京都四条から阪神電車で南下する。目的は宇治駅。
宇は兎に通じ、大分の宇佐と同じく、ここ宇治でも兎は神格化されている。
しかしそのようなことは彼にとってはどうでも良かった。目的は兎でなく、鬼だったから。
「・・・でっか・・・てういか、広っ・・・ていうか、多っ・・・」
電車を降り、大通りに出るなり彼はつぶやいた。
一言目は橋の感想であり、二言目は川幅の感想。三言目は河の水の流量についての感想だった。
「こんなとこに22日浸かるぅ・・?ありえへん・・・それこそ、鬼の所業やん・・・」
少年は一人つぶやきながら宇治駅を背に橋へ向かう。
橋上には車が通る。二車線だ。この橋は当時からこの幅なのだろうか。まさか、いったいそれはどんな技術力だというのだ。
岩国の錦帯橋でさえ車を支えるような力学的構造をしていないに違いない。
「橋の端に柳とか・・・雰囲気でるやん。」
橋を渡りきると、そこには柳の木があった。
橋には柳が良く似合う。
京都の一条戻り橋のたもとにも柳があった。それは戻り橋のおどろおどろしい雰囲気を厭が応にも引き立て、ここがあっちとこっちの境界であることをこれでもかと知らしめていた。
柳の脇から河へと降りる石段が伸びる。河を近くで眺めよう、ついでに興奮と気候で火照った体を涼めよう。
少年は石段を下り、川原で一息ついた。
空がバカのように青い。遠くに連なる山の緑とそこにぶつかる気流から涌く入道雲のせいで余計映えて、それはもう美しく感じられた。
それに風が吹いている。河と道路の温度差のせいだ。海風やら陸風やらと同じ原理で風が吹いているのだ。気持ちが良い。
つばめがひっきりなしに橋桁から出ては戻ってくる。巣があるらしい。
「・・・ここがどういう場所かわかってんのかな・・・妬まれるで・・・」
この橋の、あの女の前で子供の養育行為などを行うとは。そのつばめ、無事に生育できると思うな。
少年はダムの放流で荒れ狂う河を睨む。
・・・緑眼が川底から覗き込む。
グリーンアイドモンスター。昔の人は嫉妬をそう呼んだ。
その人は思いのままになる世界を牡蠣にたとえるような逸脱したセンスの持ち主だ。嫉妬が緑など、一般には受け入れられるまい。
なのに今では。緑・・嫉妬の色だ。そう理解してしまう。それも全て、あの女が悪い。
「・・・・いつになったら。離れてくれる?」
不意に。少年は虚空に問うた。
「ごめん。無理。」
女は常に。問いかけに答えてくれる。
「・・・・妬ましいのは、どっち?」
「あら。選択を迫るなら、選択肢を出さないと。はい・いいえだけじゃ困るけどね。」
「ドラクエじゃあるまいし。・・・自由に動ける身体か、自由に変化する世界か。」
それでも求められるままに選択を迫る。
「そうね・・・。それなら。むしろ、自由にならない心が妬ましいわ。」
「・・・・嫉妬に狂ってる割には、朗らかじゃないか。」
まともな回答は期待していない。だからこっちもまともな返しは期待させない。
「そう見える?それならあなたは幸せってことよ。良かったわね。」
水橋パルスィは、とびっきりの笑顔を見せた。
だめなのだ。この笑顔を見せられたら。
ただ押し黙って頬を赤くするしか仕方なくなるのだ。
それがどういう感情なのかは少し説明に難いが。きっと、照れと、恥と、哀しさを混ぜればその感情になるはずなのだ。
「じゃあね。また、いつでも来なさいよ。」
「好きで来てるのかな。それとも、呼ばれちゃってるのかな。」
「さあ。ね、」
嫉妬に狂っている割には朗らかな笑顔を見せる、いや、一瞥だけならそうと思わせる。
だが、やはり、
良く見れば土気色の彼女のその頬を見るたびに、俺は、なんとしてもここに来なければならないような、筆舌に尽くしがたい焦燥感に襲われるのだ。そして彼女はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、定期的に訪れる俺を見ては突き放すでもなく近づけるでもなく、ただ、静かに話し相手を演じてくれるのだ。
せめて、いっそのこと、突き放してくれたならば。
せめて、いっそのこと、その腕で引き寄せてくれたならば。
しかし何も叶わない。
俺は、俺はきっと、このまま彼女に一方的な好意を寄せて、ここに通いつめるだけなのだろう・・・。
本当に。
本当に、妬ましい・・・・・・・。
宇は兎に通じ、大分の宇佐と同じく、ここ宇治でも兎は神格化されている。
しかしそのようなことは彼にとってはどうでも良かった。目的は兎でなく、鬼だったから。
「・・・でっか・・・てういか、広っ・・・ていうか、多っ・・・」
電車を降り、大通りに出るなり彼はつぶやいた。
一言目は橋の感想であり、二言目は川幅の感想。三言目は河の水の流量についての感想だった。
「こんなとこに22日浸かるぅ・・?ありえへん・・・それこそ、鬼の所業やん・・・」
少年は一人つぶやきながら宇治駅を背に橋へ向かう。
橋上には車が通る。二車線だ。この橋は当時からこの幅なのだろうか。まさか、いったいそれはどんな技術力だというのだ。
岩国の錦帯橋でさえ車を支えるような力学的構造をしていないに違いない。
「橋の端に柳とか・・・雰囲気でるやん。」
橋を渡りきると、そこには柳の木があった。
橋には柳が良く似合う。
京都の一条戻り橋のたもとにも柳があった。それは戻り橋のおどろおどろしい雰囲気を厭が応にも引き立て、ここがあっちとこっちの境界であることをこれでもかと知らしめていた。
柳の脇から河へと降りる石段が伸びる。河を近くで眺めよう、ついでに興奮と気候で火照った体を涼めよう。
少年は石段を下り、川原で一息ついた。
空がバカのように青い。遠くに連なる山の緑とそこにぶつかる気流から涌く入道雲のせいで余計映えて、それはもう美しく感じられた。
それに風が吹いている。河と道路の温度差のせいだ。海風やら陸風やらと同じ原理で風が吹いているのだ。気持ちが良い。
つばめがひっきりなしに橋桁から出ては戻ってくる。巣があるらしい。
「・・・ここがどういう場所かわかってんのかな・・・妬まれるで・・・」
この橋の、あの女の前で子供の養育行為などを行うとは。そのつばめ、無事に生育できると思うな。
少年はダムの放流で荒れ狂う河を睨む。
・・・緑眼が川底から覗き込む。
グリーンアイドモンスター。昔の人は嫉妬をそう呼んだ。
その人は思いのままになる世界を牡蠣にたとえるような逸脱したセンスの持ち主だ。嫉妬が緑など、一般には受け入れられるまい。
なのに今では。緑・・嫉妬の色だ。そう理解してしまう。それも全て、あの女が悪い。
「・・・・いつになったら。離れてくれる?」
不意に。少年は虚空に問うた。
「ごめん。無理。」
女は常に。問いかけに答えてくれる。
「・・・・妬ましいのは、どっち?」
「あら。選択を迫るなら、選択肢を出さないと。はい・いいえだけじゃ困るけどね。」
「ドラクエじゃあるまいし。・・・自由に動ける身体か、自由に変化する世界か。」
それでも求められるままに選択を迫る。
「そうね・・・。それなら。むしろ、自由にならない心が妬ましいわ。」
「・・・・嫉妬に狂ってる割には、朗らかじゃないか。」
まともな回答は期待していない。だからこっちもまともな返しは期待させない。
「そう見える?それならあなたは幸せってことよ。良かったわね。」
水橋パルスィは、とびっきりの笑顔を見せた。
だめなのだ。この笑顔を見せられたら。
ただ押し黙って頬を赤くするしか仕方なくなるのだ。
それがどういう感情なのかは少し説明に難いが。きっと、照れと、恥と、哀しさを混ぜればその感情になるはずなのだ。
「じゃあね。また、いつでも来なさいよ。」
「好きで来てるのかな。それとも、呼ばれちゃってるのかな。」
「さあ。ね、」
嫉妬に狂っている割には朗らかな笑顔を見せる、いや、一瞥だけならそうと思わせる。
だが、やはり、
良く見れば土気色の彼女のその頬を見るたびに、俺は、なんとしてもここに来なければならないような、筆舌に尽くしがたい焦燥感に襲われるのだ。そして彼女はそんな俺の気持ちを知ってか知らずか、定期的に訪れる俺を見ては突き放すでもなく近づけるでもなく、ただ、静かに話し相手を演じてくれるのだ。
せめて、いっそのこと、突き放してくれたならば。
せめて、いっそのこと、その腕で引き寄せてくれたならば。
しかし何も叶わない。
俺は、俺はきっと、このまま彼女に一方的な好意を寄せて、ここに通いつめるだけなのだろう・・・。
本当に。
本当に、妬ましい・・・・・・・。
文章を書く上での最低限のルールを覚えてから書いてください。
推敲って知ってますか?
他の作品と考えれば非常に読みやすく、面白い作品だと思います。
良いところ
読んでいて疲れない。
長い割にはすらすら読める
パルスィが好きだ。
今までに無いジャンル
悪いところ
東方とは離れている
若干文がおかしい
くらいですかね
これで挫けないでくださいね! 次回作期待しております。
あとこれは御節介になるかもしれませんが、モノ書き一里塚 というサイトを一読することをお薦めします。
書いたのだと思いますがすみません、何が言いたいのかさっぱり分からないのです。
他の点については既に触れられているようなので、この辺で。
一度書き上げた文章をもう一度読み直して、おかしい所は修正する。
推敲を重ねた上で投稿するほうがミスも減りますし、
作家さんは皆当たり前にやっているはずのことです。
それでも誤字脱字等が出てしまうのは長文であるほど仕方の無い事だとは
思いますが、その形跡が見当たらないのも残念です。
アドバイス等は他の方から出ているので、無しで(何様
実体験……わかる気がします……
ただ何を伝えたいのかが分かりづらいので、あまり面白くはなかったと言うだけで。
かなり勿体無いと思います。
周りの作品に比べて確かに文章が稚拙な印象を受けました。
推敲が不十分、もしくは全くされていないという意見が多いようですが、
反面すらすらと読める文体になっているのに作者の確かな力量が感じられました。
パルスィと宇治橋を使った今回の手法も悪くないと思います。
次の作品も期待してます!