ここは悪魔の棲む館、紅魔館である。
今は冬。寒いのは当然なのだが、レティという雪女が暴れまくっているせいか猛吹雪が続き余計に寒い。
まったく、ああいう妖怪こそ退治したほうがいいだろ、ただ人間を脅かすだけの私のほうがよっぽど無害だ。
まぁここ、フランの部屋には最近、山の神から貰ってきた(盗んできた)コタツがあるから暖かくていいんだけど。命蓮寺のコタツも元々は山の神から貰ってきた物らしい。しかし外の技術は凄いなぁ、こんなに寒い日でもコタツに入ればぬくぬくと過ごすことが出来る。
今日はこいしが、真剣な顔をして「重大な頼みがあるの」っていうから集まったのだが、
「ぬえ~、私のペットになってよ~」
「絶対に嫌だ」
このザマだ。なんで私が貴方のペットになんかならないといけないんだ。
「だいたい、こいしにはいっぱいペットがいるじゃないか、(うにゅ~)って子とか(にゃ~ん)って子とか」
「お空とお燐はお姉ちゃんのペットだもん、私も自分のペットが欲しいの!」
欲しいの欲しいの! と地団駄を踏む、駄々っ子かお前は、
「ペットになってくれたらい~ぱい可愛がってあげるよ? 毎日ハグしてあげるし、毎日体を綺麗に洗ってあげるのに~」
そんな邪気のない満面の笑顔で言われても困る。
相変わらずその手の動きはペットを『洗う』動きではないし。
「とにかく私は嫌だよ、ペットにならフランがなりなよ、四人に分身できるんだから一人くらいいいでしょ?」
「な~に馬鹿な事言ってるのよぬえは、いいわけないでしょそんなの。だいたいそれ前にこいしちゃんにも言われたわ」
言ったのかこいし……。
「残念だなぁ~、あっ! それじゃあ今から捕まえに行かない?」
「外、猛吹雪じゃん……」
弾幕のごとく吹き荒れる雪、とてもじゃないが外に出る気にはなれない。だからこそコタツでぬくぬくとしていたというのに。
「情けないわねぇぬえは、これくらいの吹雪で泣き言を言うなんて、それでもエキストラボスなの? 逆に好都合よ、他の生物が寒さで弱っている今こそ捕まえるチャンスよ!」
これくらいって紅魔館の門雪で埋まってるんだけど……。しかし、エキストラボスの名前を出されたら私も引き下がるわけにも行かない。
「しょうがないなぁ、体も鈍ってるし付き合ってあげるよ。それでどうやって捕まえるの?」
「まずフランちゃんが弾幕ゴッコを仕掛けて相手を弱らす、弱ったところを私がボディーブローで気絶させる。えーと、ぬえは横でスネークショーでもしてて♪」
「私いらないじゃん!」
「えっ……、というか私も行くの?」
フランが急に嫌そうな顔する、三度の飯より弾幕ゴッコが好きなフランが嫌がるとは思わなかった。
「だって外寒いし……、それに弱ってる相手と弾幕ゴッコしてもつまんないよ」
うん、確かにフランの言うとおりだ、こんな猛吹雪の中愛しいコタツから離れるなんて出来るわけ無い。とはいえ、
「行こうよフラン、こいし一人で行かせたら雪の中に埋まってそのまま春を迎えそうだし」
「そうねぇ……、前にも(ちょっと神を捕まえてくる)とか急に飛び出して、なぜか紅魔館の前の池に浮かんでいたし……」
そういうとフランはコタツからしぶしぶと出た。
「二人ともありがとう♪、じゃあまずは風見幽香って人のところに行ってみましょう♪ 花を操る妖怪って言うからペットに出来たら便利よぉ♪」
そんなこんなで私達は平和な世界(コタツ)から出て行き、バケツを放り投げたような猛吹雪の世界(外)へ行くことにした。
※少女移動中
【30分後 太陽の畑にて】
「太陽の畑、雪で埋まっているねフラン……」
「そうだね……」
フランが疲れた顔をしながら相槌を打つ。多分鏡で自分の顔を見たらフランと同じ顔をしているだろう。
普段ヒマワリの花で黄色に覆われていた太陽の畑はいまや大量の雪により白銀の世界へと変わっていった。あれじゃたとえ幽香が埋まっていたとしても見つけるなんて不可能だ。
それだけなら良いのだが、諦め切れなかったこいしが雪の中に潜りだして行方不明になりおった。
「残念だったわねぇー、もう少しで見つかりそうだったんだけどぉ♪」 とこいしが言うがそれは絶対にない、こいしを見つけるだけで私とフランが20分も過かったというのに。おかげでこっちは雪まみれだ。
「まぁいいわぁ、じゃあ今度は藤原妹紅って人のところに行ってみましょう♪ なんでも炎の妖術を使うらしいから雪かきに役にたつわよぉ♪」
私とフランはもう愛するコタツの元へ帰りたかったのだが止める暇もなくこいしは竹やぶの方へと消えていった―――。
※少女移動中
【さらに20分後 迷いの竹林にて】
「竹やぶ、雪で埋まっているねフラン……」
「うん……」「そうだね……」「寒い……」「もう帰る……」
炎を出す人間って言うから少しは期待してたのだが、この猛吹雪に耐えられなかったのかどこにも見当たらない。というか竹やぶが埋まる雪ってもうこれ異変だろ。霊夢は何やってるんだ。
「フラン、そのまま四人でこいしを捕まえといてね。こんな雪の中潜られたらもう探しようが無いから」
フランに頼んで『フォーオブアカインド』で四人になってもらい、こいしの両手・両足を掴んで貰っている。
こいしは「大丈夫だよぉ~、まったくみんな心配性ねぇ」と言うがすぐ無意識にどっか行くからこっちは心配でしょうがない。
しかし寒い……、雪も凄くなってきて一M先すら視界が危うい、しかしだ、
「ここまで来たんだ、ちょっと霊夢に文句言いに行こうよ。そしたらコタツへ帰ろう」
「わかった……」「うん……」「そうだねー……」「いいよー……」
フラン達はもう寒くて羽がプルプルしてる。
こいしは―――
「えー、もう帰っちゃうのぬえ? まだ誰も捕まえてないのにぃ」
いつも通り元気だ。
「じゃあ霊夢でも捕まえなよ、この異変も解決してくれるだろうし一石二鳥だ」
「そうかぁ♪ 頭いいわねぬえって♪」
まぁどうせこの流れだとあそこの神社も埋まってるだろうけど……。
※少女移動中
【さらに10分後 博麗神社にて】
「博麗神社、潰れてるねフラン……」
「「「「ペッシャンコだね……」」」」
雪の重さに耐えられなかったのか神社がものの見事に崩壊している。
これはさすがの霊夢も死ぬんじゃ……。
さすがに助けなきゃヤバイかなぁ、と思った矢先目の前から雪とは違う白いものが舞って来た。紙かなこれは? しかも何か書いてある、どれどれ、
『寒いので八雲 紫の家へ行ってきます。 ご利益たっぷりの神社の賽銭箱はここにあるのでたっぷりと入れるように 霊夢』
―――ああ、確かに賽銭箱にはたっぷり入ってるだろうな、雪が。
「というわけで、霊夢もいない事だしもう帰ろうか」
「「「「うん……」」」」
フラン達がプルプルしながら相槌を打つ、色鮮やかな羽は雪が積もって白一色と成っていた。
こいしは―――
「えー、もう帰っちゃうのぉ、つまんなーい」
やっぱり元気だ。フラン達が掴んでる手足を離したらそのままどっかへ飛んで行きそうだ。
「じゃあやっぱりぬえがペットになってよ♪」
「正体不明の粉雪に埋もれて死ね!!!」
「えー、それならせめて鳴き声を聞かせてよぉ、そしたら帰るから♪」
意味がわからない、いつもの事だがこいしは、本当に意味がわからない。
なんで私が貴方に鳴き声を聞かせなきゃならないんだ。
「いいじゃないのよぬえ」「聞かせて上げなよ鳴き声くらい」「減るもんじゃないし」「もう帰りたいし」
あまりの寒さにこいしを掴んでいたフラン達がお互いをぎゅ~と抱きしめている。暖かそうでいいなぁあれ。
ああ、私も早く暖かくなりたい、早くコタツへ帰りたい。
「仕方ないなぁ……」
「ありがとうぬえ♪ 大好き♪」
そんなに聞きたかったのか私の鳴き声を、こいしが白銀の雪以上にキラキラした目で私を見る。
「鳴くよ?」
「うん♪」
こいしがワクワクとした顔で見る。
しょうがないなぁ、聞かせてやるよ! 鵺の鳴き声というものを!
「ピー! ピー! フェー! ヒョー! フェー! ピー!」
「どうだ、これが伝説の鵺の鳴き声だ!」 と、鳴き終わった私は少し誇らしげな顔をした。
しかし、さすがに友達の目の前で鳴くのは恥ずかしい、凍えた体も少し暖かくなった。
これでこいしも喜ぶだろう、と思ったのだがなんだか意外そうな顔をしている、
「え? 今の鳥みたいのがぬえの鳴き声なの?」
目を丸くしながらこいしが言う。せっかく鳴いてあげたんだからもっと喜べ。
「どんな鳴き声かと思ったのこいしは?」
「(ぬぇ~~)って鳴くのかと思ったわ」
「そんな奴いるか!」
可愛い鳴き声なんですなー。「ぬえぇ~」でも可愛いですがw
というか妹紅、輝夜……仲良いなお前らwww
ぬえぬえかわいいよぬえぬえ。絶対領域ヤバいよ。
もう可愛いなぁ~この3人は!
普通に大雪であちこち大変な事になってるじゃないですか!
そしてレティにげてー!
夜にどこからともなく聞こえてくるとちと不気味ではあるのだが
ぬえぬえの鳴き声はあんなのでも、泣き声のほうはやっぱり(ぬえぇ~~ん)なんだろうな……
ぬえぬえだけは絶対におぱんつ派だと断言できると思います。……いや、でもまさか……うん……いや、何でもないです。気にしないでください。
誤字報告です「じゃあまずは風見幽香って人のところに言ってみましょう♪」
見た感じこいしちゃんが一番子供っぽい性格で楽しそうですねー。
よく見ると「ぬがせたかっただけ」じゃあないじゃないか。ハハハ
関係ないけどぬぇ~でぬ~べ~思い出しちまった。
ぬえの鳴き声がシュール過ぎてお茶を噴出してしまいました。
そのうちでいいので、こいしちゃん視点のお話しも読んでみたいですw
おい、ちょっと待てよ、これは鬼の手抜き工事が問題だろ!?
いえいえ、レティさんがちょっと頑張りすぎただけですw