「空に流れる天の川~♪、ひっくり返って土砂降り洪水~♪」
今日は残念ながら大雨土砂降り天気は最悪。それでも夜道で今日も屋台の営業中。
お客さんが来るかは全く謎の博打な営業~♪
せめて炭と料理が濡れないようにしないとね~。
「開いてるかい?」
「あ、いらっしゃ~い♪」
「あ~結構濡れたね」
最初のお客さんは山の上の神様二人。
大雨のせいか傘をさしているのに所々に雫がぽたぽた。
「たまには雨の散歩もいいって言ったのは諏訪子じゃないか」
「いや~、流石にこんなに酷くなるとは思わなくてね」
「はい、これど~ぞ~♪」
「お、気が利くね」
「ありがと~」
とりあえず布を渡す。神様だって濡れたまんまじゃ気持ち悪いだろうし。
「で、何にする~?」
「あ~、とりあえず熱燗を」
「わたしはぬる燗~」
「はいは~い♪」
沸かしておいてあったお湯に銚子を入れる。
最初っから温めておければいいんだけど酒気が飛んじゃうからね~。
「あれ、諏訪子って猫舌だったっけ?」
「うんにゃ、ただ熱燗は酒気が目に入ってちょっと苦手なんだよ。あとぬる燗のほうが早く飲める」
「じゃあ冷でいいじゃない」
「流石にそれは寒い」
う~ん、やっぱり蛙の神様だから寒いの苦手なのかなぁ?
「はい、ぬる燗~」
「お、ありがと~。じゃあ先にもらうね」
「ん」
蛙の神様の方が美味しそうにお猪口を口にする。あ、蛇の神様のほうがちょっとうらやましそう。熱燗はもう少しだけ待ってね~。
「そういえば早苗は連れてこなくて良かったのかい?」
「ん~、偶には私達から離れるのも必要だよ」
「いや、最近は一人で頑張っているじゃないか」
「ん~、あれはバックに私達がついているから正確には一人ってわけじゃないと思うな。だからこそあんなにはっちゃけてる気がするし」
「・・・あ~、確かに最近の早苗はなんだしね」
「いや、あれが悪いとはいわないんだけど、私達がいるからああなっているなら問題かなって」
「まぁねぇ」
「はい、熱燗おまちど~♪」
「お、やっと来た」
二人が話している早苗ってたしか山の上の巫女さんの名前だったよね?会話が自分の子供について悩んでいる人達とそっくりだけど、やっぱり二人にとって娘みたいなものなのかなぁ?
・・・この場合どっちが夫でどっちが妻なのかな?
「にしてもあの性格、誰に似たんだか・・・」
「そりゃああんたでしょう」
「え~、私は神奈子だと思うけどな~」
「真面目なのは私に似ているかもしれないけど、あの調子付くとそのまま突き進む性格は諏訪子似だって」
「その言葉そっくりそのまま返すよ」
「なにさ」
「なによ」
あわわわわ、ここで喧嘩されたらひとたまりもない!
とりあえず、何か出して気を逸らせよう。
「開いてるかしら?」
「いらっしゃ~い」
次のお客は紅いお屋敷の紫魔女。
性格的にも身体的でも外に出たがらないって話なのに珍しい?しかもこんな雨の中。
「あら、あなた達は確か山の・・・神様が二柱もこんな屋台にいるなんて貴重な光景かしら?」
こんな屋台は余計だよ~。
「ああ、あんたは確か紅魔館の魔女だったな」
「パーティー以来だね」
「まぁ、私はあまり外に出ないからね。店主、串揚げをもらえるかしら?」
「はいは~い♪」
そういった魔女さんは何か唱えてから座った。
そういえばこんな雨の中、傘もさしていないのに全く濡れてないや?
「雨よけの魔法かい?」
「そんなところね。本にとって湿度は天敵だから水分を避ける魔法は得意なのよ」
「ほ~、でもなんでわざわざ雨の中に外出なんかしたわけ?いくら濡れないからってこんな日に出ることないでしょうに」
「いや諏訪子、私達が言える台詞じゃないよ?」
確かにね~。いや、そんな日に屋台に来てくれたのは嬉しいけどさ。
「雨の日だからよ」
「へ?」
「私があそこからなかなか外に出ない理由の一つに、暴走した妹様を抑える役目があるからね。大雨なら妹様が暴れても外に出ることはないわ」
「ふ~ん、でもいいの?そんな身内の恥みたいな事を言っても」
「いいのよ、結構知られた話だし幻想郷縁起でも少し触れられているから」
そういえば私も聞いたことがある~。
「それよりも、あなた達に会ったら是非聞いてみたいことがあったのよ」
「おや、なんだい?」
「あなた達って昔戦争したんでしょう?」
「そうだよ」
「で、あなたは負けたと」
「まぁね」
蛙の神様が苦笑している。逆に蛇?の神様は何か得意げ。
「確かあなたの投げた鉄の輪がそっちの蔦に絡められた途端錆びたせいで負けたって」
「あんま、嫌なこと思い出させないで欲しいなぁ」
「ふふん」
「それが信じられないのよね」
「どういうことだい?」
蛇?の神様が身を乗り出して聞いてくる。やっぱり勝った事が信じてもらえないのが気に障ったのかな?
「鉄の輪は五行で言えば金、まぁ五金で考えれば木だけどあなたのほうは坤を創造するっていうぐらいだから土だと考えて、土生金から金属性と考えるわ」
「創造なら火生土って考えて火かもしれないよ?」
「いえ、それなら鉄の輪が金でも木でも相性が悪いわ。それにミジャクジは石神と聞く。それならそれを統べるあなたはやっぱり土よ」
「まぁあたりだね。確かに五行でいうと私は土だよ」
「そう、そしてそっちは乾を創造し、蔦を操ることから属性は木と考えられる」
??何を言っているかちんぷんかんぷんだよ~。
「そう考えると金剋木である限り鉄の輪が蔦に負けるはずないのよ。よほどの力の差があるならともかく・・・これでは五行が成り立たない」
「・・・あぁなるほど、問題はそこか」
「そう、そこが問題なのよ。五行の思想は間違っていないはずなのに」
「いや、五行自体はあっている。私が問題だといったのは私の属性のことだ」
「・・・どういうことかしら?」
「簡単なことさ、私は水神だ」
「そうなの?」
「そう、私はタケミナカタとしてその時は動いていたんだが、タケミナカタのミナカタは水潟からくるのさ。だから水神なんだよ」
も~わかんないから私は歌ってよ~♪。
「・・・なるほどだから金生水で水気が増加し、さらに水生木で増加した木気が木侮金となって錆びさせたわけね」
「そういうことさ。というか、それは諏訪子も行っていたしね」
「あら、そうなんだ」
「そうそう、そのままでいくと土剋水で不利だからって向こうが木を使ってきたからこっちも金を使ったのさ・・・まぁそれが偽装だったのには参ったけどね」
「ふふん、私の知恵の勝利って訳だ」
「興味深いわ、相性の悪い属性を相生を組み合わせて逆転し、しかもそれを駆け引きに使うなんてね」
なんか難しい話が続くなぁ・・・せっかくのお客さんなのに今日はちょっと関われないや。
「だかぁらぁ、水生木なのになんで本は湿気でかびるのよ~」
「いや、カビも木気だから・・・」
「本が増えたっていいじゃない!」
「いや~、それ既に本という枠を超えてると思うなぁ」
「そうか、水気が足りないのね!つまり水に沈めれば・・・」
「「それは確実に本が駄目になる!」」
「・・・上手くいかないものね」
「いや、あんたの思考が上手くいっていない」
「は~、魔女って酔うと普段と違って滅茶苦茶な事言うんだねぇ」
お酒を飲んだ紫魔女さん、意味不明に難しい事を言い続けている。
私にはもちろん何を言っているかわかんないけど、神様二人もわかんないみたい。
「開いてるか~い?」
「うにゅ~、ずぶぬれだよ~」
「あ、いらっしゃ~い。はい布」
次のお客は真っ赤な黒猫と星空マントの烏の二人。こっちはびしょぬれ、傘すら持っていない。
お酒よりもまずは布を渡さないとね。
「いや~、地下は雨なんて降らないからすっかり失念していたよ」
「今日はやめておいたほうが良かったんじゃない?」
「いやここまで来てそれをいうのはどうかなぁって思うけど、なにより偶には雨も良いって言ったのはお空じゃない」
「そうだっけ?」
なんか烏さんも私と一緒であんまり記憶力がないみたい。
「・・・なんか私達認識されていない?」
「ん、誰だっけ?」
「いや、面倒になりそうだから無視してたんだけど・・・」
「うわ、ひど!私達のおかげで地下が発展したって言うのに」
「いや、その代わり巫女が来たりとかいろいろ厄介ごとも増えたし・・・」
「でもそのおかげで地上との親交が始まったじゃない」
「そうだけどさ~」
「何、神を愚弄する気?」
「もともと信仰なんてしてないけどね」
「ねぇ、誰だっけ~?」
「と言う訳で、本と水を用意しなさい夜雀!!」
「へっ!?」
うわうわうわ、魔女さんがこっちに絡んできた!水はともかく本なんてこの屋台にないよ~!
「・・・もういい、神をここまでコケにされたのも久しぶりだ」
とりあえずメニューの紙を魔女さんに渡していると、いつの間にか神様と黒猫さんの様子がおかしくなってる?
ってそういえば、二人ともいつの間にそんなに飲んでたの?私が出した覚えのない酒まであるんだけど?
「あれ、ここって持込駄目なの?」
「ううん、そんなことないよ~」
あ、なるほど烏さんが持ってきたお酒なんだ?
「うん、鬼特製の」
え、それって相当きついんじゃ・・・?
「ちょっと、神奈子~?」
「うるさいよ諏訪子、ここで引いたら神の名が廃るわ!勝負よ火車」
「望むところよ。八坂の神」
「お燐~?」
いや~、なんか嫌な雰囲気。なんかおっそろしい力が二人から流れ始めてるんだけど~?
「あっちゃ~、こうなったら止められないか。ねぇ店主」
「なに~?」
蛙の神様が呼んだので、私は魔女さんからそっちに視線を移した。
因みに魔女さんはコップに入れた水にちぎったメニューの紙を漬け込んでる。
横から流れる力に気付いていないのかな?
「ここにあるお酒、あるだけ出してくれないかな?」
「いいけど、何で?」
「店主だって屋台は壊されたくないでしょ?まぁ見てて」
「増えなさい・・・増えなさい・・・」
「あ、このお魚美味しい~♪」
そういって蛙の神様はお酒の瓶のうち一本だけを持って、二人の間にドンって置いた。
あと魔女さん、あんまりかき混ぜると水がこぼれるよ~?
「ねぇ二人とも、ここは屋台なんだから勝負と言ったらコレでしょう?」
「む、飲み比べか。いいだろう単純な力で勝負したら圧倒的にこっちが有利だからな。とは言ってもこっちでも私の有利は揺るがないけどね」
「ふん、神が酔いつぶれる姿を見るもの楽しそうだね」
「ほざけ」
「はんっ」
「はいはい、じゃあ勝負ね。ほいスタート」
うわ~、二人して最初から随分ピッチを上げてるな~。
「ねぇねぇ、このウツボって何~」
「あ、それは外の魚だよ~。見た目は怖いけど結構美味しいよ」
「じゃあそれ頂戴」
「は~い♪」
「私は魚の天ぷらを頂戴」
「はいは~い♪」
「・・・増えるどころか消えたわ」
さて、あっちの二人はほっておいて料理料理♪
あと魔女さん、多分それ、紙が水に溶けただけだと思うよ?
「しとしとぽたぽたお空の涙~♪、濡らした瞳は雲隠れ~♪」
夜も更け、雨も少しだけ弱まってきた。
「・・・山の天狗たちとやり合っている私に、よくついてこれるわね」
「・・・だてに、鬼の住む町で飲んでないさ」
「サンショウウオって美味しいんだ?」
「そうだよ、体にもいいしね。見た目はあんなだけどウツボがいけるなら大丈夫だと思うよ」
「・・・」
神様と黒猫さんは未だに勝負がついていない~。
蛙の神様と烏さんは食べ物談義に花咲かせてる。
魔女さんはメニュー握り締めてダウン中~。
「ふふふふふ、ただの妖怪だと思っていたけどなかなかどうしてやるじゃない」
「あんたもね、どうせ神様なんて巫女に任せきりのの何も出来ないやつって思っていたけど頑張るじゃない」
あ、なんか変な友情みたいなものが出来てる?
「でも、これで最後よ」
「ええ」
「「さぁ、勝負!!」」
あ、そんな鬼の酒を一気飲みしたら・・・
――バタンッ――
あ~らら~、飲み干すと同時に二人とも倒れちゃった。
「あ~あ、倒れちゃった」
「お燐~、大丈夫?」
「ま、とりあえず濡れないところにおいとこうかね」
蛙の神様と烏さんが二人を濡れないように横にした。私はそれに毛布を
かける。
「さてさてうるさい奴らも消えたことだし、こっちはこっちで楽しみますかね」
「そうだね。あ、串揚げ追加~」
「はいは~い♪」
注文に応えて捌いた魚を油に入れる。
「にしても、こう雨だと油は扱いにくいでしょう?」
「そうだね~、雨が入ったら弾けて大変だし~」
「ふ~ん、だったらどうして店主ってここで屋台をしているの?」
「うん?」
烏さんの質問に私は首を傾げる。
「だってこんな雨の日だと料理が大変なんでしょう?雨が降っても平気な場所にすればいいのに」
「そういえば、いっつもここだよね。それほど立地がいいとも思えないけど」
「う~ん?」
そういえば、何でいつもここで屋台をしてるんだろう~?
あんまり考えたことなかったな~。
「あれかな~?もともとここが私の狩場で、屋台をするって決めたときもそのまま慣れたここで始めたからかな?」
「そうえば夜雀って夜道で人を襲う妖怪だったっけ」
「そうなんだ~?」
「そうだよ~♪」
まぁ最近は全くしていないけどね~。
「なるほど、無意識のうちに自分のテリトリー内で活動しようとしているわけだ」
「そうかもね~」
「無意識っていうとこいし様みたい」
こいしっていうのが誰かはわからないけど、何か違う気がする。
「じゃあ諏訪子もお気に入りの場所とかあるの?」
「ん?ん~、一応あったかな」
「教えて教えて!」
「外の世界の場所だから言ってもわかんないとは思うけど・・・」
「ついでに外の世界についても聞きたいな~、特に音楽♪」
「まぁいいけどね」
雨の帳が覆う屋台に響く蛙と鳥の話し声。
夜明けまでにはまだ少し・・・。
×塗れないように
○濡れないように
店主が店主らしくて、いっそうその場の騒がしさが心地よく感じられますね。
雰囲気もそれほど変に思われなかったようで何よりです。
>>2さん誤字の報告ありがとうございます。
気に入ってくださる方がいる酔っ払いパチュリー、紅魔館ではそこまで飲まないので決してあんな風にはなりません。
なんでここでここまで飲んだのかは自分でも不明です。
あと文章中にある五行の話、いないとは思いますが結構適当に書いているので鵜呑みにしては駄目ですよ?
ではないかと
猫と烏はお金足りるかな?
っつーか飲み比べで使った酒代は誰が出すんだろ?