まだ朝日が顔を出したばかりの時、霖之助は本を読んでいた。
店内は、ストーブの火が灼灼と燃え上がっている。
その本は紙を紐で閉じたようなものではなく、一枚ずつ紙の端を綺麗に糊付けにされているいわゆる製本されている物だった。
これは、幻想郷で製本された物とは違う。外の世界から幻想入りしてきた珍しい本である。
霖之助は、ハラリとページを一枚捲る。
この本に書かれていることは、霖之助にとって興味深い事ばかりだった。
内容は、何もできない普通の子供が異変と出会い、世界を救う魔法使いとなって大きな運命へと巻き込まれていくと言った物。
だが、その異変は、急に世界に魑魅魍魎が現れて世界を混乱に陥れると言う稚拙な物だ。ついでに言うのならば、魔法使いも溢れている。
普通の人間ならば、「こんな物はこっちでは異変の内にも入りはしない」と言ってそこで終わりだろう。
だが、霖之助は違う。
彼はそこから一歩、想像を進ませる。
魑魅魍魎が現れて世界を混乱に陥れる。確かにそれは、幻想郷では日常茶飯事の事だ。
だが、外の世界ではどうなのだろうか?
外の世界は人間の天下が続いていると言われている。ならば何故、その人間が魑魅魍魎が現れた程度で世界が混乱するのだと思われているのか。
これは、明らかな矛盾ではないのか。
霖之助はその矛盾を消す為に一つの仮説を立ててみる。
外の人間は、既に魑魅魍魎が存在していた事を忘れているのではないか。
人間の寿命は妖怪と違い、とても短い。つまり、記憶を保持する期間が短いのだ。
記憶は代を重ねることに薄れて行き、最終的には消えてなくなってしまう。
妖怪が存在した事実も、そのように消え去ってしまった。そして、事実が消えた後、中途半端な伝説だけが残ってしまったのではないだろうか。
その伝説は、人に恐怖を与える物に脚色されて今に至る。それが、この物語から読み取れる物だ。
外の人間は、色々と矛盾を抱えているようだ。
自分達が魑魅魍魎を退治したにも関わらず、その中途半端に残された伝説が彼らを苦しめているのだから笑える物だ。
……いや、もしかしたら。と霖之助は考え直す。
彼等は妖怪たちに一種の憧れを覚えていたのかもしれない。
自分達よりも強く、屈強たる存在。弱い人間と言うのは強い者に何処か尊敬の眼差しを向ける傾向がある。
それが、妖怪だとしたら成程、納得が行く。
では、それに対抗する魔法使いと言うのは――。
その時、ドンドン、と店の入口の門から荒々しくノックされる音が店内に響き、霖之助の思考が中断される。
霖之助は読んでいるページに栞を差して本を閉じて立ち上がり、玄関の前まで歩いて鍵を開けた。こんな早朝に、こんなに荒々しくノックをする人間は一人しか心当たりは無い。
彼女は、鍵を開けたと見るや無遠慮に扉を開けて店の中へと我が物顔で入ってきた。
「今日の営業はもう終了だったのか、早い店仕舞いだぜ」
こんな早朝に来て何を言うか。
「ああ、ここ最近は肩に疲れが溜まってきてね。 少しばかり遅く店を開けようと思った訳だよ」
「そいつは大変だ。 私が肩でも揉んでやろうか?」
「いい提案だ、ついでに朝餉も頼めるなら更に助かる」
「合点承知だぜ。 報酬はこの店のガラクタでな」
「念のために聞くけれど、無償と言う選択肢は?」
「タダより高いものは無いんだ。 よかったじゃないか、安く済むぜ」
「……はぁ、分かったよ」
言葉の応酬を交わした後、霖之助は朝から騒々しい客が来たものだと、小さく溜息を付いた。
ニシシ、と彼女は笑って後々の報酬になる物を品定めして行く。
と、そこで霖之助はまだしてない事に気付いた。
「取り敢えず――おはよう魔理沙」
「おはようだな、香霖」
二人の朝の挨拶が、店内に響いた。
■
「ほぅら、霧雨魔理沙特製の朝御飯だ。 よく噛み締めて味わってくれ」
オーブントースターで焼いたパンにバターを付けるだけならば誰にでも作れそうなものだが、きっと彼女特製なのだろう。
魔理沙は二枚の皿の上に有るパンと湯気が立っているココアを二つお盆に乗せて、霖之助の前にあるレジ兼雑用机の上に置く。
……二枚?
「……魔理沙、一つ聞いてもいいかな」
「体重以外の話なら何でも答えるぜ」
そこで何故、体重と言う単語が出てくるのだろうか。深くは問うまい。
今は、そんなことよりも気になる事がある。
「どうして、朝餉が二人分も作られているんだ?」
「決まってるじゃないか、私も食べる為だよ」
事も無げに、彼女は言う。
「食べる為って……君は、食べてから此処に来たんじゃないのか?」
「まさか、これより朝早くに食べれる訳ないだろ。最初から此処で食べるつもりだったんだ」
机の向かい側に、霖之助がつい最近拾ったアンティーク調の椅子をその辺りから引っ張り出してきながら彼女は答えた。
霖之助は呆れて、言葉が出なくなった。だったら朝餉を食べてからもう少し遅く来たらいい物を。
「んじゃ、頂こうぜ。 早くしないパンとココアが冷めちまう」
「……ああ、そうしようか」
霖之助は魔理沙が朝餉を此処で食べる理由は深くは考えないことにする。きっと、彼女にとって複雑な理由でもあるのだろう。
いただきます、と手を合わせて霖之助と魔理沙は目の前にあるパンに齧り付く。
……やはり、と言うべきか、何処にでもあるような味しかしなかった。
二人分の咀嚼音と、二人分のココアを啜る音が静かな世界に色を与える。
「なぁ香霖」
「何だい」
魔理沙は、パンを頬張りながら霖之助を呼ぶ。
「魔法使いってさ、一体何なんだろうな」
ふぅ、と魔理沙は憂鬱そうな表情を見せる。その急な変わり様に霖之助は少しばかり驚いた。
彼女がこのような表情を見せるのは珍しい事ではない。珍しい事ではないが、毎日のようにこんな表情をする訳ではない。
しかも、いきなりの質問の内容が内容だった。魔法使いとは一体何なのか、だって?
恐らく、この質問は概念的なそれではなく、哲学的な何かなのだろう。
概念的な物ならば霖之助が答えることはとても容易いことだ。だが、哲学的な物に関しては別だ。時間をかけても良いのならばともかく、即答できるような質問ではない。
霖之助は口の中のパンをココアで強引に流し込んで、返答する。
「魔法使いとは何か、か――考えた事もなかったな」
「……やっぱり、香霖にも分からないのか」
魔理沙は意気消沈した声で呟き返す。
その呟きは、何処か自分に失望したようなニュアンスを含んでいるような気がした。
霖之助は、少しばかりその失望のニュアンスに自分に対する苛立ちを覚えた。元来人に比べてプライドの高い霖之助に対抗心のようなものを浮かび上がらせたのだ。
だから。
「あまり僕を舐めないで欲しいね。今は分からないが、その程度の問いの答えなんて朝食を食べている間に思いつくさ」
大した考えも浮かんでいないのに、いかにも自分が分かっていると主張してしまった。
それを聞いた魔理沙は一瞬驚いた後、すぐに胡散臭いと言いたげな眼で霖之助を見やる。
「何だい、その眼は。大体、君がこんな朝早くに来たのも、その魔法使いが一体何なのか分からなくなったからだろう?」
「う」
魔理沙が小さく呻く。どうやら図星のようだ。
「その答えを早く見つける事ができなければ自分が前には進むことはできない。まぁ、大方そんなところだろう」
「……どうして、」
「どうして、分かったのかって? 君の朝からの様子を見ていれば何となく分かるものだよ。きっと、君の質問にだってすぐ分かるさ」
霖之助は得意げに魔理沙に視線を向ける。
何時もは此処まで朝早く来ない魔理沙がそんな質問をした時点で理由は明白だったのだが、敢えてその事を言わない。
対する魔理沙は自分の思っている事を全て言い当てられた悔しさで、表情を歪めた。
すぐに彼女は手元に有るパンをバリバリと強引に噛みちぎって食べ始める。これは、相当気が立っているようだった。
「香霖、そこまで言ったからにはちゃんと答えを出すことができるんだろうな?」
「ああ、勿論だとも。何ならこの朝餉が食べ終わるまでの間に答えを出すことだってできるさ」
「言ったな? だったら、タイムリミットは『朝食が食べ終わるまで』、だ。それまでに答えを出すんだな」
む、と霖之助は口を少しだけ尖らせた。正直に言ってしまえば答えが出る目算など一つも無い。
だが、覆水盆に反らず。言ってしまった事は仕方が無いのだ。
「その勝負、受けよう」
「グッド」
ニヤリ、と互いに不敵な笑みを浮かべ合う。
それに応じたように、既にパンを全て食べ終えた魔理沙は右手の指をパチンと気持ちの良い音を鳴らした。
そこで、霖之助の魔理沙の会話はしばしの間、終わりを告げる。
……パンを小さく千切って食べているのを、魔理沙が真正面からニヤニヤと眺めていた事は何も言うまい。
■
「さて、香霖。 パンはもう食べ終わってもおかしくない時間なんじゃないか?」
あれから数十分、霖之助は相変わらずパンをみみしく食べていた。
流石の魔理沙もこれにはうんざりしてしまったようで、暇そうに椅子に深く腰掛けていた。
「まだ午前5時の82分だ。慌てるような時間じゃない」
外見上は何事も無いかのように霖之助は振舞うが、内心は冷や汗でダラダラである。まだ、何も思い付いてないのだ。
ちなみに、魔理沙が香霖堂に到着して朝餉を食べ始めた時間は午前5時の65分。パン一枚でこの時間なら苛立っても仕方ない。
ふぅ、と、魔理沙が小さく溜息を付いた。
「そんなに意地を張らなくても別にいいぜ。 別に分からなくても笑わないからそうしろ――っておい、その一辺1cmの正方形のパンを更に千切るな、怒るぞ」
バレたか、と霖之助は更に細かくしようとしたパンを不服ながらも飲み込み、ゆっくりと咀嚼する。
タイムリミットが『朝食が終わるまで』と余りにも短すぎる時間に設定してしまったのは間違いだったか。
後、霖之助には魔理沙への説明を放棄すると言う選択肢は無かった。それは自分に対してあまりにも惨め過ぎるのと、もう一つ理由があった。
それは、魔理沙が一番最初に自分を頼って来た人物が霖之助だった、と言う事だ。友人の多い魔理沙なら他にも居るだろうに、こんな朝早くにわざわざ自分の所へと来た。
ならば、その信頼されている分、彼女の期待に答えなければならない。。
霖之助が必死になっているもう一つの理由。
それは。香霖堂の店主として、そして彼女の兄貴分としての使命感のような物だった
……まぁ、自分のプライドが途中で止める事を許さない割合の方が圧倒的に多いのだが、それはまた別として。
だから、今、霖之助は必死に考えているのだ。
一体、魔法使いとは何か。
そもそも何を持ってして魔法使いと定義するのか。勿論、魔法使いは魔法を使える者の事だろう。だが、それは魔理沙の求めるような答えではない。
彼女が求めている答えは、もっと哲学的で、理想的な何かなのだ。彼女にとっての魔女は理想であり、憧れのような――。
と、そこで霖之助は何かが引っ掛かる。今、核心に近付いたが素通りをしてしまったような感覚を覚えた。
では、何を素通りしたのか? その自問自答に対して、霖之助の頭が弾き出した答は。
――憧れ。
ゴクリ、と霖之助はパンを飲み込む。
「お、ようやくく飲み込んだのか? って、言う事は答えが――」
「すまない、魔理沙。ちょっと待ってくれ、頭の中で整理している所なんだ」
「……そ、そうなのか。まぁ良いさ、少しぐらい待ってやるさ」
霖之助の何時になく真面目な顔に魔理沙は少しだけたじろぐ。
それに構う事は無く、霖之助は思考を全力で回転させ始めた。
憧れ。
それだ、と霖之助は核心する。
そして、その単語から自分が何を思い浮かべたのかを模索し、今朝読んでいた外の世界の本を思いだす
霖之助はその本の内容を頭の中で復唱する。
あの本で自分が感じたことは何か。自分はそれを見て何を思ったのか。
次々と積み木の城を積み上げるように論理が重なって行く。
その積み上げられた論理の城は、ガタガタに積み上げられて今にも壊れそうだが、根本的な土台はしっかりとしていた。
即興で作った積み木の城にしては、十分すぎる出来だった。これなら、行けるかもしれない。
霖之助は急に魔理沙へと向かって問いを投げかける。
「魔理沙、君はどうして魔法使いになりたいと思ったんだい?」
突然の質問に魔理沙は眼を見開いた。
少し間を開けた後、彼女は瞳を慌ただしく動かして、必死に理由を思い出そうとする。
その結論は。
「……私の憧れだった、からだ。 だが、それがどうし――」
「それだよ魔理沙。魔法使いと言うのは多分、憧れの力の集まりなのさ」
霖之助は魔理沙の問いかける声に被せ、断定口調で彼女に告げた。
魔理沙は何を言っているんだ、と言わんばかりの眼で霖之助を見たが、それに構わず話を続ける。
「魔法使いとは一体何か――この問いに答えるには、そもそも魔法使いの起源を考える事を始めなければいけない」
「はぁ? そんな事、分かる訳がないだろ」
「ああ、魔法使いでも何でもない僕には確かに分かる訳が無いかもしれない。だから、これは僕の勝手な推論だ。君が馬鹿馬鹿しいと思うのなら鼻で笑い飛ばしてくれても構わない。
――まぁ、そんな事は万が一にもあるはずが無いと思うけどね」
「相変わらず、プライドが高い奴だなぁ……」
魔理沙は鼻の頭をポリポリと掻きながら苦笑する。
その表情から察するに霖之助が見つけた答えには半信半疑と言ったところだろうか。
それはそれで、霖之助は構わない。むしろ、この方が自分の答えを述べた時の魔理沙の顔が愉しみになる。
「この世界は多くの種族で入り乱れている、。その多種多様有る種族の中でも魔法使いはとても異端な者だ。その理由は、他の種族はその種族で完結しているにも関わらず、魔法使いだけは努力次第によってそれに『成る』事ができるんだ」
魔理沙は小さく頷く。これに関しては霖之助の言う通りだからに違いないからだろう。
魔法使いは特殊な種族で、生まれはどうであれそれに自分の意思で『成る』事のできる唯一の種族なのだ。人間、妖怪、挙句の果てには亡霊からですら成ることができる。
事実、彼女も努力によって魔法使いに『成ろう』としている人間の一人なのだ。
「さて魔理沙、君に一つ質問だ。『何故、魔法使いだけは人間から成る事できる』?」
「え?」
自分に向けられたいきなりの質問に、彼女は思わず間の抜けた声を出してしまう。
「ち、ちょっと待ってくれ。いきなり質問されても――」
「少し落ち着いて考えてみれば簡単に分かる事だよ。ヒントを上げるとするならば、『魔法使いに成る事が出来るようになるまで、妖怪は人間にとってどういう存在だった』かな?」
「あ、そっちなら簡単だぜ。勿論、人間にとっての恐怖の対象だろう」
「残念。確かに恐怖である事には変わりが無いんだが、人間が妖怪に抱いた感情は果たして恐怖だけだったかな?」
「……駄目だ、分からん」
魔理沙は両手を左右に小さく広げて、少しだけ上下に降った。つまりは、降参のポーズである。
宜しい、と霖之助は小さな笑みを浮かべる。此処からは、自分があの本を読んで思い至ったことを言えば良いだけのことだった。
妖怪は人間にとって何だったのか。それから、全ての答は繋がる。
「人間は妖怪にね、『憧れ』を抱いていたんだよ。故に、魔法使いが生まれたんだ」
「すまん、もう少し分かりやすい説明をしてくれ。いきなり結果だけを言われても正直分からん」
魔理沙は右手の指を額に当て、考えるような仕草をした後、大きく息を吐いた。
そんな魔理沙の様子に霖之助はガクリと肩を落とした。いくら彼女でも、これだけの言葉からでは理解はできないようだ。
「……そんなに難しく考える必要は無いさ。さっき魔理沙は妖怪が恐怖の対象だと考えていただろう。恐怖は憧れの裏返しだよ。人は自分がそんな恐怖を与える事ができるような者でありたいと願う。それはつまり、憧れってことじゃないのか?」
「ああ、成程。それなら何とか理解する事が出来るぜ。って言うか最初からそうやって言ってくれよ」
「すまないな、遠回しに言ってしまって。まぁ、これで魔法使いとは何かが粗方は理解できただろう?」
「できるか!」
魔理沙は声を荒げた。
そろそろ理解出来るだろうと思っていたが、まだ無理なようだった
「……だから魔理沙、さっきも言ったけれど深くは考え無くてもいいんだ。妖怪は強くて憧れる。なら、憧れた人間は何をしようとする?」
「そりゃあ、その妖怪になれるように――」
そこで、魔理沙は何かに気付いたように口を開けて固まる。
そして数瞬後。
「……ああ、成程! だから魔女は人間から成る事ができるのか!」
「どうやら、気が付いたようだね」
魔理沙は全てに気が付いた様子で、熱が篭った声を上げる。
霖之助は口の端を吊り上げてどうやら理解できたらしい彼女に向けて小さく笑みを零した。
そして、彼女は答えを口にする。
「魔法使いは人間が妖怪に憧れて、それに少しでも近付こうと努力して生まれた種族だったのか!」
その答えに、霖之助は満足した気持ちで頷いた。
「グッド。だから、『魔法使いとは一体何か』対する答えは、『人間の憧れから生まれた努力の結晶』と言うのが僕の答えさ。手っ取り早く『憧れ』と一語で置き換えてもいいけどね」
「成程……成程! その答えなら大納得だ。何と言うか、モヤモヤした感情が全部吹っ飛んだぜ!」
「それは良かった」
「ああ、本当にありがとうだぜ、香霖」
魔理沙は、まだ嬉しくて仕方が無いと言った表情で霖之助。まさか、ここまで喜ばれるとは思わなかった。
彼女のこの幸せそうな様子だけを見ると、いつもの人騒がせな魔理沙像と一致しない。
どちらが本当の彼女なのだろうか、と考えようとしたが、すぐに止めた。魔理沙は、全てが揃って魔理沙なのだ。勤勉で、人騒がせで、迷惑で、素直で――きっと、彼女の内から一つが欠けても、魔理沙には成り得ないに違いない。
そこまで考えてふと、霖之助がある事に気付いた。
「……ところで魔理沙、僕はたった今気が付いたんだが、『憧れから生まれた努力の結晶』。これは、ある人物の性質に一致するんだよ」
「ん、そいつは誰なんだ? 魔法使いの性質にそっくりだなんて羨ましい奴だぜ」
クック、と喉を鳴らして霖之助は笑う。どうやら、彼女は気づいていないようだ。
「さぁ、誰なんだろうね。意外とこの近くに居るのかもしれないよ。――ところで魔理沙。僕は君の求める答えを与えた訳なんだが、僕に報酬は無いのかい?」
これ以上、魔理沙にその事を追求されても面倒なので霖之助は話題を強引に転換する。
その言葉を聞いてピタリ、と魔理沙の動きが止まった。
少しの間を開けた後、満面の笑みは何かを誤魔化すような取り繕った笑みに変わる。
「その、何だ、タダより高いものは無いんだ。だから無報酬と言うのが一番価値が高い報酬なわけで――」
「そんな戯言は聞きたくないな、安くてもいいから物品的な物がいい」
「……分かったよ、明日には何時もの鉄屑でも持ってくるさ」
「ああ、そうしてくれると嬉しいね」
「か弱い乙女をから物をせびるなんて酷いんだぜー」
今日も、香霖堂の朝は過ぎて行く。
矛盾、の間違いですかね。
・・・2008年春よ来い
なんだか魔法使いになりたい気分になってきました
私自身、妖怪にあこがれてますからすごく共感できる話でした。
ちなみに魔法使いには
努力によって憧れに近づいた結果により、なれますが
自身が忘れ去られる事によって幻想になることでも可能です。
たとえば、30になるまで異せ(ry
非常に美味しいお話でした。
おいおい、誰も魔理沙が洋食嫌いとは言ってないぞ。
後書きでワロタ
そろそろ発売しないかなぁ、頼むから幻想入りはしないでくれ。
何時までも待ちましょう。それが我々にできる善行です。
内容的にはりんのすけらしさがあり好きです(^-^)/