「そういえば、あなたより速いやつがいたわよ」
霊夢の何気ない一言に、幻想郷最速を標榜する射命丸文は凍りついた。
「な、何をおっしゃるウサギさん」
「私は兎じゃなくて巫女だけどね」
「霊夢さん、冗談はよし子さんですよ」
「誰それ?」
動揺を隠せない文は、思わず幻想入りワードを二連続で使ってしまう。
掌に指で鴉と書いてのみこむ仕草をすると、文は必要以上に晴れやかな笑みを浮かべて霊夢を見やる。
「またまた~、霊夢さんったら冗談がうまいんですから~。もう、お・茶・目・さん♪」
「いや、あの速さは正直たまげたわ」
「詳しい話を聞かせてもらいましょうかあぁぁぁぁぁぁ!!」
そして、文と霊夢は命蓮寺を訪れていた。
「はあ……、なんで私まで付き合わされているのかしら」
「霊夢さんには私が最速だと再確認する義務があります。まったく、霊夢さんがおしゃべりだったらとんでもない誤報が広がる所でしたよ。真実は常に一つなのですよ」
「あんたが言うな」
ほどなくして、霊夢が言うところの最終最速弾幕少女聖白蓮が現れる。
「あらあら、霊夢ちゃん、なかなか遊びに来ないから寂しかったわ~」
にこやかな笑みを浮かべ、ゆっくりとした口調で話す白蓮を文はうろんげな様子で見る。それから、白蓮の全身を値踏みするようにじろじろと眺めるのであった。
「あら、この子はー、えっとー、えっとー、えっとー」
両方の人差し指をこめかみに当てて唸り始める白蓮。
――ただ今脳内メモリー検索中。そのままお待ちください――
そんなポップアップが背景に出てきそうな雰囲気だ。
「そうだわ、新聞記者の射命丸あややさん!」
「文です!!」
文は憤懣やるかたない様子で人差し指を突きつける。
「こんなスローリーな人が私より速いわけありません!」
「?」
小首をかしげる白蓮の暢気な表情にますます文はいきりたつ。
「白蓮さん、勝負です! 霊夢さんは審判! いいですね!」
「えー、めんどいー」
「い・い・で・す・ね!」
「OK」
命蓮寺の庭で勝負が始まる。
のほほんとした笑顔を浮かべている白蓮と、めんどくさそうな表情の霊夢とは対照的に、やる気に満ち溢れた表情の文はその場で飛び跳ねている。
「ちゃっちゃとやってね。最初は――」
「私からやりましょう。真の最速を霊夢さんにお見せします」
文は不敵な笑みを浮かべると、ふわりと浮かび上がり高らかに宣言する。
「『無双風神』!!」
10秒ほど左右に飛んだかと思うと、速度を急速に増して左右に飛び交う。
その驚くべき速度は、確かに幻想郷最速を標榜するだけのことはあった。久しぶりに文のそれを見る霊夢も、思わず感嘆の声をあげる。
「どうです!」
ふふんと胸を張る文。
「あの、私は何をすればいいんでしょうか?」
事態がよく分かっていないのか、白蓮は暢気に問う。
「魔界で私と戦ったとき、最後のイヤらしいスペルの前に使ったジグザグのやつを見せて」
「ああ、あれですね。いいですよ~」
このときまで、文は白蓮のことを完全に舐めていた。
しかし、次の瞬間、文は目を剥くことになる。
「超人『聖白蓮』!!」
白蓮の表情はにこやかだ。
そのにこやかな表情のまま、凄まじい速度で白蓮は左右に、上下に飛ぶ。
はっきり言ってシュールで怖い。
魔界での戦いのとき、呆気に取られた霊夢が思わず1機ピチュってしまったほどだ。その速さは先ほどの無双風神と遜色ないどころか、もしかしたら上回っているかもしれない。
「どう、文?」
「……………………」
文は言葉もなく、口をあんぐりと開けたままいまだに飛び続ける白蓮を見る。
「あの、これでよろしいでしょうか?」
スペルを中断させた白蓮が声をかけると、文は再び人差し指を突きつける。
「な、なかなかやりますね! こうなったら、同時に始めてどちらが最速か白黒はっきりつけようではありませんか!」
しかし、すぐに文は敗北を味わうことになる。
約20秒、しかも最速状態は10秒ほどしか続かない『無双風神』に対して、『聖白蓮』は約80秒続く。疲弊困憊した文が両手を地面について酸素を求めている間も、白蓮は相変わらずにこやかな笑顔で上下左右に飛び回っていた。
「……霊夢さん、あの人は人間ですか?」
「超人じゃない? スペルカード宣言で叫んでたじゃない。それにしても、自分の名前をスペルカードにつけるなんて結構目立ちたがりよねー。私だったら、巫女『博麗霊夢』……なんてスペルカード、死んでも作らないわ」
「こ……」
「こ?」
「これで勝ったと思わないでください!!」
泣きながら文はその場を飛び去った。
胸にリベンジの4文字を刻みながら。
そして、文は帰ってきた。
イメージの世界で巨大なカマキリと戦い、火中の天津甘栗を火傷しないような凄まじい速度で拾い集め、河童印の重力コントロールマシーンを使い超重力下で腕立て伏せをする,etc.
数々の過酷な修行を経た文は、再び白蓮の前に立つ。
「待たせましたね、白蓮さん」
「いや、誰も待ってないし」
再び審判役として引っ張り出された霊夢は迷惑そうに呟く。
「あら、文ちゃん、いらっしゃい」
そして、相変わらずの白蓮。
だが、文はそんな白蓮に惑わされることなく、いつもはつけていないリストバンドを取り去る。無造作に投げ捨てられたそれは、鈍い音をたてて地面をへこませる。
「な――これは――!?」
霊夢はリストバンドを手に取り驚愕する。渾身の力をこめてもビクとも動かない重さなのだ。さらに、文は身体中に仕込んだ超重量のものを外していく。
そして、リミッター解除をした文は、高く空に舞う。
「いつもの2倍のジャンプ! いつもの2倍の気合! そして、いつもの3倍の露出で軽量化! これぞ新たな時代を切り開く新スペルカード! その名も『真・無双風神』!!」
『あーっと!! これは2×2×3=12倍! 実に、240秒もの耐久スペルカードが博麗霊夢を襲う!!』
どこからともなく響いてくる実況の声。
「なんて鬼畜な耐久スペル……って!! なんで私!? 関係ないんですけど!!」
気づくと、文から放たれる無数の弾幕が霊夢めがけて降り注ぎ――
GET SPELL CARD BONUS!!
「し、死ぬかと思ったわ……」
気合ですべてよけきった霊夢は、すっかり消耗した様子で肩で息をついていた。しかし、それ以上に、4分間最速状態を維持し続けた文がやばい。
「ゼェ……ゼェ……どうです……私の……ハァ……ハァ……修行の成果は……!」
今にも倒れそうなやつれた顔で霊夢に詰め寄る文。
霊夢は視線をそらすと、後頭部をかきながら実に言いにくそうに切り出す。
「えっとさ、速さじゃなくて、持続時間がパワーアップしても仕方ないんじゃないかなあ……なんて……」
「……………………」
「ん? 文?」
文はショックのあまり、立ったまま気を失っていた。
だが、その後の白蓮監督の修行の結果、幻想郷最速の称号を取り戻したという。
バキにらんまにドラゴンボールwwwwwww
風で文は残像が複数残るほどの超スピードで移動しているため、残像すら残らない白蓮さんじゃ文には絶対勝てない…
文に汗は似合うと思う。
こういうのりのもっと見たい。
文ちゃん頑張って!!
この真ゲッターチックな文、使わせてもろてもよかですか?
ゲーム中の弾幕なんて皆遊びで手を抜いてるから超人の白蓮さんが実はここまで速くても何もおかしくはないですね!
kwsk
>>6 >>29
らんまのかなり初期のやつですが、ご存じの方がいらっしゃって嬉しいです。らんまは結構修行シーンが描かれていましたが、個人的に爆砕点穴の修行が印象的だったり。
>>8
あれは、何かの冗談かと思いました。
>>11 >>15 >>19
あまり深く考えないで勢いで書きました、すみません。ネタ思いついて40分ぐらいで一気に仕上げたので。
>>12 >>13
バトル漫画の修行が好きなので。まあ、東方世界観とは基本的に合わないのですが、こういうのもあっていいかなと。
真ゲッターは大歓迎です。本作品は劇画調で描かれるイメージでやってたものですし。
>>22 >>30
身体中に仕込んだおもりを取り去る過程で(ry