「きのこいかがですかー!」
人里を歩いてると、色とりどりの茸を抱えた金髪の少女が現れた。
黒白のエプロンドレスを着て、いかにも魔法使いですよと言いたげな底深の帽子をかぶっているところを見ると、これは多分魔理沙なのだろう。
茸がどうのこうの言うのも魔理沙ぽいと言える。あの子はたしか、茸が大好きだったような記憶もあるし。
しかし、魔理沙は茸の行商などしていたっけか。
なんとなく敬語っぽい言葉使いもあわせ、この娘が魔理沙であることに一抹の不安を投げかける。
「あなた、魔理沙?」
「私は魔理沙だぜ」
ああ、やっぱり魔理沙なのだ。私は間違えていなかった。
「あなた、いつから茸の行商なんて始めたの?」
「何を言ってるんだ。昔からやってるだろう?
働かざるもの、食うべからず。これが私の仕事だぜ。
それより、きのこ買ってくれよ」
私の記憶が正しければ、彼女は仕事に精を出すような立派な人間ではなく、むしろ人様の財産を好んで盗むようなアウトローな人間だった。
私の違和感は膨らむ一方。
だがまあ、たまには茸料理に舌鼓をうつのもいいだろう。
炊き込みご飯も美味しいし、土瓶蒸しやホイル焼きにするのもいい。
もちろん鍋をつつくのも悪くないし、素焼きにして醤油をたらし、酒の肴にするのも乙なものだ。
「毎度ありっ!」
よだれを垂らしながら茸を手に取った私に、魔理沙の元気な声が飛んできた。
なるほど、この世界の魔理沙は茸を売って生計を立てているのだな。
▽
スキマを弄んでいろんな世界をぶらりと歩くのは私の趣味のひとつだ。
暇つぶしにいいし、他の世界を知ることで自分たちの世界をよりよくすることもできる。
幻想郷の人妖たちの新しい魅力に気づくこともあるし、美味しい茸が手に入ることもある。
これは、私のライフワークと言ってもいいかもしれない。
そんなわけで、私、八雲紫は今日も暇つぶしに世界を跨いだわけである。
「あら紫さん。今日はお散歩ですか?」
ぶらぶらと周りを見ながら歩いていると、声をかけられた。
緑色の髪の毛に、青いスカート。見覚えがある顔だ。
「あら、あなたは確か山の神社の……」
「早苗です」
「そうだったわね。山の神様は元気にしてるかしら」
「あはは、面白いことを言いますね。神様が元気かどうかなんて、さすがにわかりませんよ」
「えっ」
「えっ」
世間話をしていたつもりが、どうも話がかみ合わない。
「あなた、神様と一緒に暮らしてなかったっけ」
「んー、まあ神社ですから、確かに神様と暮らしていると言えるかもしれませんが……」
「いつも、神奈子さま諏訪子さまって言ってなかったっけ」
「誰ですか、それ。私、一人暮らしですよ」
なんともいえない微妙な空気が漂う。
よく考えてみよう。
この巫女がニ柱の神を忘れるわけがない。
となれば、たぶんこの世界には神がいないのだ。
さすがは私。そう考えれば辻褄があう。
「……それより、今日はお仕事はお休みなんですか?」
「えっ」
「えっ」
沈黙に耐えかねたのか、早苗がよくわからないことを言ってきた。
よく考えてみよう。
仕事がお休み、ということは、いつもは仕事をしているということだろう。
つまり、そのまま受け取れば、こっちの世界の私は仕事をしているということだ。
しかし、私が仕事?
仕事に精を出すとは、こっちの世界の私は気でも違ったか。
「私、なんか仕事していたっけ」
「何言ってるんですか。いつもスキマを直したりしてるじゃないですか。
私にはよくわかりませんが、きっと世のため人のためになる立派なお仕事なのだと思います」
世のため人のためスキマを弄んだことなんてあったっけか。
「……でも、いくら立派だとはいえ、スキマ直しなんて儲からないでしょう。
家族を養わなければいけないのですから、紫さんはもう少し実入りのいお仕事をするべきじゃないでしょうか。
このあいだ、橙さんが二日も何も食べてないって泣いていましたよ」
早苗はそう言うと、手に提げた買い物袋からジャガイモとニンジンを取り出した。
「少ないですが、よかったら持っていってください。
たまには、おいしい食事を作ってあげてくださいね」
なんということだろう。
この世界では、私の家族は早苗に哀れまれるような生活を送っているのだ。
私はいったい何をやっているのだ。
妖怪の賢者とまで言われたこの私が、自分の式を養えないほど生活に困窮しているとは。
これは、マヨヒガまで行って様子を確かめねばなるまい。
「どうもありがとう。神社の仕事もがんばってね」
私は早苗からジャガイモとニンジンを受け取ると、その場を離れた。
▽
「これは不味いな」
「どうしたんですか、藍さま。ご飯はまだですか?」
ここは幻想郷のマヨヒガ。
突然顔を青ざめた藍を見て、橙が不思議そうに尋ねる。
「いやな、橙。
夕食時になっても紫さまが姿を現さないので、どこに行ったのか調べていたんだ。
ところがどうも、不味い場所に足を踏み入れたみたいでなあ」
「それでは、紫さまが帰るまでご飯はまだなんですね」
藍がじと橙の顔を見る。
「どうやら、妖怪も妖精もいない、妖術が使えない世界に迷い込んだようだ。
おそらく、紫さま自体も妖術を使えまい。
これは、いかに紫さまといえど、こちらに戻ってこられるかどうかわからないぞ」
「ええっ!?紫さま、帰ってこれないんですか?
紫さまがいないと、橙はさびしいです……」
一転、心配そうに声を裏返す橙。
藍はこれ以上心配させないように、ふっと微笑む。
「そうだな。紫さまがいないと寂しいな。
私たちのほうでも、紫さまが無事帰ってこれるよう、できるだけ策を考えよう。
大丈夫。紫さまのことだから、きっとなんとかなるさ」
「はい!紫さまが帰ってくるまで、橙はご飯我慢します!」
▽
「だから、あなたは何者なのよ!」
紫のドレスを身にまとったなんとも可憐な金髪の少女が声を張り上げる。
間違いない。これは、こっちの世界の私。
その隣では、藍と橙とおぼしき少女が、おろおろとこっちの私とあっちの私をかわるがわる見くらべている。
なぜかスキマも使えず飛ぶこともできなかったので、えっちらおっちら一生懸命歩いてここマヨヒガにたどり着いたのがつい先ほど。
挨拶もそこそこに家の中に引っ張りこまれ、今は私に詰問されている最中。
まあ、おんなじ顔をした者に突然尋ねられたのだから、混乱してしまうのもわからんではない。
「まあまあ、紫姉さま」
混乱しているこっちの世界の私に向かって、こっちの世界の藍が宥めに入った。
しかしこの式、事もあろうに姉さまと申したか。
「姉さま?あなたたち、姉妹なの?」
「そうよ。私たちは八雲三姉妹。マヨヒガの美人三姉妹といえば私たちのことね。あなたも聞いたことがあるでしょう」
私がえへんと胸をはる。
私がまじまじとそれを見る。
まあ、たしかに可愛らしいとは思う。
よく手入れされた美しい金髪に、あどけなさを残しながらそれでも妖艶な表情。
決して両立しない二つの魅力を一つの身にまとう矛盾を、軽々と実現してのける生ける奇跡。
こっちの世界では美人と噂されているらしいが、それも当然のことと言えよう。
しかし、もちろん別世界から来た私には、どんな素晴らしい噂が流れていてもそれを耳にしたことは無い。
「んー、残念ながら聞いたことはないわね。確かに美人だと思うけど」
「あら……美人だなんて、そんな」
謙遜するこっちの私。
お前が自分で美人三姉妹と言ったんだろう、と私は心の中で突っ込んだ。
「でも、あなたもなかなか可愛らしいわ。あなたほどの美人、周りが放っておかないでしょう」
「いやいやそんな。あなたこそ、そこらのアイドルも顔負けの美しさ」
「ふふ。言ってくれるじゃない。なかなか気に入ったわ」
「ふふ」
「ふふ」
「こんな美しい女性とお話できるだなんて、今日はついてるわ」
「あら、私もよ」
「ふふ」
「ふふ」
「ところで、あなたは何者なのですか?なんで紫姉さまとそこまで似ているのでしょうか」
私と私が微笑みあっていると、藍が言葉を挟んできた。
せっかくのいい気分を邪魔するとは、なんと空気の読めない式だろうか。
「赤の他人がここまで似るとも思えないし……うーん、ひょっとして、双子の姉妹かなにかですか?」
あなた、こっちの私と姉妹って設定じゃなかったっけ。
自分の姉が双子かどうかなんて、すぐにわかるでしょうに。
「いや、双子じゃないわよ。こちらで美人姉妹がいるという噂を聞いてやってきたの」
「やだ、美人だなんて、そんな」
「いえいえ、謙遜することはないわ。噂どおりの美少女」
「ふふ。美少女だなんて。あなたこそ、とっても可愛らしいわ」
「ふふ」
「ふふ」
「あなた、先ほど噂なんて聞いたことないっておっしゃいませんでしたっけ」
微笑み合っていると、またもや藍が邪魔をする。
なんと空気の読めない式。これは、帰ったらとっちめてやらねばなるまい。
「何よあなた。空気が読めないわねえ」
「そんなことより本題に入りましょう。我が家に何のご用件でしょうか」
「用件?
えーと……」
何か用がなかったか、よく考える。
私はなんでここまで来たのだろうか。
ここに来る前は何をやっていたのだろうか。
たしか、人里からずっと歩いてきた。
妖精も妖怪もいない、変な感じだったな。
よく考えてみよう。
私は、スキマを使うことも、飛ぶこともできなかった。
そういえば、空を飛ぶ人妖もいなかった。
いつもなら、ちょっと歩けば空を飛んでる天狗やら妖精やらを見るのに。
何か思い出せそうだ。
魔理沙は茸を売って生計を立てているようだ。
早苗のいる神社には、神様がいないようだった。
早苗、早苗…………
そうか!思い出したぞ!!
「ジャガイモとニンジンを持ってきました」
「ご飯!?」
手提げ袋から野菜を取り出すと、じっと話を聞いていた橙が目を輝かす。
「茸もあるわ」
「い、いただけるんですかっ!?」
私はにっこりと笑って、橙に野菜を渡す。
「わーい!!三日ぶりのご飯だあ!!!」
飛び跳ねてはしゃぐ橙。藍とこっちの私はさすがに飛び跳ねはしないが、それでも嬉しさを隠し切れていない。
にまーっとした表情で、ニンジンとジャガイモを見つめている。
「……生活、苦しいの?」
「お恥ずかしながら、スキマの仕事があまり儲からなくて……」
「藍さんって言ったわね。スキマの仕事ってなにかしら」
「スキマを埋める仕事です。
ほら、ときどき家の壁にヒビが入ったり、たてつけが悪くて障子が閉まりきらなくなることがあるじゃないですか。
そんなとき、私たちが駆けつけて、スキマを埋めるわけです」
なんと儲かりそうもない仕事か。
「藍!
私たちの仕事が無いということは、世の人々がスキマに悩まされてないということ。
仕事がないことを喜びはしても、嘆くのはやめなさい!」
こっちの私が藍をしかりつける。
しかし、仕事に誇りを持つのはともかく、妹たちにひもじい思いをさせるのはどうだろうか。
「紫さん」
「はい?」
「会ったばかりでこんなことも言うのもなんだけど、もっと儲かる仕事をしたほうがいいわよ」
「で、でも、私はスキマの仕事に誇りを……」
「それは駄目!」
こっちの私を叱る。
私だって、こんなことは言いたくない。
だけど、このままそんな仕事を続けていても、この美人三姉妹はきっと幸せにはなれない。
「……現実を見なさい。
ちゃんと実入りのいい仕事について、家族を大切にするのよ」
こっちの私は、まるで雷に打たれたかのように立ち往生し、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔で私を見て、その後にどさりと崩れ落ちた。
「……わかっていたの。このままじゃいけないってこと。
でも、それでも、私はスキマの仕事を続けたくて……」
「仕事に誇りを持つのはいいこと。
でも、あなたには守るべきものがあるでしょう?
家族のことを考えないと駄目。
あなたの幸せは、家族と共にあるのだから……」
「……うん、うん…………
わかったわ。これからは、ちゃんとした仕事をする。
そして、妹たちと一緒に、一生懸命がんばっていくわ!」
嗚呼。
私はやっと理解した。何故この世界に迷い込んだのか。
それは、彼女にこの台詞を言うため。
現実を見ない彼女の目を覚ますため。
現実とは、現実と向かい合う勇気のあるものだけが幸せになれる世界なのよ。
でも、それに気づいてくれたのだから、きっともう大丈夫。
幸せに、こっちの世界の私。
藍と橙を大切にしてね。
「わかってくれたようね。
では、私はそろそろお暇するわ」
涙を流して感謝する美人三姉妹を残し、私はマヨヒガを後にした。
▽
「他の世界から紫を呼び出すなんて、私には無理ね」
所変わって幻想郷のマヨヒガ。
紫を呼び戻す方法は無いかという藍の質問を霊夢が切り伏せる。
「私にもよくわからないわ。
いくら月の頭脳と言われても、できることとできないことがある」
「冥界には来てないわよ。紫、まだ死んでないみたい」
「三途の川にも来てないね。私にはお手上げだよ」
「そんな魔法は無いんだぜ」
「平行世界を行き来する装置は、まだ発明していないなあ」
「これはスクープですね」
「阿礼の時代からの記憶を引っ張り出しても、役に立ちそうな事象はないですね」
「そーなのかー」
「紫さまが帰ってくるまで、ご飯は我慢します!」
マヨヒガに集まった人妖が口々に無理だと言う。
自分ひとりだけでは解決できないと見た藍が集めたのだ。
「むむむ……
紫さまは向こうの住人ではない。
向こうの世界で妖術が使えないとしても、何かきっかけさえあれば、歪みが戻るように元の世界に戻ると思うのですが……」
「きっかけ?」
「ええ。
向こうの世界のルールに矛盾しない方法で、世界を移動する方法があれば、おそらくこちらに戻られると思います」
「でも、向こうの世界とやらでは、スキマを使えないんでしょう?
だったら、戻る方法は無いじゃない」
「いえ、方法はあるはずです。
妖術が使えなくても、何かしら科学の力で世界の境界を抜けられるかもしれませんし、ブラックホールに入り事象の地平線を越えてもいい。
それに、向こうの世界にも博麗の神社があれば、そこに境界があるかもしれない」
「……ふーん。
いずれにせよ、こっちでは何もできないってことね」
藍は困った顔をして、「そうかもしれません」と答えた。
▽
「さてはて。どうやって帰ろうか」
どうもこの世界では、スキマはおろか妖術の類は全て使えないようだ。
スキマを使えないと、我が家に帰ることもできない。
博麗の神社まで行けば結界があるかな、と思ったが、目的の場所は『工事中立ち入り禁止』のロープで塞がれていた。
こんな世界でもきっちり結界を護るとはさすがは霊夢、とは思ったが、あんまり有難い話ではない。
親友の力を借りようと白玉楼にも行ったが、『別世界に帰る』と言ったら笑われてしまった。
まあ、あの子が幸せそうに生きてたから、無駄足も悪くはなかったとは言えよう。
永遠亭で別世界では妖術や魔法があると言ったら入院を薦められた。
紅魔館では屈強な門番に追い払われた。
地底には温泉しかなかった。
お寺は行ってない。
まさに八方ふさがり。手の打ちようがない。
だが、それでもここで諦めるわけにはいくまい。
瞼を閉じれば、藍の作った暖かい食事と満面の笑みをたたえた橙の顔が浮かびあがる。
そうだ。
私にはまだやらなければならないことがある。
あの場所へ帰らなくては。
こんなに嬉しいことは無い。私には、まだ帰れる場所があるんだ……
宇宙遊泳中のニュータイプになった気分でもう一度考えてみる。
まず、妖術は使えない。この世界に則った方法で、平行世界を移動する必要がある。
もちろん、悪材料ばかりではない。
私はこの世界に取っては異物。世界を跨ぐ行為さえすれば、理の自浄作用によって元の世界に戻れるだろう。
しかし、どうやって世界を跨ぐ?
『気がついたら別世界に来た』というシチュエーションは映画や小説など創作の世界では珍しいことではない。
よく考えれば何か方法はあるはずだ。
召喚?
――それは、幻想郷に召喚者がいないと無理だ。
次元の狭間に落ちる?
――そんな狭間は見当たらない。
光の速度を超えると別の世界に行くと言うぞ?
――私はそんなに速く走れない。
……待てよ?
私は閃く。
そういえば、ひとつだけ方法があったじゃないか。
どんな世界に行っても、何事もなかったかのように元の世界に戻れるあの方法が。
「さすがは私ね。
待ってなさい、藍、橙。すぐにあなたたちの元に帰ってみせるわ!!」
私は自分の閃きに大満足すると、その場で横になって一休みを始めた。
▽
ここは幻想郷のマヨヒガ。
人妖たちは未だ喧々諤々の議論を繰り広げている。
「さすがの紫も、もう帰って来れないんじゃない?」
「現実的に考えて無理だぜ」
「うーん、紫が死ねば冥界にやってくるかもしれないけど」
「いやあ、あの妖怪は地獄行きでしょ。四季様は厳しいよ」
「これはスクープですね」
「まだそうと決まったわけではありません。常識にとらわれてはいけませんよ」
「あーうー。早苗、そんなこと言っても無理だって」
「そーなのかー」
「紫さまは帰ってきます!帰ってくるまでご飯は我慢します!」
議論は踊る。結論は出ない。
典型的な駄目な会議である。
空気を変えようと藍がテーブルをどんと叩く。
「とにかく、紫さまは帰って来ます!
紫さまなら、きっと、我々には思いも及ばぬ方法で帰ってきてくれるはずです!」
もう一度藍がテーブルをどんと叩く。
すると、突然宙から紫が落ちてきて、その身体がどどんとテーブルを叩いた。
▽
「はっ!? ……夢か!?」
目覚めたら我が家のテーブルの上だった。
周りを見回すと、幻想郷中から集まったのだろう、顔、顔、顔。
皆があっけに取られた顔でこっちを見ている。
これはどうしたものか。
「紫……さま?」
わが愛する式まで、あっけに取られた顔でこっちを見ている。
「紫さま、よかった……
あのような世界に行ったことを知り、皆で心配していたのですよ。
それにしても紫さま、どうやってここに……」
藍が訝しげに首をかしげる。
しばらく考え込むと、突然何かを閃いたようにどんとテーブルを叩く。
私の身体が宙に浮く。
ちょっと浮き上がってまた落ちる。
どどんとテーブルを叩く。
「そうか、わかったぞ!
これは、夢オチですね!!
別世界に行って、何事もなかったように帰ってくる。
……うむ、うむ!
確かに夢オチならそれも可能でしょう。
さすがは紫さま。夢オチを思いつくとは!!」
藍が感極まった様子で演説を始めた。
わたしゃ、それより他の皆の視線が痛い。
唖然とした表情が、いまや寒い芸人でも見るかのようなジト目に変わっている。
絶対に奴ら、『ここまで引っ張っておいて夢オチかよ』と思っていやがる。
「……へえ、夢オチかあ」
「こんなに人を集めておいて、まさかそんなオチ?」
「さすがは紫ね。私たちには寒くてとてもできないオチを平然とやってのける」
「ずっと寝てればよかったのに」
「いや、紫さんだって、皆を楽しませようとがんばったんです!皆で笑ってあげましょうよ!」
「いや早苗、そりゃ無理だって」
「そーなのかー」
感激する藍。
私を責めるような目で見る人妖たち。
私は耐え切れなくなって、スキマを広げた。
「…………藍。
私はこれから、別世界を旅してきます。
別世界の視察も私の大切な役目。
集まってくれた皆様には申し訳ないけど、これは仕方のないことなのよ。
じゃあ、後は任せたわ」
早々にスキマに入り、このいたたまれない空間を後にする。
「紫さま!ご飯を先に食べててもいいですか!」
背後から橙の声が聞こえてきた。
私はスキマから顔だけを出して、「お腹一杯食べなさい。あなたたちにひもじい思いはさせないわ」と答えた。
了
しかし丈夫な机だなぁ。
異世界の八雲家三姉妹も頑張れっ!
もうちょっとお話膨らませてもよかったかなぁと言う感想。
現実離れしたいものですねぇwww
何とかなったんじゃないか?
が、どうせならそちらの世界の住人の描写がもっともっと欲しかったです
温泉を経営している旧地獄軍団とか、工事現場を監視している霊夢とか
と言う事で少々点数は減点しました
次回作。あるいはこの平行世界のSSに期待しています
さて、今回ちりばめた別世界のネタを書く作業に入ってもらいましょうか。
創想話三大特権と名付けよう
寝れば全てが解決する。そうさ、辛い現実なんて全て夢なのさ。寝て起きれば幸せな世界が待っている。
グッバイ悪夢ハローハッピー現実 レッツグッナイ