廊下に出て霊夢は全速力で走った。
後ろから大きな蝙蝠のような翼を羽ばたかせレミリア・スカーレットが追ってくる。
私も飛ぼうかと思ったが走ったほうが小回りが利くのでこのまま走ることにした。
だが追いつかれるのも時間の問題だ。
どこか出し抜けそうないい所は無いかと私は出来るだけ狭い通路を走りながら考えた。
目の前にある突き当りを右に曲がった。するとそこには美鈴が立っていた。
最初は私を見て驚きその後私の後ろにいる鬼を見てさらに驚いた。
美鈴も方向転換をして私と同じように逃げた。
美鈴が右に曲がると私も右に曲がる。
何で付いてくるの、と言いたそうな顔をしながらこちらを睨んできた。
上手い具合に角が続いてくれたのでレミリアとの距離も広くなっていた。
私達はそれからしばらく必死に走り続け一つの扉の前にたどり着いた。
「早く開けなさいよ!ほら、レミリア来ちゃう!!」と私が急かす。
「分かってるわよ!」と焦りながら美鈴がドアノブをまわす。
そのとき美鈴のポケットから私のスペルカードが見えた。胸が高鳴るのが分かった。
扉が開き私達は我先にと部屋の中に入った。
そこはこの館にある唯一の図書館だった。
中はほぼ暗闇で明かりといえば蝋燭が点々と通路においてある小さなテーブルの上に置いてあるだけだった。
私達は急いで扉を閉め隣にあったタンスを倒した。
「これで少しは時間稼ぎになると思うわ。……お嬢様がこんなものに手間取るとは思わないけど…」
私達は呼吸を少しずつ整え大きな本棚の少し前にある本の山の陰に隠れた。
この館にはたくさんのメイドが居るはずなのだが此処のある本はどれも埃まみれになっていた。
私は少しむせながら言った。
「もう誰か捕まったのかしら?私が見たのは咲夜と貴女だけだけど」
すると美鈴はそこにあった本を手に取りながら言った。
「さっき一階に降りた時チルノが落ち込んだ顔をしているのを見たわ。多分捕まったわね」
チルノと行動していたのはたしかルーミアだった。では彼女も捕まってしまったのだろうか。
突然、先ほど私達が入ってきた扉のほうから何かを殴るような音が聞こえた。
私が本の山から少し顔を上げると私達が置いたタンスが5メートルくら吹き飛んでいるのを見た。
扉には大きな亀裂が走っていてそれを無理矢理広げようとする小さな手が見えた。
美鈴も私と同じように頭を上げ「普通に開けたほうが早いのに……」と呟いた。
美鈴も此処に居れば見つからないと思ったのだろう。少し警戒したが逃げようとはしなかった。
私が隣に居るのも忘れて美鈴は扉が広がっていくのをまじまじと見つめていた。
気づかれないように美鈴のポケットを見た。やはり私のスペルカードだ。
しかも扉の前で確認したときよりも顔を覗かしていた。
私は扉を警戒しつつポケットにゆっくりと手を伸ばした。
メキメキと扉が割れる景色に美鈴は集中していた。
スペルカードを掴んだ。
同時に美鈴の体がビクンと揺れた。
(ばれた………)
私は目を瞑ってスペルカードを引っ張り出しそのまま美鈴を横に突き飛ばした。
美鈴は受身も取れずそのまま転がっていき扉からちょうど見える辺りで止まった。
私は顔に笑みを残しながら扉とは反対側に駆けていった……
かなり長い距離を走った。本棚から垂れ下がっている蝋燭で私の顔が照らされる。
美鈴は捕まっただろうか?逃げ切れただろうか?しかし今はそんなことを言ってられない。
きっとこの中にレミリアが徘徊している。
私は扉からかなり離れた所に居た。暗すぎて此処からでは図書館の入り口が見えない。
走っている途中悲鳴が聞こえたような気がした。多分美鈴だろう。
私は手に握り締めているカードに目をやった。
不意に笑みがこぼれる。やっと一枚だ。
カードは八方鬼縛陣だった。敵の動きを少しの間完全に封じるものだ。
これでもし鬼に見つかったとしても少しは逃げる時間を稼ぐことができる。
そんな事を思っているうちに目の前に突き当りが見えてきた。
暗くてよく見えないが左に通路が続いている。
私は道に従いながら左に曲がる。その先には下りの階段がありその一番下は真っ暗で奈落のようにも思えた。
ちょうど此処が図書館の頂上らしいその証拠に此処からは図書館の全てを一望することができる。
少しの間緊張がほぐれた。
だが、それも束の間だった。
私から少し遠い通路から膨大な数の本が飛んできた。
そしてレミリアが出てきて目の前にある手擦りに着地した。
彼女の周りには本が霧散していた。幸いまだ私の姿に気づいている様子は無かった。
きっと美鈴を追って最初の分かれ道を一直線に飛んだのだろう。やはり美鈴は捕まったのだろうか。
私は気づかれないように後ずさりをし本棚の陰に隠れた。
こちらからはレミリアが何をやっているのかよく見えた。
彼女は大きな翼を羽ばたかせながら辺りの様子を確かめていた。
しばらくすると彼女が少し身を屈めそれから手擦りを思い切り押してその反動で前に飛んでいった。
こちらからはよく見えないが誰かいたのだろうか。
確認のしようが無かったがとりあえず危機は切り抜けた。
その場に座り込みカードを確認した。
私のカード以外に魔理沙、パチュリーのカードがともに一枚ずつあった。
カードをポケットに戻して立ち上がり私はもと来た方向に走り出した。
レミリアが本格的にこの部屋の中を探す前に外に出ようと考えた。
注意するのは美鈴だ。
私はなるべく音を立てぬよう薄暗い一本道を走り続けた。
目の前からレミリアが突っ込んでくる。
私は彼女をぎりぎりのところでかわし受身を取る。
レミリアは本棚を壁代わりにし跳ね返りながら突っ込んでくる。
私はすぐさまレーザーを撃った。青白い閃光は彼女の翼をかすめ闇の中に消えていく。
「ぐっ……」レミリアは空中でよろけ着地する。
自分の翼をさすりながら彼女は笑った。
「なかなかやるじゃないの。今まで追ってきた中で攻撃をしてきたのは貴女だけよ。魔理沙」
「褒め言葉なら受け取っておくぜ。鬼は受け取らないけどな」
ふふん、とレミリアは笑みを浮かべてまた空高く舞い上がった。
逃げるなんてみっともない。お前が諦めるまで戦い続けてやるぜ。
私は掌に大きな星の弾幕を生成した。
赤い悪魔が空中で止まった。
すると掌から何か黒々したものが湧き出てきた。
蝙蝠だ。蝙蝠は周りに飛び散った。
目の前が蝙蝠に覆いつくされる。
何も見えない。私は掌に作り出しておいた星の弾幕を地面に叩きつけた。
凄まじい音をたてて地面が抉れ衝撃波が起きる。
その衝撃波で蝙蝠たちも四方八方に吹き飛んでゆく。
蝙蝠たちは壁や本棚にぶつかり溶けていった。
目の前が晴れた。さっきまであったレミリアの姿が無くなっていた。
周りを見渡した。どこにもいない。
「どこだ?」私は誰かに言うでもなく呟いた。
すると後ろから小さな声が聞こえた。
「ここよ。お馬鹿さん」同時に小さな手が私の肩を掴んだ。
「はい。魔理沙も鬼決定~」レミリアがぽんぽんと肩を叩き言った。
私はその場に座り込んで頭をかいた。
「かーっ!カード使う暇も無かったぜ。やっぱ逃げたほうが正解だったのか」
レミリアは腕を組みながら微笑み「でも逃げてるだけじゃつまらないと思うわ。
やっぱりこういう遊びは楽しまないとね。……後は霊夢、パチェ、咲夜にルーミアね」
「あ、美鈴も捕まったのか?チルノは…まあ捕まると思ってたけどな」
私は立ち上がりレミリアと並んだ。
「そうよ。霊夢にはめられちゃったみたい。ところで霊夢の他に此処に誰かいる?」
私とレミリアは歩き出して上から三番目の階段を上っていた。
「あ、パチュリーがこの部屋にいると思うぜ」
レミリアが立ち止まりなにやらぶつぶつ呟き始めた。
すると先ほど私達が戦った跡を見ながら言った。
「魔理沙はここで待ってなさい。時期パチェがくるわ」
分かった、と私は言ったが少し考えて彼女に質問した。
「あれ??ちょっと待てよ…私ってさどうやってパチュリーとかに鬼だぞって伝えるんだ?」
するとレミリアはため息をつきこう返して来た。
「伝えなくても多分頭の良い奴ならこいつは鬼だって分かるでしょ。だって鬼でもないのに
不自然に触ってこようとするなんておかしいし」
ああ…そうだな。と、私は呆けたように呟いた。
遊びだからこれぐらいでいいのだろう。私も同感した。
「それじゃ私外でて咲夜探しに行くからここの見張り宜しく」
彼女はそう言い残して階段の一番上まで上がると大きな翼をはためかせ頭上の闇へと消えていった。
目の前のずさんな光景を見て2、3分が経った。
本当にパチュリーは現れるのだろうか。
確かにこんなに本が吹き飛び本棚が倒れているのを見たら青白い顔をさらに青くさせすぐに飛んでくるかもしれない。
私は荒れている一帯から少し離れた本棚の中に隠れていた。
幸い人が一人入れるサイズの隙間があったのだ。
来るのか来ないのか分からなかったが私は退屈で仕方が無かった。
目の前に本が霧散している。
こんなこと出来るのレミリアぐらい。
目の前に落ちていた本を拾い上げ本棚に納めた。
多分魔理沙は捕まった。
下で戦ったのかしら?ここには戦った形跡が見られない。
ただ本が吹き飛んでいるだけ。
おそらく待ち伏せ。もしくは徘徊しているだろう。
気は向かなかったが外に出よう。私のカードを二枚も持っているからレミィにあっても大丈夫だと思う。
私は少し体を浮かせふわふわと扉を目指した。
この直線の通路からはムカデの足のように左右に本棚が並べてある。
だから自然に多くの通路が出来た。
しかし本棚は所々崩れたり本が吹き飛んだりしていた。
本棚がくりぬかれた様になっていたりお札が周りに散らばっていた。
霊夢と美鈴が戦っていたらしい。どちらかが鬼であることが明確に分かった。
さて、そうこうする内に出口が見えてきた。
タンスが横倒しになっていた。
私はそれを飛び越えふと右を見た。
紅白の服。霊夢が立っていた。
「……何?」私は呟くように言った。
霊夢がいきなり攻撃を仕掛けてきた。
私に向かってお札を投げてきた。
私は空に高く上がりそれを難なくかわす。
再び霊夢がいた方に視線を向ける。彼女は私の反対側に逃げていった。
(鬼ではないわね……)私は霊夢を追った。
しばらくすると彼女は振り返り私にこう言ってきた。
「鬼じゃないの?」
私は彼女の少し前に着陸して溜息をついた。
「最初からそういえばいい……それとも騙すと思った?」
彼女は少し安心したように言った。
「貴女のお友達に一回はめられたから。貴方達は全員そういう人だと思っちゃたの」
「騙されるほうが悪い……」
霊夢は悔しかったのかその言葉を無視してこう返してきた。
「ねえ、パチュリー。あなた今誰が鬼になってるかわかる?」
私はいつものように小さな声で言った。
「確認してないけど多分魔理沙………後、美鈴」
霊夢はうーん…と呻く。
「これで後は四人か…」
私がさりげなく質問した。
「美鈴と戦った?」
彼女は他の事を考えながら適当に「ええ」と言った。
「美鈴はどこに行った?」
私のほうを見て言う。
「途中で撒いたわ。その後諦めて部屋から出たみたいね。レミリアも私が本の山の陰に
隠れてたとき外に出て行ったわ」
続けて霊夢が私に言った。
「そういえば貴女、私のカード持ってない?きっと外のルーミアも咲夜も三人がかりで追われれば
時間の問題よ。残るのは私達だけ。かといってここに残るのは危ないから外に出たほうがいいと思う。
だけど多くのカードを持っていないと必ずやられるわ。だからこの場で交換しましょ。まあ、私のを持っていたらの話だけど」
クスッと私は笑う。
この遊びは素晴らしいものね。
一人の人間をここまで真剣にさせる。
私の微笑に霊夢は首をかしげる。
「いえ、ごめんなさい。確かにいい考えね。いいわその案乗ってあげる」
私はポケットから赤と白のカードを出した。
霊夢も同様に私のカードを出し私に突き出す。
私は手を伸ばしカードを取ると同時に霊夢のカードを彼女に手渡す。
これで三枚。全てのカードを見せてと言われなくてよかった。
霊夢が歩き出し扉へと向かう。私も続く。
さぁ、このお遊びもそろそろ終盤だ。
私もこの頑張り屋人間の様に。
楽しもう。
後ろから大きな蝙蝠のような翼を羽ばたかせレミリア・スカーレットが追ってくる。
私も飛ぼうかと思ったが走ったほうが小回りが利くのでこのまま走ることにした。
だが追いつかれるのも時間の問題だ。
どこか出し抜けそうないい所は無いかと私は出来るだけ狭い通路を走りながら考えた。
目の前にある突き当りを右に曲がった。するとそこには美鈴が立っていた。
最初は私を見て驚きその後私の後ろにいる鬼を見てさらに驚いた。
美鈴も方向転換をして私と同じように逃げた。
美鈴が右に曲がると私も右に曲がる。
何で付いてくるの、と言いたそうな顔をしながらこちらを睨んできた。
上手い具合に角が続いてくれたのでレミリアとの距離も広くなっていた。
私達はそれからしばらく必死に走り続け一つの扉の前にたどり着いた。
「早く開けなさいよ!ほら、レミリア来ちゃう!!」と私が急かす。
「分かってるわよ!」と焦りながら美鈴がドアノブをまわす。
そのとき美鈴のポケットから私のスペルカードが見えた。胸が高鳴るのが分かった。
扉が開き私達は我先にと部屋の中に入った。
そこはこの館にある唯一の図書館だった。
中はほぼ暗闇で明かりといえば蝋燭が点々と通路においてある小さなテーブルの上に置いてあるだけだった。
私達は急いで扉を閉め隣にあったタンスを倒した。
「これで少しは時間稼ぎになると思うわ。……お嬢様がこんなものに手間取るとは思わないけど…」
私達は呼吸を少しずつ整え大きな本棚の少し前にある本の山の陰に隠れた。
この館にはたくさんのメイドが居るはずなのだが此処のある本はどれも埃まみれになっていた。
私は少しむせながら言った。
「もう誰か捕まったのかしら?私が見たのは咲夜と貴女だけだけど」
すると美鈴はそこにあった本を手に取りながら言った。
「さっき一階に降りた時チルノが落ち込んだ顔をしているのを見たわ。多分捕まったわね」
チルノと行動していたのはたしかルーミアだった。では彼女も捕まってしまったのだろうか。
突然、先ほど私達が入ってきた扉のほうから何かを殴るような音が聞こえた。
私が本の山から少し顔を上げると私達が置いたタンスが5メートルくら吹き飛んでいるのを見た。
扉には大きな亀裂が走っていてそれを無理矢理広げようとする小さな手が見えた。
美鈴も私と同じように頭を上げ「普通に開けたほうが早いのに……」と呟いた。
美鈴も此処に居れば見つからないと思ったのだろう。少し警戒したが逃げようとはしなかった。
私が隣に居るのも忘れて美鈴は扉が広がっていくのをまじまじと見つめていた。
気づかれないように美鈴のポケットを見た。やはり私のスペルカードだ。
しかも扉の前で確認したときよりも顔を覗かしていた。
私は扉を警戒しつつポケットにゆっくりと手を伸ばした。
メキメキと扉が割れる景色に美鈴は集中していた。
スペルカードを掴んだ。
同時に美鈴の体がビクンと揺れた。
(ばれた………)
私は目を瞑ってスペルカードを引っ張り出しそのまま美鈴を横に突き飛ばした。
美鈴は受身も取れずそのまま転がっていき扉からちょうど見える辺りで止まった。
私は顔に笑みを残しながら扉とは反対側に駆けていった……
かなり長い距離を走った。本棚から垂れ下がっている蝋燭で私の顔が照らされる。
美鈴は捕まっただろうか?逃げ切れただろうか?しかし今はそんなことを言ってられない。
きっとこの中にレミリアが徘徊している。
私は扉からかなり離れた所に居た。暗すぎて此処からでは図書館の入り口が見えない。
走っている途中悲鳴が聞こえたような気がした。多分美鈴だろう。
私は手に握り締めているカードに目をやった。
不意に笑みがこぼれる。やっと一枚だ。
カードは八方鬼縛陣だった。敵の動きを少しの間完全に封じるものだ。
これでもし鬼に見つかったとしても少しは逃げる時間を稼ぐことができる。
そんな事を思っているうちに目の前に突き当りが見えてきた。
暗くてよく見えないが左に通路が続いている。
私は道に従いながら左に曲がる。その先には下りの階段がありその一番下は真っ暗で奈落のようにも思えた。
ちょうど此処が図書館の頂上らしいその証拠に此処からは図書館の全てを一望することができる。
少しの間緊張がほぐれた。
だが、それも束の間だった。
私から少し遠い通路から膨大な数の本が飛んできた。
そしてレミリアが出てきて目の前にある手擦りに着地した。
彼女の周りには本が霧散していた。幸いまだ私の姿に気づいている様子は無かった。
きっと美鈴を追って最初の分かれ道を一直線に飛んだのだろう。やはり美鈴は捕まったのだろうか。
私は気づかれないように後ずさりをし本棚の陰に隠れた。
こちらからはレミリアが何をやっているのかよく見えた。
彼女は大きな翼を羽ばたかせながら辺りの様子を確かめていた。
しばらくすると彼女が少し身を屈めそれから手擦りを思い切り押してその反動で前に飛んでいった。
こちらからはよく見えないが誰かいたのだろうか。
確認のしようが無かったがとりあえず危機は切り抜けた。
その場に座り込みカードを確認した。
私のカード以外に魔理沙、パチュリーのカードがともに一枚ずつあった。
カードをポケットに戻して立ち上がり私はもと来た方向に走り出した。
レミリアが本格的にこの部屋の中を探す前に外に出ようと考えた。
注意するのは美鈴だ。
私はなるべく音を立てぬよう薄暗い一本道を走り続けた。
目の前からレミリアが突っ込んでくる。
私は彼女をぎりぎりのところでかわし受身を取る。
レミリアは本棚を壁代わりにし跳ね返りながら突っ込んでくる。
私はすぐさまレーザーを撃った。青白い閃光は彼女の翼をかすめ闇の中に消えていく。
「ぐっ……」レミリアは空中でよろけ着地する。
自分の翼をさすりながら彼女は笑った。
「なかなかやるじゃないの。今まで追ってきた中で攻撃をしてきたのは貴女だけよ。魔理沙」
「褒め言葉なら受け取っておくぜ。鬼は受け取らないけどな」
ふふん、とレミリアは笑みを浮かべてまた空高く舞い上がった。
逃げるなんてみっともない。お前が諦めるまで戦い続けてやるぜ。
私は掌に大きな星の弾幕を生成した。
赤い悪魔が空中で止まった。
すると掌から何か黒々したものが湧き出てきた。
蝙蝠だ。蝙蝠は周りに飛び散った。
目の前が蝙蝠に覆いつくされる。
何も見えない。私は掌に作り出しておいた星の弾幕を地面に叩きつけた。
凄まじい音をたてて地面が抉れ衝撃波が起きる。
その衝撃波で蝙蝠たちも四方八方に吹き飛んでゆく。
蝙蝠たちは壁や本棚にぶつかり溶けていった。
目の前が晴れた。さっきまであったレミリアの姿が無くなっていた。
周りを見渡した。どこにもいない。
「どこだ?」私は誰かに言うでもなく呟いた。
すると後ろから小さな声が聞こえた。
「ここよ。お馬鹿さん」同時に小さな手が私の肩を掴んだ。
「はい。魔理沙も鬼決定~」レミリアがぽんぽんと肩を叩き言った。
私はその場に座り込んで頭をかいた。
「かーっ!カード使う暇も無かったぜ。やっぱ逃げたほうが正解だったのか」
レミリアは腕を組みながら微笑み「でも逃げてるだけじゃつまらないと思うわ。
やっぱりこういう遊びは楽しまないとね。……後は霊夢、パチェ、咲夜にルーミアね」
「あ、美鈴も捕まったのか?チルノは…まあ捕まると思ってたけどな」
私は立ち上がりレミリアと並んだ。
「そうよ。霊夢にはめられちゃったみたい。ところで霊夢の他に此処に誰かいる?」
私とレミリアは歩き出して上から三番目の階段を上っていた。
「あ、パチュリーがこの部屋にいると思うぜ」
レミリアが立ち止まりなにやらぶつぶつ呟き始めた。
すると先ほど私達が戦った跡を見ながら言った。
「魔理沙はここで待ってなさい。時期パチェがくるわ」
分かった、と私は言ったが少し考えて彼女に質問した。
「あれ??ちょっと待てよ…私ってさどうやってパチュリーとかに鬼だぞって伝えるんだ?」
するとレミリアはため息をつきこう返して来た。
「伝えなくても多分頭の良い奴ならこいつは鬼だって分かるでしょ。だって鬼でもないのに
不自然に触ってこようとするなんておかしいし」
ああ…そうだな。と、私は呆けたように呟いた。
遊びだからこれぐらいでいいのだろう。私も同感した。
「それじゃ私外でて咲夜探しに行くからここの見張り宜しく」
彼女はそう言い残して階段の一番上まで上がると大きな翼をはためかせ頭上の闇へと消えていった。
目の前のずさんな光景を見て2、3分が経った。
本当にパチュリーは現れるのだろうか。
確かにこんなに本が吹き飛び本棚が倒れているのを見たら青白い顔をさらに青くさせすぐに飛んでくるかもしれない。
私は荒れている一帯から少し離れた本棚の中に隠れていた。
幸い人が一人入れるサイズの隙間があったのだ。
来るのか来ないのか分からなかったが私は退屈で仕方が無かった。
目の前に本が霧散している。
こんなこと出来るのレミリアぐらい。
目の前に落ちていた本を拾い上げ本棚に納めた。
多分魔理沙は捕まった。
下で戦ったのかしら?ここには戦った形跡が見られない。
ただ本が吹き飛んでいるだけ。
おそらく待ち伏せ。もしくは徘徊しているだろう。
気は向かなかったが外に出よう。私のカードを二枚も持っているからレミィにあっても大丈夫だと思う。
私は少し体を浮かせふわふわと扉を目指した。
この直線の通路からはムカデの足のように左右に本棚が並べてある。
だから自然に多くの通路が出来た。
しかし本棚は所々崩れたり本が吹き飛んだりしていた。
本棚がくりぬかれた様になっていたりお札が周りに散らばっていた。
霊夢と美鈴が戦っていたらしい。どちらかが鬼であることが明確に分かった。
さて、そうこうする内に出口が見えてきた。
タンスが横倒しになっていた。
私はそれを飛び越えふと右を見た。
紅白の服。霊夢が立っていた。
「……何?」私は呟くように言った。
霊夢がいきなり攻撃を仕掛けてきた。
私に向かってお札を投げてきた。
私は空に高く上がりそれを難なくかわす。
再び霊夢がいた方に視線を向ける。彼女は私の反対側に逃げていった。
(鬼ではないわね……)私は霊夢を追った。
しばらくすると彼女は振り返り私にこう言ってきた。
「鬼じゃないの?」
私は彼女の少し前に着陸して溜息をついた。
「最初からそういえばいい……それとも騙すと思った?」
彼女は少し安心したように言った。
「貴女のお友達に一回はめられたから。貴方達は全員そういう人だと思っちゃたの」
「騙されるほうが悪い……」
霊夢は悔しかったのかその言葉を無視してこう返してきた。
「ねえ、パチュリー。あなた今誰が鬼になってるかわかる?」
私はいつものように小さな声で言った。
「確認してないけど多分魔理沙………後、美鈴」
霊夢はうーん…と呻く。
「これで後は四人か…」
私がさりげなく質問した。
「美鈴と戦った?」
彼女は他の事を考えながら適当に「ええ」と言った。
「美鈴はどこに行った?」
私のほうを見て言う。
「途中で撒いたわ。その後諦めて部屋から出たみたいね。レミリアも私が本の山の陰に
隠れてたとき外に出て行ったわ」
続けて霊夢が私に言った。
「そういえば貴女、私のカード持ってない?きっと外のルーミアも咲夜も三人がかりで追われれば
時間の問題よ。残るのは私達だけ。かといってここに残るのは危ないから外に出たほうがいいと思う。
だけど多くのカードを持っていないと必ずやられるわ。だからこの場で交換しましょ。まあ、私のを持っていたらの話だけど」
クスッと私は笑う。
この遊びは素晴らしいものね。
一人の人間をここまで真剣にさせる。
私の微笑に霊夢は首をかしげる。
「いえ、ごめんなさい。確かにいい考えね。いいわその案乗ってあげる」
私はポケットから赤と白のカードを出した。
霊夢も同様に私のカードを出し私に突き出す。
私は手を伸ばしカードを取ると同時に霊夢のカードを彼女に手渡す。
これで三枚。全てのカードを見せてと言われなくてよかった。
霊夢が歩き出し扉へと向かう。私も続く。
さぁ、このお遊びもそろそろ終盤だ。
私もこの頑張り屋人間の様に。
楽しもう。
「~した。」「~だった。」と文末が似た文章が連続しているのに加え、単純な表現が多いので単に事実を羅列しているだけの文章になっています。
特別な意図がない限り同じような単語や表現の連続は避けるべきでしょう。
次から参考にさせていただきます。(できるかわからんけど……)
ありがとうございました。