Coolier - 新生・東方創想話

「博麗」~東方二色蝶シリーズ~

2010/06/07 01:18:49
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人里から隔離されたが存在する、人の存在から忘れ去られ、
また理想郷と勝手に名前を付ける輩もいるのは事実。
100歩譲ってもこんな所に理想郷と呼ばれる物はない。
なにせ、ここは幻想郷だぜ?。
第20代目・博麗霊夢


 人里から隔離された世界、忘れられた地、幻想郷。
 その忘れ去られた地に神社は存在する。
 博麗神社。
 今日もここから始まるのだが…
 「うbぁ…」
 おやおや、日もたかだかにあがっているのに、畳にだれている巫女さんがいますよ。
 「そんなこと言っている暇があったらぁ…水をくれぃ……マジに…」

 時は変わって昼下がりの博麗神社。
 そこに博麗の巫女さんは縁側に倒れています。
 「くそ~、飲み過ぎたなぁ。魔理沙のやつよく帰ってったな~…」
 『…みたい~…』
 絶賛二日酔い中の霊夢の耳にはエコーがかった声が入ってきた。
 縁側の近くにおいてあったヘッドセットだ。
 このヘッドセットは幻想郷に流れる情報無線を介して霊夢に届く。
 『…・で…れて…』
 「なんだぁ?今は情報より水の方がほしいぞ~…」
 のそりのそりとカタツムリの要領でヘッドセットを求めていく。
 やっとの事でヘッドセットを手に入れ、装着する。

20代目・博麗霊夢。
 この幻想郷で何時の日か産声を響かせ、そして育っていった。
 名前を「華夢(かみゅ)」と名付けられた。
 その名の通り華夢は妖怪・妖精・霊・鬼、この幻想郷に存在する住民達を華やかに染めていった。
 とりわけこの20代目には変わったことが二つある。
 一つはある代の博麗の血が混じっていること。
 もう一つは情報屋としての顔だった。
 本来、博麗霊夢と名を受け継ぐ者は同じ血が混ざることはほとんどと言っていいほど無い。
 似たり寄ったりな性格ではあるが名前を受け継ぐ者に同じ血が混じることは無いと思われていた矢先の出来事だった。
 そもそも狭いこの幻想郷では一瞬にして広まったが、広まっただけで終わっている。
 情報屋・華夢の名前はそれなりに知られていた。
 とにかく情報には貪欲で旺盛に書き込むのが華夢の日課であり飽きさせなかった。
 それは同時に自分の居場所を与えてくれた。
 博麗を知らないわけが無い住人達は物珍しいためか受け入れられたのがもう一つの要因であろう。
 だが、ある日を境に華夢はぷっつりと第一線から身を引き、霊夢として神社に居座り始めた(元々持ち主ではあるが)。
 そんな隠居中でも、第一線の影響か変化には敏感である。

 しばらく情報を受けとる(というより傍受)霊夢。
 次第に目の方は寝ぼけ眼から覚醒に向かっていった。
 「…ほ~、少しは酔いが覚める情報をとっちまったぞ~…」
 いったんヘッドセットをはずす。
 「…さて、こんな事をしてる場合じゃないな…しかしキモい…」
 ゆっくりと立ち上がっては身支度を始める。
 寝間着から紅白の巫女服に着替え、
 肩ほどまでにのびる髪を二つに分け、先に札でまとめ、内着に取り付けているフードをかぶり、上着のしわを引っ張り伸ばすと…勢いよく縁側から飛び出した。

 このように霊夢は二日酔いに倒れる毎日だが、暇さえあれば神社を放置してあたりや里の方に足を運んでは見回っている。
 もちろんそこでケンカが起きたところで仲裁するわけではないのだが…
 その時のトレードマークと言えば、本人だとばれないようフードをかぶり、いつでも情報を受信できる用につけているヘッドセットだ。
 このヘッドセットはあたりの情報屋、主に情報の行き来の激しい天狗勢の情報手段に使う使い魔の情報を受信することができる。
 もちろん他の方法を用いれば霊夢以外でも気軽に情報を取得するのだが…
 シュッッ!
 マッチに火を目覚めさせると同時に加えていた煙草も目を覚ませた。
 紫煙が霊夢の軌跡をたどる、しばらく霊夢が徘徊していると軌跡がただの煙へと変わった。
 ある人だかりならぬ妖怪だかりができていたからだ。
 その中心には瀕死になっている妖怪がいた。
 ざわざわ…と妖怪だかりをかき分けながら倒れている妖怪に歩み寄る華夢。
 「おいおい、だまって突っ立てたって何も始まらないぞ、手伝え。嫌なら離れてくれ」
 と言うと周りを囲んでいた妖怪達はそそくさと散っていった。
 「ったく、情って言うのが微塵もないやからだ。時には良いがいざとなるとめんどい…」
 「お…鬼……」
 霊夢の存在に気がついた妖怪。
 「私は巫女だ。とりあえずあんたの仲間の近くまで運んでやる。身につけている物を見る限り天狗の兵隊だな」
 「お…にが……」
 「しゃべらなくて無くて良い、今は布団の中に居る気持ちだけを考えてくれ」
 そういいながら霊夢は天狗の肩を借りて運び始めた。
 その後、元々交友のある天狗に訳を話しその場を去った。
 だが、霊夢にはある疑問が沸いていた。
 「ふむ、あの天狗の部隊はそれなりに腕の立つ連中、一発でおじゃんなんて事はあまりないが、全体的にボッコしてたな」
 幻想郷の住人はそれなりに腕のある者が多い、
ましてや天狗の部隊ともなればなおさらである。
 「情報が一番多い天狗の連中のところにちといってみるか…」
 『zzザーz…』
 霊夢の装備しているヘッドセットから外からの情報を受信した。
 気ままな天気予報、うわさ話、愚痴、嘆き、笑い、ぷぎゃーとたわいもないこの日常の情報が霊夢には入ってくる。
 だが、ある里の一角で霊夢は停まった。
 「お、この情報番組帯は天狗連中だな」
 どうしても霊夢が外に出る理由はここにある。
 もちろん神社に居ても情報は取れるが、芯のある情報は広域ではなく局地に存在する。
 もともと情報屋の第一線に居たのもあり、親しい情報屋仲間の居場所や、またたまり場は熟知している。
 霊夢はこう言う。
 木を隠す場所は森の中が一番良い、おいしい情報は情報の中にある物だ。と
 『…・・・ …・』
 「…サトリ?」
 『……・・ …』
 「ほ~、鬼がねぇ…」
 そう漏らすと、霊夢は足を動かし始めた。
 話はこうだ。
 天狗勢の中でのちょっとした情報交換、鬼が現れるまでは良かったがその鬼がサトリの能力を持っていて 四苦八苦しているとのこと。
 霊夢から聞けば天狗もたいしたことは無いなと思うだろう。
 そして、ある者にヘッドセットを介して交信を始めた。
 「こちら〈博麗アミュレット〉、応答を願う」
 『〈恋色は黒かもな〉、十分聞こえるぜ』

―時は日を傾きかけている博麗神社―
 「霊夢~邪魔しに来たぜ」
 黒を基調とし、白いエプロンを纏う魔法使いの霧雨魔理沙がやってきた。
 もっともこの霊夢と魔理沙はケンカ仲間としてしょっちゅうどころか四六時中に近いほど会っている。
 「邪魔されるのを待ってた所よ」
 「ほれっ、例の物だ。今回は作り込んだ分大変だったぞ?」
 と、魔理沙から受け渡されたのは小振りの竹箒だった。大きさとして本来は華夢の身長で表すと肘くらい ある長さのだが一見すると短く、太股あたりまでしか無い。
 そして手にした華夢は竹箒を握りしめて…
 「いいねぇ、この短さの箒がほしかったのよ。あとこのずっしりとした重さがたまらないね」
 「だろ?」
 「これで掃除が楽になるわぁ、そうと決まれば…」
 「そうでもあろうかと、持ってきたぜ☆」
 どんッ、と魔理沙が縁側にたたきつけたのは紛れもなく日本酒一升瓶だった。
 「いいねぇ、持つべき共は酒となんとかってものだ」
 その後月が落ち始めるまで二人は酒を酌み交わした。


 明くる日


 里の一角。
 砂が舞い上がる風の中である。
 「はぁっはぁっ…!」
 肩で息をしては必至の思いで駆ける天狗。
 「どうした!?天狗の風情でその程度しか力しかないのか!」
 高々とあざ笑う鬼の声。
 「はぁっ…!!」
 「…」
 その時天狗は何かとすれ違った。
 それは赤、その赤は一度みたら忘れることのないこの幻想郷の象徴。
 鬼の目からは、紅白が色彩を表した。
 「もうタオル以外も投げてるんだ、そこら辺にしとけ」
 シャッボォ…
 「風がある日はイムコのライターに限るわ」
 ライターを点火するとくわえていたタバコを目覚めさせた。
 「人間…博麗か、博麗が何の用だ」
 「整理券はもらってないんだ、何度も名前を連呼されるとガチに恥ずい」
 「おもしろい、相手をさがしては自分の能力をほめていたところだ。天狗だろうが博麗だろうがその能力に磨きをかけてやる」
 「やめとけ、どうせやったところであんたの負けフラグは見えてる」
 「ほぅ、人間の分際で大した自信だ、どこからそんなけったいな自信が沸いてくる?」
 ふぅぅっと霊夢は紫の副流煙を天に向かって表すと、その煙をみながら
 「…博麗<カミ>のお告げさ」
 と視線を戻した。
 「おまえ、今でも仲間を助けられなかった事を根に持っているな?」
 「!!!」
 「図星か、そして今おまえは何でこうも人間の心が読めるんだ?と思っているだろう」
 「……」
 霊夢はうかつに口出しができなかった、それはなぜか…
 当たっているからである。
 「そうだ、私はおまえの心が読める、どうあがいても次の手を読んでよけることもできれば避けながら潰すこともできる」
 なるほど、通りで腕の立つ天狗の兵隊もボッコされるわけだ。
 「そういうことだ」
 「良いだろ、ならあらかじめ宣言しておく。右ストレート…左ストレートだったけな?まあどっちでもぶっ飛ばす訳ではないが、この箒で散らせて見せよう」
 「人間の分際で…なぜこの私が倒せるか?」
 「鬼の分際で、この博麗が倒せられたらその台詞を本にしてくれ。帯に「私も参った」と書いてサインも入れてやる」
 霊夢は腰を落とし、箒を逆手に持ち刀で言うところの居合いの構えをとり、相手の行動に対応できる体勢をとった。
 しばらくの静止、共に相手を伺う形だ。
 地面から舞う砂埃、ざわめく草木、流れ落ちる紅葉。
 その紅葉が地面に着い…
 ここッ
 霊夢の踏み込もうとした所を読み込み。コンマ数秒速く霊夢に向かって飛び込む鬼。
 だッ!!
 遅れて霊夢も飛び出すが、一歩遅れた霊夢はすでに振り払うタイミングを遅れていた。
「それなら箒は振り払えまい!」
 鬼と霊夢の間は1歩切るほどの距離、この状態で箒を振り当てようにも、一番力の入るタイミングにはあわない。
 鬼は自慢の爪を高々と上げ、振りかざし始め勝利を確信したが…
 「いったろ?散らせるって」
 霊夢の右手に握りを強め、左手から離れていく。
 いや、新たに銀色が見える、刃だ。
 「っ!!」
 霊夢の箒から刃が現れ、鬼の首をとらえ、気がつけば刃は鬼の首をとらえていた。
 鬼が気がついたときには遅かった、いや気がつかないのも無理はない。
 このとき鬼には、箒の中から刃が出てくるという情報がこの瞬間に入っていても、それを処理する能力がなかったからだ。
 「仕込み刀!?そんな…」
 次の瞬間、鬼は刀の圧力に屈し、散った。
 「なぜ人間があんた達妖怪や鬼に争えられる様になったか」
 霊夢はこびりついた油を振り払う。
 「あんた達同様、数百・数千と時間をかけて鍛えてきたのさ。もっとも血は変わっていっているからあん た達には退化にしか見えてないんだろうけど」
 改めて刀を眺めては、仕込み箒に納めた。
 「サトリの基本的な能力って言うのは今来た起こった心の中を探って暴く能力だ。その能力使っている割には、どっかしらかの情報を使ってさらに標準的に絶対あたるであろう揺さぶりをかける。そんなトリックはこの情報通には通用しないぜ?」
 改めて煙草を取り出し、ライターをシングルアクションで点火する。
 「やっぱり風の強い日はイムコのライターに限る。鬼も、結局は常識的なんだな。ここは幻想郷よ?」
博麗の血を受け継ぐ者として新たな霊夢像を模索してできたキャラです、
そんなちょっとしたキャラ紹介的SSです。
もちろん前回投稿した作品の主役の一人であり今後もこういった幻想郷活劇(ザナドゥオペラ)書き続けていきます。
丁稚↑
[email protected]
http://project-thc.main.jp/
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