※上のタグの「儚月抄魔理沙フィギュア」って何ぞ、という方へ
本作品をお読みになる前に、是非一度「儚月抄 魔理沙」で検索してみてください。
そこに出てくる画像を十分に堪能なさった上で、本作品を読んで頂ければ幸いです。
◇ ◆ ◇ ◆
「霊夢! 霊夢!」
空から境内に向け、一直線に飛んでくる白黒、もとい、霧雨魔理沙。
「…………」
霊夢は猛烈な勢いで接近してくるその姿を認めると、目を伏せ、軽く溜め息を吐いた。
「―――霊夢!」
瞬く間に、魔理沙は霊夢の眼前に到着した。
よほど急いできたのか、はあはあと肩で息をしている。
「……一体何よ。騒々しいわね」
鬱陶しそうに呟く霊夢。
しかし魔理沙はそれをものともせず、屈託の無い笑顔で叫んだ。
「―――見て見て! 私がフィギュアになったんだぜ!」
そう言って魔理沙が突き出してきたのは、紛れもなく、魔理沙を模したフィギュアだった。
丸い台座から伸びたアームの上に、魔理沙のシンボルとも言うべき大きな星が鎮座している。
そしてその星の上には、箒に腰掛け、帽子を手で押さえた魔理沙が乗っているという構図だ。
エプロンドレスやスカートの皺、髪の流れ具合など、細部まで精緻に作り込まれたそれは、まさに芸術の極地。
躍動感に満ち溢れた恋色魔法使いの姿が、そこに具現化されていた。
しかし。
「…………」
そんな見事な造形美を前にしても、霊夢は表情一つ動かすことなく、ただ黙ってお茶を啜るのみだった。
「……む」
あまりに無関心な霊夢のその態度を前に、魔理沙は眉をぴくっと吊り上げると、
「……ん!」
ぐい、とさらにフィギュアを霊夢の方に突き付けた。
もう少しで、黒帽子のとんがり部分が霊夢の頬に当たりそうだ。
しかし。
「…………」
相変わらず、霊夢の反応は無い。
フィギュアを一瞥しただけで、またすぐに視線を下に落とした。
「……!」
魔理沙は、そんな霊夢の態度にぷうっと頬を膨らませると、
「……だったら、これはどうだ」
おもむろに、台座の裏面に指を伸ばした。
次の瞬間、カチッ、とスイッチの入る音がして、魔理沙フィギュアが腰掛けている大きな星に、光が灯った。
河童も脱帽のギミックである。
「ふふん」
どうだ驚いたか、そう言わんばかりに胸を張る魔理沙。
これには流石の霊夢も目を丸くするに違いない―――そう思っていたのだが。
「…………」
霊夢は変わらず、「それが何?」とでも言いたげな無感情な視線を無感動に向けていた。
「………ッ!」
これには、流石の魔理沙もおかんむりに来たらしく、
「……なんだよ! なんか言えよ!」
いよいよ声を大にした。
だが、霊夢の表情は変わらない。
無表情のまま、呟くように発した。
「……それが、どうしたの?」
「!?」
それだけ言うと、霊夢はまた、ずず、とお茶を啜った。
まるでもう用は済んだ、とでも言わんばかりに。
「………っ」
そんな霊夢の態度に呼応して、ふるふると、魔理沙の肩が震え始める。
いつしか、その目は潤んでいた。
そして。
「―――もういいよ! 霊夢のバカ!!」
吐き捨てるようにそう言うと、魔理沙は箒に跨り、一瞬で霊夢の視界から消え去った。
「…………」
それでも霊夢は、何事も無かったかのようにお茶を啜る。
罪悪感など、微塵も抱いていないような顔つきで。
しかし。
「あ~あ。ま~た泣かせちゃった」
不意に静寂を破る声に、霊夢は再度溜め息を吐く。
「……また覗き見? 相変わらず悪趣味ね」
「あら。あなたにだけは言われたくないですわ」
神出鬼没の妖怪、紫であった。
「……どういう意味よ」
「そのまんまの意味。いたいけな少女を泣かせて喜ぶなんて、嗜虐趣味、悪趣味としか言いようがないですわ」
「……あいつが勝手に泣いただけだし、別に私は喜んでもいないわ」
「ふうん。それならまあ、そういうことにしといてあげましょう」
扇子で口元を隠し、妖しく笑う紫。
霊夢はそれを気にする風でもなく、またお茶を啜る。
「ところで、霊夢」
「……何よ」
「趣味といえば、あなた、随分良い趣味をしているのねぇ?」
「は?」
紫の唐突な発言に、眉根を寄せる霊夢。
すると、紫は微笑を浮かべたまま、スキマに手を突っ込み、“何か”を取り出した。
「――――」
その瞬間、霊夢の手から湯呑が落ちた。
「あら、危ない」
紫はすかさず小さなスキマを発動、それを通じて、もう片方の手で湯呑をキャッチしてやる。
「はい」
「…………」
そのままスキマ越しに渡された湯呑を、霊夢は呆然とした面持ちで受け取った。
彼女の視線は、紫のもう一方の手―――スキマから、“何か”を取り出した方の手に、集中していた。
霊夢は必死に声を絞り出す。
「……な……」
「ん?」
「なんで……それを……」
「ああ、これはついさっき、あなたの寝室、枕元に置いてあったのを見つけて、拝借した物ですわ」
「……なっ……!」
かああっ、と顔を真っ赤にする霊夢。
紫は楽しそうに微笑みながら、続ける。
「見たところ、随分大事にしているみたいね? 埃一つ付いてなかったわ」
「…………」
「それにしても、まさか霊夢にこんな趣味があったなんて」
「…………」
「霊夢?」
「…………か」
「ん?」
「返せッ!」
先ほどまでの無表情とは一転、霊夢は感情をむき出しにしてそう叫ぶと、紫の手から“それ”を奪い取った。
「あら」
「…………」
「おかしいわねぇ。さっきはあんなに興味がなさそうだったのに」
「……さい」
「え?」
「うるさい! もう帰れ! バカ!」
霊夢は声を大にしてそう叫ぶと、紫に向けて湯呑を投げつけた。
紫は眉一つ動かすことなく、再び、さっきと同じサイズの小さなスキマを眼前に発動する。
湯呑はスキマに吸い込まれて消えていった。
「……くすくす。今の霊夢、さっきの魔理沙とおんなじ顔」
「う、うるさい!! 早く帰れ!」
「……はいはい。ま、今日の所はこれで退散してあげますわ。……でも次は、もう少し素直になることね」
「!?」
「くすくす」
紫は実に愉快そうに笑いながら、スキマの中へと消えていった。
そしてスキマが閉じる間際、細い腕がすらりと伸び、先ほど吸い込まれた湯呑が、音も無く床に置かれた。
「…………バカ」
一人残された霊夢は、誰も居ない空間に向けてぼそりと呟く。
そして、胸に抱いた“それ”の下部に指を伸ばした。
カチッという音とともに、大きな星に光が灯る。
「……そんな簡単になれるんなら……とっくにそうしてるわよ」
星に腰掛ける魔法使いの横顔を、霊夢はいつまでも見つめていた。
了
本作品をお読みになる前に、是非一度「儚月抄 魔理沙」で検索してみてください。
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◇ ◆ ◇ ◆
「霊夢! 霊夢!」
空から境内に向け、一直線に飛んでくる白黒、もとい、霧雨魔理沙。
「…………」
霊夢は猛烈な勢いで接近してくるその姿を認めると、目を伏せ、軽く溜め息を吐いた。
「―――霊夢!」
瞬く間に、魔理沙は霊夢の眼前に到着した。
よほど急いできたのか、はあはあと肩で息をしている。
「……一体何よ。騒々しいわね」
鬱陶しそうに呟く霊夢。
しかし魔理沙はそれをものともせず、屈託の無い笑顔で叫んだ。
「―――見て見て! 私がフィギュアになったんだぜ!」
そう言って魔理沙が突き出してきたのは、紛れもなく、魔理沙を模したフィギュアだった。
丸い台座から伸びたアームの上に、魔理沙のシンボルとも言うべき大きな星が鎮座している。
そしてその星の上には、箒に腰掛け、帽子を手で押さえた魔理沙が乗っているという構図だ。
エプロンドレスやスカートの皺、髪の流れ具合など、細部まで精緻に作り込まれたそれは、まさに芸術の極地。
躍動感に満ち溢れた恋色魔法使いの姿が、そこに具現化されていた。
しかし。
「…………」
そんな見事な造形美を前にしても、霊夢は表情一つ動かすことなく、ただ黙ってお茶を啜るのみだった。
「……む」
あまりに無関心な霊夢のその態度を前に、魔理沙は眉をぴくっと吊り上げると、
「……ん!」
ぐい、とさらにフィギュアを霊夢の方に突き付けた。
もう少しで、黒帽子のとんがり部分が霊夢の頬に当たりそうだ。
しかし。
「…………」
相変わらず、霊夢の反応は無い。
フィギュアを一瞥しただけで、またすぐに視線を下に落とした。
「……!」
魔理沙は、そんな霊夢の態度にぷうっと頬を膨らませると、
「……だったら、これはどうだ」
おもむろに、台座の裏面に指を伸ばした。
次の瞬間、カチッ、とスイッチの入る音がして、魔理沙フィギュアが腰掛けている大きな星に、光が灯った。
河童も脱帽のギミックである。
「ふふん」
どうだ驚いたか、そう言わんばかりに胸を張る魔理沙。
これには流石の霊夢も目を丸くするに違いない―――そう思っていたのだが。
「…………」
霊夢は変わらず、「それが何?」とでも言いたげな無感情な視線を無感動に向けていた。
「………ッ!」
これには、流石の魔理沙もおかんむりに来たらしく、
「……なんだよ! なんか言えよ!」
いよいよ声を大にした。
だが、霊夢の表情は変わらない。
無表情のまま、呟くように発した。
「……それが、どうしたの?」
「!?」
それだけ言うと、霊夢はまた、ずず、とお茶を啜った。
まるでもう用は済んだ、とでも言わんばかりに。
「………っ」
そんな霊夢の態度に呼応して、ふるふると、魔理沙の肩が震え始める。
いつしか、その目は潤んでいた。
そして。
「―――もういいよ! 霊夢のバカ!!」
吐き捨てるようにそう言うと、魔理沙は箒に跨り、一瞬で霊夢の視界から消え去った。
「…………」
それでも霊夢は、何事も無かったかのようにお茶を啜る。
罪悪感など、微塵も抱いていないような顔つきで。
しかし。
「あ~あ。ま~た泣かせちゃった」
不意に静寂を破る声に、霊夢は再度溜め息を吐く。
「……また覗き見? 相変わらず悪趣味ね」
「あら。あなたにだけは言われたくないですわ」
神出鬼没の妖怪、紫であった。
「……どういう意味よ」
「そのまんまの意味。いたいけな少女を泣かせて喜ぶなんて、嗜虐趣味、悪趣味としか言いようがないですわ」
「……あいつが勝手に泣いただけだし、別に私は喜んでもいないわ」
「ふうん。それならまあ、そういうことにしといてあげましょう」
扇子で口元を隠し、妖しく笑う紫。
霊夢はそれを気にする風でもなく、またお茶を啜る。
「ところで、霊夢」
「……何よ」
「趣味といえば、あなた、随分良い趣味をしているのねぇ?」
「は?」
紫の唐突な発言に、眉根を寄せる霊夢。
すると、紫は微笑を浮かべたまま、スキマに手を突っ込み、“何か”を取り出した。
「――――」
その瞬間、霊夢の手から湯呑が落ちた。
「あら、危ない」
紫はすかさず小さなスキマを発動、それを通じて、もう片方の手で湯呑をキャッチしてやる。
「はい」
「…………」
そのままスキマ越しに渡された湯呑を、霊夢は呆然とした面持ちで受け取った。
彼女の視線は、紫のもう一方の手―――スキマから、“何か”を取り出した方の手に、集中していた。
霊夢は必死に声を絞り出す。
「……な……」
「ん?」
「なんで……それを……」
「ああ、これはついさっき、あなたの寝室、枕元に置いてあったのを見つけて、拝借した物ですわ」
「……なっ……!」
かああっ、と顔を真っ赤にする霊夢。
紫は楽しそうに微笑みながら、続ける。
「見たところ、随分大事にしているみたいね? 埃一つ付いてなかったわ」
「…………」
「それにしても、まさか霊夢にこんな趣味があったなんて」
「…………」
「霊夢?」
「…………か」
「ん?」
「返せッ!」
先ほどまでの無表情とは一転、霊夢は感情をむき出しにしてそう叫ぶと、紫の手から“それ”を奪い取った。
「あら」
「…………」
「おかしいわねぇ。さっきはあんなに興味がなさそうだったのに」
「……さい」
「え?」
「うるさい! もう帰れ! バカ!」
霊夢は声を大にしてそう叫ぶと、紫に向けて湯呑を投げつけた。
紫は眉一つ動かすことなく、再び、さっきと同じサイズの小さなスキマを眼前に発動する。
湯呑はスキマに吸い込まれて消えていった。
「……くすくす。今の霊夢、さっきの魔理沙とおんなじ顔」
「う、うるさい!! 早く帰れ!」
「……はいはい。ま、今日の所はこれで退散してあげますわ。……でも次は、もう少し素直になることね」
「!?」
「くすくす」
紫は実に愉快そうに笑いながら、スキマの中へと消えていった。
そしてスキマが閉じる間際、細い腕がすらりと伸び、先ほど吸い込まれた湯呑が、音も無く床に置かれた。
「…………バカ」
一人残された霊夢は、誰も居ない空間に向けてぼそりと呟く。
そして、胸に抱いた“それ”の下部に指を伸ばした。
カチッという音とともに、大きな星に光が灯る。
「……そんな簡単になれるんなら……とっくにそうしてるわよ」
星に腰掛ける魔法使いの横顔を、霊夢はいつまでも見つめていた。
了
アリスー私にもフィギュア作ってくれー!!!
魔理沙可愛いよ魔理沙。
てか後書きwww
良いまりさだと思ったら
貴方でしたみたいな
だが後書きww大馬鹿野郎めwwww
あなたは私に萌え死ねと……?!
ゆかりん良いキャラだぁ。
ツンデれいむおいしいです!
そして相変わらずの泣き虫魔理沙かわいいよ泣き虫魔理沙!
ごちそうさまでした!
まりさもれいむもかわいい。アリスはお姉さん!
>ーーー見て見て! 私がフィギュアになったんだぜ!
ここで「見てくれ!」と言わない魔理沙が氏の真骨頂だと思う。
てか魔理沙の何気ない一言に毎回被弾しております。どうしてくれるw
あと、後書きは余計でしたね
にしてもやはり氏の魔理沙はカワイイ!
この調子で レ イ サ ナ も た の む (土下座)
レイマリは少なめだからもっと書いてほしいと思った!
特にツンデれいむ×泣き虫まりさの組み合わせはもはや神域の組み合わせじゃないかな!
なにあのフィギュア…なんてけしからんフィギュアなんだ!
まったくもってけしからん!
この作品に出てくる魔理沙とセットですべて私が貰い受ける!
ほんと素晴らしいです。まりまりささん
魔理沙も霊夢も可愛い