特に誰も異変を起こさないので、私は呑気な巫女生活を堪能している。
ここ数日は、一日の半分は掃除をして、半分はお茶を飲んですごしていた。
それが巫女としてやるべき仕事なのよ。決して修行をサボっているわけではない。
今日もいつものように境内の掃除をし、そろそろお茶にしようかな?と思っていると、そいつがやってきた。
巫女の大事な仕事を邪魔する気なら、夢想転生を覚悟しておいてもらいたい。
「霊夢さーん、ちょっといいですかー?」
「あら、メイドAじゃない」
「その節はどもです」
神社に来たのは妖精だった。
かつて、一緒に月にいった紅魔館の妖精メイド。
このメイドの名前を知らないから、単にメイドAって呼んでる。
さて、賽銭など入れるはずの無い妖精メイドが、神社に何の用があるのかしら?
少なくとも私には用はない。
くだらない用件だったら、陰陽玉を投げつけてやる。
もっとも、咲夜の指示でもなければ紅魔館のメイドがうちにくることなんてないけどね。
「で、何の用なの?」
「はい、明日メイド長主催のお茶会をやるので来てください」
咲夜主催の?
紅魔館でパーティーをすることは珍しくないけど、それはレミリアが主催するもの。
咲夜主催というのは十分に珍しい。
それとも、咲夜が紅魔館を乗っ取った?
「あらそう。いいわよ」
「それではお待ちしてまっす」
「はいはい、阿求に気をつけて帰ってね」
「はーい」
やれやれ、帰っていったわね。今度こそゆっくりお茶にしましょう。
と、部屋に戻ろうとしたら、また何かが飛んできた。
でも、今度は邪魔される心配はなさそうね。
二人分淹れてきましょうか。
「よぉ、霊夢。暇そうだな」
「ん?暇じゃないわよ。急がなきゃいけないことがないだけ」
といいながら、湯飲みを一つ渡す。
「それを暇っていうんじゃないのか?」
「違う。やることはあるけど、後回しにできるだけ」
なんか暇って認めたら負けな気がする。
「ん?お茶変えたのか?」
一口飲んだ魔理沙が言う。
「さっき紫が持ってきてくれたのよ」
それにしても、このお茶おいしいわ。
なんていったかしら?いざよいちゃ、だっけ?
なんか変な水筒に入ってたけど。
「そうそう、あんたのところにもきた?」
「メイドか?だったらそこで会ったぜ」
「そう。どういうつもりかしらね」
「ん?いつものパーティーだろ?」
「でも、レミリアじゃなくて、咲夜よ」
「あぁ、そういえばそういってたな。まぁ、主人抜きで気楽なおしゃべりがしたいんじゃないのか?」
「そうかな?主人抜きでもよく来てる気がするけど」
ま、レミリアが何か企んでいるのなら、それが判ってから退治してやればいいわ。
魔理沙はお茶を一杯飲み終わると、明日迎えにくるぜ、と言って帰っていった。
魔理沙が帰った後、お茶のおかわりを淹れようと部屋に戻ったら、卓袱台に出してあったポテチが減っていた。
あとで藍から取り立てることにしましょう。きっと、袋でくれるはずだから。
大入りの奴を。
翌日、約束どおり魔理沙が迎えにきて、二人で紅魔館に向かった。
紅魔館の門前にはいつもの門番がちゃんと起きていた。
寝ていてくれたほうが楽なんだけど。
でも、今日はお呼ばれだから弾幕はいらないでしょう。
「霊夢さん、魔理沙さん、咲夜さんがお待ちかねですよ」
「ねぇ、美鈴。今日は私達だけ?」
「いえ、あと一人来られてます。咲夜さんと一緒にお待ちですよ」
ふーん、4人でお茶会か。
派手好きの紅魔館にしては随分こじんまりとしたお茶会ね。
まぁ、派手好きなのはレミリアだけどね。
美鈴に庭に案内されると、テーブルには咲夜ともう一人が歓談していた。
「早苗じゃない」
「あ、霊夢さん、魔理沙さん、こんにちは」
「よっ、これだけか?」
魔理沙がホスト役の咲夜に聞く。
「はい、お三方を招待させていただいただけですよ」
「ふーん、何か企んでる?」
「いえいえ、たまにはこういうのもいいかと。
それに、私達はいつも妖怪の側で生活しているので、人間らしくないところが多々あります。
なのでたまには人間だけでおしゃべりして、人間らしさを堪能するのも必要だと思うのですよ」
咲夜の言い分も一理ある、かな。
私にしても魔理沙にしてもお互いに普段から接してはいるが、周りは妖怪だらけ。
早苗にいたっては、人間が他に居ない妖怪の山に住んでいる。
咲夜なんかは人間らしさのかけらも感じられない時すらある。
そもそも、咲夜って本当に人間なのかしら?
もう、妖怪化してるんじゃないの?
「私は賛成です!やっぱり人間は人間同士仲良くするのが一番です!」
早苗は乗り気。
「いいんじゃないか。私はかまわないぜ」
魔理沙は面白ければ何でもいいのでしょう。
「まぁ、変な事企んでないなら、いいわよ」
私も反対する理由はないか。
雑談を交わしていると、メイドが庭に出てきた。
この子も月に行った子ね、私がメイドCと呼んでる子。
そういえば、以前美鈴が言ってたけど、
月に連れて行ったメイド達は咲夜お気に入りの子達で、
なんでも力は大妖精クラスで仕事もきちんとこなす優れものらしい。
その割には兎にあっさり負けてた気がするけど。
で、そのメイドCはワゴンを押してきた。
咲夜お手製のお菓子でも乗っているのでしょう。
咲夜の料理は変わったものが出てくることもあるけど、大抵は手が込んでいておいしい。
「どうぞ、召し上がれ」
咲夜はメイドCの持つワゴンから洋菓子を載せた皿を配膳した。
なにかしら?器にフルーツやら何やらが入れられているけど。
「あら、おいしそうなお菓子ね」
「スカーレットダークチェリーの冷製ココです」
「凄い!おしゃれスイーツじゃないですか!」
外の世界ではこういうのが人気なのかしら。
洋風のお菓子もそれはそれで楽しみだけど、和菓子のほうがお茶に合うから好き。
今飲んでいるのは紅茶だけどね。
「うまそうだぜ」
というと、魔理沙は4皿に乗っているチェリーをひょいっ、ひょいっとつまんでいくと、全て口に入れた。
ほんと意地汚い奴。
「あっ、魔理沙さんずるい!」
あらあら早苗が本気で怒っているわ。
今にもあれ、何て言ったっけ?変な果物。
アレを投げつけそうね。
「はいはい、大丈夫ですよ。まだありますから」
って、咲夜、もう乗ってるじゃない。魔理沙の皿以外には。
それにしても便利な能力だわ。
「ところでコレできますか?」
というと、早苗がなにやら口をもごもごしている。
「はい!」
早苗が舌を突き出すと、舌の上には結ばれたチェリーの枝が乗っていた。
「ふふ、舌でチェリーの枝を結ぶ、高等技です。外の世界ではコレが出来ると尊敬されるのですよ!
さぁ、できますか?」
早苗、私達が外の世界を知らないと思って、適当な事言ってない?
「できないぜ」
魔理沙はチェリーの枝を口に放り込んでもごもごしている。
こんなことでも必死に対抗しようとしているが、なかなか出来ずにもどかしそうにしている。
魔理沙かわいい。
「ふふ、私はソレできますよ」
咲夜の舌の上にきれいに蝶々結びされた枝が乗せられていた。
このメイド、やる。
・・・・・・のかしら?
「わあ、咲夜さんお上手ですね」
いやいやいや、早苗さん、そこは感心するところじゃないと思いますわ。
きっと突っ込むところよ。
咲夜よ?本当に舌で結んだのかどうかわかったものじゃない。
まぁ、時間止めて手で結んだにしても、蝶々結びは十分すぎるほど器用ね。
というより、出来るものなの?
「賑やかね」
「あら、お嬢様おはようございます」
我らがカリスマ!お嬢様の登場。
ところでカリスマってどういう意味なんだろう?
今度慧音にでも聞いてみようかしら。
「咲夜、おなかすいたわ」
「お昼食なら用意してありますよ。そこらへんのメイドに言いつけてくださればすぐにだせます」
「これがいいわ」
と言うと、レミリアは私のほうを見た。生クリームがたっぷり入ったシュークリームを見るような目で。
なんか寒気がするわ。
レミリアが一歩間合いを詰めた。
こっちくんな!
レミリアが突撃しようとする瞬間、咄嗟に結界を張る。
これで大丈夫。
これでも突っ込んでくるなら、どのスペルカードをプレゼントしてやろうかしら?
などと考えながら回りをみると、早苗も結界を張っている。
それに咲夜、あんたも結界を張るのね。
あと一人、魔理沙は?というと、あわてて防御魔法の詠唱をしている。
でも、それ、間に合わない。
ご愁傷様。
魔理沙が遅いとみたレミリアが、魔理沙に突撃し、肩に噛み付いた。
魔理沙の顔が青くなっていく。
それはわかるけど、なんで早苗の顔が赤くなっていくのかしら?
「ああ、気持ち悪いぜ」
そりゃ血を吸われれば気持ち悪いわね。
「やっぱり魔理沙のはいまいちね。霊夢のがおいしいわ」
おいしいと言われても困るわ。
「あら、それではお口直しにケーキでもいかがですか?」
血を吸い、味がいまいちと言い、メイドがお口直しをと言う。
十分に失礼な連中ね。
魔理沙、怒ってもいいわよ。
「そうね、いただくわ」
いつのまにか増えていた一皿が、レミリアに手渡された。
「吸血鬼が血を吸うの初めてみました!」
早苗が異様に食いついている。
初めて吸血行為を見て好奇心が先行するのは、人間としてどうなのかしら?
巫女としては興味持つのも仕方ないかもしれないけど。
「ここでは日常よ」
「咲夜さんもよく吸われるのですか?」
「お嬢様方には必要なことなので」
なんでもないことのように、咲夜が答える。
でも、その割にはさっきガードしてたみたいだけど?
「でも、気付いたのですが吸血すると同時に魔力が回復していくのですね」
「まあね、吸血行為そのものが吸血鬼の存在意義だからね」
答えたのはレミリア。早苗が話を続ける。よくしゃべる子ね。
「あぁ、あれですね。傘のお化けが驚いてくれないとひもじいって言っていたのと同じですね」
さでずむ?の子ね。
「まぁ、そんなところ」
「でも、あれですよね」
といったところで、巫女の勘が発動。
早苗、余計な事いうわね。
「弾幕中に吸血すれば、相手のHPが減って自分のHPを回復できますよね。
吸血行為の入ったスペルカード作れば最強じゃないですか!」
ああ、言っちゃった。折角気付いてなかったのに。
レミリアの表情がなんかぱぁーっと輝いてるじゃない。
喜々として羽パタパタさせてるわよ。
「それ、いいじゃない!早速作ってくる!」
と言い残してレミリアは部屋に帰っていった。
咲夜に止めてきてと言っても、止めるわけないわよね。
レミリアの嬉しそうな顔みて満足気なあんたが。
「早苗、あんたって子は・・・・・・」
「え?私何か変なこといいましたか?」
「そんなに血を吸われたいの?」
「あ、あぁ、そうですね、すいません」
この子は天然なのか、子供なのか。
思いついたことをそのまましゃべっちゃうところがあるのね。
「まぁ、いいじゃないか。アレぐらいガードすればいいんだぜ」
ん?唯一ガードが間に合わなくて吸血されていたとろい子は、誰だったかしら?
そう、霧雨魔理沙よね。
そして、今のこの発言も霧雨魔理沙で合ってるわよね?
私は思いっきり突っ込んであげることにした。
「あんたがいうな!」
とまぁ、そんな感じでお茶会も楽しく過ごし、夕方には散会になった。
咲夜は次の予定が決まったら連絡するって言ってたし、呑気な日常の中にあっては、これも楽しみになりそうね。
そして、その日の夜。どこからか聞こえてきた。
「むきゅー」
ご愁傷様。
まあそういう設定部分は置いておいて、この何気ない日常感が良かった。
早苗さんが良い感じに天然で面白かったです。もっと長い話で見てみたい作品。
欲を言えば何かもう1イベント欲しかった。
まったり、ごちそうさまでした
食事と眷族化の吸血が違う、非処女非童貞はグールになる等
それはそうと口の中で結ぶの難しいんだよね…
パチュリー…南無三っ!
魔理沙…とろい子!(笑
しかし出が遅すぎて対戦ではつかえないので俺は深い悲しみに包まれた
なんとこの世界、ポテチが幻想入りしていたのか。
最後のパチュリーがwww