「こんばんは、ジョージ」
ジョージにそんな声がかけられたのは、彼がうつらうつらと船をこいでいた夜のこと。
歳老いたジョージにとって、瞼を上げるのも重労働であったが、彼は億劫ながらもゆるゆると目を開いた。
夜の闇の中に、見知らぬ異国の女が立っている。暗闇の中でも良く映える金の髪を風に靡かせ、柔らかな微笑みを浮かべていた。
「ごめんなさいね、こんな時間に」
バツが悪そうに女は言う。
不思議とジョージは、こんな時間に押しかけてきたこの見知らぬ女に、怒りや不審を感じなかった。
異国人にしては流暢な言葉使いだな、と、抱いた感想はそんな程度である。
「今夜はあなたを招待に来たの。私達の世界へ」
女はそう言い、ついと空中を指でなぞった。
すると、なぞられた空間に亀裂が入り、その亀裂はぱっくりと口を開く。
ジョージは思わず体を起こし、その亀裂を覗き見た。
亀裂の中に、過去の時代が見える。
青々と繁る草木、碧色をした広大な海原、父母、兄弟、姉妹、友、恋人。
遥か昔、自分を置いていってしまった皆の姿と情景を、ジョージは向こうの世界に見た。
「さぁ、行きましょう。あなたのことを、みんなが待っているわ」
女は微笑み、「ひとりぼっちの」ジョージに手を伸ばす。
その手を取れば、向こうの世界へ行けるのだろう。
亡くした者達と、また会えるのだろう。
失われた時間を、取り戻すことができるのだろう。
ジョージはその手を――
――取らなかった。
ジョージは起こした身を再び下ろし、ゆっくりと瞼を閉じる。
「……そう」
ただ一言呟いて。
女も、それ以上聞こうとはしなかった。
目を閉じたためか、ジョージの体をまどろみが包みこむ。
その心地好い感覚に、ジョージは身を任せた。
「……お休みなさい、ジョージ。良い夢を」
最後に聞こえた女の声は、どこか遠くから響いたようにジョージには思えた。
ジョージは夢を見る。
青々と繁る草木、碧色をした広大な海原、父母、兄弟、姉妹、友、恋人。
遥か昔、自分を置いていってしまった皆の姿と情景を、ジョージは夢に見る。
――なんだ。あそこに行かなくたって、会えたじゃないか。
ジョージは、そう笑った。
ジョージは、眠っている。
ジョージにそんな声がかけられたのは、彼がうつらうつらと船をこいでいた夜のこと。
歳老いたジョージにとって、瞼を上げるのも重労働であったが、彼は億劫ながらもゆるゆると目を開いた。
夜の闇の中に、見知らぬ異国の女が立っている。暗闇の中でも良く映える金の髪を風に靡かせ、柔らかな微笑みを浮かべていた。
「ごめんなさいね、こんな時間に」
バツが悪そうに女は言う。
不思議とジョージは、こんな時間に押しかけてきたこの見知らぬ女に、怒りや不審を感じなかった。
異国人にしては流暢な言葉使いだな、と、抱いた感想はそんな程度である。
「今夜はあなたを招待に来たの。私達の世界へ」
女はそう言い、ついと空中を指でなぞった。
すると、なぞられた空間に亀裂が入り、その亀裂はぱっくりと口を開く。
ジョージは思わず体を起こし、その亀裂を覗き見た。
亀裂の中に、過去の時代が見える。
青々と繁る草木、碧色をした広大な海原、父母、兄弟、姉妹、友、恋人。
遥か昔、自分を置いていってしまった皆の姿と情景を、ジョージは向こうの世界に見た。
「さぁ、行きましょう。あなたのことを、みんなが待っているわ」
女は微笑み、「ひとりぼっちの」ジョージに手を伸ばす。
その手を取れば、向こうの世界へ行けるのだろう。
亡くした者達と、また会えるのだろう。
失われた時間を、取り戻すことができるのだろう。
ジョージはその手を――
――取らなかった。
ジョージは起こした身を再び下ろし、ゆっくりと瞼を閉じる。
「……そう」
ただ一言呟いて。
女も、それ以上聞こうとはしなかった。
目を閉じたためか、ジョージの体をまどろみが包みこむ。
その心地好い感覚に、ジョージは身を任せた。
「……お休みなさい、ジョージ。良い夢を」
最後に聞こえた女の声は、どこか遠くから響いたようにジョージには思えた。
ジョージは夢を見る。
青々と繁る草木、碧色をした広大な海原、父母、兄弟、姉妹、友、恋人。
遥か昔、自分を置いていってしまった皆の姿と情景を、ジョージは夢に見る。
――なんだ。あそこに行かなくたって、会えたじゃないか。
ジョージは、そう笑った。
ジョージは、眠っている。
お読みいただき、ありがとうございました。
時事ネタね。
そんな状況でジョージを幻想郷に連れて行こうとする紫もそれっぽい感じ。
時機を逃さない投稿タイミングもグッド。
現実の出来事に対してセンチメンタルな気分にはなりますが、作品としては深みがないので。
もう少し工夫のしようがあったと思います。
きっとドードー鳥やステラーダイカイギュウも幻想郷には棲んでいるのかもしれない。
けれど、作品自体は『ロンサム・ジョージという最後のゾウガメ』を主人公にする意義が薄いのではないかと感じました。
この内容だと、別に主人公がカエルだろうが黒人奴隷だろうがアホウドリだろうが、まるっきり流用できてしまいそうですから。
でも作品単体を眺めて評価するなら……。
まあ、いかにも二次創作らしいSSだとは思うけどね。
主人公をほかの絶滅動物にしなかったのは何故だい?
俺はひねくれ者だから「時事ネタ使えば評価される」みたいに読者をバカにしているのじゃないかと思ってしまったよ。
ジョージや幻想郷に対する想像力をまるで感じませんでした。想うものがありません。手なりで作ったような感動モノのテンプレートを提出された気分です。
微々たるものですが、怒りのようなものさえ込み上げてきます。題材に対して考えが少し安易だったのではないでしょうか?
どんな作品であれ、投稿する前には一度立ち止まり、熟考を尽くされることをお勧めいたします。
絶滅してしまった種を招こうとしたってのは話として自然な流れじゃないかと思います。そんなに酷いと思わないけどな。少なくても私は好きです。
まぁ、時事ネタを使った感動テンプレなのは間違いないけど、感動テンプレなんざ、テレビを見てたら必ず出てくるものだしね。
すれちまった自分には、これも悪くないと思えたよ。
あとがき(というかコメント)でしっかりオトしてるのがまたw