は出来なかった。
それでもその想いを汲み取ってもらえたようで、少し驚きながら白蓮が尋ねてくる。
「あ、あぁ…こんな時に嘘はつかないさ。…家族というのも、悪くは無さそうだ」
「…良かった…」
その答えを聞いて嬉しそうに微笑みながら、安心した様子で白蓮は胸を撫で下ろした。
そんな様子を見たナズーリンは、自分の事をそこまで考えていた事に感謝すると同時に、お人好し過ぎるとも思った。
「…まぁ、それが良い所か」
少し問題ではあるが、それ位なら自分や村紗達で十分補う事は可能である。
なら自分達がしっかりすれば良い、そんな風に考え直す。
「どうかしましたか?」
「いや…何でもない。そろそろ次の場所に向かおう」
嬉しそうに微笑みながら尋ねてくる白蓮に、何でもない風を装ってナズーリンが歩き出した。
不思議そうに首をかしげながらも、それ以上特に追求する事はせずに後へ続く。
その後の宝探し中も、相変わらずナズーリンが積極的に話しかけてくる事はなかったが、
出発した時よりも雰囲気が柔らかくなっているのを感じて、白蓮は終始嬉しそうにしていた。
普段から宝探しの為に外を出歩いているので、それ自体は珍しい事でも何でもない。
しかし、今日は何故か聖白蓮も同行している。
「あー、聖。物珍しいのは分かるんだが、あまり離れないようにしてくれないかな」
興味深そうに辺りを見回している白蓮に対し、不安になったナズーリンが声を掛けた。
白蓮を心配して言っている訳ではなく、はぐれたりでもして、後で村紗達にうるさく言われるのを避けるためだ。
「あ…申し訳ありません。珍しくて、つい…」
少しはしゃぎ気味になっていた事を恥ずかしく思いながら、開いていた距離を縮める。
その様子を感じ取って一安心すると、ナズーリンは再びロッドをかざして宝探しを始めた。
こうして白蓮が着いてくる事になった経緯を思い出しながら──
事の発端は昼食が終わった後に遡る。
いつものように宝探しに出かけようとしていたナズーリンに、白蓮が声を掛けてきたのである。
「あの…ナズーリン。私も一緒に行っても良いでしょうか?」
その言葉を聞いた時、ナズーリンは一瞬何を言っているのか理解できなかった。
白蓮から話しかけてくる事自体が珍しいのに、その上に宝探しへ着いて行きたいと言っているのだ。
確かに同じ場所に暮らしているし、封印される前から面識はあるが、二人はそれほど親しい訳でもない。
それは避けている訳でも嫌っている訳でもなく、ただ話す機会が少ないと言うだけなのだが、
そんな間柄だと言う事もあって、ナズーリンもどうしたものかと戸惑っていた。
「え…着いて、って、一体何に?」
何かの聞き間違いかもしれない、という淡い期待を込めながら、念の為に尋ね返す。
「ですから、その…私も、宝探しに行ってみたいな、と…」
少し恥ずかしそうにしながら、白蓮がはっきりと答えた。
どうやら聞き間違いではなかったようで、ナズーリンは頭を抱えてしまう。
別に同行する事自体は構わないのだが、なんの目的があるのだろうか。
「聖も物好きだね…別に良いんだけど、面白い事なんてないと思うよ」
目的は分からなかった為、ただ興味本位で言っているだけだろうと思っていたが、
真剣そうな面持ちの白蓮を見て考えを改めて、着いて来る事を了承する。
興味本位で言っているだけなら断るつもりだったのだが、そういう訳ではなさそうだ。
「本当ですか?それじゃあ、よろしくお願いしますね」
断られるかも知れないと不安に思っていた白蓮は、それを聞いて嬉しそうに言った。
「…で、この事は御主人様達には伝えたのかい?」
すぐにでも出発しそうな様子の白蓮を見て、念の為に確認する。
何も言わずに外出でもしようものなら、寺は大騒ぎになるのは間違いないだろう。
「あ、そうでした。言ってきますので、少し待っててくださいね」
「大事な事なんだから、忘れないで欲しいな…」
どうやらすっかり忘れていたようで、少し慌て気味に出掛ける事を伝えに行く。
飽きれながらそう言って、待ってる間に予定を練り直していた。
「元から危険な場所には行かないが…聖なら、ちょっとやそっとでどうにかなる事もないか…」
しかし考えてみれば、聖はナズーリンより遥かに強いので、多少の危険はものともしないだろう。
ならば別に、そこまで気を遣わず予定通りで問題ない、と結論付けた。
「怪我にだけ注意しておけば、問題もないだろう」
そんな事を考えながら待っていると、大して時間も掛からない内に白蓮が戻ってきた。
もっと掛かると思っていたナズーリンは少し驚きながら、どうだったのか尋ねる。
「おかえり。許可は出たのかい?」
「えぇ、ナズーリンが一緒なら大丈夫だと、星が…」
どうやら寅丸に確認を取りに行ったらしく、それなら時間が掛からないのも納得できた。
白蓮が一人で出かけるのなら反対しただろうが、寅丸はナズーリンを信頼し切っているので、
そのナズーリンが一緒なら何の心配も要らないと判断したのだろう。
互いの実力差を考えれば、守る側というよりは守られる側なのだが、深くは聞かずに出発する事にした。
寅丸が許可を出したのなら、村紗や一輪も納得するはずだからだ。
「…少し不安ではあるが、まぁ問題はないか。なら、行くとしよう」
「はい、行きましょう!」
ようやく出発となり、ナズーリンが寺を後にすると、その後を追って楽しそうに白蓮も続くのだった。
歩きながら出かける前の出来事を思い出し終えると、ナズーリンはペンデュラムを使って宝の位置を確認した。
すると程なくして、目当ての物がすぐ近くにある事を知らせてくる。
「む…どうやら、目的地はこの近くのようだ」
それを聞いて、いつの間にか近付いてきていた白蓮が、ペンデュラムを覗き込みながら嬉しそうに言った。
「そうなんですか?楽しみですね」
「あまり期待はしない方が良いよ、基本的にガラクタの方が多い。まぁ、とりあえず行ってみようか」
楽しみにしている白蓮に対し、ナズーリンがそう言いながら歩き出す。
宝の場所は分かっても、その宝がどんな物なのかまでは分からない。
なので、過度な期待はしないようにしているのだ。
「この辺りだな…聖、少し下がっていてくれ」
「はい、分かりました」
目的地に到着すると、辺りを見回して安全を確認してから宝を掘り出す準備をする。
何が起こるか分からないので、白蓮を下がらせておくと、ロッドを構えた。
「さて、何が出てくるか…棒符『ビジーロッド』!」
スペルカードを発動すると、ロッドから放たれた弾幕が地面を掘り起こして行く。
普段はこのような事はしていないのだが、せっかく白蓮がいるのだからと趣向を凝らしたのである。
「わぁ…こんな事も出来るんですね、凄いです」
それを見た白蓮は少し驚いて、ぱちぱち、と拍手をしながらナズーリンに言った。
多少なりとも楽しんでもらえた事に安心しながら、掘り当てたお宝が何だったのか確認する。
「またこれか…まぁ、売れるだけマシではあるが」
掘り起こされた物の中からそれを見つけると、それを観察して宝の正体を特定する。
白蓮も慌てて駆け寄ると、後ろから覗き込んでナズーリンに尋ねた。
「変わった石ですね…これが、ナズーリンの言っていた?」
「あぁ、恐らくね。古銭と呼ばれるものだよ」
白蓮の問いに答えながら、部下のネズミ達に掘り出した古銭を集めさせる。
物自体はそこまで珍しくはない古銭だが、人里の店に買い取って貰える場所があるので、
まったく価値のない品物と言うわけでもない。
その店の店主は変わり者なのか変人なのか、こういった古い品を多く取り扱っていた。。
「古銭…銭という事は、お金でしょうか?今でも使えるんですか?」
「さすがに使えはしないよ、そうでなければ古銭なんて言われないさ…
換金できる事を考えれば、使えると言っても間違いじゃないがね」
違いがよく分からずに尋ねてくる白蓮に、ナズーリンがそう解説する。
買出しに行く事もほとんどなく、経済面は主にナズーリンが管理している為、
金銭に関する知識はあっても実物を見た事は少ないのだ。
「なるほど…だから、宝物なんですね」
その説明で納得したように頷きながら、古銭をまじまじと観察する。
珍しくない品であっても、初めて見た物であれば珍しいのも無理はない。
「そういう事だね…それじゃあ、次に向かうとしようか」
「あ、はい。分かりました、行きましょう」
一通り古銭の回収を終えた事を確認して、ナズーリンが再び宝の場所を探し始める。
白蓮も、次はどんな物が見つかるのか期待しながら、それが終わるのを待っていた。
次の目的地を目指して歩いている最中に、ナズーリンが聖に話し掛ける。
「そういえば聖は、どうして私に着いて来るなんて言ったんだい?」
出発した時からずっと疑問に思っていた事を、改めて尋ねた。
普段からあまり話す事もなく、接点もあまりない自分と一緒にいても、
白蓮にとって楽しいとは思えなかったし、何の得があるのか分からかったからだ。
「あ、えぇと…それはその。あまり、二人でお話した事がないでしょう?」
本人もそんな現状を自覚していたようで、少し躊躇いながら理由を話し始める。
「あぁ…まぁ、そうだね」
今までの生活を思い返しながら、ナズーリンも頷いた。
確かに同じ屋根の下で暮らしてはいるが、部屋は離れていて家にいない事も多いため、
あまり外に出る機会のない白蓮と会う事は少なかった。
仮に家にいてもナズーリンは寅丸についているか、一人でいる事がほとんどなので、
白蓮どころか他の面々ともあまり交流はないのである。
「ですから、これを機に少しでも仲良くなれたら良いな、と思ったんです。
封印される前の頃より、何と言うか…声を掛けやすくなったように感じたので…」
気を悪くさせないかと不安そうにしながら、白蓮は理由を説明した。
確かにあの頃は今ほど平和でもなく、寅丸の監視をする事で手一杯だった為、
いつも気を張っていて話し掛けづらかったと言われてしまっても仕方ないだろう。
寅丸が妖怪であるという事を気付かれないよう、ナズーリンなりに必死だったのだ。
「…なるほど…物好きだな、聖は。私より、他の連中を構ってやった方が喜ばれるんじゃないか?」
素直に仲良くなりたいと言われて、照れているのを隠すように素っ気無く言い返した。
だが実際のところ、ナズーリンも多少はそんな風に考えているのも確かである。
寅丸以外には友好的でなく、積極的に関わる事も避けていたのだから当然だ。
「そんな事はありません。私はもっと、ナズーリンと仲良くなりたいんです。
私にとって、皆は家族も同然ですから…それは勿論、貴方だって例外じゃありません。
だから私はもっと貴方の事を知りたいと思うし、楽しい事を分かち合いたいと思います」
真面目な表情で、真っ直ぐにナズーリンを見つめながら白蓮は言葉を紡いでいく。
自分は気にした事もなかったが、白蓮はずっと仲良くなるきっかけはないかと、考えていたのだろう。
何故、自分の為にそこまで真剣になれるのか…それは考えるまでもなく、家族だからだ。
「家族……」
白蓮の言葉を聞いて、小さな声でぽつりとそう呟いた。
「…迷惑だと思われるかも知れませんが…それでも私は、そうでありたいと思うんです。
それに私だけでなく、村紗達とも仲良くして欲しいと思います。…そういうのは、嫌…ですか?」
自分の一方的な思いを押し付けている事もあり、先程の態度とは打って変わって、不安そうに尋ねてくる。
間違いなく本心から言っている事ではあるが、相手が嫌がるような事はしたくないという思いも強いようだ。
「ん、あー…いや、別に、そんな事は…」
「本当ですか?」
相手が本心からぶつかってきた以上、本心で答えるのが筋だとは思っていても、
実際に相手へ伝えようとするのは、かなりの度胸と勇気が必要だ。
ナズーリンも何とか自分の意思だけでも伝えようとするが、照れくささもあって言い切る事は出来なかった。
それでもその想いを汲み取ってもらえたようで、少し驚きながら白蓮が尋ねてくる。
「あ、あぁ…こんな時に嘘はつかないさ。…家族というのも、悪くは無さそうだ」
「…良かった…」
その答えを聞いて嬉しそうに微笑みながら、安心した様子で白蓮は胸を撫で下ろした。
そんな様子を見たナズーリンは、自分の事をそこまで考えていた事に感謝すると同時に、お人好し過ぎるとも思った。
「…まぁ、それが良い所か」
少し問題ではあるが、それ位なら自分や村紗達で十分補う事は可能である。
なら自分達がしっかりすれば良い、そんな風に考え直す。
「どうかしましたか?」
「いや…何でもない。そろそろ次の場所に向かおう」
嬉しそうに微笑みながら尋ねてくる白蓮に、何でもない風を装ってナズーリンが歩き出した。
不思議そうに首をかしげながらも、それ以上特に追求する事はせずに後へ続く。
その後の宝探し中も、相変わらずナズーリンが積極的に話しかけてくる事はなかったが、
出発した時よりも雰囲気が柔らかくなっているのを感じて、白蓮は終始嬉しそうにしていた。
命蓮寺のメンバーは他の勢力と違って「家族」のイメージが強いですよね。
そんな中の聖ナズはとても新鮮で暖かかったです。
確かに寺同士なのに新鮮な組み合わせに感じてしまった
少ないなら、布教すればいいじゃない!
まぁでも仲良くしてほしいですよね~
この後の二人の様子が気になります
というか、ナズーリンはご主人以外とはそんなに親しくなさそう。
親しくないというか、わりと孤高を尊ぶ感じでしょうかね。
新しい組み合わせを教えてもらいました。
聖とナズーリンの交流を考えた時に、
聖が「家族だから」という理由でナズーリンに近づいていくという
ストーリーは納得できました。
あと、よくあるのは、ナズーリンは星が好き、星は聖が好きでナズーリンが苦悩するというストーリーですよね。
あとは...聖が天然キャラでナズーリンがその後始末に追われるというギャグストーリーとかでしょうか。
あの、今思いついたんですけど、一次設定ではナズーリンもナズーリンが率いているねずみ達も人肉が大好物じゃないですか。
食欲を抑えきれないナズーリンファミリーを聖がなんとかする っていう話もありじゃないですか。既出?既出じゃなさそうだけど、だれかこのネタ使ってくれないかな...