紅魔館の鐘がなった。
ちょうど正午になった合図だ。
咲夜はいつものようにどこまでも続いてそうな廊下を掃除していた。
箒を掃く音しか聞こえない。
「……ふう」埃を廊下の隅に掃き、ようやく一息つく。
いつもの事だがこれだけの距離を掃除するということはなかなか達成感があった。
すると、廊下の向こうから人影がこちらに向かってくるのが見えた。
薄紫の髪。小さな体。これだけ見れば誰もが普通の少女だと思うだろう。
しかし背中から生えた蝙蝠のような翼が異形の者と物語っている。
さらに、窓の装飾が日光を浴びて黒い十字の影ができ、それが彼女の顔に纏わり付いている様に見えよけいに不気味に見える。
少女は単調なリズムで言った。
「咲夜、暇」
咲夜はため息をつき、埃をちりとりで集めながら言った。
「だったら、掃除手伝ってください。レミリアお嬢様」
するとレミリアは腕を組みながら言った。
「そんなことする暇あったら他のことしてるわよ」
いつもこんな調子だ。
暇になると私のところに来て「暇」と言って私の時間を潰す。
まあ、それが苦になることは滅多に無いので大抵は話に付き合う。
「では、何するのですか?私もそんなに面白い遊び知りませんし……」
レミリアは、うーんと言いつつ上を向き何かを考える。
すると玩具を買ってもらった子供のように、ぱっと顔を明るくして叫ぶ。
「面白いこと思いついたわ。咲夜、暇そうにしてる人を集めなさい」
大広間に咲夜が呼んだ四人が集まった。
四人は用意されていた椅子につき、出されたお菓子を食べながら話し合っていた。
「こんなに暇人集めて何するのかしら」霊夢が言う。
「咲夜が言うにはレミリアからの命令らしいからまたくだらないことなんじゃないか?」
と、お菓子をほおばりながら魔理沙が呟く。
「ここのお菓子すッごくおいしい!!ルーミアも食べてみなよ!」
「そーなのかー」
と、妖精と妖怪は楽しそうにはしゃいでいる。
それからしばらくすると、紅魔館の面々が奥にある赤い扉から出てきた。
先頭のレミリア以外は不満そうな顔をしている。
「私も参加しないといけないんですか?掃除しないといけないのですが……」
「だからあなたに聞いたんじゃないの。後、掃除さっきやってたでしょ?」
相変わらず調子の変わらない声だ。
「私……本読んでた……」
「本読んでるって事は暇って事」
「………え」
不健康そうな肌の色をしている魔法使いパチュリーは反論しようとしたがやめた。
「あの、私今日は門を守らなくてもいいんでしょうか?」
「どうせ、襲撃してくる輩なんていないし」
長い赤髪をたなびかせながら紅魔館の門番紅美鈴は肩を落とした。
このやり取りを見て魔理沙は霊夢に耳打ちする。
「すごいな。さすがは吸血鬼って事か?」
すると霊夢は興味なさそうに言う。
「さあね。ま、あいつを吸血鬼は怒らせると恐いらしいからその通りかもね」
レミリア一同が机の前に並んだ。
レミリア以外の者は腕を後ろで組みながら姿勢を正している。
異様な光景の様だがこれが紅魔館では普通らしい。
レミリアが少し前に出てきて口を開いた。
「えー、まずは私の急な呼び出しを受けてくれてありがとう。さて、唐突だが私は今非常に暇である」
そして椅子に腰掛けている四人を見て満足そうな顔をしてまた口を開いた。
「なので、諸君らには私の暇つぶしの相手になってもらう」
まあ、そんなところだわな。と魔理沙が小さな声で呟く。
魔理沙の正面に座っていたチルノが訊ねた。
「それで?何やるの?」
レミリアはチルノを指で指し言った。
「そう、その質問を待っていたのだよチルノ君。私がやりたいことはこの紅魔館でかくれんぼだ」
一人劇を演じているかのようにレミリアはそのあたりをうろちょろし手振りをつけたりして言った。
「だが、普通のかくれんぼをやってもつまらない。私達の様に此処に者は隠れれそうな場所など大体わかるしな。
そこで諸君らにはある物を用意してくれと頼んだんだが………」
四人と後ろの三人は自分のポケットの中から三枚の紙切れを出した。
それぞれ違う色をしていてどれも色鮮やかだ。
「スペルカード。だろ?持って来たぜ。だけどこれとかくれんぼを混ぜてもただの弾幕ごっこになるだけだぜ?」
魔理沙が自分のスペルカードをはたきながら言った。
「私がそんなつまらないことするわけ無いじゃない。今からルール説明をするから少し黙ってなさい」
そう言いレミリアは全員の手からスペルカードを引ったくり自分の手に収めた。
そして、指を鳴らした。
すると、向こうからメイド達がやってきて七つの箱を机の上に置いた。
「ルールは普通のかくれんぼと大体同じよ。少し違うところは今私の手の中にあるこの諸君らのスペルカード
をシャッフルしそれを三枚ずつ適当にこの箱の中に入れて諸君らがそれぞれを選びその箱を隠れたところで
あけるの。その中に入っていた自分のスペルカード、又は他の人のスペルカードはどんな風に使ってもいいわ。
そのスペルカードの所有者とカードを交換するもよし最後まで自分で持っていて相手の技を減らすもよし。
一人が持てるカードに制限はないわ。そしてもう一つは鬼は…まあ私なんだけど見つけた後その人に攻撃を加
えるかタッチをしないといけない。そして鬼にその行為をされた者は鬼になって他の参加者をまた探すの。
要するに鬼が増えるかくれんぼね。……さて何か質問はあるかしら?」
一通りルールを言い終えたレミリアは満足そうな顔をし質問する。
説明長いな…魔理沙がぽつりと言った。
するとレミリアのすぐそばにいる霊夢が訊ねた。
「確かに面白そうだわ。でもね。私はただで参加する気は無いわ。何か優勝賞品みたいなのが出たら考えるけど」
レミリアは顎に拳を当て少し考える。
「分かったわ。優勝したらその人の望みどおりの品を与えるわ。あ、無理な物は無理って言うわよ」
その言葉を聞いて一同の沈んでいた顔がたちまち変化する。
「分かってるじゃない」霊夢が微笑みを浮かべて言う。
レミリアも微笑みを返す。
「他に何か意見がある人は?無いんだったら全員この遊びに参加するってことにするわよ」
皆が辺りを見回したするとさっきからその姿勢でピクリとも動いていなかった美鈴が右手を上げた。
「何?美鈴?」
と、レミリアが訊ねた。
すると美鈴は少し困ったような顔をして言った。
「その……思ったのですがそれってもう鬼ごっこの気が……」
様々な本が積み重なっている。
詠唱呪文をたっぷり詰め込んだ本。
料理が上手になる本。
吸血鬼が弱い物。などあげたらきりが無い。
魔理沙は周りに散らばっている本に目をやり次に天井に顔を向けた。
暗くて天井は全く見えない。
図書館においてある本棚は大きすぎて座っていては一番上が見えないほどだ。
この中から目的の本だけを探せるパチリーは正直すごいと魔理沙は思った。
パチュリーは一日の大半をこの図書館で暮らしているらしい。
私がこんな所にいたら暇すぎて一時間も持たないな。ま、本がこんなにあるからそれはそれでいいんだけど。
さっきレミリアに言われたとおりに箱を開けたらその中には私のスペルカード一枚と咲夜のスペルカードが
二枚入っていた。
咲夜のカードはどういうものか分からなかったが私のカードはミルキーウェイだった。
自分で言うのもなんだけどあまり決め手にはならないカードだ。
鬼ごっこ開始から5分くらいは経過した。結局美鈴の一言で鬼ごっこに変更した。
そろそろレミリアも動き始めているかもしれない。
途中までパチュリーと一緒に走っていたのだがこの図書館に入ってすぐにはぐれた。
彼女が誰のカードを持っていたかは知らないがまあ、そんなことはどうでもいい。
見つけた奴から潰してやるぜ。
私はチルノの後ろを走っていた。
正直言うと馬鹿なこの妖精に付いて行くのには戸惑ったが技が全く無い私にとって利用する価値はかなりあった。
「そろそろ、開ける?ルーミア」とチルノが私のほうに顔を向け訊ねた。
とりあえず私も箱を開けようと思っていたので、「おー」と適当なリアクションを取っておく。
そのようなやり取りをしつつ私達は紅魔館の一階にある小さな部屋にはいった。
部屋の角においてあったベットの上に座る。
二人で同時に自分達のひざの上にある箱を開けた。
私のはこの中に入っていたカードはチルノのが二枚、私のが一枚だった。
一方チルノのほうを覗くとなんとチルノのカードが一枚に私のカードが二枚だった。
なんという幸運だろうか。
チルノも私の手の中にあるカードを見た。
するとチルノの顔がたちまち輝きに満ちた。
「すごい!!私達二人ですぐに揃っちゃったじゃん!じゃあこれとこれ交換しよ!」とはしゃぎながら私の
カードを押し付け私の持っていたチルノのカードをぶんどった。
これで三枚揃った。まさかこんなに早く揃うなんて。
一枚では心細かったがこれならまだカードを十分にそろえていない奴なら倒せるかもしれない。無理に戦う必要は無いのだが。
さてこれでもうこの小さな妖精も用済みだ。
私は立ち上がりチルノに言った。
「レミリアはもう動いてるかも。私達ももたもたしない方がいいと思うよー」
チルノは立ち上がってその言葉に賛成した。
「よし!!じゃあ早くここから出てみつからなさそうなところ探さないとね!」
なぜこんなにも元気がいいのだろうか。しかし、そんなことはどうでもいい。
私の前を歩き始めたチルノに私はぴったりと付いていく。
チルノがドアノブに手をかける。私は笑みをこぼしながら右手を振り上げる。
チルノの後頭部を気絶する程度で殴った。
「……っう…」小さなうめき声を上げて少女は私の目の前で倒れた。
馬鹿な妖精。私と手を組もうなんて思う時点であなたの負けよ。
私は小さな体を抱きかかえ部屋にあったタンスの中に入れタンスの扉に箒を引っ掛けた。
彼女は目を覚ましたとき外に出ようと必死に扉を叩くだろう。
馬鹿のことだから大きな音を出して助けを求める。
それをレミリアに気づかれてそれでチルノは脱落だ。
「ありがとね。貴女みたいな人がカードを持っていなかったら私に勝ち目は無かった。じゃあね。馬鹿な妖精さん」
私はドアノブに手を伸ばした。金属製でチルノがさっき触ったのでひんやりしていた。
次にはめれそうなのと言ったら美鈴かしらね。
私は廊下へと駆け出した。
長いテーブルの上に綺麗な装飾が施された皿がいくつも置いてあった。
鏡のように綺麗で顔が映りそうだ。
私の今いる食堂はちょうど夕飯の準備の途中のようだった。
私が持っているカードは咲夜が一枚パチュリーが一枚そして魔理沙のが一枚だった。
見事にばらばらだったので思わずため息をついた。
開始からずっとぶらぶらしているが誰にも会わない。
この館が広すぎるのだろうか?やはり皆隠れているのだろうか?
カードが無い私はとりあえず他人との接触を試みた。
誰か私のカードを持っている人に会わないかと思いつつ食堂を後にしようとした。
すると長テーブル挟んで向こう側に何かが光った。
その何かは高速で私のほうに飛んできた。
私は歯を食いしばってそれをぎりぎりのところで交わした。
ちょうど目の前にあったドアに刺さっていたのは丹念に手入れされているナイフだった。
ひざを曲げて長テーブルを盾にするように私は隠れた。
(咲夜か……。それにしてもいきなり攻撃するなんて。話し合おうとしても意味無いかしら?)
しかしじっとしていてはそれこそ意味が無い。
私はその姿勢のまま言った。
「そこにいるのは咲夜よね?私はあなたのカードを持っているわ。出来れば取引したいんだけど」
しばらくするとつかつかと靴の音が近づいてきた。
「姿を見せて霊夢。私もあなたのカードを持ってる」
私は恐る恐る長テーブルの下から顔を出した。
そこには腕を組んでどこか威厳のある立ち方で咲夜が立っていた。
「さ、早く渡しなさい」と手を差し伸べてきた。
「あら、貴女こそ確認させてよ。本当に私のカード持っているのか」私も手を伸ばした。
すると彼女は笑みを浮かべながら「分かったわ」と長テーブルの上にカードを置いた。
紛れもない。私のカードだ。しかし余りにも無防備だ。
私がカードを渡さずに取って逃げるなどと考えていないのだろうか?
それとも仮に逃げたとしてもすぐに追いついてカードを全部奪えるという余裕の表れなのだろうか?
いや、もっと別の何かかもしれない……
「どうしたの?早く渡しなさいよ」と咲夜が言う。
私は動揺しながらも咲夜のカードを長テーブルに置いた。置いてしまった。
すると咲夜はテーブルに置いてある二枚のカードを先ほどのナイフのような速さで取った。
そしてそのまま咲夜の方にあるドアに駆け出して天狗烏のような速さで消えていった。
「しまっ……」私が咲夜を追った時にはもう彼女は遥か彼方だった。
まさに一杯食わされた。
だが、起きてしまった事は仕方が無い。
優勝賞品のためにもつぎはこんなヘマをしないようにしよう。と意気込んでみたがやはり悔しかった。
私も咲夜を追って開いたままのドアに向かって駆け出した。
食堂に轟音が鳴り響く。驚いて後ろを向いた。
長テーブルが吹き飛び上に乗っていた皿は巣立って間もない小鳥のように宙を舞う。
次に目に入ってきたのは大きな翼を持った小さな少女。
気づいたら私は食堂を飛び出していた。
お遊びだと分かっているのになぜか恐怖がこみ上げてくる。
彼女に捕まりたくないその一身で私は走り続けた。
レミリアは顔に満面の笑みを浮かべて言った。
「れーむみーっけ」
ちょうど正午になった合図だ。
咲夜はいつものようにどこまでも続いてそうな廊下を掃除していた。
箒を掃く音しか聞こえない。
「……ふう」埃を廊下の隅に掃き、ようやく一息つく。
いつもの事だがこれだけの距離を掃除するということはなかなか達成感があった。
すると、廊下の向こうから人影がこちらに向かってくるのが見えた。
薄紫の髪。小さな体。これだけ見れば誰もが普通の少女だと思うだろう。
しかし背中から生えた蝙蝠のような翼が異形の者と物語っている。
さらに、窓の装飾が日光を浴びて黒い十字の影ができ、それが彼女の顔に纏わり付いている様に見えよけいに不気味に見える。
少女は単調なリズムで言った。
「咲夜、暇」
咲夜はため息をつき、埃をちりとりで集めながら言った。
「だったら、掃除手伝ってください。レミリアお嬢様」
するとレミリアは腕を組みながら言った。
「そんなことする暇あったら他のことしてるわよ」
いつもこんな調子だ。
暇になると私のところに来て「暇」と言って私の時間を潰す。
まあ、それが苦になることは滅多に無いので大抵は話に付き合う。
「では、何するのですか?私もそんなに面白い遊び知りませんし……」
レミリアは、うーんと言いつつ上を向き何かを考える。
すると玩具を買ってもらった子供のように、ぱっと顔を明るくして叫ぶ。
「面白いこと思いついたわ。咲夜、暇そうにしてる人を集めなさい」
大広間に咲夜が呼んだ四人が集まった。
四人は用意されていた椅子につき、出されたお菓子を食べながら話し合っていた。
「こんなに暇人集めて何するのかしら」霊夢が言う。
「咲夜が言うにはレミリアからの命令らしいからまたくだらないことなんじゃないか?」
と、お菓子をほおばりながら魔理沙が呟く。
「ここのお菓子すッごくおいしい!!ルーミアも食べてみなよ!」
「そーなのかー」
と、妖精と妖怪は楽しそうにはしゃいでいる。
それからしばらくすると、紅魔館の面々が奥にある赤い扉から出てきた。
先頭のレミリア以外は不満そうな顔をしている。
「私も参加しないといけないんですか?掃除しないといけないのですが……」
「だからあなたに聞いたんじゃないの。後、掃除さっきやってたでしょ?」
相変わらず調子の変わらない声だ。
「私……本読んでた……」
「本読んでるって事は暇って事」
「………え」
不健康そうな肌の色をしている魔法使いパチュリーは反論しようとしたがやめた。
「あの、私今日は門を守らなくてもいいんでしょうか?」
「どうせ、襲撃してくる輩なんていないし」
長い赤髪をたなびかせながら紅魔館の門番紅美鈴は肩を落とした。
このやり取りを見て魔理沙は霊夢に耳打ちする。
「すごいな。さすがは吸血鬼って事か?」
すると霊夢は興味なさそうに言う。
「さあね。ま、あいつを吸血鬼は怒らせると恐いらしいからその通りかもね」
レミリア一同が机の前に並んだ。
レミリア以外の者は腕を後ろで組みながら姿勢を正している。
異様な光景の様だがこれが紅魔館では普通らしい。
レミリアが少し前に出てきて口を開いた。
「えー、まずは私の急な呼び出しを受けてくれてありがとう。さて、唐突だが私は今非常に暇である」
そして椅子に腰掛けている四人を見て満足そうな顔をしてまた口を開いた。
「なので、諸君らには私の暇つぶしの相手になってもらう」
まあ、そんなところだわな。と魔理沙が小さな声で呟く。
魔理沙の正面に座っていたチルノが訊ねた。
「それで?何やるの?」
レミリアはチルノを指で指し言った。
「そう、その質問を待っていたのだよチルノ君。私がやりたいことはこの紅魔館でかくれんぼだ」
一人劇を演じているかのようにレミリアはそのあたりをうろちょろし手振りをつけたりして言った。
「だが、普通のかくれんぼをやってもつまらない。私達の様に此処に者は隠れれそうな場所など大体わかるしな。
そこで諸君らにはある物を用意してくれと頼んだんだが………」
四人と後ろの三人は自分のポケットの中から三枚の紙切れを出した。
それぞれ違う色をしていてどれも色鮮やかだ。
「スペルカード。だろ?持って来たぜ。だけどこれとかくれんぼを混ぜてもただの弾幕ごっこになるだけだぜ?」
魔理沙が自分のスペルカードをはたきながら言った。
「私がそんなつまらないことするわけ無いじゃない。今からルール説明をするから少し黙ってなさい」
そう言いレミリアは全員の手からスペルカードを引ったくり自分の手に収めた。
そして、指を鳴らした。
すると、向こうからメイド達がやってきて七つの箱を机の上に置いた。
「ルールは普通のかくれんぼと大体同じよ。少し違うところは今私の手の中にあるこの諸君らのスペルカード
をシャッフルしそれを三枚ずつ適当にこの箱の中に入れて諸君らがそれぞれを選びその箱を隠れたところで
あけるの。その中に入っていた自分のスペルカード、又は他の人のスペルカードはどんな風に使ってもいいわ。
そのスペルカードの所有者とカードを交換するもよし最後まで自分で持っていて相手の技を減らすもよし。
一人が持てるカードに制限はないわ。そしてもう一つは鬼は…まあ私なんだけど見つけた後その人に攻撃を加
えるかタッチをしないといけない。そして鬼にその行為をされた者は鬼になって他の参加者をまた探すの。
要するに鬼が増えるかくれんぼね。……さて何か質問はあるかしら?」
一通りルールを言い終えたレミリアは満足そうな顔をし質問する。
説明長いな…魔理沙がぽつりと言った。
するとレミリアのすぐそばにいる霊夢が訊ねた。
「確かに面白そうだわ。でもね。私はただで参加する気は無いわ。何か優勝賞品みたいなのが出たら考えるけど」
レミリアは顎に拳を当て少し考える。
「分かったわ。優勝したらその人の望みどおりの品を与えるわ。あ、無理な物は無理って言うわよ」
その言葉を聞いて一同の沈んでいた顔がたちまち変化する。
「分かってるじゃない」霊夢が微笑みを浮かべて言う。
レミリアも微笑みを返す。
「他に何か意見がある人は?無いんだったら全員この遊びに参加するってことにするわよ」
皆が辺りを見回したするとさっきからその姿勢でピクリとも動いていなかった美鈴が右手を上げた。
「何?美鈴?」
と、レミリアが訊ねた。
すると美鈴は少し困ったような顔をして言った。
「その……思ったのですがそれってもう鬼ごっこの気が……」
様々な本が積み重なっている。
詠唱呪文をたっぷり詰め込んだ本。
料理が上手になる本。
吸血鬼が弱い物。などあげたらきりが無い。
魔理沙は周りに散らばっている本に目をやり次に天井に顔を向けた。
暗くて天井は全く見えない。
図書館においてある本棚は大きすぎて座っていては一番上が見えないほどだ。
この中から目的の本だけを探せるパチリーは正直すごいと魔理沙は思った。
パチュリーは一日の大半をこの図書館で暮らしているらしい。
私がこんな所にいたら暇すぎて一時間も持たないな。ま、本がこんなにあるからそれはそれでいいんだけど。
さっきレミリアに言われたとおりに箱を開けたらその中には私のスペルカード一枚と咲夜のスペルカードが
二枚入っていた。
咲夜のカードはどういうものか分からなかったが私のカードはミルキーウェイだった。
自分で言うのもなんだけどあまり決め手にはならないカードだ。
鬼ごっこ開始から5分くらいは経過した。結局美鈴の一言で鬼ごっこに変更した。
そろそろレミリアも動き始めているかもしれない。
途中までパチュリーと一緒に走っていたのだがこの図書館に入ってすぐにはぐれた。
彼女が誰のカードを持っていたかは知らないがまあ、そんなことはどうでもいい。
見つけた奴から潰してやるぜ。
私はチルノの後ろを走っていた。
正直言うと馬鹿なこの妖精に付いて行くのには戸惑ったが技が全く無い私にとって利用する価値はかなりあった。
「そろそろ、開ける?ルーミア」とチルノが私のほうに顔を向け訊ねた。
とりあえず私も箱を開けようと思っていたので、「おー」と適当なリアクションを取っておく。
そのようなやり取りをしつつ私達は紅魔館の一階にある小さな部屋にはいった。
部屋の角においてあったベットの上に座る。
二人で同時に自分達のひざの上にある箱を開けた。
私のはこの中に入っていたカードはチルノのが二枚、私のが一枚だった。
一方チルノのほうを覗くとなんとチルノのカードが一枚に私のカードが二枚だった。
なんという幸運だろうか。
チルノも私の手の中にあるカードを見た。
するとチルノの顔がたちまち輝きに満ちた。
「すごい!!私達二人ですぐに揃っちゃったじゃん!じゃあこれとこれ交換しよ!」とはしゃぎながら私の
カードを押し付け私の持っていたチルノのカードをぶんどった。
これで三枚揃った。まさかこんなに早く揃うなんて。
一枚では心細かったがこれならまだカードを十分にそろえていない奴なら倒せるかもしれない。無理に戦う必要は無いのだが。
さてこれでもうこの小さな妖精も用済みだ。
私は立ち上がりチルノに言った。
「レミリアはもう動いてるかも。私達ももたもたしない方がいいと思うよー」
チルノは立ち上がってその言葉に賛成した。
「よし!!じゃあ早くここから出てみつからなさそうなところ探さないとね!」
なぜこんなにも元気がいいのだろうか。しかし、そんなことはどうでもいい。
私の前を歩き始めたチルノに私はぴったりと付いていく。
チルノがドアノブに手をかける。私は笑みをこぼしながら右手を振り上げる。
チルノの後頭部を気絶する程度で殴った。
「……っう…」小さなうめき声を上げて少女は私の目の前で倒れた。
馬鹿な妖精。私と手を組もうなんて思う時点であなたの負けよ。
私は小さな体を抱きかかえ部屋にあったタンスの中に入れタンスの扉に箒を引っ掛けた。
彼女は目を覚ましたとき外に出ようと必死に扉を叩くだろう。
馬鹿のことだから大きな音を出して助けを求める。
それをレミリアに気づかれてそれでチルノは脱落だ。
「ありがとね。貴女みたいな人がカードを持っていなかったら私に勝ち目は無かった。じゃあね。馬鹿な妖精さん」
私はドアノブに手を伸ばした。金属製でチルノがさっき触ったのでひんやりしていた。
次にはめれそうなのと言ったら美鈴かしらね。
私は廊下へと駆け出した。
長いテーブルの上に綺麗な装飾が施された皿がいくつも置いてあった。
鏡のように綺麗で顔が映りそうだ。
私の今いる食堂はちょうど夕飯の準備の途中のようだった。
私が持っているカードは咲夜が一枚パチュリーが一枚そして魔理沙のが一枚だった。
見事にばらばらだったので思わずため息をついた。
開始からずっとぶらぶらしているが誰にも会わない。
この館が広すぎるのだろうか?やはり皆隠れているのだろうか?
カードが無い私はとりあえず他人との接触を試みた。
誰か私のカードを持っている人に会わないかと思いつつ食堂を後にしようとした。
すると長テーブル挟んで向こう側に何かが光った。
その何かは高速で私のほうに飛んできた。
私は歯を食いしばってそれをぎりぎりのところで交わした。
ちょうど目の前にあったドアに刺さっていたのは丹念に手入れされているナイフだった。
ひざを曲げて長テーブルを盾にするように私は隠れた。
(咲夜か……。それにしてもいきなり攻撃するなんて。話し合おうとしても意味無いかしら?)
しかしじっとしていてはそれこそ意味が無い。
私はその姿勢のまま言った。
「そこにいるのは咲夜よね?私はあなたのカードを持っているわ。出来れば取引したいんだけど」
しばらくするとつかつかと靴の音が近づいてきた。
「姿を見せて霊夢。私もあなたのカードを持ってる」
私は恐る恐る長テーブルの下から顔を出した。
そこには腕を組んでどこか威厳のある立ち方で咲夜が立っていた。
「さ、早く渡しなさい」と手を差し伸べてきた。
「あら、貴女こそ確認させてよ。本当に私のカード持っているのか」私も手を伸ばした。
すると彼女は笑みを浮かべながら「分かったわ」と長テーブルの上にカードを置いた。
紛れもない。私のカードだ。しかし余りにも無防備だ。
私がカードを渡さずに取って逃げるなどと考えていないのだろうか?
それとも仮に逃げたとしてもすぐに追いついてカードを全部奪えるという余裕の表れなのだろうか?
いや、もっと別の何かかもしれない……
「どうしたの?早く渡しなさいよ」と咲夜が言う。
私は動揺しながらも咲夜のカードを長テーブルに置いた。置いてしまった。
すると咲夜はテーブルに置いてある二枚のカードを先ほどのナイフのような速さで取った。
そしてそのまま咲夜の方にあるドアに駆け出して天狗烏のような速さで消えていった。
「しまっ……」私が咲夜を追った時にはもう彼女は遥か彼方だった。
まさに一杯食わされた。
だが、起きてしまった事は仕方が無い。
優勝賞品のためにもつぎはこんなヘマをしないようにしよう。と意気込んでみたがやはり悔しかった。
私も咲夜を追って開いたままのドアに向かって駆け出した。
食堂に轟音が鳴り響く。驚いて後ろを向いた。
長テーブルが吹き飛び上に乗っていた皿は巣立って間もない小鳥のように宙を舞う。
次に目に入ってきたのは大きな翼を持った小さな少女。
気づいたら私は食堂を飛び出していた。
お遊びだと分かっているのになぜか恐怖がこみ上げてくる。
彼女に捕まりたくないその一身で私は走り続けた。
レミリアは顔に満面の笑みを浮かべて言った。
「れーむみーっけ」
あと誤字が…「パチリー」
続きに期待ですね。