Coolier - 新生・東方創想話

七色の行方(10)

2009/09/06 20:25:36
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 数の暴力と例えればわかりやすい。八雲紫の弾幕結界は精密さと凶暴さを併せ持ったスペルだ。
 身を捻り、急激なゴーとストップを繰り返す。潜り抜けると、津波にも似た圧倒的な妖力弾の奔流が襲いかかってきた。
 
「―――よっと!」

 スペルカードは、大まかに分けて秩序と無秩序に分類される。
 一つは、規則性を持つ列を作り、標的へと正確に飛んでいくタイプ。
 もう一つは、下手な鉄砲数撃ちゃ当たる、ばら撒きタイプである。
 一見すれば同居しそうにない二つなのだが、こいつは互いをいがみ合わせたまま繰り出してくる。
 圧倒的な力を持っていなければ出来ない力技だ。


 ―――でもそれは『かわせない』には繋がらない―――!


「……あら、弾幕結界が抜けられちゃったわね。困った困った」
「その割には余裕ね。『計画通り』、そんな顔してるわ」
「ふふ」

 焦るどころか、紫の表情は笑顔一辺倒のままだ。開始時から変化一つすらない。
 その時点でこいつが『悪巧み』をしているのは明らかだった。だから、紫の次の言葉にも驚かない。

「じゃあ、準備運動は終わりにしましょうか?」

 そら見たことか。

「……嫌な予感って、なんでこうも当たるのかしら」
「その表情、言葉から察するに、わたしがやりたいことはわかっているようね」
「ええ、どこかのプライバシー侵害妖怪のせいで、勘だけは磨かれたのよ」
「出張った甲斐があったわ」

 まったく、ろくでもない奴に目をつけられたものだ。
 しかも目的が『退屈凌ぎ』に他ならないのだから、出来るものならこいつをズタズタにしたいところである。
 その唯一の手段が、今やっている弾幕ごっこしかないわけで。
 ……と、なると。
 勝てばいい。それだけだ。

「出不精が頑張ったのは評価に値するけど、哀れね。あんたは撃墜されて、マヨヒガで寝込むことになる」

 上海と蓬莱を左右に展開し、そのまま後方に飛んで距離を取ると、紫もほぼ同時に動いた。

「そうなったら貴女に看病してもらおうかしら? 永遠亭での経験が生きるわね」
「悪いけど、断固拒否の姿勢を貫かせてもらうわ。もっとも、全身包帯にしてやるのは否定しないけど」
「これは手厳しい」

 八雲紫は、二枚の札を懐から取り出した。

「式神を作るのってね、案外骨が折れる作業なのよ。依り代の選定に始まって、式神の『固定』に終わる。二言で済むこの過程にどれ程の時間を割くのか。アリス、あなたに想像はつくかしら?」
「さてね。人形ならともかく、式神は専門外だもの。想像も出来ないわ、文字通り」
















































「あー、弾幕結界までかわされちゃったか。これで紫の手は出尽くしたわけか」
「いつのまにか、アリスもやるようになったのね。いつかの異変時に再会したのとはちょっとばかし違うみたい」
「日進月歩とはよく言ったものね。あ、お嬢様、お茶のお代わりはいかがですか?」
「もらうわ」

 少女達が酒や紅茶を飲み干し、天を仰ぐ。
 そろそろ日が傾き始める頃なのか、太陽は山の向こうへと進軍を開始したようだ。
 百鬼夜行、魑魅魍魎、彼らの時間が近付きつつある。

「いいないいなー、紫楽しそう。わたしも弾幕ごっこしたいなー」
「あら、萃香。あなたは、そういうのを眺めている方が好きなイメージがあったんだけど」
「ちっちっ、わかってないわね幽々子。楽しそうなものには自分から進んで首を突っ込んで、大騒ぎするのがわたしなのよ」
「それ、紫様みたいね。立ち位置の違いぐらいしか区別がなさそうだけど」
「類は友を呼ぶって、正にその通りなわけだ」
「逆よ。友は類を呼ぶの。こういう場合はね」

 徐々に茜色が辺りを染めていく頃、ようやく止まっていた空が動いた。
 動いたのは紫で、左右に式が憑依している札を展開している。
 そういえば。霊夢はそこで気付く。
 常に主人に付き従う、二人の式が見当たらないことに。

(藍と橙、今日は侍らせていないみたいだけど……何か企んでいるのかしら?)

 何かあったのか、ではなく、何か企んでいる、と。霊夢はそう曖昧に結論付けた。










































「そういえば、今日はいつもの式神はいないのね」

 悪寒が背筋を巡る。虚勢が出張り、警戒感が脳髄を埋め尽くす。
 口から出る言葉は防御壁だ。何も言えなくなったが最後、『呑まれる』のはわかっている。

「うふふ、そんなのどうでもいいじゃない。今はあなたとわたしの楽しい時間の真っ最中なんだから」
「実際、楽しんでるのはあんただけに見えて仕方がない」
「あら、あなたは楽しくないのかしら。こんな素敵な弾幕ごっこ、わたしの永い時間の中でもそうそうなかったわ。覚えてる限りではね」

 ぼんやりと淡い光を放ち、札が何かを象っていく。
 それはまるで、『人形』のようで。

「人はわたしを幻想郷の賢者と呼び、実際間違いでもない。でも、今この時だけはそれを拒否させていただくわ」

 ぞるり、ぞるり。
 悪寒が形を成し、背中を中心にして全身へと広がっていく。

「そうね……『無色の人形遣い』とでも、言ってもらおうかしら。七色に肖って」

 色が無い。それは、透明なのか。それとも、無という色なのか。
 しかし型にはまらないといった、八雲紫の性格とは見事に合致している。
 やがて札は、上海や蓬莱と似て非なるものへと変化した。

「やると思ったわ……実のところ、考えたくはなかった可能性だけど」
「今更説明する必要も無いでしょうけど、形式は大事なのよ」

 札の数が増え始め、わたしの持つ人形の数と同じ程度になった。
 やはりだ。わたしの抱いた危惧はいよいよ現実になってしまった。

「正真正銘の自分自身を相手にした時、人はそれを乗り越えられる―――いいえ、打ち破れるのかしら?」

 妖艶に、そして残忍に。口の端を尖らせ、八雲紫は緩慢に動く。

「新旧人形遣いの共演よ。互いに、気張らず必死に戯れようじゃない」
「……あいにく、あんたの戯れに必死こいて付き合う義理も義務もないわ」

 もたついていた思考回路が、たった今噛み合った。

「今までこっちが大人の対応をしてたからかしらね。久々に……いや、はじめて極めて単純な怒りが頂点に達しそうよ」

 ふざけている。まったくもってふざけている。
 何が新だ。何が旧だ。すべては一方的な余興の為に仕組まれたものにすぎない。
 そんなものを、わたしが。
 このわたしが「イエス」と享受すると思っているのか。

「決めた。最後までなんて言葉は返上。今日、あんたの掌からは卒業よ」
「これは大きく出たわね。でもそれもまた一興。期待して、そして遠慮なくやらせていただきますわ」

 互いの右手が動く。人形が動いた。

「余興は終わりよ。七色の魔法使い」
「暇潰しも今日までよ。スキマの賢者」
近いうちの近いうちってどこまでがセーフなんでしょうか。三ヶ月はセーフですかセーフですよねウフフ
知ってる人も知らない人もこんばんは。
やっとこさ風神録をクリアしたと思ったら積んでいた地霊殿が待っていたでござるの巻。
んで委託が始まったら星蓮船が来るんですねわかります。また積みゲーが増えるお……。
むーざんむーざん

ゆかりんのアリス調教日記も佳境に入った気がします。
でもアリスはまだ登りはじめたばっかだからな……この果てしなく長い幻想郷道をよ……!

~未完~


になる可能性も無きにしも非ずですがまあまったり頑張りますかもしれません。
彼岸
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コメント



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2.100名前が無い程度の能力削除
ガンバです ガンバですよー

物にもよりますが半年までならコレはセーフです
5.80名前が無い程度の能力削除
待ってましたー このゆかりんのアリス調教日記!三ヶ月でも半年でも待つので未完で終わるのはやめてー