「前略、今頃あの世で仲良く乳繰り合っているだろうお父様とお母様。
お姉さまの部屋に入ったと思ったら、そのベッドに見知らぬ赤ん坊がいた場合、私はどうしたらいいのでしょう?」
……などと現実逃避している場合などではなく、私……フランドール・スカーレットは重々しくため息をつきながらその赤ん坊を抱きかかえた。
そう、赤ん坊だ。正真正銘、ほぼ全ての生命が生れ落ちる際の無防備な姿。か弱く脆弱で、少し吹けばすぐにでも死んでしまいそうな、そんな命。
それがなぜか、あいつ―――運命を操る吸血鬼、レミリア・スカーレットの部屋のベッドに眠らされていたのか。
食料……なわけはないか。私達姉妹はそもそもからして、普通の吸血行為というのをあまり行わない。
というのも、メイド長の咲夜が調理した料理だったり、あるいは紅茶などに血液が混ぜられているせいだ。
お姉さまは吸血するよりも紅茶のほうがよっぽど好きだなんて言ってるし、そんなやつが自室に食料として赤ん坊をおくなんてありえない。
……じゃあ、なんで?
そう思い始めた私の視界に飛び込むのは、ブルーシルバーの柔らかい赤ん坊の髪だった。
キャッキャッと嬉しそうに私に手を伸ばしてきて、ぺちぺちと頬を叩いてくる。
まだ碌に目も見えないだろうに、真っ赤な瞳が私を見上げていて、なんだかとても微笑ましい。
そこで、ふと気がつく。
なんていうか、この赤ん坊って髪の色といい瞳の色といい、そして顔立ちといい、ものすごく誰かを髣髴とさせるような……。
……っていうかさ、お姉様そっくりじゃん!!?
「小悪魔さぁぁぁぁぁぁぁん!!?」
「はーい☆」
「んんッ!!? いい返事たい!! コレはどげんことか説明ばせんねぇぇぇぇぇ!!?」
「妹様、混乱のあまり博多弁になってますよ?」
「やかましいよ!!」
私の声に何処からともなく小悪魔が登場。
赤い髪を靡かせて天井から颯爽と飛び降りてきた彼女は片手にハンディーカムカメラを構えて私の目の前に降り立った。
ええい、やっぱりいたよこの駄目悪魔!! 何か奇妙なことが起こったら大体の原因がコイツなんだから!!
果たして、私の思いに気付いているのかいないのか、私の説明を求める言葉に彼女は「はて?」と首をかしげておいでだった。
「妹様、もしかしてお嬢様が赤ん坊になったのって私のせいだと思ってます?」
「すでに語るに堕ちてるよ!! なんでこの子がお姉様だってわかるのさ!!? もう犯人確定じゃん!!?」
そしてこいつは果たして自分のやったことを隠す気があるんだかないんだか、小悪魔は陽気に「こぁーっこぁっこぁっこぁっこぁ」と奇怪な笑い声を上げてカメラを回してた。
えぇい、相変わらず腹立つなその笑い方ッ!!
「良くぞ見破りおったな名探偵腐乱。体は子供、頭脳は大人というキャッチフレーズは伊達ではありませんでしたか!」
「誰が腐乱!!? なんかものすごく嫌なんだけどその当て字!!? 仲間になってニックネームがついたら『スミス』とかついてそうだよねその名前!!?」
「いえいえ、むしろ独特なイントネーションで「イイヨ!!」といって芸をする感じで」
「どっちにしろ嬉しくないよ! 張り倒すよ!!?」
ぜーはーぜーはーと荒い息を繰り返す私とは裏腹に、小悪魔は余裕綽々といった感じでニヤニヤ笑いながらビデオ撮影中。
く、悔しい。いつものことだけど、小悪魔に口で勝てる気がしないのは何でだろう。
盛大なため息をひとつつき、もう深く考えるのはやめようと心に決める。
いちいち小悪魔のしていることにツッコミを入れてたらきりがないし、小悪魔にこれ以上ツッコミをいれても事態は進展しそうにない。
彼女がこういう風に、主のパチュリーから離れているときは大体魔理沙たちがきているときだ。
大方、彼女は彼女なりに気を利かせているんだろうけれど、その時間を利用してこういった悪戯をするから性質が悪い。
「……で、やっぱりお姉さまなんだよね。この子?」
「その通りですよ。いやはや、誰しも赤ん坊の頃は可愛いもんですねぇ。成長していくわが子を見るのは親の楽しみといいますが、その気持ちもわかる気がします」
「小悪魔の親御さん方は今のあなたを見たらなんていうかしらね?」
「あはは、いや褒めても何も出ませんよ?」
「褒めてないよ。思いっきりけなしてるんだよ」
私のジト目の皮肉にもなんのその。
非常に軽快な笑みを浮かべたままそんなことを言う辺り、いやみの受け流し方を心得ているのか、それともあるいは天然なのか。
……嫌だな、こんな性質の悪い天然。醤油2リットルを一気飲みして死ぬといいよ。
「大体さ、どうしてこんなことしたの?」
「いや、それには深いわけがありまして、あんまり大きな声では言えないんですが……」
あれ、珍しい。小悪魔が困ったように後ろ頭をかいて、何処か力ない笑みを浮かべるなんてよっぽどのことだ。
もしかしたら、このことは彼女の本意ではないのかもしれない。何か理由があるのだろうかと首をかしげた。
「なんていうか、暇だったんで」
「本当に大きな声で言えないね」
おおよそ考えうる限り最低最悪な理由だった。むしろ予想通りの理由だったといってもいい。
……うん、いやまぁ予想はしてたんだけどね。ちょっぴり抱いた希望は空しくも残酷に砕け散ったのであった。
「気楽に言ってるけどさ、咲夜に見つかったら大変だよ? 怒るんじゃないの?」
ため息をひとつつき、私は呆れたように言葉にして小悪魔に視線を向ける。
何しろ咲夜はお姉様にべったりだし、お姉様にこんなことをしたとあっては小悪魔もただではすまないんじゃなかろうか。
うん、咲夜もグルって言う可能性がないでもないんだけど……ソレはこの際無視する方向で。
そんな私の言葉に一瞬キョトンとした小悪魔は、はて? といった様子で首をかしげて考え込む。
ソレで何かに行き当たったらしい彼女は、得心が言ったようで「あー、はいはい」と言葉を零し、おもむろにお姉様のベッドに手を差し込むと。
「咲夜さんならここに」
「あぶー!」
ごぽぉっ!
新たな赤ん坊を取り出し、私はというとストレスのせいで胃に穴が開いたらしく口から盛大に吐血した。
くりくりとした青い瞳。銀の髪はクセッ毛なのか少し後ろにはねているけれど、さらさらしていて気持ち良さそう。
あぁ、本当に、ものっすごく嫌な予感しかしないほどに、その赤ん坊の特徴は十六夜咲夜のそれそのものだった。
「こ、ここここここ小悪魔!!? そ、その子が本当に咲夜なの?」
恐る恐ると彼女に問いかける。出来ることなら、小馬鹿にされた風にでもいいから「そんなわけないじゃないですか」といってほしかった。
けれども、小悪魔の口から否定の言葉が出てくることはなく、彼女は取り出した赤ん坊をまじまじと見つめ、そして一言。
「今日の咲夜さんって若作りですね」
「程があるでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
渾身のツッコミという名の絶叫が紅魔館全体に響き渡る。
もはや恥じも外聞も投げ捨てたような私の全力の一撃はしかし、小悪魔にとっては聞きなれているので馬耳東風、馬の耳に念仏、ちっとも堪えている様子はない。
かんらかんらと愉快げに笑うのみで、腹立たしいほどに楽しそうだった。
誰か、地下に住んでるっていう橋姫を呼んできてほしい。嫉妬にかられて妬み殺されてしまえ馬鹿小悪魔!!
▼
「……つまり、その子がお嬢様で、この子が咲夜さんと」
「うん、まぁ……そうなんだけどさ。あ、後で胃薬作って。わりと切実に」
心底困った風につむがれた言葉に、私も困り果てた様子でため息をついて返答した。
場所は夜の紅魔館正門前。一人ではどうしようもないと判断した私は、こういうことに相談に乗ってくれそうな美鈴を頼ったのである。
……え、パチュリーには相談しなかったのかって?
魔理沙やアリスと一緒に仲良く弾幕ごっこをやっていたのから、とてもじゃないけどこの子達を連れて入れなかったのよね。
いや、あの様子だと十中八九喧嘩だろうけど。
夜の帳はすっかりと落ちて、辺りは静寂に包まれている。
こんなにもいい夜だって言うのに、どうしてこう今日は気苦労ばかりが増えていくのだろう。
原因は、まぁわかってるんだけどさ。
「うーん、困りましたねぇ。小悪魔さん、戻せないんですか?」
「さぁ? 一日たったら成長するんじゃないんですか?」
「超アバウト!!?」
いきなり先行きが不安だった。多分、パチュリーにお願いすれば治してくれるとは思うんだけど、今の私達じゃ見当もつかない。
一応、私も魔法は使えるけど、生憎とパチュリー達や小悪魔みたいに専門じゃないから。こういったことは苦手だ。
その肝心の小悪魔はというと未だにビデオ撮影を観光中。そのうち「素敵ですわー!!!」的なオーラをかもし出しそうでなんかすごく嫌。
ゆりかごの要領で、自分の体を揺らしながら赤ん坊になったお姉様をあやしていると、すやすやと寝息が耳に届く。
かわいらしい顔をしてすっかりリラックスしたのか、この分だとしばらくは寝てそうだ。
確かに、小悪魔の言うとおり可愛らしい。……もういっそのこのままでもいいんじゃなかろうかとチョット薄情なことを思いつつ、赤子の咲夜を抱いている美鈴を見る。
私と同じように、体を揺らしながら子供をあやす美鈴。ついでに胸の脂肪がぷるんぷるん揺れる。
赤子の咲夜はソレに釘付けだった。そして私も釘付けだった。持たざるものの悲しき性であった。
チクショウ、そのままもげちゃえよ乳魔人!!
「妹様、何で泣いてるんですか?」
「なんでもねーですっ!!」
ふんっとそっぽを向いて知らんふり。私、とっても不機嫌ですという感情を態度で表してみせる。
すると、美鈴のほうから困ったような様子で苦笑する声が聞こえて、私はなんだか子供のような自分の反応に少し恥ずかしくなって顔を赤らめた。
ソレを誤魔化すように、私は首をぶんぶんとふって腕の中に抱くお姉さまに視線を向けて―――
「ばぶー♪」
「ふんッ!!」
ぜんぜん知らないお爺さんになってたんで思いっきり地面に叩き付けた。
ていうかこのお爺さん誰よっ!!? つかなんで気がつかなかった私!!? 体積ぜんぜん違うじゃん!!?
「グフゥ、き、貴様……老い先短い爺になんて事を」
「やかましいよ!! 嬉々として幼女の腕の中で『ばぶー♪』とか言っちゃうお爺さんの老い先なんて知ったことじゃないから!」
「な、なんと!!? で、では『あぶー♪』とかの方がよかったのか!!?」
「そういう問題じゃないよ!! ていうかお爺さん誰!!? お姉様を何処にやったの!!?」
あんまりのインパクトのでかさに忘れてたけれど、お姉様がどこかに隠されたのは間違いない。
だって、お姉様は今まで私が抱いていたはずなのだ。ソレがいつの間にかおじいさんに早代わりである。
ていうか、どうしよう。今現在問いかけている真っ最中なんだけど、ものすごく小悪魔と同じ匂いがするんだけど、このお爺さん。
そんな嫌な予感を覚えているさなか、後ろから「あぁ!!?」という美鈴の声が聞こえてそちらに振り向く。
背筋から蛇のように這い上がる悪寒。嫌な予感は消えてはくれず、不安ばかりが増して膨張していった。
そうして、私が振り返る先にいたのは、私も良く知る大妖怪の姿だった。
その腕に、赤子のお姉様と咲夜を抱えて。
「陽動ご苦労様、妖忌。おかげでうまくいったわ」
くすりと、女は笑った。薄気味悪いとさえ思えるほどの妖艶な笑みを浮かべて、彼女は扇で口元を隠す。
あらゆる方角から見られているような錯覚、あるいは、首筋にナイフを押し当てられているかのような悪寒。
彼女が存在するだけで、これほどの威圧感が場を支配する。
あぁ、そうだ。彼女こそはこの幻想郷の賢者。数多の妖怪から恐れられる大妖怪。
「はちくもむらさき!!?」
「小さい子供かその読み方!!?」
「ふ、その名で呼ばれるのも久しいですわ」
「あってるの!!? むしろそっちに驚くよ!!?」
小悪魔のセリフでシリアスな空気台無しだった。そしてそれにノリノリで返答するからこの大妖怪は性質が悪い。
そしてふと後ろを振り返ってみれば、先ほどのおじいさんはすっかりと姿を消して何処にもいなくなっていたりする。
チクショウ、あのお爺さん出オチなの!? 去り際が鮮やか過ぎて悪態もつけないし。
「八雲紫、妖怪の大賢者ともあろうお方が、お嬢様と咲夜さんをどうするつもりですか!!?」
「ふふ、最近新しい式が欲しいと思いましてね、丁度良く教育できそうな素材がありましたもので、コレを期に私好みの吸血鬼と給仕にしてしまおうかと」
そしてそんな私を蚊帳の外に、相変わらずシリアスなムードで会話を続ける美鈴。
さすが美鈴、紅魔館の門番なだけはある。私にはこの状況にツッコミをいれずに、シリアスムードを維持するなんてとても出来そうにないよ。
「そんなことはさせませんよ八雲紫(はちくもむらさき)!!
お嬢様や咲夜さんにそのようなことをなさるというのなら、この小悪魔、あなたを妥当してでも二人を返していただきます!!」
事の元凶が何を言ってんの!!?
とか思ったけど口にはしない。正直、もう疲れた。胃がきりきり痛いし、酷い頭痛がさっきからガンガンと鐘のようだ。
もういいよ。好きにしたらいいと思うよ。もうツッコミ入れるの疲れた私。
私は小さくため息をつき、かっさかさに乾いた目でふと視線をそらす。
その先にさっきのお爺さんが「ファンファンウィッヒザステーステー」とか口走りながら体を回転させてたんで、とりあえず能力使って爆破しといた。
「……あなたのような弱い悪魔が、大口を叩いたものね。その命、美しく儚く散らせるつもりかしら?」
「ふふ、確かに私ではあなたには敵わないでしょう。ですから、私も命を懸けます!!」
静かな冷淡な紫の言葉に、小悪魔は静かな闘志の光を瞳に携えたまま、力強く言葉にする。
その瞳は何処までも真面目で、覚悟を決めた戦士のソレだ。美鈴もソレを感じ取ったのか、固唾を呑んで見守っている。
私は、少し意外に思っていた。あの小悪魔が、まさかここまで真剣になってあの大妖怪に啖呵をきるとは。
僅かな、永遠ともつかない奇妙な静寂が辺りを支配する。気がつけば私も、彼女たちから目を放せずに固唾を呑んで見守っていた。
そして、小悪魔が八雲紫に指をさす。力強い、相も変らぬ決意を秘めた瞳で、彼女は言葉を―――
「もしも私がお嬢様を取り返せなかったら、『コレが私の彼氏です☆』と言って両親の目の前でBLアニメを2時間流し続けます!!」
「どんなベクトルで命を賭けてんの!!?」
紡いでありとあらゆる空気をぶち壊して台無しにしたのだった。
だ、駄目だ。ツッコミを入れちゃう!! おのれ小悪魔、わかってはいたけど恐ろしい子!
「な、何ですって!!? あなた、(社会的な)死が怖くないの!!?」
「ノリがいいね大妖怪!!?」
どうしようこの空間。美鈴は美鈴で「小悪魔さん、そこまで命を賭けるなんて」とか言ってるし、周りに私の味方はゼロなの!?
なんか私だけが可笑しいみたいですごく嫌になるんだけど!?
もうヤダこの世界。なんかもう500年ぐらい引きこもろうかな、割と本気で。
「隙ありぃぃぃぃ!!」
「ぐふぅ!!?」
そしてそんな私の気持ちなんか知ったこっちゃないといわんばかりに、てきぱき進んでいく珍妙な事態。
小悪魔のショルダータックルが紫の腹部に命中し、零れ落ちた赤ん坊のお姉様と咲夜は美鈴が見事に抱きかかえるようにキャッチした。
小悪魔はそのまま紫の後ろに回りこみ、羽交い絞めするようにホールド。身動きの取れなくなった八雲紫だけれど、あの程度の拘束じゃさしたる意味はない。
何しろ、境界を操る能力を持つ大妖怪だ。あのぐらい、あっさりと脱出できるはず。
ソレをしないのは、大妖怪であるが故の自信からくる余裕があるからか、やはり小悪魔にどうにかできる相手じゃない。
「捕らえましたよ、八雲紫!」
「ふふ、これで私が捕らえたと? 甘く見られたものですわね」
「確かに、このままじゃすぐに逃げられるでしょう。ですが、私の魔力をありったけ燃やし尽くせばどうですか!!?」
その言葉で、初めて八雲紫に動揺が浮かんだ。
それは、紛れもない、はっきりとした焦りだ。あの大妖怪が、小悪魔がこれから何をするかを悟り、確かに恐れを抱いているのだと。
「正気!? そんなことをすれば貴女も!?」
「ふ、貴女と刺し違えるならそれも本望!! 燃え上がれ、私の中の魔力ッ!!」
「こ、小悪魔!!?」
それが、冗談なんかじゃないと悟ってしまった。
二人の様子で、わかってしまったのだコレが本気で行われている戦いなのだと気付いてしまった。
だから、私は反射的に手を伸ばした。ソレが届かないと知りつつも。
どんなカタチであれ、やっぱり私達は家族だった。彼女が命を賭けようとしているところで、私は今更のように気がつかされたのだ。
だけど、届かない。この手はきっともう、小悪魔に触れることはないのだと、心のどこかでわかっていた。
彼女が、急いで駆け寄る私に気がついた。すると、彼女は優しく笑って、いつものような笑顔で「バイバイ」とそう別れを告げて。
「廬○亢龍覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「丸パクリかぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」
最後の最後までボケを残して空高く飛び去っていき、彼女は宇宙の藻屑となった。
▼
「――――――ッ!?!?!?!!?」
絶叫を上げて私は目を覚ました。
辺りをきょろきょろと見回すと、そこはかわりばえのしない私の部屋。
……よかった、夢だった。夢で本当に良かった!!
もし、アレが夢じゃなくて現実だったら私は本気で500年ぐらい地下に閉じこもってたかもしれない。
嫌な夢を見たせいか、汗がべったりとして気持ち悪い。汗を拭おうと腕を動かそうとして……そこで違和感に気がついた。
恐る恐る、起き上がって視線を下に……つまり、私のベッドの布団のほうに向ける。
すると、ぽっこりとした膨らみが私のベッドに二つ。嫌な予感、臨界点突破。
意を決して、私は布団の端に指をかける。そのまま、一瞬の迷いの後に私は布団を引き剥がし―――
『きゃう~!!』
夢で見たまんまの二人の赤ん坊に絶望した。
お姉さまの部屋に入ったと思ったら、そのベッドに見知らぬ赤ん坊がいた場合、私はどうしたらいいのでしょう?」
……などと現実逃避している場合などではなく、私……フランドール・スカーレットは重々しくため息をつきながらその赤ん坊を抱きかかえた。
そう、赤ん坊だ。正真正銘、ほぼ全ての生命が生れ落ちる際の無防備な姿。か弱く脆弱で、少し吹けばすぐにでも死んでしまいそうな、そんな命。
それがなぜか、あいつ―――運命を操る吸血鬼、レミリア・スカーレットの部屋のベッドに眠らされていたのか。
食料……なわけはないか。私達姉妹はそもそもからして、普通の吸血行為というのをあまり行わない。
というのも、メイド長の咲夜が調理した料理だったり、あるいは紅茶などに血液が混ぜられているせいだ。
お姉さまは吸血するよりも紅茶のほうがよっぽど好きだなんて言ってるし、そんなやつが自室に食料として赤ん坊をおくなんてありえない。
……じゃあ、なんで?
そう思い始めた私の視界に飛び込むのは、ブルーシルバーの柔らかい赤ん坊の髪だった。
キャッキャッと嬉しそうに私に手を伸ばしてきて、ぺちぺちと頬を叩いてくる。
まだ碌に目も見えないだろうに、真っ赤な瞳が私を見上げていて、なんだかとても微笑ましい。
そこで、ふと気がつく。
なんていうか、この赤ん坊って髪の色といい瞳の色といい、そして顔立ちといい、ものすごく誰かを髣髴とさせるような……。
……っていうかさ、お姉様そっくりじゃん!!?
「小悪魔さぁぁぁぁぁぁぁん!!?」
「はーい☆」
「んんッ!!? いい返事たい!! コレはどげんことか説明ばせんねぇぇぇぇぇ!!?」
「妹様、混乱のあまり博多弁になってますよ?」
「やかましいよ!!」
私の声に何処からともなく小悪魔が登場。
赤い髪を靡かせて天井から颯爽と飛び降りてきた彼女は片手にハンディーカムカメラを構えて私の目の前に降り立った。
ええい、やっぱりいたよこの駄目悪魔!! 何か奇妙なことが起こったら大体の原因がコイツなんだから!!
果たして、私の思いに気付いているのかいないのか、私の説明を求める言葉に彼女は「はて?」と首をかしげておいでだった。
「妹様、もしかしてお嬢様が赤ん坊になったのって私のせいだと思ってます?」
「すでに語るに堕ちてるよ!! なんでこの子がお姉様だってわかるのさ!!? もう犯人確定じゃん!!?」
そしてこいつは果たして自分のやったことを隠す気があるんだかないんだか、小悪魔は陽気に「こぁーっこぁっこぁっこぁっこぁ」と奇怪な笑い声を上げてカメラを回してた。
えぇい、相変わらず腹立つなその笑い方ッ!!
「良くぞ見破りおったな名探偵腐乱。体は子供、頭脳は大人というキャッチフレーズは伊達ではありませんでしたか!」
「誰が腐乱!!? なんかものすごく嫌なんだけどその当て字!!? 仲間になってニックネームがついたら『スミス』とかついてそうだよねその名前!!?」
「いえいえ、むしろ独特なイントネーションで「イイヨ!!」といって芸をする感じで」
「どっちにしろ嬉しくないよ! 張り倒すよ!!?」
ぜーはーぜーはーと荒い息を繰り返す私とは裏腹に、小悪魔は余裕綽々といった感じでニヤニヤ笑いながらビデオ撮影中。
く、悔しい。いつものことだけど、小悪魔に口で勝てる気がしないのは何でだろう。
盛大なため息をひとつつき、もう深く考えるのはやめようと心に決める。
いちいち小悪魔のしていることにツッコミを入れてたらきりがないし、小悪魔にこれ以上ツッコミをいれても事態は進展しそうにない。
彼女がこういう風に、主のパチュリーから離れているときは大体魔理沙たちがきているときだ。
大方、彼女は彼女なりに気を利かせているんだろうけれど、その時間を利用してこういった悪戯をするから性質が悪い。
「……で、やっぱりお姉さまなんだよね。この子?」
「その通りですよ。いやはや、誰しも赤ん坊の頃は可愛いもんですねぇ。成長していくわが子を見るのは親の楽しみといいますが、その気持ちもわかる気がします」
「小悪魔の親御さん方は今のあなたを見たらなんていうかしらね?」
「あはは、いや褒めても何も出ませんよ?」
「褒めてないよ。思いっきりけなしてるんだよ」
私のジト目の皮肉にもなんのその。
非常に軽快な笑みを浮かべたままそんなことを言う辺り、いやみの受け流し方を心得ているのか、それともあるいは天然なのか。
……嫌だな、こんな性質の悪い天然。醤油2リットルを一気飲みして死ぬといいよ。
「大体さ、どうしてこんなことしたの?」
「いや、それには深いわけがありまして、あんまり大きな声では言えないんですが……」
あれ、珍しい。小悪魔が困ったように後ろ頭をかいて、何処か力ない笑みを浮かべるなんてよっぽどのことだ。
もしかしたら、このことは彼女の本意ではないのかもしれない。何か理由があるのだろうかと首をかしげた。
「なんていうか、暇だったんで」
「本当に大きな声で言えないね」
おおよそ考えうる限り最低最悪な理由だった。むしろ予想通りの理由だったといってもいい。
……うん、いやまぁ予想はしてたんだけどね。ちょっぴり抱いた希望は空しくも残酷に砕け散ったのであった。
「気楽に言ってるけどさ、咲夜に見つかったら大変だよ? 怒るんじゃないの?」
ため息をひとつつき、私は呆れたように言葉にして小悪魔に視線を向ける。
何しろ咲夜はお姉様にべったりだし、お姉様にこんなことをしたとあっては小悪魔もただではすまないんじゃなかろうか。
うん、咲夜もグルって言う可能性がないでもないんだけど……ソレはこの際無視する方向で。
そんな私の言葉に一瞬キョトンとした小悪魔は、はて? といった様子で首をかしげて考え込む。
ソレで何かに行き当たったらしい彼女は、得心が言ったようで「あー、はいはい」と言葉を零し、おもむろにお姉様のベッドに手を差し込むと。
「咲夜さんならここに」
「あぶー!」
ごぽぉっ!
新たな赤ん坊を取り出し、私はというとストレスのせいで胃に穴が開いたらしく口から盛大に吐血した。
くりくりとした青い瞳。銀の髪はクセッ毛なのか少し後ろにはねているけれど、さらさらしていて気持ち良さそう。
あぁ、本当に、ものっすごく嫌な予感しかしないほどに、その赤ん坊の特徴は十六夜咲夜のそれそのものだった。
「こ、ここここここ小悪魔!!? そ、その子が本当に咲夜なの?」
恐る恐ると彼女に問いかける。出来ることなら、小馬鹿にされた風にでもいいから「そんなわけないじゃないですか」といってほしかった。
けれども、小悪魔の口から否定の言葉が出てくることはなく、彼女は取り出した赤ん坊をまじまじと見つめ、そして一言。
「今日の咲夜さんって若作りですね」
「程があるでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
渾身のツッコミという名の絶叫が紅魔館全体に響き渡る。
もはや恥じも外聞も投げ捨てたような私の全力の一撃はしかし、小悪魔にとっては聞きなれているので馬耳東風、馬の耳に念仏、ちっとも堪えている様子はない。
かんらかんらと愉快げに笑うのみで、腹立たしいほどに楽しそうだった。
誰か、地下に住んでるっていう橋姫を呼んできてほしい。嫉妬にかられて妬み殺されてしまえ馬鹿小悪魔!!
▼
「……つまり、その子がお嬢様で、この子が咲夜さんと」
「うん、まぁ……そうなんだけどさ。あ、後で胃薬作って。わりと切実に」
心底困った風につむがれた言葉に、私も困り果てた様子でため息をついて返答した。
場所は夜の紅魔館正門前。一人ではどうしようもないと判断した私は、こういうことに相談に乗ってくれそうな美鈴を頼ったのである。
……え、パチュリーには相談しなかったのかって?
魔理沙やアリスと一緒に仲良く弾幕ごっこをやっていたのから、とてもじゃないけどこの子達を連れて入れなかったのよね。
いや、あの様子だと十中八九喧嘩だろうけど。
夜の帳はすっかりと落ちて、辺りは静寂に包まれている。
こんなにもいい夜だって言うのに、どうしてこう今日は気苦労ばかりが増えていくのだろう。
原因は、まぁわかってるんだけどさ。
「うーん、困りましたねぇ。小悪魔さん、戻せないんですか?」
「さぁ? 一日たったら成長するんじゃないんですか?」
「超アバウト!!?」
いきなり先行きが不安だった。多分、パチュリーにお願いすれば治してくれるとは思うんだけど、今の私達じゃ見当もつかない。
一応、私も魔法は使えるけど、生憎とパチュリー達や小悪魔みたいに専門じゃないから。こういったことは苦手だ。
その肝心の小悪魔はというと未だにビデオ撮影を観光中。そのうち「素敵ですわー!!!」的なオーラをかもし出しそうでなんかすごく嫌。
ゆりかごの要領で、自分の体を揺らしながら赤ん坊になったお姉様をあやしていると、すやすやと寝息が耳に届く。
かわいらしい顔をしてすっかりリラックスしたのか、この分だとしばらくは寝てそうだ。
確かに、小悪魔の言うとおり可愛らしい。……もういっそのこのままでもいいんじゃなかろうかとチョット薄情なことを思いつつ、赤子の咲夜を抱いている美鈴を見る。
私と同じように、体を揺らしながら子供をあやす美鈴。ついでに胸の脂肪がぷるんぷるん揺れる。
赤子の咲夜はソレに釘付けだった。そして私も釘付けだった。持たざるものの悲しき性であった。
チクショウ、そのままもげちゃえよ乳魔人!!
「妹様、何で泣いてるんですか?」
「なんでもねーですっ!!」
ふんっとそっぽを向いて知らんふり。私、とっても不機嫌ですという感情を態度で表してみせる。
すると、美鈴のほうから困ったような様子で苦笑する声が聞こえて、私はなんだか子供のような自分の反応に少し恥ずかしくなって顔を赤らめた。
ソレを誤魔化すように、私は首をぶんぶんとふって腕の中に抱くお姉さまに視線を向けて―――
「ばぶー♪」
「ふんッ!!」
ぜんぜん知らないお爺さんになってたんで思いっきり地面に叩き付けた。
ていうかこのお爺さん誰よっ!!? つかなんで気がつかなかった私!!? 体積ぜんぜん違うじゃん!!?
「グフゥ、き、貴様……老い先短い爺になんて事を」
「やかましいよ!! 嬉々として幼女の腕の中で『ばぶー♪』とか言っちゃうお爺さんの老い先なんて知ったことじゃないから!」
「な、なんと!!? で、では『あぶー♪』とかの方がよかったのか!!?」
「そういう問題じゃないよ!! ていうかお爺さん誰!!? お姉様を何処にやったの!!?」
あんまりのインパクトのでかさに忘れてたけれど、お姉様がどこかに隠されたのは間違いない。
だって、お姉様は今まで私が抱いていたはずなのだ。ソレがいつの間にかおじいさんに早代わりである。
ていうか、どうしよう。今現在問いかけている真っ最中なんだけど、ものすごく小悪魔と同じ匂いがするんだけど、このお爺さん。
そんな嫌な予感を覚えているさなか、後ろから「あぁ!!?」という美鈴の声が聞こえてそちらに振り向く。
背筋から蛇のように這い上がる悪寒。嫌な予感は消えてはくれず、不安ばかりが増して膨張していった。
そうして、私が振り返る先にいたのは、私も良く知る大妖怪の姿だった。
その腕に、赤子のお姉様と咲夜を抱えて。
「陽動ご苦労様、妖忌。おかげでうまくいったわ」
くすりと、女は笑った。薄気味悪いとさえ思えるほどの妖艶な笑みを浮かべて、彼女は扇で口元を隠す。
あらゆる方角から見られているような錯覚、あるいは、首筋にナイフを押し当てられているかのような悪寒。
彼女が存在するだけで、これほどの威圧感が場を支配する。
あぁ、そうだ。彼女こそはこの幻想郷の賢者。数多の妖怪から恐れられる大妖怪。
「はちくもむらさき!!?」
「小さい子供かその読み方!!?」
「ふ、その名で呼ばれるのも久しいですわ」
「あってるの!!? むしろそっちに驚くよ!!?」
小悪魔のセリフでシリアスな空気台無しだった。そしてそれにノリノリで返答するからこの大妖怪は性質が悪い。
そしてふと後ろを振り返ってみれば、先ほどのおじいさんはすっかりと姿を消して何処にもいなくなっていたりする。
チクショウ、あのお爺さん出オチなの!? 去り際が鮮やか過ぎて悪態もつけないし。
「八雲紫、妖怪の大賢者ともあろうお方が、お嬢様と咲夜さんをどうするつもりですか!!?」
「ふふ、最近新しい式が欲しいと思いましてね、丁度良く教育できそうな素材がありましたもので、コレを期に私好みの吸血鬼と給仕にしてしまおうかと」
そしてそんな私を蚊帳の外に、相変わらずシリアスなムードで会話を続ける美鈴。
さすが美鈴、紅魔館の門番なだけはある。私にはこの状況にツッコミをいれずに、シリアスムードを維持するなんてとても出来そうにないよ。
「そんなことはさせませんよ八雲紫(はちくもむらさき)!!
お嬢様や咲夜さんにそのようなことをなさるというのなら、この小悪魔、あなたを妥当してでも二人を返していただきます!!」
事の元凶が何を言ってんの!!?
とか思ったけど口にはしない。正直、もう疲れた。胃がきりきり痛いし、酷い頭痛がさっきからガンガンと鐘のようだ。
もういいよ。好きにしたらいいと思うよ。もうツッコミ入れるの疲れた私。
私は小さくため息をつき、かっさかさに乾いた目でふと視線をそらす。
その先にさっきのお爺さんが「ファンファンウィッヒザステーステー」とか口走りながら体を回転させてたんで、とりあえず能力使って爆破しといた。
「……あなたのような弱い悪魔が、大口を叩いたものね。その命、美しく儚く散らせるつもりかしら?」
「ふふ、確かに私ではあなたには敵わないでしょう。ですから、私も命を懸けます!!」
静かな冷淡な紫の言葉に、小悪魔は静かな闘志の光を瞳に携えたまま、力強く言葉にする。
その瞳は何処までも真面目で、覚悟を決めた戦士のソレだ。美鈴もソレを感じ取ったのか、固唾を呑んで見守っている。
私は、少し意外に思っていた。あの小悪魔が、まさかここまで真剣になってあの大妖怪に啖呵をきるとは。
僅かな、永遠ともつかない奇妙な静寂が辺りを支配する。気がつけば私も、彼女たちから目を放せずに固唾を呑んで見守っていた。
そして、小悪魔が八雲紫に指をさす。力強い、相も変らぬ決意を秘めた瞳で、彼女は言葉を―――
「もしも私がお嬢様を取り返せなかったら、『コレが私の彼氏です☆』と言って両親の目の前でBLアニメを2時間流し続けます!!」
「どんなベクトルで命を賭けてんの!!?」
紡いでありとあらゆる空気をぶち壊して台無しにしたのだった。
だ、駄目だ。ツッコミを入れちゃう!! おのれ小悪魔、わかってはいたけど恐ろしい子!
「な、何ですって!!? あなた、(社会的な)死が怖くないの!!?」
「ノリがいいね大妖怪!!?」
どうしようこの空間。美鈴は美鈴で「小悪魔さん、そこまで命を賭けるなんて」とか言ってるし、周りに私の味方はゼロなの!?
なんか私だけが可笑しいみたいですごく嫌になるんだけど!?
もうヤダこの世界。なんかもう500年ぐらい引きこもろうかな、割と本気で。
「隙ありぃぃぃぃ!!」
「ぐふぅ!!?」
そしてそんな私の気持ちなんか知ったこっちゃないといわんばかりに、てきぱき進んでいく珍妙な事態。
小悪魔のショルダータックルが紫の腹部に命中し、零れ落ちた赤ん坊のお姉様と咲夜は美鈴が見事に抱きかかえるようにキャッチした。
小悪魔はそのまま紫の後ろに回りこみ、羽交い絞めするようにホールド。身動きの取れなくなった八雲紫だけれど、あの程度の拘束じゃさしたる意味はない。
何しろ、境界を操る能力を持つ大妖怪だ。あのぐらい、あっさりと脱出できるはず。
ソレをしないのは、大妖怪であるが故の自信からくる余裕があるからか、やはり小悪魔にどうにかできる相手じゃない。
「捕らえましたよ、八雲紫!」
「ふふ、これで私が捕らえたと? 甘く見られたものですわね」
「確かに、このままじゃすぐに逃げられるでしょう。ですが、私の魔力をありったけ燃やし尽くせばどうですか!!?」
その言葉で、初めて八雲紫に動揺が浮かんだ。
それは、紛れもない、はっきりとした焦りだ。あの大妖怪が、小悪魔がこれから何をするかを悟り、確かに恐れを抱いているのだと。
「正気!? そんなことをすれば貴女も!?」
「ふ、貴女と刺し違えるならそれも本望!! 燃え上がれ、私の中の魔力ッ!!」
「こ、小悪魔!!?」
それが、冗談なんかじゃないと悟ってしまった。
二人の様子で、わかってしまったのだコレが本気で行われている戦いなのだと気付いてしまった。
だから、私は反射的に手を伸ばした。ソレが届かないと知りつつも。
どんなカタチであれ、やっぱり私達は家族だった。彼女が命を賭けようとしているところで、私は今更のように気がつかされたのだ。
だけど、届かない。この手はきっともう、小悪魔に触れることはないのだと、心のどこかでわかっていた。
彼女が、急いで駆け寄る私に気がついた。すると、彼女は優しく笑って、いつものような笑顔で「バイバイ」とそう別れを告げて。
「廬○亢龍覇ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「丸パクリかぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!?」
最後の最後までボケを残して空高く飛び去っていき、彼女は宇宙の藻屑となった。
▼
「――――――ッ!?!?!?!!?」
絶叫を上げて私は目を覚ました。
辺りをきょろきょろと見回すと、そこはかわりばえのしない私の部屋。
……よかった、夢だった。夢で本当に良かった!!
もし、アレが夢じゃなくて現実だったら私は本気で500年ぐらい地下に閉じこもってたかもしれない。
嫌な夢を見たせいか、汗がべったりとして気持ち悪い。汗を拭おうと腕を動かそうとして……そこで違和感に気がついた。
恐る恐る、起き上がって視線を下に……つまり、私のベッドの布団のほうに向ける。
すると、ぽっこりとした膨らみが私のベッドに二つ。嫌な予感、臨界点突破。
意を決して、私は布団の端に指をかける。そのまま、一瞬の迷いの後に私は布団を引き剥がし―――
『きゃう~!!』
夢で見たまんまの二人の赤ん坊に絶望した。
カオス過ぎてなにが何やらww
やはり二次のこぁは最強ですなwww
いや…メイフラ子育て奮闘記?
>「な、何ですって!!? あなた、(社会的な)死が怖くないの!!?」
見たことあると思ったら、アミ彦だコレwww
しかし誤字多いよw
いいぞ、もっとやれww
小悪魔しぃわ。そしてさりげなく美鈴もひどいなw