Coolier - 新生・東方創想話

霊夢の優しさ

2010/01/23 03:52:08
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 ゴロゴロと雷鳴が轟いている。
 季節外れの台風ってわけでもないだろうが、ただの雨雲の唸り声にしちゃ、些か激しめではある。

「……行ってみるか」

 私は簡単に身支度を整えると、箒にまたがって空を飛んだ。
 自分の周囲を魔力で覆い、雨を遮断する。
 こういうときに魔法使いは便利だ。

 心地よい稲光に身を包まれながら、行き着く先はいつもの神社。
 颯爽と境内に降り立ち、縁側へと足を掛ける。
 自分でも無作法だと思うが、これはもう習慣になってしまっているので勘弁してほしい。

 すたすたと廊下を歩いて、行き着く先は親友の寝室。
 私はそうっと障子を開けた。

 
 ……いた。


 薄闇の中、部屋の中央に敷かれた布団。
 何やら、こんもりと盛り上がっている。
 
 目を凝らすと、その全体がふるふると震えているのが分かる。
 どうやら、来て正解だったようだ。

「おーい、霊夢」

 ちょっと大きめの声で呼んでみる。
 すると、布団のかたまりがびくっと跳ねた。

 ……待つこと暫し。
 
 やがてその中から、一人の少女が、恐る恐る顔を覗かせた。
 不安げに私を見上げる眼差し。
 
「…………魔理沙」

 博麗霊夢。
 言わずと知れた私の親友であり、この神社の巫女でもある。

「よう」

 私が簡潔な挨拶をして、右手を上げるのと同時。

「魔理沙っ!」

 霊夢は布団を跳ね飛ばし、勢いよく私に抱きついてきた。

「おお、どうした」
「馬鹿馬鹿馬鹿! いつまで待たせるのよ!」
「す、すまん」

 いつになく感情的な霊夢。
 いや、今日に限ってはほぼ予想通りだが。

 雨音と雷鳴が、喧しく耳を衝く。
 そんな中、私たちは暫し、時間を忘れて抱き合っていた。

 そして私は、適当な頃合を見計らって、言った。

「ところで、霊夢」
「……何よ」
「聞かないのか?」
「……何を?」
「私が、ここに来た理由」
「えっ」

 そこで漸く、霊夢ははっとした表情を作った。
 それと同時に、私を軽く突き飛ばす。

「おっと」

 私は少しだけよろけたものの、これは想定の範囲内。
 慌てず動じず、霊夢の顔を見る。

 すると、霊夢は顔を赤らめ、もじもじとしながら言った。

「……な、なにしにきたのよ」

 なんか、棒読みというか、台本見ながら喋ってるというか。
 そんな感じの言い方だった。

 でも、これはいつものお約束、通過儀礼みたいなもの。
 だから私も、いつものように返すのだ。

「いやー、雷が怖くてなあ。一人じゃ寝られないんだぜ」

 そう。
 これこそが、私がこの神社に来た理由なのだ。
 
 ……え?

 心地よい稲光がどうとか、言ってなかったかって?

 いいんだよ、そういうことは。
 とにかく私は雷が怖いんだ。
 おおこわいこわい。

 一方、私の来訪理由を聞いた霊夢は、未だ赤い顔をしながら、言った。

「……しょ、しょうがないわね。じゃあ、一緒に寝てあげるわ」
「おお、本当か」
「ま、魔理沙は怖がりだからね」
「流石霊夢。頼りになるぜ」
「わ、私は巫女だからね。巫女は皆の味方だからね」

 いやはや、よかったよかった。
 これで、怖い怖い雷の夜も、安心して眠ることができるというものだ。
 霊夢は本当に優しい。

「じゃあ、早速布団に入っていいか?」
「え、ええ。いいわよ。本当に怖がりね、魔理沙ったら」
「そうなんだぜ。怖くて仕方がないぜ」
「も、もう。本当に、しょうがないんだから。……ほら」

 そう言って、霊夢は早速、怖がる私の手を取ってくれた。
 ぎゅうっと握られたその掌は、ひどく汗をかいていた。
 きっと、私を心配してくれていたからだろう。
 霊夢は本当に優しい。

「じ、じゃあ、早く寝るわよ」
「おう」
 
 霊夢に手を引かれたまま、私は霊夢と一緒に布団に入った。
 こういうとき、霊夢は必ず私と同じ布団で寝てくれる。
 全ては、雷に怯える私を守らんとするがためだ。
 霊夢は本当に優しい。

「も、もっとこっち寄りなさいよ」
「ああ、すまん」

 霊夢は私を気遣って、できるだけ二人の体が密着できるような体勢を取ってくれる。
 端的に言えば、霊夢が私に両手両足を回してしがみついているような格好だ。
 こうすることで、雷に怯える私を安心させようとしてくれているのだ。
 霊夢は本当に優しい。

「……ま、魔理沙。もう寝た?」
「いや。まだだぜ」
「そ、そう」
「雷が怖いからな。そう簡単には寝付けないぜ」
「そ、そう。仕方ないわね、魔理沙は。仕方ないから、ま、魔理沙が寝付くまで、私も起きていてあげるわ」
「それは助かるぜ」
「い、いいのよ。私は巫女だから。皆の巫女だから」

 霊夢は、決して自分が寝付けないわけじゃないのに、雷を怖がる私のために、いつもこうやって起きていてくれるのだ。
 霊夢は本当に優しい。

 なんてことをのんびり考えていたら。

 ピシャッ! ドーン! 

「ひゃあうっ!」
「おお」

 落ちたか?
 今のはなかなかの衝撃だったな。

「あうう……」

 ふと見ると、私にしがみついている霊夢がめっちゃ震えていた。
 えーと、これは、そうだ。

「霊夢、もしかして寒いのか?」
「……へ?」
「寒いんだよな?」
「…………」

 霊夢は暫く目をパチクリさせていたが、すぐに私の意図に気付いたらしく、

「そ、そうよ! 寒いのよ!」
「やっぱりそうか。だから震えてたんだな」
「え、ええ、そうよ。け、決して今の雷に驚いたわけじゃないわよ!」
「流石は霊夢だな。私なんか、今の落雷でちびりそうになるくらいびびったぜ」
「お、おほほ。あ、あの程度の落雷でそんなに驚くなんて。ま、魔理沙もまだまだ子供ねえ」
「ああ、だからもっと、ぎゅうっと抱きついてくれないか? そうしたら、少しは安心できると思うんだ」
「そ、そう? それじゃあ……」

 文字通り、私にぎゅうっと抱きつく霊夢。
 全ては、落雷に怯える私を安心させるがため。
 霊夢は本当に優しい。

 私はそんな霊夢の優しさに感動しつつ、言った。
 
「……じゃあ、私も、もっとぎゅうっと抱きしめてやるぜ。霊夢は震えるくらい、寒いんだもんな」
「そ、そうね。寒いのばかりは、いかに巫女な私といえども、どうしようもないからね。お、お願いするわ」

 そして私も、ぎゅうっと霊夢を抱きしめた。

「どうだ霊夢。少しは暖かくなったか?」
「え、ええ、多少はね。でもまだちょっと寒いわね」
「そうか、じゃあもう暫くこのままでいた方がいいな」
「そ、そうね、お願いするわ。いくら私が巫女だからって、寒いのはどうしようもないからね」
「ああ、寒いのはどうしようもないもんな」

 そうだ。
 巫女だって人間。
 寒いのばかりは、対処のしようがない。

 現に霊夢は、未だにがたがたと震えている。
 よっぽど寒いのだろう、かわいそうに。

 だから私は、その寒さが少しでも和らぐようにと、一層強く、霊夢の体を抱きしめてやった。
 すると、少しは暖かくなったのか、やや落ち着いた口調で霊夢が言った。

「……そ、そういう魔理沙はどうなの? ちょっとは落ち着いた?」
「いや、まだだな。さっきの落雷の余韻で、心臓がばくばくいってるぜ」
「じゃ、じゃあ、もう少しこうやっていた方がいいわね」
「ああ、頼むぜ」
「いいのよ。私は巫女だからね。皆の巫女だからね」

 そんな感じで、その後暫く、私たちは、互いに互いを抱きしめあっていた。

 私は、寒がる霊夢を暖めるため。
 霊夢は、怖がる私を落ち着かせるため。

 うん。
 実に合理的だな。
 
 その後も雷が轟くたびに、私は怖くなり、霊夢は寒くなった。 
 だから霊夢は私を抱きしめてくれたし、私も霊夢を抱きしめてやった。

「……ま、魔理沙、もう寝た?」
「いや、まだだぜ。怖くて寝られないぜ」
「そ、そう。仕方ないわね。じゃあ私も、魔理沙が寝付くまで起きていてあげるわ」
「それは助かるぜ」
「い、いいのよ。私は巫女だからね。皆の巫女だからね」

 霊夢は、幾度となく同じやりとりを交わして、私を安心させてくれる。
 
 そんな霊夢を見て、私はつくづくと思うのだった。




 霊夢は、本当に可愛い。
 






了 
昨日に続いて今日も霊夢。
広がる霊夢の可能性。


それでは、最後まで読んで下さり、本当にありがとうございました。
まりまりさ
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コメント



0.3250簡易評価
5.100名前が無い程度の能力削除
なんて甘い…

いいぞもっとやれww
6.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙は、本当に優しいな。

雷を怖がる霊夢……
ぬあぁぁぁああ!!  
ヤッベー!スッゲー!カワエー!
12.100名前が無い程度の能力削除
 ニ ヤ ニ ヤ が 止 ま ら な い
13.100ぺ・四潤削除
いつも弄られてる魔理沙がここぞとばかりに反撃に出るのかと思いきや、その優しさに惚れた。
妖々夢4面とか聖輦船2面とか雲の中で遠くで稲光がするたびに「ひゃぁあぁ!」とか言って涙目になってたらもうね。
15.100名前が無い程度の能力削除
まさかの逆転www可能性が無限大すぎるwww
16.100名前が無い程度の能力削除
なん・・・だと・・・!?
最高じゃないか…俺の顔面崩壊をどうしてくれるってんだ!!
18.100名前が無い程度の能力削除
人は一転して、マリレイに帰ってくる。
つまりジャスティス。
24.100名前が無い程度の能力削除
霊夢は本当に優しいな
25.100名前が無い程度の能力削除
おいかわい過ぎんぞもっとやれ
37.100名前が無い程度の能力削除
これだから人間は素晴らしい!
38.100名前が無い程度の能力削除
本当に霊夢は優しいなぁ
39.100名前が無い程度の能力削除
マリレイもいい!けど、魔理沙が受けで泣かされちゃうのもいい。あなたは私にどちらを選べと……
40.70名前が無い程度の能力削除
なんということだ…
ニヤニヤが止まらん!!
44.100名前が無い程度の能力削除
顔がニヤけたまま戻らなくなったぞ、どうしてくれるwwww
46.100名前が無い程度の能力削除
気づいたら顔がニヤニヤしてたww
52.100名前が無い程度の能力削除
自分はこんなマリレイを待ち望んでいた!

それにしても霊夢優しいなぁ…
54.100名前が無い程度の能力削除
なにこのかわいい生物
55.100名前が無い程度の能力削除
ニヤニヤしすぎて頬の筋肉があがががっが
61.100名前が無い程度の能力削除
皆の巫女だからね
64.100名前が無い程度の能力削除
優しいぜ…
65.100名前が無い程度の能力削除
2828がとまんないぞおい
88.無評価名前が無い程度の能力削除
2828止まらんwwww
霊夢かわええww
90.100名前が無い程度の能力削除
魔理沙フォロー上手いww
91.無評価Aina削除
マリレイヤバイ…
霊夢が可愛すぎ!