Coolier - 新生・東方創想話

常識のちょっと外

2009/12/24 03:14:03
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「幻想郷は全てを受け入れるのよ。
  それはそれは残酷な話ですわ。」 by 八雲 紫

 それは巨大ロボ騒動で諏訪子さまにお説教して、宝船を追いかけて私の実力もお二人に見せられた後のお話です。
 私、東風谷早苗のところに1つの情報が入ってきました。
 と言っても本当かどうかも確かではないのですが…

 
 信仰を広げるために日夜努力を欠かさない私は、今日も街へ布教活動です。
 「神奈子さまの持つ父性!守ってくれるという安心感!
  諏訪子さまの持つ母性!与えてくれるという包容感!
  そして私!現人神の東風谷早苗がいる。守矢神社!守矢神社をよろしくお願いします!!」
 我ながら素晴らしい演説だと感心します。たまに、
 「早苗ちゃんは何ができるんだい?」
 などという信心の足りない質問が来たりしますが、
 「奇跡が起こせます!とうっ!」
 空を飛べば一発解…
 「紅白の巫女さんもとんどるしのー」
 「この間は慧音先生も飛んでらしたわよ」
 「ウサギも空くらい飛べますよね」

 オノレゲンソウキョウ

 でもこのくらいでめげてはいられません!私!神様だもの!
 「え、えっと、後は掃除洗濯その他炊事はできますよ!」
 現人神です!すごいんですよ!
 「わー、おねーちゃんすごーい」
 かわいらしい子がこちらを見て手をパチパチやってくれます。
 ふふん、私にかかれば信仰をあつめるなどたやすいことです。
 「おかあさーんやってきたよー」
 そういうなり、後ろを向いてお母さんらしき人のほうに走っていく少女。
 お母さんも、
 「いい子ね、早苗ちゃんも自分からああいうこと言う以外はいい子だからそこそこに見習うのよ」
 そう言って頭をなでています。ちょっと詳しく聞きたくなりましたが気にしないことにします。
 べ、別に悲しくなんかないんですよ?


 今日の布教活動も成功したので、湖経由で山に帰ろうと軽くたそがれていたら目の前にみたことのある妖精さんが、
 「おや、妖精さん。お久ぶりですね。今日はお友達と一緒ですか?」
 巨大ロボ騒動のときにお見かけした氷精さんでした、今日はどうも緑の髪の妖精さんと一緒です。
 何でしょう、あの翅のくるくる。魔女っ子物の変身後みたいな感じです。
 「チルノちゃん、知り合い?」
 「ん~、あ~、ん~?」
 首をかしげています、前あって少し思ったのですがこの子少し…
 いえ、そういうことを思うものではありませんね。
 「こほんこほん、巨大ロボのときに教えてもらったじゃありませんか。たしか、えー、あなたはだいだらぼっちとかいってましたっけ」
 「だいだら…あぁ!すごかったぞ、なんか自在にいろんな攻撃してくるんだ!」
 「自在に…ですか?」
 そもそも非想天測は木偶人形ではなかっただろうか?もう少し質問してみましょう。
 「山の麓に非想天測がありますけど、それじゃあなかったんですか?」
 「ちがうよー、あんなんじゃなくてもっと人形ぽかったし、もっとたくさんのことやってきたんだから!」
 「やってきた…ということは戦ったんですか?」
 「そう!あたい勝ったけどね!最強だからね!」
 小さい胸を張って自慢する妖精の顔は”どや顔”である。
 あ、ちょっとおねーさんかちーんときちゃったぞ?
 「別に、すごくもないですよね。それが本当かどうかもわかりませんし?本当ならどこでやったかも覚えてますよね?」
 なるべく平静を装って言ってみたら、案の状顔を赤くして怒ってきました。
 「本当だってば!魔法の森でこーんなおっきい奴とたたかったんだから!」
 手振りで大きさを表現するのはかわいいです。魔法の森ですか、ふふん、いい事を聞きました。
 「そうですか、魔法の森ですか。魔法の森ということはアリスさんですか?」
 わかってるなら話は早いと聞いてみたものの
 「う…そ、そうかも?違うかも?」
 とイマイチ要領を得ない回答が、
 「チルノちゃん覚えてないみたいなんです、すいません」
 「そうよ!だいだらぼっちとの戦いで他のそ、粗末?なことなんて覚えてないわ!」
 「チルノちゃん、それを言うなら些末なことだよ?」
 「もう!細かいことはいいのよだいちゃん!あたいが知ってるのはそれだけ!おねーさんバイバイ!」
 そういうやいなや氷精さんは飛び立ってしまいました。
 「あっ、チルノちゃん。それじゃあ失礼しますね」
 頭を下げてもう片方も行ってしまいます。 
 「あら、行ってしまいました」
 でも、問題はありません。イマイチ信憑性に欠けますが、もしかしたらもしかすると巨大ロボがこの幻想郷で作られているという話です。
 これはわくわくしてきましたよ。
 「あ、今日の晩御飯作らなきゃ」
 今日はとりあえず、ご飯を食べに帰ります。


 アリス・マーガトロイドさん。魔法の森に住んでるという魔法使いさん。たまに町で人形劇をやっているのを見かけます、一度神奈子さまと諏訪子さまの人形劇をやってくれないかと言ったら断られました。
 そりゃあ、蛇と蛙が戦う話をやって蛇が勝っちゃうんですから面白くないですよね。
 見た目は本人もお人形さんなんじゃないってくらい顔形が整っています。日本人は金髪にあこがれるって聞きますけどあれだけ綺麗だと肯けます。
 人間じゃなくて魔法使いという種族らしいですが、魔的なものは凄く怖いか凄く美しいかしてるものです。ということは神様になった私も随分美しいはず。神奈子さまも諏訪子さまも綺麗ですもんね、どちらかと言えば神奈子さまはかっこよくて諏訪子さまはかわいい、これはバランスをとるために私は美しくなろうと思います。
 明日は魔法の森まで遠出です。今から楽しみです、神奈子さま、諏訪子さま、おやすみなさい。


 みなさん、おはようございます。朝です。朝ごはんを食べてさっそく魔法の森にいます。
 朝なのもあって霧が深く、上からみてもイマイチわかりません。
 しかし大丈夫です、朝早くからきているので元気いっぱいです!
 というわけで本日一発奇跡でも起こしましょう!
「そぉ~れっ、もりやぁ~↓すたぁ~↑キラっ☆」
 掛け声とともに振り下ろし風を起こす(ついでに星も)、霧が吹き飛び広い範囲まで見渡せるようになる。
 「…見えませんね」
 目を細めながら周りを見渡してみるが家らしいものは見つからない。
 「しょうがない、今度はあっちのほうを探してみましょう」
 その日の朝は魔法の森のほうがいやにキラキラしていたそうだ。


 「ふ~やっとみつけました」
 いやに眩しくなっている早苗が、洋風の家の前についたのはしばらく日も高く上り霧が少しづつ晴れてきている時間だった。
 洗濯物を干そうとしていたアリスがちょうど外に出て、近くにいる人形を飛ばして洗濯物を干している。
 「こんにちは、魔法の森の人形遣いさん」
 「あら、山の上の…巫女…でいいのかしら?」
 洗濯物を干しつつこちらに顔を向けてくる。手は洗濯物と人形のほうに向いている。
 手が微妙にわきわき動いていてちょっとえろいです。
 手先だけでやっているのだろうか?アリスは洗濯物を見てもいないのに人形たちが干していく。
 「器用ですね~美巫女…でいいんですよ?」
 「残念ね、幻想郷では巫女は怠け者で貧乏なうえに自意識が高いのね」
 「風祝でお願いします、怠け者でも貧乏でもないので」
 「…頭が軽いのは一緒なのね…」
 「何をおっしゃいますかレインボーウィーザードさん」
 「横文字使いだしてどうしたのよ…」
 「博識なところをお見せしようかと」
 「バカっぽいわよ」
 「発音がうまくありませんでしたか…それはそうと」
 「うたれ強いわね」
 「前向きと言ってください、視野にすると160°くらいです」
 「結構わき見してる気がするわ」
 「神様ですから、視野は広くしないと!」
 自信を込めて胸を張っていると、洗濯物を干すのが終わったのか体ごと向き直り
 「それで今日は何の用で来たの?少し話して終わらないようだったらお茶でもどう?」
 少し話して終わるかもしれないと言ったら、終わるかもしれないですがそれよりもお茶が気になります。幻想郷の方々は日頃どのようなものを食べてるのでしょうか?
 「ありがとうございます、ちなみにお茶菓子はなんでしょう」
 好奇心でつい聞いてしまいました、アリスさんは少し呆れた顔でこちらを見てきて
 「…クッキーよ、もらいものだからおいしいかどうかはわからないけど…やっぱり巫女ってがめついのかしら?」
 失礼な、幻想郷だと巫女って職業はどう思われてるのかしら?


 家の中は予想どおり綺麗に整頓されており、予想と違ったというか予想以上だったのはそこかしこに人形があることだ、西洋人形と言えばいいのだろうか?目が青く、肌が白い、服は青が基調でそれに黄色が混ざっているワンピースだ。
 「ほら、上海ご挨拶して」
 「わっ」
 目の前に腰ぐらいの大きさの人形が頭を下げている。
 それが動いている。日本なら確実に怪談なのだが実に愛嬌がある。
 「凄いですね、抱き上げていいですか?」
 そういいながら既に抱き上げてしまった、ジタバタしてる。
 照れてるのかな?何これかわいい持ち帰りたい。
 「これ、持ち帰ってもいいですか?」
 呆れた顔で見られた、いやかわいいからしょうがないと思うのですが…
 「できれば置いていってほしいわね、大切な相棒なのよ」
 ちょっと笑いながら頭をなでられた、う、少し恥ずかしい。久々に頭なでられてしまった。
 「アリスさん、ちょっと恥ずかしいです」
 そういうと口元に手を当ててクスッと笑って言った
 「かわいいわね、東風谷さんは」
 東風谷さん…これは新鮮!可愛がられるのは慣れてますが(最近はもう一人前だと思ってるのでちょっとむっときますが)この新しさはむずがゆいです。
 「ほら、その子がお茶用意してくれるから離しなさい」
 そう言って上海ちゃんに手を伸ばすアリスさん、その目は優しさに満ちていてあぁこの人はホントに人形が好きなんだなと実感させられる。
 トテトテと歩いていくその後ろ姿を見てまた癒される。何だあれ、やっぱり連れ帰りたい。
 お茶の用意ができて席に着く、紅茶の香りがたちのぼり気が抜けていくのを感じる。
 「それで今日は何の用なの?」
 その問いかけに今日来た目的を思い出す。
 「えっと、氷精に聞いたんですけど、もしかしてここに巨大ロボありません?」
 「巨大ロボ?」
 「ええ、それに準ずる何かでもいいんですけど。大きいものありません?」
 「…そうね、確かにあるわよ」
 「ぜひ見せてください!それはもうぜひ!」
 思わず体を乗り出して聞いてしまう。おされた感じに体を傾けてるのを見て
 「こほん、少し熱くなってしまいました」
 「クス、ホントに面白い子ね」
 う~クスクスと笑われてしまっています。恥ずかしいですが何やら心地いいです。
 顔は赤くなってないでしょうか、思わず手を当ててしまいます。
 「できましたら見せてほしいのですけれども…」
 「えぇ、いいわよ」
 笑顔が眩しいです、なんというか、こんな美人になりたいな~
 「もうちょっとできましたら乗せても欲しいです」
 それなのについ本音が出てしまう。恥ずかしいけど許してくれそうで…
 上目づかいでそ~っとアリスさんの顔を見る
 「ニコニコ」
 口に出していってらっしゃる!駄目です!恥ずかしくて目が合わせられません!
 「ホントかわいいわよね、いいわよ」
 これが飴と鞭ですか!未来の飴が甘すぎて逆らえない!
 「ううう、ありがとうございます…」
 恥ずかしくて顔を上げられない、どうしたものかと思っていると目の前に綺麗な手が差し伸べられる。
 「ほら、もういじめないからおいでなさい」
 くそー翻弄されっぱなしじゃないか、手を握って一緒に外に行く
 「ちょっと待っててね、すぐに準備してくるから」
 そう言って家の裏手に走っていくアリスさんはすごい楽しそうです。
 む~いけない、風祝の威厳というものがなくなってしまいます。
 深呼吸して待ち構えましょう。
 す~は~す~は~
 さぁ帰ってくるアリスさんを待ち構えます。
 前を見て、覚悟を決めればあとはまつだけ!

 …ずん

 あ、これはいけない、この地響きはいけない
 
 …ずん!
 
 ときめいてしまいます!わんこなら既に尻尾振っちゃってますよ!いけない!今すぐボーゥイのように走って行きたいけど、今行ったら威厳が!神の威厳が!

 …ずん!!

 うわーん!もう我慢できません!
 「ロボットー!乗りたいですー!わーい!」
 気分はもうブランコに乗ったハイジであり、ロリータにあったロリコンであり、そしてお酒を飲んでる霊夢さんです。
 思わず駈け出して家の裏手に回った私がみたものは人形の大きい脚でした。
 「おんばしっ!」
 空を飛ぶ感覚を味わいながら私は思いました。さすがロボ、風祝をイチコロとはまさに廃スペック!
 がくり。



 夢をみています、神奈子さまと諏訪子さまと楽しく遊んでいる夢です。
 楽しかったです。お二人はいつも小さくて無力で何もできなかった私に対して優しくて。
 悲しかったです。お二人は誰にも見えなくて私だけしか話し相手がいないのが。
 寂しかったです。お二人にいつまでも近づけない私が。
 温かかったです。私のことをいつも見てくれているのはすごく感じています。
 あぁ、やっぱりお二人の近くだと凄く安心します。お父さん、お母さん、本当の両親よりも大好きです。

 冷たい感触に意識が引き戻される。それがいたわるように頭をなでている。
 手だ、小さいころもこうやってよくなでられてたっけ
 「ん、気持ちいいです…」
 声を出すと手は驚いたように一瞬止まり、
 「ん~、もっと…」
 半分寝ぼけたままで催促するとまた動きだした。
 気持ちいい…でも、諏訪子さまとも神奈子さまとも違う体温…そして感触

 「…」

 パチッ
 目を開くと驚いたようにこちらを見て、すぐ微笑んでくれている美人さんがいます。
 え、何この罰ゲーム。
 絶対顔真っ赤ですよ。
 硬直して動けないでいる私に
 「そのままでいいのよ、もう少し寝てなさい」
 手を動かしながらこちらの目を見つめています。
 申し訳なくて恥ずかしくて毛布を顔の位置までずらします。
 
 アリスさんとお日様のにおいがします

 どうしましょう凄いくらくらしてしまいます。
 どうしましょう凄く変態くさいです。
 どうしましょう凄く離れたくないです。
 黙っている私の顔を見て
 「どうしたの?まさか喋れなくなってしまったわけではないでしょう?」
 心配した顔をされてしまいました、
 「い、いえ。そんなことないですよ。ただちょっといいにおいがするなと思ってただけです」
 何言ってるんだ私は、においがするだなんて言ったら失礼じゃないか
 でもそんな返答に
 「ふふ、今日はよく晴れてたからね。」
 そう言って頭をなでてくれます。
 「うん、もう腫れも引いてきたみたいだし。お茶でも入れるわね」
 そう言ってついっと立ちあがっていってしまうアリスさん。
 その後ろ姿を見ながら私には聞こえました。

 ユリリ~ン♪

 これがユリというものですね、完璧に理解しました。
 近代日本文学における2大巨頭、ヤオイとユリ、今の時代は美男美女ではなく美男美男か美女美女ですものね!
 小さいころから神奈子さまと諏訪子さまというユリの英才教育を受けてきた(見てただけ)私です。あんな背中を預けあえるようなかっこいい関係にあこがれていた時期もありましたともええ。その思いはいわゆる黒歴史しか生みませんでしたが!まぁそんな古いことは忘れましょう!
 もう、この熱い情熱を伝えるしかありません!こんどこそ成功するはずです!
 しかし、ストレートに伝えてどうにかなるものでしょうか…
 いや、ここは行くしかありません。仏の顔も3度まで!3回までなら失敗しても大丈夫です!

 決意を固めるとちょうどよく扉を開けてアリスさんが上海ちゃんと入ってきました。
 おしっ!言うぞ!

 「お、お姉さまって呼んでもいいですか!!」
 
 …アリスさんは後ろを振り向いて、こちらを向いて、そしてまた後ろを向いてそのまま一回転してこちらを向いてきました。
 なるほど、あぁすれば見落としはないですね。
 
 「…お返事はいかがでしょうか?」

 「お友達で…」
 
 「ふられたー!」
 神奈子さま諏訪子さまのバカっ!バカバカっ!目の前に特異的なレアな現象が当たり前のようにいるから勘違いしちゃったじゃないですか!
 頭を振って悶えている私を見てアリスさんは一言
 
 「頭打ったものねぇ」

 微笑んでみていらっしゃいました。
 こんな時はどんな顔をすればいいんでしょうか?教えて神様☆



 あの後、お茶をいただいて少しお話しした後で帰宅です。
 落ち着いたらまたいらっしゃいとのことで嫌われたわけでもないけれど、真面目に受け取ってももらえなかったみたいです。
 「はぁ…」
 思わずため息も出ちゃいます、花の女子高生☆ですもの、恋の一つでもしたら胸がときめいてご飯も食べれないってものです。

 ぐ~
 
 お腹が泣いています。今日の晩御飯はなんでしょう。
 これはあれですね、腹が減ったら戦はできない。昔の人はいい事を言ったものです。


 「ただいま帰りました」
 「お帰り~」 
 頭に目玉の付いた帽子をかぶって、私が見ても少々奇抜だと思われるファッションで迎えてくれた幼女は私の神様にしてお母さん(脳内)の諏訪子さまです。
 「今日の晩ご飯は何でしょうか?」
 おなかに手を当てて聞くと諏訪子さまは
 「今日の食事当番は神奈子だからおかゆだね、もう少しいろいろ作れるようになればいいんだけどねぇ」
 ため息をついています。
 「でも私は好きですよ?神奈子さまのお粥、ずっと食べてきましたからね」
 笑顔で答える私を見て諏訪子さまは苦笑なされます。
 「早苗がそういうから覚える気にならないんだろうねェ」
 「そういう諏訪子さまもいつも玉子焼きですよね」
 わたしがそういうと、奥からもう一人の声がしてきました。
 「ほら、早苗!帰ってきたなら手伝ってよ!」
 「あ、はい。ただいま行きます」
 今日神奈子さまの当番ということは明日は私ですね。
 さて何作ろうかしら?
 

 食卓で変わらず美味しいお粥を食べながら閃きました。
 仲良くなるためにアリスさんを招待しよう。
 食事イベントは好感度も上がってフラグが立つって近くの席の山田君が言ってました。
 早速お二人にお話ししましょう。
 「すみません、ちょっとお話いいですか」
 私の真面目な空気を読んで二人ともこちらを向いてくださいます。
 「明日、食事に招待したい人がいるんです」
 
 ピシッ

 あれ?空気が変わりましたよ?お二人が目の前でアイコンタクトの応酬を始めました。
 どうしましょう、ちょっと顔芸の領域に入ってきました。
 あ、神奈子さまが泣きそうです。
 決着が付いたようで神奈子さまがこちらに向き直っています。
 「えんかいかい?」
 「は?」
 声が上ずっていて何を言っているのか良く分かりませんでした。
 えんかいかい?演歌異界?塩買いかい?
 「んっ、ごほん。宴会でもするのかい?」
 咳払い一つで威厳を取り戻しました、さすが神奈子さまです。
 「いえ、お一人です。お二人に紹介したい人がいまして」
 それにしても今日のお粥はぴりカラです、少し熱いです。
 「すっ、すわっすわっ」
 「かっ、かなかな?」
 お二人は私と相手の顔を交互に見て取り乱してるように見えます。
 微妙に中腰になってるあたりが怪しさを倍増させます。
 一体何があったんでしょう?私の気づかないうちにお二人は何者かに洗脳されてしまったんでしょうか。
 「お二人とも…大丈夫ですか?」
 お二人は一度目を合わせた後うなずいています。
 「それで…早苗とその人の関係はどう…なんだい?」
 諏訪子さまが慎重になられています。
 こんな真面目になってくださるなんて…
 これはもう伝えるしかありません!

 「私、その方をどうも、す、好きになってしまったみたいです…」
 頬に手を当てて恥ずかしさを押し隠しながら告白すると

 バターン

 「カナカナカナカナ」
 
 お二人ともお壊れになりました。
 神奈子さまは泡を吹いて倒れていますし、諏訪子さまは柱にくっついてカナカナ泣いています。
 それはヒグラシですよ諏訪子さま?
 これは収拾が付かない、寝てしまおう、きっと夢だ。
 夢オチは駄目だって読者の方が言ってましたが、私は奇跡が起こせます。
 やればできるは魔法の言葉、お休みなさい。


 残念ながら夢にはなりませんでした。
 いえ、お二人がまだ壊れていたわけではなくてこんな書置きがありました

 探さないでください 神奈子
 探しに行きます 諏訪子

 まるで中学生の家出です、これで諏訪子さまの探す目標が神奈子さまじゃなかったらと一抹の不安がぬぐえませんが・・・
 今はいろんな意味で信じるしかありません。
 …諏訪子さまは神奈子さまを探しに行ってくれたので安心ですね☆
 おし、今日はアリスさんといちゃいちゃできるようにするぞー!

 
 というわけでまたしても会いに来ました。扉の前です
 しかしさっきからノックができません。右手は上げられるのですが扉を叩けません。
 「う~緊張します」
 人という字を飲み込めば良くなるって聞きますけど駄目でした。
 現人神だから神って字を飲み込めばいいのかな?
 そんなことを考えていると腰を何かに引っ張られました。
 「わひゃあ!」
 驚いてそちらを見ると上海ちゃんがこちらを見上げています。
 「あぁ、驚いた。ところでご主人様はいるかしら」
 そう言いながら上海ちゃんを抱き上げます。
 ふむーこの子見れば見るほど、可愛いわね。
 アリスさんにどことなく似てる気もするし、子が親に似るってのはこういう”物”もそうなのかしら?
 ということは私は今アリスさんの子供を抱いてるってことになって、子供がいるってことは…
 そこまで考えたところで
 「ちょっと、家の前で見つめあわないでくれるかしら?」
 優しい声が聞こえた。
 固まっていると後ろから白い手が出てきて上海ちゃんごと私を包み込んだ。
 「あら、上海もうれしそうな顔してるわね」
 背中に体温と重さを感じる。 
 「それで?今日は頭のお加減はどうかしら?」
 頭の中は真っ白です!
 「ア、ア、ア、アリスさん!」
 「ほんとに大丈夫?顔も真っ赤じゃない?」
 そのまま右手が顔を伝って額に当てられる、冷たい、心地よい体温が当てられて少し落ち着く。
 「熱もあるみたいね、今日は帰ったほうがいいんじゃない?」
 「えっと、あのその、ちょっと…恥ずかしいだけです…」
 少しの沈黙の後
 「クスッ、東風谷さんは村の男の子みたいなこと言うのね」
 そういうと、一度そっと抱きしめた後離れていってしまう。
 暖かさが離れる感触に少し体がこわばってしまう。
 「それで?今日は何の用で来たの?昨日見れなかったから見に来たの?」
 私の後ろから前に周りながらアリスさんは聞いてくる。
 恥ずかしくて顔はまだ上げれないけど
 「きょ、今日はごはんのお誘いにきました」
 何とかいえたと思います。後半声が少し上ずっていたかもしれません。
 「…」
 返事がありません、これはどういうことでしょうか。
 予想していない反応です、もしかして声が聞こえなかったのでしょうか?
 上海ちゃんの顔を見ながら待つこと数秒、
 
 「残念だけど、お断りするわ」
 
 思わず顔を上げてしまいます。
 「な、なんでですか!?」
 目の前には少しすまなそうな顔。
 「だって、私、魔法使いだから」
 魔法使い、捨食の魔法を使って食べなくても生きていける種族。
 そんなことは知っています、でも
 「私がアリスさんに食べてもらいたいんです」
 真顔でそんなことを言ってしまっている。
 アリスさんは少し考えた後、
 「気持ちはわかるつもりよ?だけどその気持ちで作ってもらった物を少ししかもらえないのは、私なら辛いわ」
 少しさびしそうにそう言われてしまった。
 私だって誰かのために作ったものが残されてしまうのはきっと辛いと思う。
 いくら奇跡を起こせるスーパー女子高生になってもこんな時には何の役にも立たない!
 神様になっても私がアリスさんに出来ることなんてほんと何にも無い。

 それでも―

 黙っている私を見てアリスさんが気まずそうに口を開く。

 私は―

 「それじゃあ…行くわね?」

 この人のことが好き―

 「待ってください」
 顔を上げてアリスさんを見る。
 たぶん顔は真っ赤で、目も前なんか見えないくらい潤んでる。

 「あなたのことがす、好きです!」

 「えっと、だから一緒にご飯作ってください!」

 われながらかっこ悪い告白だとは思う。
 真っ赤な顔をして必死に、そりゃもう必死になっている私を見て

 「料理なら、教えてもらうことになるわよ?」

 顔を真っ赤にしてそんなことを言っていただいた。

 「はいっ!」

 今日一番の笑顔で言えたと思います。



 アリスさんの家には台所がなかったので町で買い物をした後
 我らが神社に帰ります。

 「おじゃまします」
 「ふふふいらっしゃいませ~」

 二人で並んで中に入ります。台所に荷物を置いて食材を出します。
 神社が珍しいのかアリスさんは周りに視線を送っています。
 「どうしました?」
 「確か早苗のとこって神様いるんじゃなかったっけ」
 「神奈子さまと諏訪子さまですね」
 「今はいないの?」
 そういえばお二人は帰ってきているのでしょうか?
 「少し探してきますね」


 居間に行くと書き置きがありました。

 「今日は帰ってこない 神奈子」
 「15回目の新婚旅行に行ってきます 諏訪子」 

 この仲の良さはうらやましいです。
 「私ももうちょっとアタックしたほうがいいのかなぁ…」
 「十分アタックされた気もするけどね」
 「わひゃ!」
 後ろから顔が出てきて手元の紙を覗いています。
 「新婚旅行ねぇ…ホントおいくつなのかしら」
 少し呆れたように紙を見ています。
 「アリスさんなんでここに?」
 まさか返事が来るとは思いませんでした。
 「料理を教えに来てもらったのよ、独りじゃつくれないわよ」
 ちょっとふくれっ面になってます。
 「アリスさんって頬ふくらませても可愛いんですね」
 あ、赤くなってきました。
 「馬鹿なこと言ってないでほら行くわよ」
 そっぽ向いても可愛いって言ったらまた怒られてしまいそうです。



 二人でなんとか作って一人分の食事を持って食卓へ
 「アリスさんやっぱり手先器用ですよね」
 包丁の使い方こそ最初は危なげでしたがすぐに慣れました。
 「味付けとかそういうのは自信ないけどね」
 「大丈夫ですよ、味見しましたけど美味しかったですよ」
 
 二人でちゃぶ台のとなりに座ります。
 「なんかドキドキするわね」
 「私もです」
 ご飯を食べるだけのイベントなのになんでこんなにドキドキするんでしょうか?
 箸は一膳です、アリスさん曰く

 「使えないから必要ないわ」 

 だそうです。
 今日のご飯は煮ものとご飯と豆腐と油揚げのお味噌汁です。
 「いただきます」
 アリスさんに見られながら食べるのって凄く恥ずかしいです。
 まずお味噌汁を飲みます。
 「ふぅ」
 少し落ち着きました。
 「美味しそうね」
 アリスさんは微笑みながら見ています。
 煮物をつまんで、アリスさんに差し出します
 「はい、あーん」
 「え?」
 一瞬キョトンとした表情をした後、真っ赤になって

 「あーん」

 口をあけてくれます。
 「はいどうぞ」
 口の中でもぐもぐしているアリスさんを思わずじっと見てしまいます。
 美味しいかどうか気になりますもん。
 アリスさんの綺麗なのどが食べ物を飲み込むのがわかります。
 「ふぅ、そんなに見られてたら緊張して味がわからないわ」
 「えっ、あのその」
 思わず言葉に詰まってしまいます

 「だからもう一個欲しいわね」

 「えっ」
 
 「はい、あーん」

 「え、えへへへ」

 絶対今私口元がにやけています。
 でも、凄くうれしいです。
 「はい、あーん」
 アリスさんも顔を赤くしながらこっちを見ています。

 「うん、凄く美味しいわ」

 「それはよかったです、じゃあ次は…」
 「次は私がやってあげるわね?」
 アリスさんが私の右手を抑えます
 「お箸の使い方はこうでいいのかしら?」
 さすが器用なアリスさん、見ただけでなんとなく様にはなっています。
 「ほっ、よっ」
 ですがさすがに苦戦しています。
 見ていて大変そうです。それでもなんとかつかめました。
 「はい、あーん」
 「ぱくっ」
 すぐさま食べました、だってアリスさんが食べさしてくれるんですもの。
 「…」
 ですがそのさまを見て何やら不服そうです。
 「アリスさんどうしました?」
 「なんでてれないのよ、私凄い恥ずかしかったのよ?」
 えっと、たぶんそれは
 「神奈子さまや諏訪子さまによくやられましたから…」
 「過保護ね…でも、少し悔しいわ」
 「ふふふ、悔しがってもらえるとは思いませんでした」
 「そうね、でも私負けず嫌いでもあるの」
 そういうとアリスさんは味噌汁を口に含んで

 ちゅ

 顎をつかまれて口の中に味噌汁が入ってきます
 「んんんんんんんんんんん~~~~~~~~~~~~~」
 ファーストキッスは味噌の味です!●米君です!
 アリスさんに返すわけも行きませんし何が起こってるかわかりませんが自分の喉を何かが通って行きます。

 「ぷはぁ」

 口もとが光っています。アリスさんの顔は真っ赤ですが私も負けてないと思います。
 熱いです。でも、もっと欲しいです。

 「アリスさん…もっと、欲しいです…」
 
 「わかった、全部食べさせてあげる」
 
 もうそこからは夢中で何があったか覚えていません
 ただ、凄く色っぽかったのと気づいたら二人とも裸で朝になってました。

 「ふふ、おはよう」
 アリスさんが寝起きの私の顔を見ながら微笑んでいます。
 「おふぁようございます」
 あくびを殺しきれず目をしぱしぱしてしまいます。
 アリスさんは私のおでこにキスをすると後ろを向いてしまいます。
 「アリスさん?」
 アリスさんの耳は真っ赤で私の顔も真っ赤です。
 昨日はあんなことをしたのにキスだけでうれしくて恥ずかしくて熱くなってしまします。

 「きょ、今日は昨日の御礼に私のうちで人形の作り方教えてあげるわ!」

 嬉しすぎて声が出ません、私は立ち上がってアリスさんに抱きつきました。

 「えっ?わわっ!」
 
 後ろから押されると思ってなかったのかそのまま二人ともまた布団の上に転がってしまいます。

 「アリスさん、私もっとアリスさんのこと知りたいです」

 笑いながらキスをすると

 「私ももっと東風谷さんのことを知りたいわ」

 「はい!もっと私のことを知ってください」

 「いいわよ」

 「でも…早苗って呼んでくれると嬉しいです…」

 顔を真っ赤にしながら告白できました。
 するとアリスさんも顔を真っ赤にしながら目を泳がせて

 「え、えっと…さ、早苗?」

 「はい!もう一度呼んでください!」
 
 凄く恥ずかしそうな顔をしながらこちらの目を見てくれます。

 「早苗」

 「はい、アリスさん」

 「早苗」

 「はい!アリスさん!」

 「ふふふ」

 「ふふふ」

 この先もっとこの人のことが知れる、もっとこの人に知ってもらえる。

 「よろしくお願いしますね」
 
 どちらからともなくキスをした。
  
 
楽しんでもらえたら幸いです。
これ書いたら早苗が好きになりました。
何この早苗かわいい。でもアリスが一番好きです。
きゃっきゃっうふふいちゃいちゃ、恥ずかしいことこの上ないw

初投稿で同じ名前の投稿者が居るの知りませんでした、すいません。

上海と蓬莱だとどっちのがかわいいか考える系の作業があるのでアリス視点とかエロとかあれですよ、
そう、来年ごろサンタさんが持ってきてくれますよきっと
コメントありがとうございます、すごくうれし恥ずかし恥ずかしですw
暁嬉
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コメント



0.1810簡易評価
1.90名前が無い程度の能力削除
早苗(笑)  そう思ってた時期が俺にもありました
かわいいです
2.100名前が無い程度の能力削除
登場キャラが愛しすぎる!!
6.100名前が無い程度の能力削除
ファーストキスは味噌の味で腹筋が崩壊しましたwwwwwwww
7.100名前が無い程度の能力削除
久しぶりにこんなど直球なのを読みましたね。最高でした。
8.100名前が無い程度の能力削除
さなアリもいいかな、って最近思い始めたw
11.100名前が無い程度の能力削除
徹夜明けのテンションにこれは…

ハアハア
13.90名前が無い程度の能力削除
タグのとおりえらい直球のラブコメですなぁ
いや、こういうのも大好きです
早苗さんのキャラが壊れ気味ですがとても可愛いのでおkおk
アリス側の視点でも見てみたいとちょっと思いました
14.90名前が無い程度の能力削除
ん?最初のお宅訪問の時、上海が歩いている…?

ま、まさか…大江戸かーッ!

あ、ちなみにアリスは睡眠、食事はしっかりとってるみたいですよ?
16.90名前が無い程度の能力削除
迷いなきラブコメすなぁ
楽しいし可愛かったです
ここで一番可愛かったのはやはり早苗でしょう
18.100名前が無い程度の能力削除
早苗さんのキャラが面白過ぎるw
アリス視点でも見てみたいなあ
21.100煉獄削除
ほのぼのとしてて、アリスと早苗の雰囲気とかも良いですねぇ。
巨大ロボ(人形)にわくわくする場面や、神様二人とかも面白かったです。
24.100名前が無い程度の能力削除
読んでるこっちが恥ずかしくなるぐらいに甘々な二人だ。
25.100名前が無い程度の能力削除
>「すっ、すわっすわっ」
>「かっ、かなかな?」
ここで信仰度がカンストしました。
早苗とアリスはもちろんかわいかったですが、新婚旅行中の2人も是非見てみたいです。
28.90名前が無い程度の能力削除
非想天則プレイしてからこの組み合わせもアリじゃね?とか思ってたらこのラブコメ
作者さんまじ感謝
33.100名前が無い程度の能力削除
サナアリのラヴっぷりと、スワカナのボケっぷりが見事に調和しているww
34.100名前が無い程度の能力削除
>もうそこからは夢中で何があったか覚えていません
>ただ、凄く色っぽかったのと気づいたら二人とも裸で朝になってました。
この辺りのお話を、場所を変えてもう少しkwsk
36.100名前が無い程度の能力削除
サナアリいいもんですなー。
早苗さん可愛くて面白すぎw
アリス視点も読んでみたいです。
39.100奇声を発する程度の能力削除
嬉しい。言えることはこれだけです。

サナアリひゃっほい!!!!
43.100名前が無い程度の能力削除
サナアリ良いですね。面白かったです。
45.100名前が無い程度の能力削除
超最高です!
48.90ずわいがに削除
何かのメーターを振り切ってやがる。
ていうか絶好調じゃないですか早苗さん!

しかし神奈子様に母性を見出だしてる俺はどうしたら……
62.100名前が無い程度の能力削除
ご両親みたいな神様と落ち着いた佇まいなのに女の子らしくて可愛いアリス素敵