◇
ある日のことだ。フランドール様の部屋の近くまで来ると、中から話し声が聞こえてきた。内容こそは分からないものの、とても楽しそうな雰囲気の会話だった。
珍しい。誰か来ているのだろうか。
しかしノックして入室すると、部屋の中にはフランドール様だけしか居ない。
「あれ? 今どなたか居ませんでしたか」
なんかすっげぇ上品な感じの声だったのでフランドール様でも、というかこの館の誰かでもないと思うのだけれど、となると誰かが居たなんて外からの訪問でない限りあり得ないのか。もしかするとわたしの空耳かもしれない。
そう訂正しようとする前に、フランドール様がなんかもじもじとしつつ「えっと……ね」と何かを切り出し始める。
「実は私が台詞を喋っていたのでした」
「外の世界の本、好きですよね」
フランドール様はいわゆる「リケイ」の方なのだが、だからと言って本を読まないわけではない。むしろ暇つぶしの手段として積極的に読書をしているので、そこそこの読書家と言える。おかげでパチュリー様同様、知識ばっかりで経験が伴っていないのですが。
読んでいるジャンルは様々だけど、気に行った作品は繰り返して読むことが多い。カッコイイと思った台詞は会話に挟んだりもする。この前はなんだっけ、「ホレイショー、天と地の間にはお前の哲学では思いも寄らない出来事が随分あるぞ」ホレイショーって誰だろうか。
フランドール様はほとんど同意しかけて、少し考えてから言葉を変える。
「いつもはそういうことにしておくんだけど……うん、三号には教えちゃおうかな。絶対秘密にしてくれる?」
大丈夫ですよー。フランドール様に関することがそもそも秘密なので隠しごとが増える分には余裕です。
「誰にもですか?」
「特にお姉さまには」
そういう秘密なら既に何件か知っている気もするけれど、今回のは何か格別に危ない雰囲気がする。
しかし、知らない方が身のためだろうという冷静な思考と、それすっげぇ聞きたいという破滅的な判断は同時だった。
「分かりました。わたしと、フランドール様だけの秘密ですね」
「うん、ありがと。じゃあ話すね」
納得したフランドール様は、わたしを近くに寄せてから小声で話す。
「実はこの地下室には時々やってくるお客さんがいるの」
「お客様、ですか。誰かが紅魔館を訪問したという報告は聞いておりませんが」
「そのお客さんはお姉さまが留守の時に、空間の裂け目から現れるんだ。名前は教えてくれないんだけど、私はムラサキさんって呼んでる」
やだなにその不審人物。超怖い。
「では、先ほどはそのムラサキさんとお話していたと」
「そうなの。ムラサキさんはすっごく優しくて、頭がいいの。私に数学のこと教えてくれたのはムラサキさんなんだ。やってくると私に色んな数式を教えてくれたり、遊んでくれたりするの。さっきはスペルカードのことで色々お話してた」
楽しそうに語るフランドール様には申し訳ないのだけれど、わたしの認識はただ一つ。この地下室には時々フランドール様クラスの化け物が現れると。
「実は私も、ムラサキさんが私にしか見えない幻なんじゃないかって思ってたんだけど、三号にも声は聞こえたんだね」
「ムラサキさんとは長いのですか?」
「結構。三号より長いよ。まあ会える時がすごく限られてるから、あんまりそんな感じはしないけど。あの人自身も私を可愛がってはくれるけど、なんか愛玩っぽい感じだし」
フランドール様の不思議スキル発動。甘やかされているのかと思いきや、恐ろしく冷静な認識をしていた。素直でないというか、素直すぎるというか。
「以上、私のステキな先生のお話でした。本当だったら三号にも会ってほしいんだけど、ムラサキさんは誰とも会いたがらないからなぁ」
秘密のことはそれで終わりらしい。フランドール様はわたしから離れてベッドへと飛び乗る。
……どちらかと言うとこれは秘密にしておいていいことではない気がする。ムラサキさんがどういった方かは分からないけれど、不審人物の不法侵入には間違いないのだから。
でもまあ、何かしでかすならとっくに事は起こっているか。わたしより前から接触しているのだし、今さら危険がどうこうと言ってもしょうがないだろう。むしろうっかりこの秘密を漏らしてムラサキさんの訪問が無くなった。となる方がありえそうだし、怖い。この情報は慎重に取り扱うことにしよう。
さて、お仕事お仕事。そのムラサキさんとやらに見せても恥ずかしくない程度にお掃除しておかないと。
◇
咲夜さんが来てからというもの、紅魔館は激変の嵐となっている。それまでほんの一握りの妖精メイドによって行われていた家事は、咲夜さんの指示の元で全員参加が義務となった。
これについては賛否があるものの、わたしたちは大体のことがどうだっていい妖精なので、今まで遊んでばかりだった同僚の方々も文句を言いつつのらりくらりと仕事に励みだした。わたしとしては人手が増え通常業務にかける時間が減らせるようになったので正直嬉しい。いいぞもっとだ。
ちなみに。勤め始めた当初に妖精メイドたちの現状を知った咲夜さんは誰にも分からないようにブチ切れていたらしく、彼女らのあまりの家事能力の低さを補うために研修会を毎週行うようになった。この研修会をわたしはとても気に入っている。メイド全体の底上げが見込め、実際に効果があるからだ。それまで掃除のやり方さえ分からなかったメイドが見る見るうちに塵埃バスターとなり、湯を煮立たせることさえ怪しかったメイドが咲夜さんの調理補佐にまで育っていく様は見ていて圧巻だった。まあそこまで筋のいいのは何人かに限られていますが、それでもみんな見違えるほど家事ができるようになっていった。
そんな折、一つ不思議な研修会が行われた。
わたしは自身はもう大体の家事がそれなりにできるしフランドール様のお世話があるので普段の研修会は参加しなくてもいいというお達しを受けていたが、その研修会だけは絶対に参加するようにという指示があった。見れば「家事ではなく庭仕事を覚えなさい」と美鈴さんによる別研修を受けている外回り組みも参加している。その中には当然、今まで一度も研修会に出たことのないんだーと言っていた美鈴さんの姿もある。
いつもと違う雰囲気に包まれて、研修会が始まる。
今回は資料が配られた。タイトルは「スペルカードルールについて」というもの。
咲夜さんの説明を聞いたところ、どうやらこういうことらしい。
今回、レミリア・スカーレット主導による一連の事件を受けて、博麗の巫女より一つの決闘法が制定された。以後、武力的な衝突や対立、問題解決はこのルールに則って行うこととなった。
このスペルカードルールというのはいわば見せるための戦いで、不意打ち、追い打ちなどは不可。行われるのは技の見せあいと避け合いで、根負けするか技が全て攻略されると敗北となる。
他、その在り方の解説と、咲夜さんとパチュリー様による模擬戦が行われ、それから妖精メイド全員に簡単なものでいいからスペルカードを作っておくようにと実際にカードと技を作る所まで行われる。
そこまで来ると皆わいわいガヤガヤとお喋りしながら作業を始めたので、わたしは近くにいたパチュリー様を捕まえて一つ質問をする。
「あのー。レミリアお嬢様主導の事件って、何ですか?」
聞いた瞬間にパチュリー様は少し考え込み、「そういえばあなたその時は地下に居たわね」と事情を思いついたらしく、他の妖精メイドたちから離れて質問に応えてくれる。
「あなたはフランドールにかかりきりだから知らなかったでしょうけど、レミィがわりと惜しいくらい幻想郷を掌握しかけたのよ」
え、なにそれすごい。
「気力を無くした妖怪たちを武力で屈服させていったんだけど……結論から言うと八雲紫という妖怪によって鎮圧されたわ。確かあなた数日地下に籠らされた日があったでしょう? その時が山場だったのよ」
「うわぁ。全然知りませんでした」
「それからこのルールが導入されるまでの経緯は咲夜が説明した通りよ」
なるほどなぁ。でも、それじゃ一つおかしな所があるような。
「そんな事件の再発防止策なのに、どうして決闘方法を制定するのでしょうか? これじゃあ戦ってくださいと言わんばかりなのに」
「頭は回るのに肝心な所が惜しいわね。つまりそういうことなのよ、妖怪たちを戦わせるために作ったルールなの。個々の妖怪たちがそれなりの力量と気力を持っていれば、再発はなくなるでしょう」
確かに、そりゃあそうだけれども。
そこでパチュリー様が誰かに呼ばれて、「もういいわね」と確認してからそちらへ向かう。わたしはスペルカード作りに戻りながら、今の話のとんでもない部分について驚き始める。レミリアお嬢様がそこまでやっていたことも、それに気がついてない自分も驚きだが、一番の驚きは、そんなルールを制定してしまった博麗の巫女の豪胆さについてだ。
再発防止策ならどうしても禁止という形を取りがちなる。しかし事情によっては禁止という方法は臭い物をフタで閉じ込めるのと同じだ。元を断たなければ解決とは呼べない。が、臭い物は臭い。本当の解決とは非常に困難な課題なのだ。
それを、こんなダイレクトにかつギリギリなラインで攻めてくるとは。
思いついたとしても、実際にやってしまうなんて。頭のネジが一本や二本ぶっとんでいるんじゃないだろうか。
……そういえば頭のネジが飛んでいるのはこの館の姉妹も一緒か。いや、お二方は吸血鬼だからまだいい。人間でタメを張ってしまうというのは、やはりとんでもないことだろう。ううむ、博麗の巫女とは一体どのような人物なのだろうか。
そうこう考えているうちにスペルカードが作れて、実際に模擬戦をしてみろということになる。妖精メイド同士でてきとうに戦い、それで研修は終了。以後少しずつでいいから練磨しておくようにとのことである。
その最中、わりと勝率のいい戦いの最中でふと思ってしまったことがある。
これフランドール様めっちゃ好きそう。
◇
「……三…さん……」
何だろう。名前を呼ばれている気がする。
でもなぁ。こんなに気持ちのいいまどろみなのだから放っておいて欲しいっていうか、こんなのが現実のわけがないっていうか、ええいこのまま寝ちゃおうかぁ。
「起きてくださーい。こんなところで寝てたら、風邪引いてしまいますよー」
あっははやだなぁこんなに心地いいのに風邪とかないわー。あーでも耳が、だんだんよく聞こえてきて――
「フランドール様のお世話、大丈夫ですか?」
その小声で囁かれた一言が、何より強い力をもってわたしを睡眠から引き上げる。
目を開ける。ここはメイドの休憩によく使われる遊戯室だ。どうやら居眠りをしてしまったらしい。
体を起こす。ヤバい起こしてくれたのがメイド長だったら確実にお説教を食らう!
冷や汗が流れるのを感じながらも恐る恐る振り返ると――そこに咲夜さんの姿は無かった。良かった最悪の事態だけは避けられた。んだけど。
「おはようございます三号さん」
「あ、おは……ありがとうございます」
「これがメイド長だったら、脳天直撃投げナイフかもしれませんねぇ。私なんかもう何本もらっているやら。まあ次からは気を付けて」
「あはは……以後気をつけます」
居眠りしてしまったわたしを起こしてくれたのは、あまりの居眠りっぷりに咲夜さんから体罰をもらった従業員第一号、紅魔館の門番こと紅美鈴さんだった。
く、くそう。あの居眠り大王に居眠りを起こしてもらうなんて。こんなにくやしいのはどういうことだ!
ま、今はとりあえずこんな気持ちは後回し。時計を確認するとそこそこいい時間になってしまっている。ちょっと急いで用意をしなければならない。と立ち上がろうとした所で額をつんと弾かれて、再び椅子に座ってしまう。
そこに美鈴さんが「ちょっと失礼」と視界を占領する。
「んー、これはけっこう疲れてますね。原因は分かりますか?」
「ええと……はい。目星はつきます」
「ならよし。あまり無茶はしないようにね」
と、美鈴さんの手がわたしの首筋に触れて、そこが妙な温かみを帯びてくる。
それもすぐに終わり、美鈴さんはじゃあねーと窓から飛び降りて、直接自分の持ち場へと行ってしまう。
おっと自分も急がないと。そうして立ち上がったところで、先ほどより体が軽いことに気がつく。なんだか眠気もすっきりしている。もしかして、これは美鈴さんの「気を扱う程度の能力」によるもの?
これはありがたい。っていうかなんだか美鈴さんにお世話になりっぱなしだ。今度何かお礼を、いやあの人もやらかす方だからそのうち返せるか。
さて。それじゃあ改めて仕事へ。
……視界の端っこで、美鈴さんに向けて銀色の何かが翻ったのは見なかったことにしておこう。言う事聞かないからなぁ美鈴さん。
目星がついていると言った通り、こんな居眠りまでやらかすほど疲れている原因は分かっていたりする。ただこう、所詮わたしは一介の妖精メイド。邪魔だと分かっていても時には甘んじて、我慢するしかないことだってあるのだ。
具体的に言ってしまうとメイド長の十六夜咲夜さんとフランドール様との板挟みがわたしの疲れている主な要因だったりするのです、はい。
最初の宣言はどこへやら。やっぱりフランドール様のことを気にしている咲夜さんは、わたしに定時報告を求めてきた。
ここしばらくの咲夜さんの働きっぷりはまさしく完全だ。紅魔館は以前より遥かに住みやすい素晴らしい住居となったと言える。
その激変を、主であるレミリア・スカーレットは別段なんとも思っていないらしく、単に最近なんかやりやすいなぁという程度にしか認識していない。当の咲夜さんは「悟られたやさしさは二流の優しさ。気付かれていないのならそれが至高なのです」と良く分からないことをのたまい平然と仕事をこなしているのだけれど、その本心は推して測るまでもなくちょっぴり不満なようだ。断定できないのはこの推測が完全にわたし個人にしかできないため。咲夜さん自身はその不満に気が付いておらず、直感的に原因であろう箇所も改善しようとしており、それがフランドール様に向けられている。そして咲夜さんはわたし越しでしかフランドール様との接触を許可されていないので、その意思が現れるのがわたしの前限定である。だからその一瞬だけ瀟洒の下に住んでいるものが見え隠れする。まったくなんともはた迷惑な話だ。
定時報告そのものは、嫌いじゃないのでしっかり行っている。というよりフランドール様についてはあまり他言することがないので、誰かに喋れるということに飢えてしまっていたようだ。わりと楽しかったりする。その時のおしゃべりは普段よりさらに輪をかけて激しいようで、最初を盛大にやってしまいひどく怒られてしまった。それ以降は話すことを在る程度絞っているのでこれといったトラブルもなく続けられている。まあ、その。無言のプレッシャーとか、遠回しな改善提案なんかはありますが。
正直なところ、これで済むならまだいい方だろう。むしろリターンの大きい良い変化だと喜んでもいいくらいだ。
問題は、フランドール様自身もこの変化に反応してしまっている事だ。
主に悪い方面で。
咲夜さんの活動は当人的にはギリギリセーフの安全圏で行われているらしいのだけれど、時たま妙な能力を発揮するフランドール様はそのほとんどを知覚することができるのだという。最初はその仕組みを色々と説明してくれたりもしたのだけれど、わたしの能力は掃いて捨てるほど居る妖精程度。残念ながら説明の半分しか理解することができず、そのうちに諦められてしまった。
もういっそのこと咲夜さんに地下には来るなと言いたいところだけれど、ここには図書館も物置もあるので出入りするなとは言えず、フランドール様もほとんど部屋に引きこもり状態なので、半ばなしくずしでメイド長は地下の出入りを黙認されていた。
一度でも便利の味を知ると後戻りするのが難しい、っていうのは本当だったんだなぁ。あれからフランドール様に出す紅茶は咲夜さんが淹れたものを出すようになっていて、今日も完璧に用意されたトレイを持って地下に行く。今のところこの紅茶のみがフランドール様と咲夜さんの接点であるのだけれど、一つが繋がるのだからそのうちにもっと多くの接点ができて打ちとけ合ってくれるのだろう……と、信じたい。
ん、まてよ。そもそもどうしてフランドール様は咲夜さんのことを嫌っているのだろうか? ファーストコンタクトは上手く行ってないにしても、どこか避けている節がある。
その疑問を考える前に地下室へと到着。そして入室。
以前のやがて落ち込むだろうというわたしの予想は外れて、そこそこ活動的なまま過ごしているフランドール様は、小悪魔さんがどこからか持ってきたジグソーパズルというもので遊んでいた。このパズルはサイズの大きさが難しさに比例するらしいのだが、長辺が二メートルを超す大作はもう半分以上が出来上がっていた。とりかかったのは昨日の就寝前だったような気がする。
「フランドール様、お茶の時間です」
「ん、ありがとー。それじゃあ休憩っと」
おや珍しい。いつもならもうちょっと頑張るーと言って延々と待たされるのだけれど。
「これは完成形よりも、その途中を楽しむものだから。それよりほら、よく見てよ」
促されるまま、一旦手を止めて虫食い状態のパズルを眺める。そういえばわたしが完成させた30センチ四方のものと違って、妙な埋め方をしている気が……ってこれ、もしかしてまばらな位置だけど×××。
「どしたの三号ったら。顔真っ赤にしちゃって」
フランドール様は意地悪な顔でカップにお茶を催促してくる。獲物がまんまと引っ掛かってご満悦の様子だけれど獲物としてはこう、ええいお茶の準備だ。
くそう、こんなリア充用スラングなんて知りたくなかった。
こういうのをわたしに教えるのはもちろんフランドール様で、この手の隠語を理解してくれる専属メイドはわたしが初めてなんだとか。その言は七割方ウソっぽいのだけれど、恥ずかしがる様子を楽しむ、という本懐は達成できているので当人的には細かな動機はどうでもいいようだ。そして長年かけてわたしに蓄積されてしまった知識は、こうして忘れたころになってフランドール様により引き起こされて、わたしの耳を真っ赤に染めるのである――と、この通りここの所のフランドール様のセックスアピールは過剰だ。一応そのほとんどは今みたいなこちらをからかって遊んでいるトコロで止まってくれているのだが、いつあの時のようなピンチに陥るのかと思うと正直怖くてたまらない。美鈴さんも間に合わなかったら自力で逃げてくださいねって言うし。だれかたすけて。
このように。咲夜さんの活動を知覚し、それにストレスを覚えるフランドール様が私でストレスを発散する。つまりそのストレスはわたしに溜まる。という図式が成り立っているのである。ううういっそのこと鬱転してくれていた方がマシだったかもしれない。なにこの板挟み。
そんなこんなな思考をめぐらしつつもお茶を出し、休憩。
最近はフランドール様の強い希望もあって私もお茶に同席するようになった。「どうせなら一人じゃなくて誰かとがいい」と半軟禁状態の少女に言われて我慢し続けられるほどわたしの精神はタフではない。流石に人間の血も入っている食事後は遠慮していますが。
さてと。
こうしてお茶をする日々も悪くはないのですが、望みとしてはこう、もっと平穏な毎日を過ごしたい。それを実現するためにはまずストレスを発散するか無くすかする必要がある。おしゃべりでもある程度はストレス発散ができているのだけれどぶっちゃけ蓄積が勝っている。だから、ストレスの元を一つ無くしてみようと思うわけです。
そんな私の思惑が集ったのが、この一枚の紙切れである。
「フランドール様、実は折り入って相談がございまして」
それを聞いた瞬間、フランドール様は目を点にしてきょとんとこちらを見返す。
「相談って。え、私に?」
「はい。適任かと思いまして」
どうやら動揺しているらしい。目がせわしなく動く。
そうか。もしかしなくても、慣れていないのですね。
「適任って、そんな私にできることなんて」
「わたしが知る限りでは、フランドール様のお力が一番適してるかと」
「だ、ダメ! いくら三号の頼みでも破壊の目の力は」
「いいえぇ。そんな物騒な話ではありませんよ。力と言っても、知力の方です」
そうして紙切れをテーブルの上にさし出す。
フランドール様はそれを手に取り、不思議そうに眺める。
「なにこれ?」
「それはスペルカードと言いまして、この度博霊の巫女によって制定された「スペルカードルール」という決闘法に用いられるものです」
で、研修で教わった通りのルールを説明してから実際の技を――室内なので小規模にして――展開してみせる。残念ながら研修で組んだものそのままなので適当に弾をばら撒く程度の動きしかできないのだけれど、説明するには十分だ。
で、弾幕を消して再びフランドール様に向き直る。
「最初の本題に戻らせていただきます。以上のようにスペルカードルールの技を色々と作ることになったのですが、フランドール様なら何かいい案をいただけるのでは? と思ったのです」
「え。そ、そうかなぁ」
「はい。パチュリー様や咲夜さんの模擬戦を見て思ったのです。これはとてもパズルっぽいなと」
それを言った時には、フランドール様はもう何も聞いていないような状態だった。ノートと筆記用具を取り出してきて、思案しながら何か書いていく。
よし、勘は正しかった。フランドール様は見事に食いついている。
――思えば、この時のわたしは危機感が薄れていたのかもしれない。
しばらくした後に「できた!」と言って見せてくれたスペルは、わたしの想像を遥かに超えた鬼畜な内容のものであった。
「これはね、外から来た本にある『レーヴァテイン』っていう武器をモチーフにしたスペルなんだ。知ってる? レーヴァテイン」
「いいえ。まったく」
「どこかの神話の、会話の中にだけその存在が示されている武器なの。ある怪物を倒すためにはこの武器でなければならない。けれどレーヴァテインを手に入れるためにはその怪物の尾羽がいる。正攻法ではどうやっても解決しない、堂々巡りの謎かけになっているわけ。だから本当は正体なんて誰も知らない。でも正体を知らないからこそ、色々な説や解釈が存在していて、剣だけじゃなくって投槍や矢なんじゃないかとも言われている。このスペルカードではそういう武器としての多面的な解釈を表現してみましたー。メインは詩的表現で剣っていう意味からそのままこう、ズバーっと」
明るく言ってもヤバいものはヤバい。
そんな調子でフランドール様は一旦ジクソーパズルを速攻で片付けてしまい、それからは延々とスペルカード作りに励むようになる。その内容を記したノートと言ったら……一度参考にならないかなーと覗き見してみたものの、あまりの数式の多さに読むのを断念してしまったくらい危ない。自分のスペルは身の丈にあったものを自作するとして、これの練習相手してーとか言われたらマジでどうしよう。勝てる気がしない。
もしかして、これはやらかしてしまったと言うのだろうか。
◇
ある日の定時報告の時だ。
ここのところは食欲についてを重点的に報告しているので、今日もそのラインに沿った報告を行い、無事終了――と思いきや、いつもなら先に席を立つ咲夜さんが今日は紅茶を啜ったまま動こうとしない。何かを思考しているようにも見える。
終わりと言われなければ終われないのが下っ端の運命。少し待ってみてから、「どうしかしましたか?」とこちらから言葉をかけてみる。
すると咲夜さんは思考を切り上げ、こちらに向き直る。
「一つ気になっていたのですが、あなたの前任者とはどのような方なのですか?」
「え? えっと……二号さんですか」
「一号も含めて」
「実はですね。わたしそのお二方とは面識がないのです」
すると咲夜さんは驚いた顔をする。この表情はちょっと珍しい。
「……分かりました。では知っている限りを教えていただけますか?」
「それがですねー。二号さんが最初の頃はフランドール様とけんかしていたことと、二号さんも鬱ってリタイアしたことぐらいしか知らないんですよわたし」
咲夜さんの驚き再び。こうして見ると咲夜さんの表情変化はわりと面白い。分かり辛いので見逃すことが多いんだろうきっと。
「誰にも聞かなかったのですか?」
「そうですね」
「気にならないのですか?」
「そう言うと嘘にはなりますけれども」
嘘にはなるけど、聞くに聞けなかったというか。
咲夜さんは一旦何か強く語ろうとして――それを全てため息に変換する。
「前々から思っていたのですが、三号さんも結構ズレていますね」
「わたしも。ということは他にもズレているお方はいるのでしょうか」
「私です」
「自覚はあったんですね」
「とにかく、誰も前任者のことを語らないしあなたに教えようとしなかった。あなた自身も積極的に知ろうとしなかったと」
「そういうことです。暗黙の了解というやつでしょうか」
「……前任者については個人的な興味からだったけれど、これは客観的な忠告として提言しておきます。取り返しのつかない事になる前に、前任者のことを知っておきなさい」
「そんな大げさな」
「ではどうして、二号さんは引き継ぎもせず去ってしまったの?」
今まで考えまいとしていた部分が容赦なく踏みぬかれていく。
思えば、いつの間にかわたしはこの仕事を気に入っていた。だからでこそ自分から壊してしまうような真似を一切してこなかった。しかし咲夜さんの忠告の通りだ。ここまで来てしまって一番気をつけなければいけないのは不可抗力によるうっかり。それを防ぐために必要なのは、過去の出来事。
「私は詮索しません。だからやるなら、あなたがやりなさい」
それで終わりということらしい。紅茶を飲み干した咲夜さんは、とうに空になっていたわたしのカップもトレイに乗せて立ち去って行く。
その後ろ姿を見送りつつ、思わずため息。
だって、聞くにしたってどうやって聞き出せというのだろうか。当時のことを知っている者はごく限られている。メイド妖精は全滅。あとはレミリアお嬢様か、パチュリー様、小悪魔さんはちょっと怪しいか? 美鈴さんは協力的だけれど本気で回避に回られたら一番口達者なのは確かだ。あとはフランドール様自身。
うっわ。誰一人として適任がいない。一番マシそうなのがフランドール様当人とか。
◇
「ねえ、三号。狂うってどういうことだと思う?」
ある日のこと。何かの本を読み終えたフランドール様が、しばらく考え込んだ果てに出したのが今の言葉である。
最近のメイド妖精の噂では、地下室には狂った魔法少女が居て、災厄が訪れた時に地上へ現れ全てを解決してしまうんだけど、普段はイタすぎるから幽閉されている。とヒドイ言われようだけれど「狂っている」というフレーズは未だに健在だ。
そんな風に言われている方に、自分の考えとか安易に言えたものではない。
「一般的に狂うということは、正常でなくなってしまうということですね」
「そうだね。うんまったくその通りなんだ」
するとフランドール様が、読み終わった本を乱暴に卓上へ投げ出す。タイトルは「人間失格」ぱっと見危ない感じだが、フランドール様はそれを鼻で笑う。
「こんなの全然狂ってない。でも狂気に見えるから、みんな勘違いするんだ」
それから、完成して壁にかけてあるジグソーパズルに近づいて、ピースを一つ抜いて、無理やり逆さにしてねじ込んでしまう。
「三号。これは狂ってるって言える」
「言っていいと思います」
「じゃあ、これは?」
先ほど逆さにしたピースを元に戻して、今度はパズル全体を逆さにしてしまった。
「……難しいですね。どちらかと言うならさっきの方が狂っているかなと」
「よくできました。それでいいんだよ、狂うってこういうこと。正常から転げ落ちてしまうことなの。
この本の主人公は、狂ったんじゃない。最初からそういう風に生まれただけ。人間とはかくあるべきなんていう常識に憧れて、憧れで終わらせてしまっただけの人間。正気を知らない者は、他人と違うおかしな者でも、そのおかしな気がそいつの正気でしかない。でも人間はそういう想像をしないから全部狂気に放り込んでしまう」
なるほど。気が狂うということは、元々が正気であることが前提なんだ。でなければ『狂え』ない。最初から狂っているのならば、それも狂ったとは言えない。今読んだお話の主人公はこの分類で行くなら最初から狂っている――それが正気の人間。しかし普通の人との正気との摩擦、軋轢によって狂人認定されてしまったと。
「これ、よく覚えておいてね」
「大丈夫です。ばっちり理解しました」
……だとすると、フランドール様は元々正気で、どこかで『狂った』のだろうか。
考える前に「それ返してきて」と強い口調で言われたので、直ちに実行に移す。あれは間違いなく苛立っているので、下手に一緒に居ない方がいい。そう思ったのはフランドール様も同じらしく「今日は軽めにしといて」と声をかけてくれた。では作戦変更、本日は警戒レベルを引き上げてお仕事いたしましょう。
そう言えば、そういう方向のことって考えてみたことが無い。
フランドール様は、一体どう狂っているのだろうか。
ある日のことだ。フランドール様の部屋の近くまで来ると、中から話し声が聞こえてきた。内容こそは分からないものの、とても楽しそうな雰囲気の会話だった。
珍しい。誰か来ているのだろうか。
しかしノックして入室すると、部屋の中にはフランドール様だけしか居ない。
「あれ? 今どなたか居ませんでしたか」
なんかすっげぇ上品な感じの声だったのでフランドール様でも、というかこの館の誰かでもないと思うのだけれど、となると誰かが居たなんて外からの訪問でない限りあり得ないのか。もしかするとわたしの空耳かもしれない。
そう訂正しようとする前に、フランドール様がなんかもじもじとしつつ「えっと……ね」と何かを切り出し始める。
「実は私が台詞を喋っていたのでした」
「外の世界の本、好きですよね」
フランドール様はいわゆる「リケイ」の方なのだが、だからと言って本を読まないわけではない。むしろ暇つぶしの手段として積極的に読書をしているので、そこそこの読書家と言える。おかげでパチュリー様同様、知識ばっかりで経験が伴っていないのですが。
読んでいるジャンルは様々だけど、気に行った作品は繰り返して読むことが多い。カッコイイと思った台詞は会話に挟んだりもする。この前はなんだっけ、「ホレイショー、天と地の間にはお前の哲学では思いも寄らない出来事が随分あるぞ」ホレイショーって誰だろうか。
フランドール様はほとんど同意しかけて、少し考えてから言葉を変える。
「いつもはそういうことにしておくんだけど……うん、三号には教えちゃおうかな。絶対秘密にしてくれる?」
大丈夫ですよー。フランドール様に関することがそもそも秘密なので隠しごとが増える分には余裕です。
「誰にもですか?」
「特にお姉さまには」
そういう秘密なら既に何件か知っている気もするけれど、今回のは何か格別に危ない雰囲気がする。
しかし、知らない方が身のためだろうという冷静な思考と、それすっげぇ聞きたいという破滅的な判断は同時だった。
「分かりました。わたしと、フランドール様だけの秘密ですね」
「うん、ありがと。じゃあ話すね」
納得したフランドール様は、わたしを近くに寄せてから小声で話す。
「実はこの地下室には時々やってくるお客さんがいるの」
「お客様、ですか。誰かが紅魔館を訪問したという報告は聞いておりませんが」
「そのお客さんはお姉さまが留守の時に、空間の裂け目から現れるんだ。名前は教えてくれないんだけど、私はムラサキさんって呼んでる」
やだなにその不審人物。超怖い。
「では、先ほどはそのムラサキさんとお話していたと」
「そうなの。ムラサキさんはすっごく優しくて、頭がいいの。私に数学のこと教えてくれたのはムラサキさんなんだ。やってくると私に色んな数式を教えてくれたり、遊んでくれたりするの。さっきはスペルカードのことで色々お話してた」
楽しそうに語るフランドール様には申し訳ないのだけれど、わたしの認識はただ一つ。この地下室には時々フランドール様クラスの化け物が現れると。
「実は私も、ムラサキさんが私にしか見えない幻なんじゃないかって思ってたんだけど、三号にも声は聞こえたんだね」
「ムラサキさんとは長いのですか?」
「結構。三号より長いよ。まあ会える時がすごく限られてるから、あんまりそんな感じはしないけど。あの人自身も私を可愛がってはくれるけど、なんか愛玩っぽい感じだし」
フランドール様の不思議スキル発動。甘やかされているのかと思いきや、恐ろしく冷静な認識をしていた。素直でないというか、素直すぎるというか。
「以上、私のステキな先生のお話でした。本当だったら三号にも会ってほしいんだけど、ムラサキさんは誰とも会いたがらないからなぁ」
秘密のことはそれで終わりらしい。フランドール様はわたしから離れてベッドへと飛び乗る。
……どちらかと言うとこれは秘密にしておいていいことではない気がする。ムラサキさんがどういった方かは分からないけれど、不審人物の不法侵入には間違いないのだから。
でもまあ、何かしでかすならとっくに事は起こっているか。わたしより前から接触しているのだし、今さら危険がどうこうと言ってもしょうがないだろう。むしろうっかりこの秘密を漏らしてムラサキさんの訪問が無くなった。となる方がありえそうだし、怖い。この情報は慎重に取り扱うことにしよう。
さて、お仕事お仕事。そのムラサキさんとやらに見せても恥ずかしくない程度にお掃除しておかないと。
◇
咲夜さんが来てからというもの、紅魔館は激変の嵐となっている。それまでほんの一握りの妖精メイドによって行われていた家事は、咲夜さんの指示の元で全員参加が義務となった。
これについては賛否があるものの、わたしたちは大体のことがどうだっていい妖精なので、今まで遊んでばかりだった同僚の方々も文句を言いつつのらりくらりと仕事に励みだした。わたしとしては人手が増え通常業務にかける時間が減らせるようになったので正直嬉しい。いいぞもっとだ。
ちなみに。勤め始めた当初に妖精メイドたちの現状を知った咲夜さんは誰にも分からないようにブチ切れていたらしく、彼女らのあまりの家事能力の低さを補うために研修会を毎週行うようになった。この研修会をわたしはとても気に入っている。メイド全体の底上げが見込め、実際に効果があるからだ。それまで掃除のやり方さえ分からなかったメイドが見る見るうちに塵埃バスターとなり、湯を煮立たせることさえ怪しかったメイドが咲夜さんの調理補佐にまで育っていく様は見ていて圧巻だった。まあそこまで筋のいいのは何人かに限られていますが、それでもみんな見違えるほど家事ができるようになっていった。
そんな折、一つ不思議な研修会が行われた。
わたしは自身はもう大体の家事がそれなりにできるしフランドール様のお世話があるので普段の研修会は参加しなくてもいいというお達しを受けていたが、その研修会だけは絶対に参加するようにという指示があった。見れば「家事ではなく庭仕事を覚えなさい」と美鈴さんによる別研修を受けている外回り組みも参加している。その中には当然、今まで一度も研修会に出たことのないんだーと言っていた美鈴さんの姿もある。
いつもと違う雰囲気に包まれて、研修会が始まる。
今回は資料が配られた。タイトルは「スペルカードルールについて」というもの。
咲夜さんの説明を聞いたところ、どうやらこういうことらしい。
今回、レミリア・スカーレット主導による一連の事件を受けて、博麗の巫女より一つの決闘法が制定された。以後、武力的な衝突や対立、問題解決はこのルールに則って行うこととなった。
このスペルカードルールというのはいわば見せるための戦いで、不意打ち、追い打ちなどは不可。行われるのは技の見せあいと避け合いで、根負けするか技が全て攻略されると敗北となる。
他、その在り方の解説と、咲夜さんとパチュリー様による模擬戦が行われ、それから妖精メイド全員に簡単なものでいいからスペルカードを作っておくようにと実際にカードと技を作る所まで行われる。
そこまで来ると皆わいわいガヤガヤとお喋りしながら作業を始めたので、わたしは近くにいたパチュリー様を捕まえて一つ質問をする。
「あのー。レミリアお嬢様主導の事件って、何ですか?」
聞いた瞬間にパチュリー様は少し考え込み、「そういえばあなたその時は地下に居たわね」と事情を思いついたらしく、他の妖精メイドたちから離れて質問に応えてくれる。
「あなたはフランドールにかかりきりだから知らなかったでしょうけど、レミィがわりと惜しいくらい幻想郷を掌握しかけたのよ」
え、なにそれすごい。
「気力を無くした妖怪たちを武力で屈服させていったんだけど……結論から言うと八雲紫という妖怪によって鎮圧されたわ。確かあなた数日地下に籠らされた日があったでしょう? その時が山場だったのよ」
「うわぁ。全然知りませんでした」
「それからこのルールが導入されるまでの経緯は咲夜が説明した通りよ」
なるほどなぁ。でも、それじゃ一つおかしな所があるような。
「そんな事件の再発防止策なのに、どうして決闘方法を制定するのでしょうか? これじゃあ戦ってくださいと言わんばかりなのに」
「頭は回るのに肝心な所が惜しいわね。つまりそういうことなのよ、妖怪たちを戦わせるために作ったルールなの。個々の妖怪たちがそれなりの力量と気力を持っていれば、再発はなくなるでしょう」
確かに、そりゃあそうだけれども。
そこでパチュリー様が誰かに呼ばれて、「もういいわね」と確認してからそちらへ向かう。わたしはスペルカード作りに戻りながら、今の話のとんでもない部分について驚き始める。レミリアお嬢様がそこまでやっていたことも、それに気がついてない自分も驚きだが、一番の驚きは、そんなルールを制定してしまった博麗の巫女の豪胆さについてだ。
再発防止策ならどうしても禁止という形を取りがちなる。しかし事情によっては禁止という方法は臭い物をフタで閉じ込めるのと同じだ。元を断たなければ解決とは呼べない。が、臭い物は臭い。本当の解決とは非常に困難な課題なのだ。
それを、こんなダイレクトにかつギリギリなラインで攻めてくるとは。
思いついたとしても、実際にやってしまうなんて。頭のネジが一本や二本ぶっとんでいるんじゃないだろうか。
……そういえば頭のネジが飛んでいるのはこの館の姉妹も一緒か。いや、お二方は吸血鬼だからまだいい。人間でタメを張ってしまうというのは、やはりとんでもないことだろう。ううむ、博麗の巫女とは一体どのような人物なのだろうか。
そうこう考えているうちにスペルカードが作れて、実際に模擬戦をしてみろということになる。妖精メイド同士でてきとうに戦い、それで研修は終了。以後少しずつでいいから練磨しておくようにとのことである。
その最中、わりと勝率のいい戦いの最中でふと思ってしまったことがある。
これフランドール様めっちゃ好きそう。
◇
「……三…さん……」
何だろう。名前を呼ばれている気がする。
でもなぁ。こんなに気持ちのいいまどろみなのだから放っておいて欲しいっていうか、こんなのが現実のわけがないっていうか、ええいこのまま寝ちゃおうかぁ。
「起きてくださーい。こんなところで寝てたら、風邪引いてしまいますよー」
あっははやだなぁこんなに心地いいのに風邪とかないわー。あーでも耳が、だんだんよく聞こえてきて――
「フランドール様のお世話、大丈夫ですか?」
その小声で囁かれた一言が、何より強い力をもってわたしを睡眠から引き上げる。
目を開ける。ここはメイドの休憩によく使われる遊戯室だ。どうやら居眠りをしてしまったらしい。
体を起こす。ヤバい起こしてくれたのがメイド長だったら確実にお説教を食らう!
冷や汗が流れるのを感じながらも恐る恐る振り返ると――そこに咲夜さんの姿は無かった。良かった最悪の事態だけは避けられた。んだけど。
「おはようございます三号さん」
「あ、おは……ありがとうございます」
「これがメイド長だったら、脳天直撃投げナイフかもしれませんねぇ。私なんかもう何本もらっているやら。まあ次からは気を付けて」
「あはは……以後気をつけます」
居眠りしてしまったわたしを起こしてくれたのは、あまりの居眠りっぷりに咲夜さんから体罰をもらった従業員第一号、紅魔館の門番こと紅美鈴さんだった。
く、くそう。あの居眠り大王に居眠りを起こしてもらうなんて。こんなにくやしいのはどういうことだ!
ま、今はとりあえずこんな気持ちは後回し。時計を確認するとそこそこいい時間になってしまっている。ちょっと急いで用意をしなければならない。と立ち上がろうとした所で額をつんと弾かれて、再び椅子に座ってしまう。
そこに美鈴さんが「ちょっと失礼」と視界を占領する。
「んー、これはけっこう疲れてますね。原因は分かりますか?」
「ええと……はい。目星はつきます」
「ならよし。あまり無茶はしないようにね」
と、美鈴さんの手がわたしの首筋に触れて、そこが妙な温かみを帯びてくる。
それもすぐに終わり、美鈴さんはじゃあねーと窓から飛び降りて、直接自分の持ち場へと行ってしまう。
おっと自分も急がないと。そうして立ち上がったところで、先ほどより体が軽いことに気がつく。なんだか眠気もすっきりしている。もしかして、これは美鈴さんの「気を扱う程度の能力」によるもの?
これはありがたい。っていうかなんだか美鈴さんにお世話になりっぱなしだ。今度何かお礼を、いやあの人もやらかす方だからそのうち返せるか。
さて。それじゃあ改めて仕事へ。
……視界の端っこで、美鈴さんに向けて銀色の何かが翻ったのは見なかったことにしておこう。言う事聞かないからなぁ美鈴さん。
目星がついていると言った通り、こんな居眠りまでやらかすほど疲れている原因は分かっていたりする。ただこう、所詮わたしは一介の妖精メイド。邪魔だと分かっていても時には甘んじて、我慢するしかないことだってあるのだ。
具体的に言ってしまうとメイド長の十六夜咲夜さんとフランドール様との板挟みがわたしの疲れている主な要因だったりするのです、はい。
最初の宣言はどこへやら。やっぱりフランドール様のことを気にしている咲夜さんは、わたしに定時報告を求めてきた。
ここしばらくの咲夜さんの働きっぷりはまさしく完全だ。紅魔館は以前より遥かに住みやすい素晴らしい住居となったと言える。
その激変を、主であるレミリア・スカーレットは別段なんとも思っていないらしく、単に最近なんかやりやすいなぁという程度にしか認識していない。当の咲夜さんは「悟られたやさしさは二流の優しさ。気付かれていないのならそれが至高なのです」と良く分からないことをのたまい平然と仕事をこなしているのだけれど、その本心は推して測るまでもなくちょっぴり不満なようだ。断定できないのはこの推測が完全にわたし個人にしかできないため。咲夜さん自身はその不満に気が付いておらず、直感的に原因であろう箇所も改善しようとしており、それがフランドール様に向けられている。そして咲夜さんはわたし越しでしかフランドール様との接触を許可されていないので、その意思が現れるのがわたしの前限定である。だからその一瞬だけ瀟洒の下に住んでいるものが見え隠れする。まったくなんともはた迷惑な話だ。
定時報告そのものは、嫌いじゃないのでしっかり行っている。というよりフランドール様についてはあまり他言することがないので、誰かに喋れるということに飢えてしまっていたようだ。わりと楽しかったりする。その時のおしゃべりは普段よりさらに輪をかけて激しいようで、最初を盛大にやってしまいひどく怒られてしまった。それ以降は話すことを在る程度絞っているのでこれといったトラブルもなく続けられている。まあ、その。無言のプレッシャーとか、遠回しな改善提案なんかはありますが。
正直なところ、これで済むならまだいい方だろう。むしろリターンの大きい良い変化だと喜んでもいいくらいだ。
問題は、フランドール様自身もこの変化に反応してしまっている事だ。
主に悪い方面で。
咲夜さんの活動は当人的にはギリギリセーフの安全圏で行われているらしいのだけれど、時たま妙な能力を発揮するフランドール様はそのほとんどを知覚することができるのだという。最初はその仕組みを色々と説明してくれたりもしたのだけれど、わたしの能力は掃いて捨てるほど居る妖精程度。残念ながら説明の半分しか理解することができず、そのうちに諦められてしまった。
もういっそのこと咲夜さんに地下には来るなと言いたいところだけれど、ここには図書館も物置もあるので出入りするなとは言えず、フランドール様もほとんど部屋に引きこもり状態なので、半ばなしくずしでメイド長は地下の出入りを黙認されていた。
一度でも便利の味を知ると後戻りするのが難しい、っていうのは本当だったんだなぁ。あれからフランドール様に出す紅茶は咲夜さんが淹れたものを出すようになっていて、今日も完璧に用意されたトレイを持って地下に行く。今のところこの紅茶のみがフランドール様と咲夜さんの接点であるのだけれど、一つが繋がるのだからそのうちにもっと多くの接点ができて打ちとけ合ってくれるのだろう……と、信じたい。
ん、まてよ。そもそもどうしてフランドール様は咲夜さんのことを嫌っているのだろうか? ファーストコンタクトは上手く行ってないにしても、どこか避けている節がある。
その疑問を考える前に地下室へと到着。そして入室。
以前のやがて落ち込むだろうというわたしの予想は外れて、そこそこ活動的なまま過ごしているフランドール様は、小悪魔さんがどこからか持ってきたジグソーパズルというもので遊んでいた。このパズルはサイズの大きさが難しさに比例するらしいのだが、長辺が二メートルを超す大作はもう半分以上が出来上がっていた。とりかかったのは昨日の就寝前だったような気がする。
「フランドール様、お茶の時間です」
「ん、ありがとー。それじゃあ休憩っと」
おや珍しい。いつもならもうちょっと頑張るーと言って延々と待たされるのだけれど。
「これは完成形よりも、その途中を楽しむものだから。それよりほら、よく見てよ」
促されるまま、一旦手を止めて虫食い状態のパズルを眺める。そういえばわたしが完成させた30センチ四方のものと違って、妙な埋め方をしている気が……ってこれ、もしかしてまばらな位置だけど×××。
「どしたの三号ったら。顔真っ赤にしちゃって」
フランドール様は意地悪な顔でカップにお茶を催促してくる。獲物がまんまと引っ掛かってご満悦の様子だけれど獲物としてはこう、ええいお茶の準備だ。
くそう、こんなリア充用スラングなんて知りたくなかった。
こういうのをわたしに教えるのはもちろんフランドール様で、この手の隠語を理解してくれる専属メイドはわたしが初めてなんだとか。その言は七割方ウソっぽいのだけれど、恥ずかしがる様子を楽しむ、という本懐は達成できているので当人的には細かな動機はどうでもいいようだ。そして長年かけてわたしに蓄積されてしまった知識は、こうして忘れたころになってフランドール様により引き起こされて、わたしの耳を真っ赤に染めるのである――と、この通りここの所のフランドール様のセックスアピールは過剰だ。一応そのほとんどは今みたいなこちらをからかって遊んでいるトコロで止まってくれているのだが、いつあの時のようなピンチに陥るのかと思うと正直怖くてたまらない。美鈴さんも間に合わなかったら自力で逃げてくださいねって言うし。だれかたすけて。
このように。咲夜さんの活動を知覚し、それにストレスを覚えるフランドール様が私でストレスを発散する。つまりそのストレスはわたしに溜まる。という図式が成り立っているのである。ううういっそのこと鬱転してくれていた方がマシだったかもしれない。なにこの板挟み。
そんなこんなな思考をめぐらしつつもお茶を出し、休憩。
最近はフランドール様の強い希望もあって私もお茶に同席するようになった。「どうせなら一人じゃなくて誰かとがいい」と半軟禁状態の少女に言われて我慢し続けられるほどわたしの精神はタフではない。流石に人間の血も入っている食事後は遠慮していますが。
さてと。
こうしてお茶をする日々も悪くはないのですが、望みとしてはこう、もっと平穏な毎日を過ごしたい。それを実現するためにはまずストレスを発散するか無くすかする必要がある。おしゃべりでもある程度はストレス発散ができているのだけれどぶっちゃけ蓄積が勝っている。だから、ストレスの元を一つ無くしてみようと思うわけです。
そんな私の思惑が集ったのが、この一枚の紙切れである。
「フランドール様、実は折り入って相談がございまして」
それを聞いた瞬間、フランドール様は目を点にしてきょとんとこちらを見返す。
「相談って。え、私に?」
「はい。適任かと思いまして」
どうやら動揺しているらしい。目がせわしなく動く。
そうか。もしかしなくても、慣れていないのですね。
「適任って、そんな私にできることなんて」
「わたしが知る限りでは、フランドール様のお力が一番適してるかと」
「だ、ダメ! いくら三号の頼みでも破壊の目の力は」
「いいえぇ。そんな物騒な話ではありませんよ。力と言っても、知力の方です」
そうして紙切れをテーブルの上にさし出す。
フランドール様はそれを手に取り、不思議そうに眺める。
「なにこれ?」
「それはスペルカードと言いまして、この度博霊の巫女によって制定された「スペルカードルール」という決闘法に用いられるものです」
で、研修で教わった通りのルールを説明してから実際の技を――室内なので小規模にして――展開してみせる。残念ながら研修で組んだものそのままなので適当に弾をばら撒く程度の動きしかできないのだけれど、説明するには十分だ。
で、弾幕を消して再びフランドール様に向き直る。
「最初の本題に戻らせていただきます。以上のようにスペルカードルールの技を色々と作ることになったのですが、フランドール様なら何かいい案をいただけるのでは? と思ったのです」
「え。そ、そうかなぁ」
「はい。パチュリー様や咲夜さんの模擬戦を見て思ったのです。これはとてもパズルっぽいなと」
それを言った時には、フランドール様はもう何も聞いていないような状態だった。ノートと筆記用具を取り出してきて、思案しながら何か書いていく。
よし、勘は正しかった。フランドール様は見事に食いついている。
――思えば、この時のわたしは危機感が薄れていたのかもしれない。
しばらくした後に「できた!」と言って見せてくれたスペルは、わたしの想像を遥かに超えた鬼畜な内容のものであった。
「これはね、外から来た本にある『レーヴァテイン』っていう武器をモチーフにしたスペルなんだ。知ってる? レーヴァテイン」
「いいえ。まったく」
「どこかの神話の、会話の中にだけその存在が示されている武器なの。ある怪物を倒すためにはこの武器でなければならない。けれどレーヴァテインを手に入れるためにはその怪物の尾羽がいる。正攻法ではどうやっても解決しない、堂々巡りの謎かけになっているわけ。だから本当は正体なんて誰も知らない。でも正体を知らないからこそ、色々な説や解釈が存在していて、剣だけじゃなくって投槍や矢なんじゃないかとも言われている。このスペルカードではそういう武器としての多面的な解釈を表現してみましたー。メインは詩的表現で剣っていう意味からそのままこう、ズバーっと」
明るく言ってもヤバいものはヤバい。
そんな調子でフランドール様は一旦ジクソーパズルを速攻で片付けてしまい、それからは延々とスペルカード作りに励むようになる。その内容を記したノートと言ったら……一度参考にならないかなーと覗き見してみたものの、あまりの数式の多さに読むのを断念してしまったくらい危ない。自分のスペルは身の丈にあったものを自作するとして、これの練習相手してーとか言われたらマジでどうしよう。勝てる気がしない。
もしかして、これはやらかしてしまったと言うのだろうか。
◇
ある日の定時報告の時だ。
ここのところは食欲についてを重点的に報告しているので、今日もそのラインに沿った報告を行い、無事終了――と思いきや、いつもなら先に席を立つ咲夜さんが今日は紅茶を啜ったまま動こうとしない。何かを思考しているようにも見える。
終わりと言われなければ終われないのが下っ端の運命。少し待ってみてから、「どうしかしましたか?」とこちらから言葉をかけてみる。
すると咲夜さんは思考を切り上げ、こちらに向き直る。
「一つ気になっていたのですが、あなたの前任者とはどのような方なのですか?」
「え? えっと……二号さんですか」
「一号も含めて」
「実はですね。わたしそのお二方とは面識がないのです」
すると咲夜さんは驚いた顔をする。この表情はちょっと珍しい。
「……分かりました。では知っている限りを教えていただけますか?」
「それがですねー。二号さんが最初の頃はフランドール様とけんかしていたことと、二号さんも鬱ってリタイアしたことぐらいしか知らないんですよわたし」
咲夜さんの驚き再び。こうして見ると咲夜さんの表情変化はわりと面白い。分かり辛いので見逃すことが多いんだろうきっと。
「誰にも聞かなかったのですか?」
「そうですね」
「気にならないのですか?」
「そう言うと嘘にはなりますけれども」
嘘にはなるけど、聞くに聞けなかったというか。
咲夜さんは一旦何か強く語ろうとして――それを全てため息に変換する。
「前々から思っていたのですが、三号さんも結構ズレていますね」
「わたしも。ということは他にもズレているお方はいるのでしょうか」
「私です」
「自覚はあったんですね」
「とにかく、誰も前任者のことを語らないしあなたに教えようとしなかった。あなた自身も積極的に知ろうとしなかったと」
「そういうことです。暗黙の了解というやつでしょうか」
「……前任者については個人的な興味からだったけれど、これは客観的な忠告として提言しておきます。取り返しのつかない事になる前に、前任者のことを知っておきなさい」
「そんな大げさな」
「ではどうして、二号さんは引き継ぎもせず去ってしまったの?」
今まで考えまいとしていた部分が容赦なく踏みぬかれていく。
思えば、いつの間にかわたしはこの仕事を気に入っていた。だからでこそ自分から壊してしまうような真似を一切してこなかった。しかし咲夜さんの忠告の通りだ。ここまで来てしまって一番気をつけなければいけないのは不可抗力によるうっかり。それを防ぐために必要なのは、過去の出来事。
「私は詮索しません。だからやるなら、あなたがやりなさい」
それで終わりということらしい。紅茶を飲み干した咲夜さんは、とうに空になっていたわたしのカップもトレイに乗せて立ち去って行く。
その後ろ姿を見送りつつ、思わずため息。
だって、聞くにしたってどうやって聞き出せというのだろうか。当時のことを知っている者はごく限られている。メイド妖精は全滅。あとはレミリアお嬢様か、パチュリー様、小悪魔さんはちょっと怪しいか? 美鈴さんは協力的だけれど本気で回避に回られたら一番口達者なのは確かだ。あとはフランドール様自身。
うっわ。誰一人として適任がいない。一番マシそうなのがフランドール様当人とか。
◇
「ねえ、三号。狂うってどういうことだと思う?」
ある日のこと。何かの本を読み終えたフランドール様が、しばらく考え込んだ果てに出したのが今の言葉である。
最近のメイド妖精の噂では、地下室には狂った魔法少女が居て、災厄が訪れた時に地上へ現れ全てを解決してしまうんだけど、普段はイタすぎるから幽閉されている。とヒドイ言われようだけれど「狂っている」というフレーズは未だに健在だ。
そんな風に言われている方に、自分の考えとか安易に言えたものではない。
「一般的に狂うということは、正常でなくなってしまうということですね」
「そうだね。うんまったくその通りなんだ」
するとフランドール様が、読み終わった本を乱暴に卓上へ投げ出す。タイトルは「人間失格」ぱっと見危ない感じだが、フランドール様はそれを鼻で笑う。
「こんなの全然狂ってない。でも狂気に見えるから、みんな勘違いするんだ」
それから、完成して壁にかけてあるジグソーパズルに近づいて、ピースを一つ抜いて、無理やり逆さにしてねじ込んでしまう。
「三号。これは狂ってるって言える」
「言っていいと思います」
「じゃあ、これは?」
先ほど逆さにしたピースを元に戻して、今度はパズル全体を逆さにしてしまった。
「……難しいですね。どちらかと言うならさっきの方が狂っているかなと」
「よくできました。それでいいんだよ、狂うってこういうこと。正常から転げ落ちてしまうことなの。
この本の主人公は、狂ったんじゃない。最初からそういう風に生まれただけ。人間とはかくあるべきなんていう常識に憧れて、憧れで終わらせてしまっただけの人間。正気を知らない者は、他人と違うおかしな者でも、そのおかしな気がそいつの正気でしかない。でも人間はそういう想像をしないから全部狂気に放り込んでしまう」
なるほど。気が狂うということは、元々が正気であることが前提なんだ。でなければ『狂え』ない。最初から狂っているのならば、それも狂ったとは言えない。今読んだお話の主人公はこの分類で行くなら最初から狂っている――それが正気の人間。しかし普通の人との正気との摩擦、軋轢によって狂人認定されてしまったと。
「これ、よく覚えておいてね」
「大丈夫です。ばっちり理解しました」
……だとすると、フランドール様は元々正気で、どこかで『狂った』のだろうか。
考える前に「それ返してきて」と強い口調で言われたので、直ちに実行に移す。あれは間違いなく苛立っているので、下手に一緒に居ない方がいい。そう思ったのはフランドール様も同じらしく「今日は軽めにしといて」と声をかけてくれた。では作戦変更、本日は警戒レベルを引き上げてお仕事いたしましょう。
そう言えば、そういう方向のことって考えてみたことが無い。
フランドール様は、一体どう狂っているのだろうか。
フランとの会話にニヤニヤします。咲夜さんのセリフで気づきましたが、三号さんもすげえ大物ですね。
にしても、何を持って恋の迷路やらQEDなんぞ作ったんですかフランさん。
理由があるのか
気になるので前作も読んできます!面白かったです
やはり面白い。三号がほんと好き。
続きも楽しみにしています。