Q,幻想郷で腋キャラと言えば?
A,博麗霊夢
これは今現在幻想郷においてもはや共通認識となっていることである。例え博麗霊夢本人が否定したとしても、本人以外の大多数がこの意見を支持することはまず間違いがない。よって幻想郷における腋キャラとは博麗霊夢のことであると言える。
しかし私――射命丸文はこの定義に疑問を持っている。
何故博麗霊夢が腋キャラとしてこうも広く認知されているのか?
それはただ単に幻想郷には他の腋キャラがいなかったからではないのか?
今現在は腋キャラではないとしても、調きょ……育成すれば必ず腋キャラとして名を馳せるであろう者もいるだろう。そう。私の部下、犬走椛のように。
私は椛こそが至高の腋キャラになりうると思っている。いや、思っているなどという言葉では足りない。これは確信だ。椛が腋キャラになればまず間違いなく霊夢を超えることが出来るだろう。
何故なら博麗霊夢の持つ属性は2つ。巫女さんと腋キャラ。対して椛も、現段階において犬耳と尻尾という同じく2つ属性を持っている。――しかしここに腋キャラという属性が加わればどうなるだろう。犬耳、尻尾、そして腋キャラ。合計3つもの属性を持つことになる。
2つと3つ。確かに数で見れば1つしか違いはないものの、しかしその差は天と地ほどにもあると言えるだろう。
……よし。
そうと決まれば早速「椛腋キャラ化計画」を実行に移すとしよう。
「もーみーじー。ちょっと来てー」
部屋の障子に向かって呼びかける。そうすれば「文様、お呼びですか?」とか言いながらすぐにやってくる可愛い椛なのである……が、今に限っては足音一つ聞こえない。寝ているのだろうか? 仕方がないので彼女の部屋まで行くことにしよう。
「椛ー、私が呼んでいるのだからさっさと来なさーい」
言いながら椛の部屋の襖を開ける。
しかし部屋の中には誰もいなかった。
「外に出ているのかしらね……?」
今日は椛の哨戒任務は休みだったはずである。普段のネタ帳とは別の手帳を開き、椛の仕事の日程を確認する。……うん、確かに今日は非番である。
「なら恐らく河童のにとりの所にでも遊びに行っているのでしょう」
部下の勤務予定から交友関係までしっかり把握。清く正しい射命丸でございます。
「待ってなさい椛。すぐに私があなたを人気者にしてあげるからね」
◇ ◆ ◇
「椛? 残念だけどここには来てなi」
「ご協力ありがとうございました」
どうやら私の予想は外れてしまったようで、にとりの所に椛はいなかった。
「しかしにとりと一緒にいないとは……さてさてどこへ行ったのやら」
非常に残念なことに私の手帳には椛の交友関係は『椛――にとり』としか書いていないため、正直な話にとりの所にいないとなると、どこへ行ったのかさっぱり分からないのである。なんていうかそんな交友関係を手帳に書くのは非常にスペースの無駄遣いという気がしないわけでもないのだが一応念のためというやつだ。
「私の情報網をかいくぐって新しい友人を作るとは……椛も成長したものね」
というかそもそも私の知らない友人の所へ行ったとも限らない。暇つぶしに人間の里なんかに遊びに出て空箱の中に入って『捨てられた子犬ごっこ』なんてやっているのかもしれない。一体誰が拾うんだそんなもの。仕方がないから私が引き取りましょう。異論は認めません。
閑話休題。とりあえず最近の椛の行動を思い返してみよう。
妖怪の山にある天狗の住処の自室へと戻り、今まで書きためた新聞記事やら日誌やら鍵をかけているマル秘手帳なんかを隅々までチェックする。時々「あぁこれ懐かしいなぁ」などと当時を思い出してしまい作業が滞ってしまったりするのは普段ならよくあることなのだが、今回に限り「椛を腋キャラにする」という確固たる使命があるためそのようなことはなかった。
そして私は一枚の新聞記事を発見した。『下っ端哨戒天狗、大ガマに食べられる』という小見出しのついた記事だ。
「そういえば――」
そういえばこの写真を撮ったとき、椛のそばに別の妖怪がいたはずだ。灰色のネズミの妖怪が。
慌てて手帳をチェックする。どうやらその妖怪ネズミはナズーリンという名前で最近人間の里にできた命蓮寺という寺に住んでいるようだ。
もしこのナズーリンとやらが椛と交友関係を結んでいたとしたら。
「――行ってみる価値はありますか、ね」
◇ ◆ ◇
「あ、いた」
山を飛び出してほんの数分。私はすでに命蓮寺を視認できる所まで来ていた。
そして見つけた。私の可愛い椛が命蓮寺の入り口付近であのナズーリンとやらと話しているのを。
――『お昼ご飯まで頂いてしまって……ありがとうございます』
――『いやいや気にしなくていいんだよ。是非また来てほしい』
耳をそばだてるとそのような会話が聞こえてきた。天狗の耳は地獄耳。
どうやら椛はナズーリンとやらに誘惑されて命蓮寺でお昼を頂いていたようだ。わざわざ外で食べなくても私が何か作ってあげたのに。
まぁ過ぎたことを嘆いても仕方がない。とりあえず今はナズーリンとやらから椛を奪取することに専念する。
最速の更に先へ。
今限界を超えずにいつ超えるんだ……!
チャンスは一瞬。
椛がぺこりと下げていた頭を上げたその瞬間。
椛の身体を抱きかかえる。衝撃を与えないよう、優しく包み込むように。
そして飛翔。
あまりに高速で飛んだために発生した衝撃波で石畳にひびが入った気がしたが構わず飛翔。
十分に距離を取ってから振り返ると、呆然とした表情であらぬ方向を見つめているナズーリンとやらが見えた。ふふん、追いかけられるものなら追いかけてきなさいな。
「文様っ!? これは一体どういうことですか!?」
あ、忘れてた。
「あなたを呼んだのになかなか来ないから私から迎えに来ちゃった☆」
「こんなやり方を『迎えに来た』とは言いません!」
「うるさいわねぇ。上司の言うことには絶対服従でしょ? 忘れたの?」
「っ! すいません……」
「分かればいいのよ。帰るわよ」
「はい……」
◇ ◆ ◇
天狗という種族には生まれながらにして純然たる上下関係が存在する。例えば白狼天狗である椛が烏天狗である私の上司になることはできないというように。例えば私が大天狗のような管理職に就くことはできないというように。そして天狗の社会は絶対的な封建社会であるため、自分より上の天狗の命令には逆らうことができない。もし逆らうようであれば何らかの罰則があり、最悪の場合妖怪の山からの退去命令もあり得るのだ。
まぁ簡単に言えば私には椛を好きなようにできる権限があるというただそれだけのことで。
「ほら、次はこれを着なさい。巫女装束。これを着ればあの腋巫女霊夢と同等以上の腋キャラになれるわよ」
「い、嫌です!」
「あら~? そんなこと言っていいのかしら~?」
「うぅ……権力濫用ですよぅ……」
「ふふ、権力って言うのはね、椛。使うためにあるのよ」
椛はとても物分かりが良いので私がちょっと『お願い』するだけで喜んで私の要望に応えてくれる。
「じゃあ次は台詞ね。私の後に続けて言いなさい。『あたいの腋に、キスをしなよっ!』」
「あ、あたいの……って何言わせようとしてるんですかっ!」
「あなたを人気者にするため私なりに考えたことを実践させているのよ」
「別に私は今のままでいいです! 無理矢理キャラづくりとかしたくないですっ!」
「『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』と外の世界では言うらしいわよ?」
「腋キャラになることが精神的な向上なんですか!?」
とまぁそんな感じでしばらく椛で遊んでいたのだが。
どうやら椛もいい加減に我慢の限界がきたらしく。
「いい加減にしてくださいっ!!」
と、上司が部下に叱られるという天狗社会にあるまじき光景を繰り広げてしまった。
もちろん部下が上司に逆らったと言うことで罰則を与えることもできたのだが私はそんなことはしない。だってそんなことをしたら椛がかわいそうだもの。
しかし「上司が部下に叱られた」というのは私としてもちょっと格好がつかないので。
私は椛の秘蔵アルバムを整理しながら次なるプロジェクト――「椛忠犬化計画」の構想にふけるのであった。
A,博麗霊夢
これは今現在幻想郷においてもはや共通認識となっていることである。例え博麗霊夢本人が否定したとしても、本人以外の大多数がこの意見を支持することはまず間違いがない。よって幻想郷における腋キャラとは博麗霊夢のことであると言える。
しかし私――射命丸文はこの定義に疑問を持っている。
何故博麗霊夢が腋キャラとしてこうも広く認知されているのか?
それはただ単に幻想郷には他の腋キャラがいなかったからではないのか?
今現在は腋キャラではないとしても、調きょ……育成すれば必ず腋キャラとして名を馳せるであろう者もいるだろう。そう。私の部下、犬走椛のように。
私は椛こそが至高の腋キャラになりうると思っている。いや、思っているなどという言葉では足りない。これは確信だ。椛が腋キャラになればまず間違いなく霊夢を超えることが出来るだろう。
何故なら博麗霊夢の持つ属性は2つ。巫女さんと腋キャラ。対して椛も、現段階において犬耳と尻尾という同じく2つ属性を持っている。――しかしここに腋キャラという属性が加わればどうなるだろう。犬耳、尻尾、そして腋キャラ。合計3つもの属性を持つことになる。
2つと3つ。確かに数で見れば1つしか違いはないものの、しかしその差は天と地ほどにもあると言えるだろう。
……よし。
そうと決まれば早速「椛腋キャラ化計画」を実行に移すとしよう。
「もーみーじー。ちょっと来てー」
部屋の障子に向かって呼びかける。そうすれば「文様、お呼びですか?」とか言いながらすぐにやってくる可愛い椛なのである……が、今に限っては足音一つ聞こえない。寝ているのだろうか? 仕方がないので彼女の部屋まで行くことにしよう。
「椛ー、私が呼んでいるのだからさっさと来なさーい」
言いながら椛の部屋の襖を開ける。
しかし部屋の中には誰もいなかった。
「外に出ているのかしらね……?」
今日は椛の哨戒任務は休みだったはずである。普段のネタ帳とは別の手帳を開き、椛の仕事の日程を確認する。……うん、確かに今日は非番である。
「なら恐らく河童のにとりの所にでも遊びに行っているのでしょう」
部下の勤務予定から交友関係までしっかり把握。清く正しい射命丸でございます。
「待ってなさい椛。すぐに私があなたを人気者にしてあげるからね」
◇ ◆ ◇
「椛? 残念だけどここには来てなi」
「ご協力ありがとうございました」
どうやら私の予想は外れてしまったようで、にとりの所に椛はいなかった。
「しかしにとりと一緒にいないとは……さてさてどこへ行ったのやら」
非常に残念なことに私の手帳には椛の交友関係は『椛――にとり』としか書いていないため、正直な話にとりの所にいないとなると、どこへ行ったのかさっぱり分からないのである。なんていうかそんな交友関係を手帳に書くのは非常にスペースの無駄遣いという気がしないわけでもないのだが一応念のためというやつだ。
「私の情報網をかいくぐって新しい友人を作るとは……椛も成長したものね」
というかそもそも私の知らない友人の所へ行ったとも限らない。暇つぶしに人間の里なんかに遊びに出て空箱の中に入って『捨てられた子犬ごっこ』なんてやっているのかもしれない。一体誰が拾うんだそんなもの。仕方がないから私が引き取りましょう。異論は認めません。
閑話休題。とりあえず最近の椛の行動を思い返してみよう。
妖怪の山にある天狗の住処の自室へと戻り、今まで書きためた新聞記事やら日誌やら鍵をかけているマル秘手帳なんかを隅々までチェックする。時々「あぁこれ懐かしいなぁ」などと当時を思い出してしまい作業が滞ってしまったりするのは普段ならよくあることなのだが、今回に限り「椛を腋キャラにする」という確固たる使命があるためそのようなことはなかった。
そして私は一枚の新聞記事を発見した。『下っ端哨戒天狗、大ガマに食べられる』という小見出しのついた記事だ。
「そういえば――」
そういえばこの写真を撮ったとき、椛のそばに別の妖怪がいたはずだ。灰色のネズミの妖怪が。
慌てて手帳をチェックする。どうやらその妖怪ネズミはナズーリンという名前で最近人間の里にできた命蓮寺という寺に住んでいるようだ。
もしこのナズーリンとやらが椛と交友関係を結んでいたとしたら。
「――行ってみる価値はありますか、ね」
◇ ◆ ◇
「あ、いた」
山を飛び出してほんの数分。私はすでに命蓮寺を視認できる所まで来ていた。
そして見つけた。私の可愛い椛が命蓮寺の入り口付近であのナズーリンとやらと話しているのを。
――『お昼ご飯まで頂いてしまって……ありがとうございます』
――『いやいや気にしなくていいんだよ。是非また来てほしい』
耳をそばだてるとそのような会話が聞こえてきた。天狗の耳は地獄耳。
どうやら椛はナズーリンとやらに誘惑されて命蓮寺でお昼を頂いていたようだ。わざわざ外で食べなくても私が何か作ってあげたのに。
まぁ過ぎたことを嘆いても仕方がない。とりあえず今はナズーリンとやらから椛を奪取することに専念する。
最速の更に先へ。
今限界を超えずにいつ超えるんだ……!
チャンスは一瞬。
椛がぺこりと下げていた頭を上げたその瞬間。
椛の身体を抱きかかえる。衝撃を与えないよう、優しく包み込むように。
そして飛翔。
あまりに高速で飛んだために発生した衝撃波で石畳にひびが入った気がしたが構わず飛翔。
十分に距離を取ってから振り返ると、呆然とした表情であらぬ方向を見つめているナズーリンとやらが見えた。ふふん、追いかけられるものなら追いかけてきなさいな。
「文様っ!? これは一体どういうことですか!?」
あ、忘れてた。
「あなたを呼んだのになかなか来ないから私から迎えに来ちゃった☆」
「こんなやり方を『迎えに来た』とは言いません!」
「うるさいわねぇ。上司の言うことには絶対服従でしょ? 忘れたの?」
「っ! すいません……」
「分かればいいのよ。帰るわよ」
「はい……」
◇ ◆ ◇
天狗という種族には生まれながらにして純然たる上下関係が存在する。例えば白狼天狗である椛が烏天狗である私の上司になることはできないというように。例えば私が大天狗のような管理職に就くことはできないというように。そして天狗の社会は絶対的な封建社会であるため、自分より上の天狗の命令には逆らうことができない。もし逆らうようであれば何らかの罰則があり、最悪の場合妖怪の山からの退去命令もあり得るのだ。
まぁ簡単に言えば私には椛を好きなようにできる権限があるというただそれだけのことで。
「ほら、次はこれを着なさい。巫女装束。これを着ればあの腋巫女霊夢と同等以上の腋キャラになれるわよ」
「い、嫌です!」
「あら~? そんなこと言っていいのかしら~?」
「うぅ……権力濫用ですよぅ……」
「ふふ、権力って言うのはね、椛。使うためにあるのよ」
椛はとても物分かりが良いので私がちょっと『お願い』するだけで喜んで私の要望に応えてくれる。
「じゃあ次は台詞ね。私の後に続けて言いなさい。『あたいの腋に、キスをしなよっ!』」
「あ、あたいの……って何言わせようとしてるんですかっ!」
「あなたを人気者にするため私なりに考えたことを実践させているのよ」
「別に私は今のままでいいです! 無理矢理キャラづくりとかしたくないですっ!」
「『精神的に向上心のないものは馬鹿だ』と外の世界では言うらしいわよ?」
「腋キャラになることが精神的な向上なんですか!?」
とまぁそんな感じでしばらく椛で遊んでいたのだが。
どうやら椛もいい加減に我慢の限界がきたらしく。
「いい加減にしてくださいっ!!」
と、上司が部下に叱られるという天狗社会にあるまじき光景を繰り広げてしまった。
もちろん部下が上司に逆らったと言うことで罰則を与えることもできたのだが私はそんなことはしない。だってそんなことをしたら椛がかわいそうだもの。
しかし「上司が部下に叱られた」というのは私としてもちょっと格好がつかないので。
私は椛の秘蔵アルバムを整理しながら次なるプロジェクト――「椛忠犬化計画」の構想にふけるのであった。
それにしてももみじかわいいよもみじ
大丈夫。そんなことしなくても椛は十分腋役だ。
もじもじしながら言わせるほうが威力上がりますよ!(ぁ
椛可愛いですね。 上司を叱ったりとか良かったです。
可愛い。突っつきたい。分かる、分かるよ文様。絶対椛は突っつきたくなる性格してるもん。
わざわざ風神録4面を今プレイして確認してきた、間違いない!
なんで今まで開いてると思ってたんだろ。なんかのイラストで見たのかな。