通りゃんせ通りゃんせ
ここはどこの細道じゃ
人喰い様の細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ
腹が鳴るから通しゃせぬ
母が握ったおにぎりを
あなたに納めて参ります
一つはよいよい二つはやらぬ
満たしながらも
通りゃんせ通りゃんせ
額に浮かぶ汗の玉を何度も拭いながら少年は一人森の中を歩いていた。腕に付けてある時計を見て今日の予定を思い出す。この時間ならもう目的地には付いてるはずなのに。背負っているリュックサックからしおりを取り出す。一番後ろのページに書いてある地図を確認するがどこをどう見てもここの様な森は書いてなかった。全く意味のなくなったしおりをしまい、棒になりつつある足を前に進める。その後ろ姿を金髪の女性が見ていた。
深い霧に包まれている湖に辿り着いた少年は近くの木の根元に腰をおろしリュックからお弁当のおにぎりとお茶の入った水筒を取り出す。太陽はもうてっぺんを過ぎており長い時間歩いてるため少年はお腹を空かせていた。少年がおにぎりを食べようとしたところ後ろでがさっと音が鳴った。少年が振り返ると長い金髪の女性が立っていた。
金髪の女性は笑いながら少年に言いました。私はお腹が空いてると。だから、あなたを食べてもいい?と続けようとする前に少年はすでに行動していました。少年は二つしかないおにぎりのうち一つを金髪の女性に差し出していました。いつまでも受け取らない金髪の女性の手を取り少年はおにぎりをのせました。それでも自分から目を離さない金髪の女性に少年は、僕の分まであげないよと自分のおにぎりを口に運びました。金髪の女性も手の中にあるおにぎりを口に運びゆっくりと噛み締めじっくりと味わいました。
二人がおにぎりを食べ終え、少年がリュックサックを背負って歩き出そうとしたところ金髪の女性に呼び止められた。金髪の女性は、お腹を満たしてくれたお礼にと自分の髪を一房ほど鋭い爪で切ると鮮やかな手つきで組紐にすると少年の手首に巻き付けた。そして少年に向こうにある長い階段を上れというと森の奥へと消えて行った。
居りゃしゃんせ居りゃしゃんせ
ここは闇の細通じゃ
妖怪様の細道じゃ
ちっと答えて下しゃんせ
土産無い者答えはせぬ
婆が握ったおにぎりを
あなたに全部差し上げます
一つでよいよい二つはいらぬ
話しながらも
通りゃんせ通りゃんせ
あの後、金髪の女性に言われたとおり長い階段を上るとそこには神社があり巫女さんがいた。巫女さんにさっき会ったことを話すと難しい顔をしたあと神社に入れてもらった。巫女さんの話を聞くと僕はもう家に帰れないらしい。結界?能力?神隠し?理由を聞いたけどよくわからなかった。今日はこの神社に泊まることになった。あと、巫女さんに外を歩くときは組紐を外してはダメだと言われた。
次の日、巫女さんに連れられ人里に来た。巫女が話している青い服を着たお姉さんと隣にいるおばあさん。今日から僕はおばあさんの家で暮らすらしい。その後人里の中をおばあさんと回っておばあさんの家に帰った。はじめて入るその家はなんだか懐かしい匂いがした。
その次の日、おばあさんにおにぎりを二つ作ってもらうと森に向かった。確かめたい事があったのだ。森に入って少しすると急に周りが真っ暗になった、と思ったら急に周りが明るくなって目の前に昨日の金髪のお姉さんがいた。僕はお姉さんに聞いた、お姉さんって人喰い妖怪?お姉さんは笑って答えた、その通りだ。今日はお前を食べてしまうかもね。お姉さんの八重歯がやけに光って見えた。
食べられたくなかったので二つのおにぎりを差し出すとお姉さんは一個だけ取ると、そっちはお前の分だろ?と笑っておにぎりに齧り付いた。僕も齧り付いた。その後は二人で話した。僕のことやお姉さんのことや僕のいた所のことや此処のことを。
帰りゃんせ帰りゃんせ
ここは誰の住む場所じゃ
妖怪共の住む場所じゃ
もっと居させて下しゃんせ
我が侭言う子は生かしゃせぬ
私が握ったおにぎりを
あなたにも一つ差し上げます
貴様がよいよい握りはいらぬ
別れながらも
通りゃんせ通りゃんせ
人喰い妖怪と人間の関係は何度か四季が廻った後も続いていた。だがその関係にも終わりが近づいていた。夜には雨が降りそうの曇天の空の日、その人間はぎこちない笑顔で私に会いに来た。いつもの様に一個ずつおにぎりを食べ始めるが、今日はなんだかあまりおいしくなかったし、話も頭に入ってこなかった。おにぎりを食べ終わりもうすぐ黄昏時になる頃人間は言った、今日は帰りたくないと。
人間は迫害を受けていた。人喰い妖怪と仲良くしている人間と仲良くなれば生贄にされてしまうと。人間は人の皮を被った妖怪だと。もちろんそんなことはありはしない。だが人間とは自分たちと違う考えを恐れるものだ。この関係を続ければもう二度とこの人間は戻れないだろう。だから、私はあなたを食べよう。これからずっと一緒にいられるよ?
鋭い爪で目の前の人間の服を切り裂く。人間は動かない。今度は頬を切り裂く。これでも人間は動かない。爪の先についた血を舐め取る。とても甘かった。顔が恐怖に染まるがまだ動かない。腕を斬り落とそうと振り落とした手が横から飛んできたお札によって弾かれる。人間も弾かれるように人里へと走り出した。
人間の姿が見えなくなってから振り返る。なんであんなことしたの?巫女がそう聞いてくるがおかしいことはないだろう。人喰い妖怪が人間を食べることに意味が必要か?そう答えると巫女はそう、と小さく呟いて私に向かってきた。頬に水が流れて空を見上げる。ついてないなぁ。最後ぐらい星空を見たかったのに。
会わしゃんせ会わしゃんせ
君はどんな妖怪じゃ
封印された妖怪じゃ
ちっと離して下しゃんせ
腹が鳴るから離しゃせぬ
彼女の為のおにぎりを
あなたに一つ差し上げます
一つはよいよい二つはやらぬ
並びながらも
通りゃんせ通りゃんせ
君はどうして僕のおにぎりを掴んでいるの?
お腹減った…。
なら一つだけあげよう。
……。
僕の分まであげないよ。
うん、一つでいい。
そうか。
お兄さんは何しにここに来たの?
君と二人でおにぎりを食べに。
そーなのかー。
いきなりですます調になったりならなかったりに違和感。
それと、どうして男が外の世界に帰れないのかも。
ただ、文章自体は良かったです。