人が時代を創り、時代が人を創る。
この何年何代と続いている歴史の流れは、果たして何時終わりのときを迎えるのであろうか。
歴史とは、現在と過去の対話である。
そんなことを言ったのは誰であったか。
過去から学んだとしても、何も学ばなかったとしても、結局は何ら影響は無いのだ。
人間はひどく巧妙に出来ているからだ。その都度可能しうる限りの下方修正を加えてしまえば良い。
そして、何より、上手く行かなければ、破壊してしまえばいいのだから。
そんな中、霧雨魔理沙は学ぶことを選んだ。
部屋というのは主の性格を最も反映する場所と世間一般で言われるが、
彼女はそれが確かに現れていた。
とにかく本やら何やらが散乱していた。足の踏み場もないという表現が、見事に当て嵌まっていた。
仕方のないことだった。既に鬼籍に入っている彼女の母親も、細かいことを一切気にしない人間だったからだ。
何事も完璧主義の父親に少なからず反発を抱いていた魔理沙は、
一流の魔法使いとして名を馳せていた母親の愛情を入念に注がれて育った。
早くお母さんのようになりたい。この頃から、魔理沙の努力第一主義は芽生えていたのであった。
人が時代を創り、時代が人を創る。
人は魔法を創り、魔法は人を創るようになっては――ならない。
それくらいの倫理感くらい、わきまえている。
ところが、ある日魔理沙は思ったことがあった。
果たして、魔法によって寿命は伸ばせるかどうかということを。
狭いようで広い世界には、色々な住人がいる。
500年間生きている吸血鬼がいたり、既に死んでいる亡霊がいたり、蓬莱の人の形と呼ばれる不老不死の存在がいたり。
妖怪が多く暮らす幻想郷において、何年生きられるかわからない自分というのは、非常にちっぽけである。
だから時々思うのだ。
――こんな人間如きが愛されるなんて、所詮あいつらにとっては退屈しのぎに過ぎないって。
柄じゃない。そんなの私じゃない。魔理沙は思った。
だったらどうして自分から次々と友人を作ったりするんだ。
孤独を紛らすため?
霧雨魔理沙という人間がいたことを記憶させるため?
わからない。
いや、別にわからなくてもいいかもしれない。
そんな下らない思考をするのであれば、今を生きることが大切に決まっている。
あーあ、何でそっちの方向へ動いてしまうんだろう。
腕を頭の後ろで組みながら、魔理沙はまた考える。
ロッキング・チェアに座っているため、体重がかかると同時にそれは揺れ動いた。
そして、厄介なのは、こういった感情が生まれるときに理由がないことだ。
理由といえば、もしも人が何かを生成する場合にすら、何もかも理由がなかったとしたらどうなるか。
例えば、魔法使いが魔法を行使する際、何故魔法を操るのか。
そのことについて魔理沙は考えたことは一度もなかった。考えるだけ無駄だからだ。
自分は魔法使いの娘として産まれ、母親の背中をいつも追いかけていた。
幼少期から難読と呼ばれる魔導書を読み漁り、自作の魔法が出来れば逐一披露したものだ。
もしもあの偉大なる母を持っていなかったとしたら、霧雨魔理沙は魔法使いにはならなかっただろう。
それくらい、母親の力は絶大だった。
『あの男』は、最後の最後まで否定していたけれども。
「莫迦莫迦しい」
無意識のうちに、魔理沙は声に出していた。
眼前に広がる世界は、散乱した本やらマジックアイテムやら得体の知れないモノやら。
構造上、自然に揺れる性質を持つ椅子に座っているため、目を瞑っていても上下に揺れる感覚に襲われる。
「魔法使いの子は魔法使い。それは逃れられない宿命なのかもしれんな」
魔理沙はまた呟いた。黄金色の瞳が一段と輝いた。
人が時代を創り、時代が人を創る。
魔法使いが魔法使いを創り、魔法使いが魔法使いを創る。
全ては同じことだ。
だから、何も考える必要など、そもそもなかったのだ。
「そろそろ時間か」
無造作に置かれている置時計を見て、魔理沙は言った。
身支度をして、家主は玄関の扉を開けて外へと繰り出す。
魔法によって止まることの無い時計の秒針は、その間にもゆっくりと時代を創っていた。
この何年何代と続いている歴史の流れは、果たして何時終わりのときを迎えるのであろうか。
歴史とは、現在と過去の対話である。
そんなことを言ったのは誰であったか。
過去から学んだとしても、何も学ばなかったとしても、結局は何ら影響は無いのだ。
人間はひどく巧妙に出来ているからだ。その都度可能しうる限りの下方修正を加えてしまえば良い。
そして、何より、上手く行かなければ、破壊してしまえばいいのだから。
そんな中、霧雨魔理沙は学ぶことを選んだ。
部屋というのは主の性格を最も反映する場所と世間一般で言われるが、
彼女はそれが確かに現れていた。
とにかく本やら何やらが散乱していた。足の踏み場もないという表現が、見事に当て嵌まっていた。
仕方のないことだった。既に鬼籍に入っている彼女の母親も、細かいことを一切気にしない人間だったからだ。
何事も完璧主義の父親に少なからず反発を抱いていた魔理沙は、
一流の魔法使いとして名を馳せていた母親の愛情を入念に注がれて育った。
早くお母さんのようになりたい。この頃から、魔理沙の努力第一主義は芽生えていたのであった。
人が時代を創り、時代が人を創る。
人は魔法を創り、魔法は人を創るようになっては――ならない。
それくらいの倫理感くらい、わきまえている。
ところが、ある日魔理沙は思ったことがあった。
果たして、魔法によって寿命は伸ばせるかどうかということを。
狭いようで広い世界には、色々な住人がいる。
500年間生きている吸血鬼がいたり、既に死んでいる亡霊がいたり、蓬莱の人の形と呼ばれる不老不死の存在がいたり。
妖怪が多く暮らす幻想郷において、何年生きられるかわからない自分というのは、非常にちっぽけである。
だから時々思うのだ。
――こんな人間如きが愛されるなんて、所詮あいつらにとっては退屈しのぎに過ぎないって。
柄じゃない。そんなの私じゃない。魔理沙は思った。
だったらどうして自分から次々と友人を作ったりするんだ。
孤独を紛らすため?
霧雨魔理沙という人間がいたことを記憶させるため?
わからない。
いや、別にわからなくてもいいかもしれない。
そんな下らない思考をするのであれば、今を生きることが大切に決まっている。
あーあ、何でそっちの方向へ動いてしまうんだろう。
腕を頭の後ろで組みながら、魔理沙はまた考える。
ロッキング・チェアに座っているため、体重がかかると同時にそれは揺れ動いた。
そして、厄介なのは、こういった感情が生まれるときに理由がないことだ。
理由といえば、もしも人が何かを生成する場合にすら、何もかも理由がなかったとしたらどうなるか。
例えば、魔法使いが魔法を行使する際、何故魔法を操るのか。
そのことについて魔理沙は考えたことは一度もなかった。考えるだけ無駄だからだ。
自分は魔法使いの娘として産まれ、母親の背中をいつも追いかけていた。
幼少期から難読と呼ばれる魔導書を読み漁り、自作の魔法が出来れば逐一披露したものだ。
もしもあの偉大なる母を持っていなかったとしたら、霧雨魔理沙は魔法使いにはならなかっただろう。
それくらい、母親の力は絶大だった。
『あの男』は、最後の最後まで否定していたけれども。
「莫迦莫迦しい」
無意識のうちに、魔理沙は声に出していた。
眼前に広がる世界は、散乱した本やらマジックアイテムやら得体の知れないモノやら。
構造上、自然に揺れる性質を持つ椅子に座っているため、目を瞑っていても上下に揺れる感覚に襲われる。
「魔法使いの子は魔法使い。それは逃れられない宿命なのかもしれんな」
魔理沙はまた呟いた。黄金色の瞳が一段と輝いた。
人が時代を創り、時代が人を創る。
魔法使いが魔法使いを創り、魔法使いが魔法使いを創る。
全ては同じことだ。
だから、何も考える必要など、そもそもなかったのだ。
「そろそろ時間か」
無造作に置かれている置時計を見て、魔理沙は言った。
身支度をして、家主は玄関の扉を開けて外へと繰り出す。
魔法によって止まることの無い時計の秒針は、その間にもゆっくりと時代を創っていた。
鰓って表じゃ忌み語かもよ
まあ、自分もそっちの方は苦手なんですが。
そっちは意識していないと願いたいです。
もしくは、母親と父親の関係。