忘却の地、幻想郷の上空には雲以外にも色々と存在する。
その中の一つで、ある意味代表格と言えるのが『冥界』………幻想郷で亡くなった
命がこれもまた色々な事情で留まる場所だ。
そんな魂達を管理するのが、冥界唯一の建築物である『白玉楼』と………そこの当主である西行寺 幽々子と、
彼女を裏で支える庭師、魂魄 妖夢である。
今回は、西行寺 幽々子氏から冥界で一番の頑張り屋さんと称されている魂魄 妖夢氏にスポットを当てていこうと思う。
妖夢の朝は早い。どれ程かと言えば外の世界でラジオ体操なるモノが始まるのよりも早く起床する………と言えば
彼女がどれだけ早く起きているのかご理解いただけるだろうか。
「……………」
陽光すらも未だ僅かで、ほんのりと薄暗い冥界の竹林で、妖夢は目隠しの状態で刀を構える。彼女の前には
やや大きめの岩に置かれた、一本の薪。
「シッ――――――――――――――――!」
渾身一閃。刀に打たれた薪は一片を斬り落とされ宙を舞い、地上の重力に引かれゆっくりと落下する。
「フッ――――――――――――――――!」
斬り返しの払い。見事なタイミングでかち合った薪は再び一部分を斬り落とされ、その場に停滞。
「ハアァ―――――――――――――!!」
腰に差していた短刀も抜き、妖夢は薪に連撃を叩き込む。薪は瞬く間にその身を削り取られ、ある形状へと
変化を遂げた。
「…………ふぅ」
刀を鞘に納め、目隠しを取る妖夢。大量の木屑の中心にこぢんまりと出来上がっていたのは………笑顔が眩しい
子猫の人形。斬撃による荒っぽい削りだった為少し凸凹しているが、立派な達人芸だろう。
「………23点。ってトコかな………師匠の域にはまだ遠い」
だと言うのに、当の本人は納得いきかねるご様子。因みに彼女の祖父であり剣術の師匠である魂魄 妖忌氏は
同じ状況下で鮭を銜えた熊が出来上がったそうな。
取り敢えず、この子猫は寺子屋にでも寄付するとして妖夢は休む間も無く全力疾走する。太陽が昇り始め、ようやく
人々が平均的に目覚める時間になれば、食事の支度だ。
* * *
「ようむおはよぅ~」
「お早うございます、幽々子さ………みょっ!?」
朝食の準備を終え、主を起こしに参ろうかと思った矢先………大変刺激的な格好(※皆様のご想像にお任せします)
で姿を現した幽々子に妖夢の素っ頓狂な声が冥界に響く。
これが冥界特有の朝の知らせだとか、何とか。
「ちょっと幽々子様!そんなは、破廉恥な格好でウロウロしないでっていつも言ってるじゃないですか!」
「え~………この格好が一番楽なのに~」
「何処で誰に見られているか分からないんですから、もう………
隣で寝る私の身にもなってくださいよ」
とにかく、着替えてくださいと幽々子の背中をグイグイと押して自室へ連れて行く妖夢。何度注意してもコレ
なので妖夢もこの辺は結構慣れているようだ。
………彼女が何かとんでもない事を口走ったのは、多分気のせいだろう。
「いただきます」
「いただきま~す」
幽々子への着付けを終え、二人で朝食。献立は白米と味噌汁、納豆と沢庵と言う純和風が勢揃い。
朝からもりもりと美味しそうに食べる幽々子の笑顔を見て、満足そうな表情で妖夢も箸を進めていく。
既にお約束だが、当然幽々子の方が圧倒的に早く、それでいて多く食べている。
本来ならば従者として、妖夢は幽々子の茶碗におかわりを入れるべきなのだが………如何せん幽々子の
食べる速度が速すぎて妖夢が食事に手をつけられないのでご飯のおかわりは各自で済ますのが白玉楼の決まりである。
当時は納得しかねていた妖夢も、正直この決まりにはかなり助けられていた。
「ご馳走様~」
「はい、お粗末様です」
摂取量こそ違えど幽々子と同時に食事を終えた妖夢は、自らの半霊と一緒に食器を運び片付けを始める。
幽々子へ食後のお茶をそっと置くのも、当然忘れていない。
「あ、そうだ………庭の掃除を終えたら、里へ買い物に出掛けますが………何かご注文はありますか?」
「大丈夫よ~。強いて言うなら、晩御飯にだけは遅れないでね~」
「勿論」
密かに鼻歌を歌いながら、妖夢は食器を洗っていく。冷たい水も何のその、綺麗になっていく皿や茶碗を見れば
気分も晴れやかにもなるだろう。
これが終われば広い広い庭の掃除。昼になれば買い物の時間だ。
* * *
「御免くださぁい」
掃除を終え、お昼時。冥界から地上へ降り立った妖夢が向かった先は、
人里の隅っこに店を置く妖夢行きつけの食材屋。
彼女が知る限りこの店が一番安価で食材を売り、それでいて鮮度を保っている隠れた良店である。
しかも時折珍しい食材も入荷する為、レパートリーには事欠かない。
「ほい、いらっしゃ………おお、白玉のお嬢さん。いつもご苦労だねぇ」
「いえいえ………入っても宜しいでしょうか?」
「ああどうぞどうぞ。荷詰めも終わってるから、あとは運ぶだけだ」
「どうも」
深々と頭を下げ、妖夢は店の奥へと足を進める。白玉楼の食材消費量はトンでもなく多いので、予め専用に分けて
戴いている。月に一度、タイミングは割りと不定期なのに狙い済ましたかのように
事前に用意できる店主の能力の高さには毎回驚かされているばかりだ。
「お嬢さんはお得意様だから、今回良質な鰐の肉をおまけしといたよ」
「鰐………ですか?それはまた珍しい」
「300年個体の高級肉だ。是非とも味わってくれ」
鰐って300年も生きる生き物だっけ………と思いつつも妖夢は店主の厚意に
甘える事にした。食材は多いに越したことは無い。
「よいしょっと………それでは」
「まいどあり~」
積載量ギリギリのリュックと、同じく中身ギッチギチの手提げ袋を両手に持って妖夢は店を後にした。
飛べない事も無いが、足腰を鍛えるには歩くのが一番良い。
「おや………妖夢か?」
「む。その声は藍殿と………紫様?」
里の街道をどでかい荷物を背負って歩いていると、狐の式神である八雲 藍と出会った。彼女の隣には主である
八雲 紫も珍しく一緒だ。
「はぁい、妖夢。相変わらず凄い量ね………」
「よく食べますから、幽々子は」
「食べすぎでしょうコレは………スキマで荷物、白玉楼まで送ってあげましょうか?」
一端の少女が担ぐには多すぎる荷物に見かねた紫の厚意を、妖夢は首を横に振るってやんわりと断る。
「これも我が鍛錬の為………お心遣い、感謝します」
「そう?じゃあこの世にも珍しい味が七色に変わる果実とかh」
「戴きます」
「………そこは即答なのね」
ハタからは見えないが、結構切迫しているのだろうか………食費で。追加食材を貰ってほくほくしている
妖夢を見て、ちょっとだけ彼女が心配になった紫であった。
「それにしても、紫様がこうして藍殿と一緒に外出なさるなんて珍しいですね」
「偶には………ね。近い内に私は冬眠に入っちゃうし、結界の管理には私にしか出来ない事もあるから
今の内に片付けないと色々と面倒なのよ。まあ、全部藍とのデートのおまけなんだけどね♪」
「ちゃんと仕事してくださいよ………まったく」
呆れた表情をしているが、『デート』と言うキーワードには特に否定しない藍に小さく笑う妖夢。結界管理が
デートのおまけであるかぎり、幻想郷の平和は続いていくだろう。
「それより、私達なんかと油を売っていて良いのか?途中まで歩くなら結構な時間になるぞ?」
「ああ、いけない………それでは藍殿、紫様。申し訳ありませんが私はここで」
「ええ、幽々子によろしくね」
やや早足で歩いていく妖夢の後姿を見送りながら、紫は感心の溜息を漏らす。
「頑張るわねー………疲れないのかしら」
「そりゃ疲れるでしょう。でも、あの娘にはあの娘なりに見合った見返りがあるから頑張っているのでは?」
「ふーん………?」
アレだけの重労働に見合った、見返りねぇ………
それが一体どのようなものなのか、言いだしっぺの藍と一緒に考えながら紫は次の結界基点へと足を運ぶのだった。
* * *
「ご馳走様~」
「お粗末様です」
日は落ちて、夜。
夕食を終えた二人は、朝と同じく同時に食べて、同時に食事を終えた。
夕食の献立には、早速あの鰐の肉を使ってみた。当然今まで食べたことの無い動物の肉だったので二人とも
警戒したが、これがまたなんとも美味で暫くの間食べるのに夢中になっていた。
「鰐ってこんなに美味しかったのね~。次回から定番メニューにしましょ」
「店主殿曰く、高級品らしいので定番は難しいかもしれませんが………余裕があれば買っておきますね」
さて………と食器を片付けようとする妖夢の服を、幽々子がちょっとだけ摘んで彼女を止める。
笑顔で残った片手が叩くのは、柔らかそうなお膝元。
「え………でも、まだ片付けが」
「そこら辺の霊魂に任せとけば良いわ。ほらほら」
「……………はぃ」
言われるがままに、妖夢は幽々子の膝元に頭を乗せる。顔を真っ赤にしながらも自分に甘える可愛い従者に、
幽々子は妖夢の頭を撫でて優しく微笑む。
「今日も一日、ご苦労様」
「………はい」
「後で一緒にお風呂入って、肩揉んであげるわね?」
「………はい」
「それが終わったら、二人で月でも見ながらお酒飲みましょ?」
「………はい」
「…………大好きよ、妖夢」
「………………………………はい」
最後は少しだけ間があったものの、しっかりと言葉を返す妖夢。
これが、藍の言っていた見返り。
どんなに重労働でも、この労いの言葉と、温もりの為なら苦にもならない。
他人からすれば安っぽい、だけど魂魄 妖夢にとっては何物にも代え難い報酬だから
明日も早くに起きられるのだ。
「よし、今日も一日頑張ろう」
その中の一つで、ある意味代表格と言えるのが『冥界』………幻想郷で亡くなった
命がこれもまた色々な事情で留まる場所だ。
そんな魂達を管理するのが、冥界唯一の建築物である『白玉楼』と………そこの当主である西行寺 幽々子と、
彼女を裏で支える庭師、魂魄 妖夢である。
今回は、西行寺 幽々子氏から冥界で一番の頑張り屋さんと称されている魂魄 妖夢氏にスポットを当てていこうと思う。
妖夢の朝は早い。どれ程かと言えば外の世界でラジオ体操なるモノが始まるのよりも早く起床する………と言えば
彼女がどれだけ早く起きているのかご理解いただけるだろうか。
「……………」
陽光すらも未だ僅かで、ほんのりと薄暗い冥界の竹林で、妖夢は目隠しの状態で刀を構える。彼女の前には
やや大きめの岩に置かれた、一本の薪。
「シッ――――――――――――――――!」
渾身一閃。刀に打たれた薪は一片を斬り落とされ宙を舞い、地上の重力に引かれゆっくりと落下する。
「フッ――――――――――――――――!」
斬り返しの払い。見事なタイミングでかち合った薪は再び一部分を斬り落とされ、その場に停滞。
「ハアァ―――――――――――――!!」
腰に差していた短刀も抜き、妖夢は薪に連撃を叩き込む。薪は瞬く間にその身を削り取られ、ある形状へと
変化を遂げた。
「…………ふぅ」
刀を鞘に納め、目隠しを取る妖夢。大量の木屑の中心にこぢんまりと出来上がっていたのは………笑顔が眩しい
子猫の人形。斬撃による荒っぽい削りだった為少し凸凹しているが、立派な達人芸だろう。
「………23点。ってトコかな………師匠の域にはまだ遠い」
だと言うのに、当の本人は納得いきかねるご様子。因みに彼女の祖父であり剣術の師匠である魂魄 妖忌氏は
同じ状況下で鮭を銜えた熊が出来上がったそうな。
取り敢えず、この子猫は寺子屋にでも寄付するとして妖夢は休む間も無く全力疾走する。太陽が昇り始め、ようやく
人々が平均的に目覚める時間になれば、食事の支度だ。
* * *
「ようむおはよぅ~」
「お早うございます、幽々子さ………みょっ!?」
朝食の準備を終え、主を起こしに参ろうかと思った矢先………大変刺激的な格好(※皆様のご想像にお任せします)
で姿を現した幽々子に妖夢の素っ頓狂な声が冥界に響く。
これが冥界特有の朝の知らせだとか、何とか。
「ちょっと幽々子様!そんなは、破廉恥な格好でウロウロしないでっていつも言ってるじゃないですか!」
「え~………この格好が一番楽なのに~」
「何処で誰に見られているか分からないんですから、もう………
隣で寝る私の身にもなってくださいよ」
とにかく、着替えてくださいと幽々子の背中をグイグイと押して自室へ連れて行く妖夢。何度注意してもコレ
なので妖夢もこの辺は結構慣れているようだ。
………彼女が何かとんでもない事を口走ったのは、多分気のせいだろう。
「いただきます」
「いただきま~す」
幽々子への着付けを終え、二人で朝食。献立は白米と味噌汁、納豆と沢庵と言う純和風が勢揃い。
朝からもりもりと美味しそうに食べる幽々子の笑顔を見て、満足そうな表情で妖夢も箸を進めていく。
既にお約束だが、当然幽々子の方が圧倒的に早く、それでいて多く食べている。
本来ならば従者として、妖夢は幽々子の茶碗におかわりを入れるべきなのだが………如何せん幽々子の
食べる速度が速すぎて妖夢が食事に手をつけられないのでご飯のおかわりは各自で済ますのが白玉楼の決まりである。
当時は納得しかねていた妖夢も、正直この決まりにはかなり助けられていた。
「ご馳走様~」
「はい、お粗末様です」
摂取量こそ違えど幽々子と同時に食事を終えた妖夢は、自らの半霊と一緒に食器を運び片付けを始める。
幽々子へ食後のお茶をそっと置くのも、当然忘れていない。
「あ、そうだ………庭の掃除を終えたら、里へ買い物に出掛けますが………何かご注文はありますか?」
「大丈夫よ~。強いて言うなら、晩御飯にだけは遅れないでね~」
「勿論」
密かに鼻歌を歌いながら、妖夢は食器を洗っていく。冷たい水も何のその、綺麗になっていく皿や茶碗を見れば
気分も晴れやかにもなるだろう。
これが終われば広い広い庭の掃除。昼になれば買い物の時間だ。
* * *
「御免くださぁい」
掃除を終え、お昼時。冥界から地上へ降り立った妖夢が向かった先は、
人里の隅っこに店を置く妖夢行きつけの食材屋。
彼女が知る限りこの店が一番安価で食材を売り、それでいて鮮度を保っている隠れた良店である。
しかも時折珍しい食材も入荷する為、レパートリーには事欠かない。
「ほい、いらっしゃ………おお、白玉のお嬢さん。いつもご苦労だねぇ」
「いえいえ………入っても宜しいでしょうか?」
「ああどうぞどうぞ。荷詰めも終わってるから、あとは運ぶだけだ」
「どうも」
深々と頭を下げ、妖夢は店の奥へと足を進める。白玉楼の食材消費量はトンでもなく多いので、予め専用に分けて
戴いている。月に一度、タイミングは割りと不定期なのに狙い済ましたかのように
事前に用意できる店主の能力の高さには毎回驚かされているばかりだ。
「お嬢さんはお得意様だから、今回良質な鰐の肉をおまけしといたよ」
「鰐………ですか?それはまた珍しい」
「300年個体の高級肉だ。是非とも味わってくれ」
鰐って300年も生きる生き物だっけ………と思いつつも妖夢は店主の厚意に
甘える事にした。食材は多いに越したことは無い。
「よいしょっと………それでは」
「まいどあり~」
積載量ギリギリのリュックと、同じく中身ギッチギチの手提げ袋を両手に持って妖夢は店を後にした。
飛べない事も無いが、足腰を鍛えるには歩くのが一番良い。
「おや………妖夢か?」
「む。その声は藍殿と………紫様?」
里の街道をどでかい荷物を背負って歩いていると、狐の式神である八雲 藍と出会った。彼女の隣には主である
八雲 紫も珍しく一緒だ。
「はぁい、妖夢。相変わらず凄い量ね………」
「よく食べますから、幽々子は」
「食べすぎでしょうコレは………スキマで荷物、白玉楼まで送ってあげましょうか?」
一端の少女が担ぐには多すぎる荷物に見かねた紫の厚意を、妖夢は首を横に振るってやんわりと断る。
「これも我が鍛錬の為………お心遣い、感謝します」
「そう?じゃあこの世にも珍しい味が七色に変わる果実とかh」
「戴きます」
「………そこは即答なのね」
ハタからは見えないが、結構切迫しているのだろうか………食費で。追加食材を貰ってほくほくしている
妖夢を見て、ちょっとだけ彼女が心配になった紫であった。
「それにしても、紫様がこうして藍殿と一緒に外出なさるなんて珍しいですね」
「偶には………ね。近い内に私は冬眠に入っちゃうし、結界の管理には私にしか出来ない事もあるから
今の内に片付けないと色々と面倒なのよ。まあ、全部藍とのデートのおまけなんだけどね♪」
「ちゃんと仕事してくださいよ………まったく」
呆れた表情をしているが、『デート』と言うキーワードには特に否定しない藍に小さく笑う妖夢。結界管理が
デートのおまけであるかぎり、幻想郷の平和は続いていくだろう。
「それより、私達なんかと油を売っていて良いのか?途中まで歩くなら結構な時間になるぞ?」
「ああ、いけない………それでは藍殿、紫様。申し訳ありませんが私はここで」
「ええ、幽々子によろしくね」
やや早足で歩いていく妖夢の後姿を見送りながら、紫は感心の溜息を漏らす。
「頑張るわねー………疲れないのかしら」
「そりゃ疲れるでしょう。でも、あの娘にはあの娘なりに見合った見返りがあるから頑張っているのでは?」
「ふーん………?」
アレだけの重労働に見合った、見返りねぇ………
それが一体どのようなものなのか、言いだしっぺの藍と一緒に考えながら紫は次の結界基点へと足を運ぶのだった。
* * *
「ご馳走様~」
「お粗末様です」
日は落ちて、夜。
夕食を終えた二人は、朝と同じく同時に食べて、同時に食事を終えた。
夕食の献立には、早速あの鰐の肉を使ってみた。当然今まで食べたことの無い動物の肉だったので二人とも
警戒したが、これがまたなんとも美味で暫くの間食べるのに夢中になっていた。
「鰐ってこんなに美味しかったのね~。次回から定番メニューにしましょ」
「店主殿曰く、高級品らしいので定番は難しいかもしれませんが………余裕があれば買っておきますね」
さて………と食器を片付けようとする妖夢の服を、幽々子がちょっとだけ摘んで彼女を止める。
笑顔で残った片手が叩くのは、柔らかそうなお膝元。
「え………でも、まだ片付けが」
「そこら辺の霊魂に任せとけば良いわ。ほらほら」
「……………はぃ」
言われるがままに、妖夢は幽々子の膝元に頭を乗せる。顔を真っ赤にしながらも自分に甘える可愛い従者に、
幽々子は妖夢の頭を撫でて優しく微笑む。
「今日も一日、ご苦労様」
「………はい」
「後で一緒にお風呂入って、肩揉んであげるわね?」
「………はい」
「それが終わったら、二人で月でも見ながらお酒飲みましょ?」
「………はい」
「…………大好きよ、妖夢」
「………………………………はい」
最後は少しだけ間があったものの、しっかりと言葉を返す妖夢。
これが、藍の言っていた見返り。
どんなに重労働でも、この労いの言葉と、温もりの為なら苦にもならない。
他人からすれば安っぽい、だけど魂魄 妖夢にとっては何物にも代え難い報酬だから
明日も早くに起きられるのだ。
「よし、今日も一日頑張ろう」
三点にまったく反論の余地がない
氏の作風はとてもいいな。
特に紫×藍は王道夫婦はGJです。無論、藍様が旦那ですよね!(押し付けw
ガララワニですね!!
今後とも頑張って下さい。
一緒に寝てるのはご褒美じゃなくて日常茶飯事なんですね分かります