それは尊敬するお姉様のマネをして、自分の部屋で優雅に紅茶を飲んでいるときだった。
私の目の前にこいしちゃんは唐突に現れ、満面の笑みでこう言った。
「フランちゃんおめでとう!」
「ありがとうこいしちゃん」
おめでとう、といわれて嬉しくならない奴なんかいない。私も無意識に顔が緩み、笑顔でこいしちゃんにお礼を返す。
ただひとつ問題があるんだ。かなり重要な問題が。
「私って何かおめでたい事あったっけ?」
「もー、フランちゃんったら隠しちゃって。照れ屋さんなんだから♪」
んー? 何かおめでたいことあったしら私? 最近やった事といえば尊敬するお姉様の持ってたケチャップを破壊して体をネチョネチョにしたり、尊敬するお姉様の持ってたヨーグルトをぶちまけて服をドロドロにしたくらいだし。
もしかして私の頭がおめでたいって事かしら? いやいや、こいしちゃんに限ってそんな言うわけが無いじゃない。もしやこいしちゃんボケちゃったのかなぁ?
と、私がいろんな考えを思い浮かべている間に、ニヤニヤと楽しそうな顔をしたぬえも部屋に入って来てこう言った。
「フランおめでとう!」
「んー? ありがとうぬえ。って貴方もなの?」
こいしちゃんに続いて、ぬえにまでおめでとうなんて言われるとは、だんだん不気味になってきた。しかも、二人とも気持ちが良いくらい笑顔だし……。
何がおめでたいんだろう本当に? もう面倒だから二人に聞いちゃうか。
「私って何かおめでたい事あったかしら?」
「そんな事決まってるじゃないの。ねーぬえ♪」
「そうだよねこいし。フランも誤魔化かすのが得意だなー、本日の主役じゃないか」
主役? 何かしらそれ。パーティーは別に今日開く予定はないし。特にイタズラもする予定もないし。
え? もしかして次回の自機に抜擢されるのかしら私? それで私におめでとうって言ってくれたの二人とも?
うー、なんていい友達を持ったのかしら私は。なんだか感動で涙が出てくるわ。
みんなありがとう! 今からでも二人に飛びつきたい気分だわ。いや、もう飛びついちゃえ!
と、二人に飛びつこうとしたところで一旦思いとどまる。二人が何かを大事そうに握り締めているんだ。何か、嫌な予感がするものを。
「その二人の手に持ってるのって何?」
「お豆だよフランちゃん♪」
「節分に使う豆に決まってるじゃないか。今日は豆を撒きに来たんだからね。ふっふっふ、主役のフランに存分に撒いてあげるよ」
前言撤回。
そういうことか! くっそーなんて友達を持ってしまったんだ私は。
こいしちゃんは純粋に楽しんでるとして(それもそれで迷惑だけど)、ぬえのいやらしい笑みは普段やられてる仕返しって事ね。と言うより、
「節分なんてずいぶん前に終わったじゃない! もう紅魔館でも十分撒いたし恵方巻きも食べちゃったわよ!」
「そんな事知ってるよフランちゃん。地霊殿でも鬼の勇儀さんを呼んでお豆撒いちゃったし。お空の制御棒にお豆を詰め込んで盛大に発射したんだよ! まぁ、あの人華麗に避けちゃったんだけどね。おまけにお空は落ちた豆を食べだして止めるの大変だったんだよねー」
だから今日は頑張って当てるよ! って張り切られても困るよこいしちゃん。
「命蓮寺でももうやったよ。星に鬼役をやってもらったんだ。本人は頑張って「がおーがおー」言ってたけどあんまし迫力なかったんだよねー。あと、最後に年齢の数だけ豆を食べるって言うから、聖の豆の数を見に行こうとした所でなぜか記憶が飛んでるんだよ。確か最後に南無三―――z! って言葉を聞いた気がするんだけど……」
それはホラーね……。聖の豆の数を目撃してたらきっと気絶じゃすまなかったわよぬえ。
「まあ、二人とももうやったんでしょ? なら良いじゃないの、今更やんなくても」
「駄目だよフランちゃん!」
「なんでよ?」
「面白いからに決まってるじゃないか。そうだよねこいし」
「うん♪」
こいつら……。確かに逆の立場だったら私もやめないだろうけど。
「じゃあフランちゃん、私のお豆をいっぱい当ててあげるよ♪」
「行事だから仕方ないよね。私も涙を飲んでフランにたくさんぶつけてあげるよ」
「何が涙を飲んでよ! 嬉しそうな顔してるじゃないのよぬえ!」
やばい、二人とも撒く気まんまんだ。ここは回避しないと駄目だ。ぬえとか考えられないくらい怨念を込めて投げそうだし。こいしちゃんもなんだかんだで無邪気を装って手加減しなそうだし……。
考えろ私、この最悪の状況から回避する方法を。何か、何か案を!
【そのとき、フランの頭に電流走る……!!!】
はっ! そうだ、これだ! あるじゃないの、この最悪の状況を切り抜ける最高の案が!
「二人とも残念ね。悪いけど、私は主役になれないわ」
「何を言ってるんだよフラン、鬼の貴方が主役になれないなら誰がなれるんだよ。もう悪あがきはやめなって」
「そうだよフランちゃん。安心して、痛くないように優しく私のお豆を当ててあげるから♪」
ふふっ、二人とも今のうちに笑っておくがいいわ。だけどね、最後に笑うのはこのフランよ!
「ぬえ、こいし。貴方達は私がなんだと想ってるのかしら?」
「え? 吸血鬼でしょフラン?」
「ふっふっふ、残念だったわね! 私は吸血鬼じゃないわ、魔法少女なのよ!」
「「な、なんだってー!!!」」
決まった。最高の解決策だわ。私ですら忘れそうな設定だけど、私は魔法少女なのよ!
「そんな、フランちゃんが魔法少女だったなんて……」
「知らなかったよ……」
こいしちゃんもぬえも衝撃の事実に落胆が隠せないようね。
だけどガッカリしすぎでしょ? 膝が地面に付くまで倒れるなんてどんだけ豆を私に投げたかったのよ。
「じゃあこの豆どうしようかぬえ?」
「食べるしかないじゃんこいし……」
とはいえ、こんな奴らでも私の大事な大事な友達。二人の暗い顔なんて見たくはないわね。
「安心しなさい貴方達」
「「え?」」
落胆する二人の方に手を乗せ、私が二人に希望の言葉を伝える。
「この上に、私のお姉様がいるわ。あいつは嬉しいことに吸血鬼だから存分に豆をぶつけられるわよ!」
それを聞いた二人の顔に笑顔が蘇る。よかった、やっぱりこの二人は笑っているほうが見ているこっちも幸せになるわね―――。
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「じゃあフランちゃんのお姉ちゃんにお豆を当てて来るね♪」
「フランも一緒に行こうよ」
一緒に行く? 冗談じゃないわぬえ、流れ豆にでも当たったら痛いじゃない。
「ぬえ、こいしちゃん。私は飲みかけの紅茶を飲んでから行くことにするわ!」
もちろん行く気なんて無い。
じゃあ頑張ってね、と私はヤル気まんまんの二人の背中を叩き見送る。
二人もそれで納得してくれたのか、豆を握り締めて楽しそうに私の部屋を後にしていった……。
さて、ではまた尊敬するお姉様を見習って優雅にお茶でも飲みますか。あいつの「ぎゃおー!」って悲鳴をオカズにしながら……。
あと、こいしちゃん自重w
ぬえぬえ。今こうして生きていられることを幸せに思うんだ……
こいしちゃんが「お豆」って言うたびに心拍数が跳ね上がるんですが。なぜでしょう?
気になったところがいくつか。
「仕返しって事ね。とゆうより、」と言うより?
「あの人華霊に避けちゃったんだけどね」華麗に?
「私がなんだと想ってるのかしら?」思う?
いい雰囲気のお話でした。ほのぼのできましたよ。
でもよかった、そこに反応してるのが自分一人だけじゃなくて。
しかしフランちゃん、お姉さまにはもう少しやさしくしてあげてw
>私のお豆
えっ!?こいしちゃんそれってどういう(ry
あとこのフランちゃんはお姉様を愛してはいそうだが尊敬はしてないだろ絶対www
分類検索に引っ掛かるように、タグにフランドール、こいし、ぬえを入れてはどうでしょうか
てな感じで、レミリア見栄張りそうwww
でも俺のフランのイメージもこんなもんだからひどく自然に読めましたv