※タグにも書きましたが、途中でオリジナル展開を含みます。また、キャラ崩壊気味注意。
1.
「永琳!馬乗ってみたい!」
「はい姫、こちらに!」
「って、早!」
いつも通り唐突な輝夜の発言の2秒後、永遠亭の居間には一頭の馬が鎮座していた。
(し、師匠・・・どうやったらこんな早く用意できるんですか?)(というか居間が汚れるじゃん、やめてよ永琳)(馬鹿ね二人とも。あの姫が、珍しく物事に対して能動的に取り組もうしてるのよ?待たせている間に気が変わられでもしたらたまんないわ、せっかくのチャンスなのに)
「ありがとう永琳!それじゃあ庭で乗ってくるわね!」
そういうと、輝夜は馬と共に庭へと繰り出していった。
ぱからっぱからっ。
「きゃー姫、馬に乗っている姿も様になってますよー!素敵!結婚して!」
ちなみに永琳の言葉は、お世辞ではなく混じり気無しの本音である。
「ふふ、そうかしら?よーし、スピードアップ!」
調子に乗って、どんどんと馬の速度を速める輝夜。
「素敵ー!」
「飽きた」
「早!」
走ったままの馬から華麗に飛び降りる輝夜。
「わー!姫様!降りるんなら馬を停めてからにしてください!庭が!庭が!」
(うわー、庭が目茶苦茶になっちゃってるよ。砂ぼこりもすごいし・・・これ掃除する鈴仙は大変だねえ)(え、これ全部私一人でやるの!?)
―『馬離すと砂は舞う』―
2.
賽銭箱を見たら何と千円札が入っていた。ちなみに去年のお賽銭総額は800円だった。霊夢はこの嬉しさをどう表現していいか分からず、魔法の森へと赴き、魔理沙に意味も無く渾身の右ストレートを見舞った。すっきりした。
「ふふん、今日のお昼は超大奮発よ~♪楽しみ~♪」
「あら、霊夢ったら何をそんなに浮かれているのかしら?」
突然声をかけられ、驚く霊夢。背後を見ると、レミリアが立っていた。
「うわあ、レミリア!?あんたいつの間に入ってきたのよ」
「そうね、貴女が伝書鳩に向かってにやにやしながら『出前の注文、しっかり取ってきてよ~♪』とか話しかけているときから」
霊夢の家には当然電話などない。誰かに用があるときは、伝書鳩を使うのだ。それをレミリアに覗かれたらしい。
「み、見られた・・・」
霊夢は、思わず顔を真っ赤に染めた。
「あれ見られちゃったら、もうお嫁に行けない・・・」
「大袈裟ねえ・・・それで、わざわざ出前してまで何を頼んだのかしら?」
その質問に対し、よくぞ聞いてくれたとばかりに表情を明るくする霊夢。
「ふふん、聞いて驚きなさい」
「うんうん」
「素うどん(並)よ!」
「えー」
失望の眼差しで霊夢をみつめるレミリア。声からも、明らかに侮蔑の響きが感じられる。
レミリアの態度を受け、思わず憤慨する霊夢。
「『えー』ってどういうことよ!?あ、あんたみたいなお嬢様はともかく、庶民は皆、そういうメニューでお腹もスタミナも満たしているんだからね!?ふ、ふんだ!どうせあんたなんかには分からないでしょうよ!私なんかそれだって久しく食べられてないに・・・うわーん!!」
レミリアの視線に耐えられなくなった霊夢は、とうとう子供のように泣きじゃくってしまった。それを見ておろおろと慌てるレミリア。すると、そんな混乱状態の中、、頼んでおいた出前がやってきた。
「れ、霊夢ったら落ち着いて!ほら、安うどん届いたみたいよ?食べたかったんでしょ?」
「素うどんよ!嫌な言い間違えするなあ!」
ぎゃーぎゃーと喚く霊夢が落ち着いたのは、それからたっぷり30分後のことだった。
「うう・・・何かもう色々台無しよ・・・」
「ご、ごめんなさい、まさか霊夢があんなに泣くなんて思わなくって」
うどんは、冷め切っていたし伸びきっていた。ついでに霊夢の心もすっかり冷え切っていた。
「ねえ、何ならもう一回注文しましょうか?私が奢るわ」
その言葉に、首を横に振る霊夢。彼女にもプライドがある。貸しも何もない相手に奢られるのは嫌だった。(そういう割には他所にご飯をたかりに行くことはしょっちゅうあるのだが、それとこれとは別である)
「いいわよ別に・・・私が泣いてたのが悪いんだから」
霊夢はそう言うと箸を取り「いただきます」と一言呟いてから、ずるずるとうどんをすすった。
「う、うう・・・」
「ど、どうしたの?やっぱり不味かった?」
不安そうに聞くレミリアに対し、霊夢はふるふると首を横に振る。
「美味しい、美味しいよお・・・」
「え、泣くほど!?」
霊夢の目には、またも涙が浮かんでいる。久々の素うどんは、よほど彼女の心の琴線に触れる味だったのだろう。これが強がりで言っているのではないということは、誰の目にも明白だった。
あまりにも美味しそうにうどんをすする霊夢を見て、レミリアはごくっと喉を鳴らした。彼女はお嬢様であるが故、うどんのような「庶民のメニュー」を食べる機会は少ない。いや、むしろ、ほぼ食べられないといってもいいだろう。しかし、決して嫌いというわけではないのだ。
レミリアは意を決すると、霊夢に「ね、ねえ・・・その・・・一口だけ分けてもらっていいかしら」と声をかけた。
霊夢は一瞬あからさまに不快な態度を示した。それはそうだろう。何しろ、先程、一世一代で頼んだ出前のメニューについて、罵られたばかりなのだから。
しかし、ここで彼女は「幸せというのは独り占めしてはいけないのよ。皆で分け合わなきゃ」という先代の教えを思い出した。自分は「出前を取る」という贅沢に浮かれ、独り占めする事ばかり考えてはいなかったか。そう、今こそ誰かと幸せを分かち合う場面なのではないか。
霊夢は「しょうがないわね」と言うと、蓮華一杯に麺と汁を入れ、レミリアへと渡した。
「あ、ありがとう・・・それじゃ、頂くわね」
渡されたレミリアはまず、じっと蓮華をみつめた。料理は初め、目で楽しむものだ。それは、対象が満干全席でも素うどんでも変わらない。
美しく澄んだ汁は、伸びきってはいるものの、眩いばかりの白さを誇る麺と抜群のコントラスト。こんなに美しい対比は、他ではちょっとお目にかかれない。冷め切っていようが、最早そんなことは関係ない。レミリアはもう一度喉を鳴らし、もう辛抱たまらないと言わんばかりに、蓮華を口に運んだ。
「う、う・・・美味ーい!!」
その瞬間、レミリアの目から1リットルの涙。ついでに口には1リットルのよだれがたまった。
ああ、庶民の皆様、さっきはごめんなさい。正直なところ、私は普段、もっと良いものを食べている。けれど、ご馳走だって毎日続けば人間(吸血鬼だけど)飽きがくるものです。むしろ、こんなに美味しいものを毎日堂々と食べられるなんて、私はあなたたちが羨ましい。どんな空腹な人も、これを食べればたちまち満腹、スタミナ抜群になれるでしょう。私も生まれ変わったら、庶民になろう。
「私は素うどん食べるのなんてこれが久々なんだけど・・・」
最早意味の分からない感動の中にあるレミリアには、霊夢のその声は届かなかったようだ。
「霊夢、もう一口ちょーだい!」
「夢想封印」
「うぎゃー!!!」
霊夢の夢想封印をモロに喰らったレミリアは、しかし、とてもいい笑顔だった。
―『感動、皆スタミナ満たす並うどんか』―
3.
幻想王国第6×季・・・復活した大魔王により、世界は未曾有の混乱に晒されていた。
自分の財産を、全て奪われてしまった者。飢えと乾きに苦しむ者。人々は勇者の到来を待っていた。
そして、そんな人々の気持ちに答えるかのように、一人の騎士が、果敢にも魔王に挑むべく、立ち上がったのだった―。
「え、ここどこですか?私なんでこんな格好しているんですか?一体何がどうなってるんですか?」
「もう、妖夢ったら。まだ寝ぼけてるの?これからあの憎き魔王を退治しに行くところじゃないの」
そう言ったのは、鎧兜に身を包んだ幽々子。ちなみに妖夢の服は某魔法少女も真っ青な魔女っ娘ルックだった。
「展開がさっぱり分かりません」
「妖夢はにぶいわね」
「とりあえず、説明をお願いします」
「しょうがない子ねえ。いい?幻想王国第2×季に封印された、魔王イブキス・イーカが復活したというのは知ってるわね?」
「全くの初耳です」
「魔王は、とにかく酒が好物なのよ。世界中の酒と、それからおつまみを全部集めて、自分のものにしようとしてるの。世界中のよ!」
「その設定、微妙にどこかで聞いたことあるような・・・」
「そうなったら大変よ。楽しい宴会が、もう二度と開けなくなっちゃう!」
「別に宴会が無くなる位だったらいいんじゃないですか?死人が出るわけじゃないですし」
「それを防ぐためにも、私たちは魔王を何としてでも倒さなければならないのよ」
聞いちゃいねえ。妖夢は、思わずため息を一つついた。
「もしかして、上に書かれてる『財産』とか『飢えと乾き』とかって」
「『財産』は貴重な古酒。『飢え』はおつまみが食べられないからで、『乾き』はお酒が飲めないからよ」
「私、帰っていいですか?」
「駄目に決まってるでしょ!?」
くるりと回れ右しようとする妖夢を、幽々子は割と全力で阻止した。
「それで、一体我々は何処に向かっているんですか?」
「城よ。この国を出る前に、女王様に会っておかないといけないわ」
そう。冒険に出る前には城に行き、その城を治める者に会うのが旅の鉄則。いつの頃からか分からないが、そういう風に相場が決まっている。
「女王に会えば、食べ物だとかお金だとか武器だとか食べ物だとか情報だとか食べ物だとか食べ物だとか、色々重要なものが貰えるわ」
「幽々子様、食べ物のことしか頭にないのですか?」
「やあん、妖夢がいじめるわあ」
本当の事でしょうに。妖夢はまたため息を一つついた。
そんなこんなをしている内に、二人は城へと到着した。そして、いよいよ女王との対面の時を迎えた。
「勇敢なる騎士よ、よく来てくださいました。私はこの城を治めているヤ・クモ・ユーカリと申します」
「ユーカリ!?」
女王がユーカリって。それでいいのか。
「これは女王様、お会いできて光栄ですわ」
「ユーカリでいいですわ。堅苦しいのは好きじゃないので」
何事もなかったかのように話し始める幽々子とユーカリ。
妖夢は自らの傍らに立っていた彼女の従者に、己の疑問をぶつけてみた。
「ら、藍様、あれ、紫様ですよね・・・」
「私は藍ではない。ヤ・クモ・ラーンと申す」
ずるっとコケる妖夢。しかし、ラーンのその言葉から何かを見抜き、再び訊ねてみた。
「・・・そうですか。もしかして、貴女にも専属の従者がいらっしゃるのじゃないのですか?おそらく、チェーンという」
「よく分かったな。その通りだよ。残念ながらこの場にはいないのだが、今頃何をしているやら・・・ああ、チェーン、チェーーン、チェーーーン!!」
やっぱり。妖夢は何かもう色々諦めた。
そんなことをしている間に、幽々子とユーカリの話し合いは、早くも佳境に差し掛かっているようだった。
「ご存知の通り、魔王イブキスの力は強大です。ヤツを倒すには、まず「世界の酒とつまみを半分、お前にやろう」という凄まじい誘惑を乗り越えなければならない」
「ええ」
気のせいか、幽々子の口からじゅるりとよだれが垂れたのが見えた。
「その誘惑を乗り越えたとしても、そこから地獄の飲み比べ対決・・・ヤツを倒しに行って、素面で帰ってきた者はいません」
「あ、一応皆帰ってきてるんだ」
その言葉に、若干胸を撫で下ろす妖夢。どうやら命の心配まではしなくて良いようだ。
「ヤツの目的は、あくまで酒を集めることですから。しかし・・・万が一ということもあります。そこで、お二人には旅に出る前に、まず一筆頂いておきたいのです」
そう言って、ユーカリは一枚の紙を取り出した。そこには「誓約書」と書かれていた。
「何々、『もしこの旅で死ぬようなことがあっても、私は一切の責任をこの国に求めません』・・・?」
「幽々子様、それってどういうことですか?」
妖夢はよく意味が分かっていないようだ。そんな妖夢に対し、幽々子は極めて分かりやすい言葉で説明した。
「要は、死んだら自分のせいってことよ」
「・・・?それって当たり前じゃないんですか?」
ますます頭に疑問符を浮かべる妖夢。すると、ユーカリが苦笑しながら説明を始めた。
「昔、一人の勇者が魔王イブキスを倒しに行ったとき、返り討ちにあってきたのですよ。そうしたら、彼の妻が『彼が負けたのは、魔王を倒すという重要任務を背負っていたにも関わらず、国家の支援が少なすぎたからだ』と、国に対して損害賠償を求める訴訟を起こしてきたのです」
「なるほどね・・・一々勇者がやられて帰ってくる度に、そんな裁判を起こされていたのではたまらないと」
「そういう訳です。国にだって、そこまで余裕がある訳ではないのですわ」
そう言って笑いあう二人。妖夢には、やっぱりよく分からないのだった。
「まあそんなわけで、ここに一筆下さらないかしら?」
「はあ、まあ別にいいですけど。ねえ、幽々子様」
「私も構わないわ」
魔王を倒しに行くのに、一々責任が云々などと悠長なことは抜かしていられない。二人に異存があろうはずがなかった。
「決まりですわね。それじゃあお願いたしますわ」
そう言うと、ユーカリは誓約書とペンを2人に渡してきた。
さらさらと筆を走らせる幽々子と妖夢。
「できました」
「できたわ」
2人はほぼ同時に書き上げると、その紙をユーカリに渡した。
「ありがとう。それじゃ、この国の未来をあなた達に託―!?」
微笑を浮かべたまま、ぶるぶるとユーカリの体が震えだす。何かのショックが彼女を襲ったようだった。
「ど、どうしたの!?ユーカリ、しっかりして!」
「は!?まさか、敵の手がこの城にも!?」
今にも倒れかねないユーカリを支える幽々子。懐から『マジカル☆ステッキ』を取り出して構える妖夢。
「し、しまったあ!?こんな杖じゃ攻撃できない!」
「だ、大丈夫です・・・敵が襲来してきた訳ではありませんから・・・」
そう言うユーカリだが、その声に余裕はない。一体何がどうしたというのか。幽々子が問いかける。
「ねえユーカリ、聞かせて頂戴。一体何が起こったの?」
「貴女の・・・貴女の書いた文字が・・・」
「私の?」
「・・・達筆すぎて・・・感動しました!こんなに美しい文字が書ける人が、この国に居たとは・・・!」
・・・はあ?
要するに、ユーカリがショックを受けたのは、幽々子の書いた文字があまりにも美しすぎるという理由だった。
それを聞いて、力が抜けてしまったのか、膝から崩れ落ちる妖夢。
「何だ、そんな理由でしたか・・・。ほら、幽々子様、もう行きましょう?さっさと魔王を退治して、平和を取り戻さないと」
「ええ、そうね。行きましょうか。・・・ふふ、世界の半分の酒とつまみ・・・」
何か危ないことを呟いている気がする。この人と一緒で大丈夫だろうか。
不安を抱えながらも、妖夢達が出発をしようとしたときだった。
「待ってください!」
声をかけてきたのは、ユーカリだった。
「幽々子・・・貴女には、ここに残ってほしいの」
「え!?どういうこと、ユーカリ?」
これには幽々子だけでなく、妖夢も驚いた。先程までは旅に出る私達を応援してくれていたというのに、急に幽々子は残れとは。これは一体どういう訳なのだろうか。
「幽々子。貴女には、ここで書道家として、その筆を振るってもらいたいの」
・・・はあ??
迷いのない、真っ直ぐな瞳で幽々子を見つめ、そう言ったユーカリ。しかし、妖夢にはその言葉の一割も理解できなかった。
(だって、今世界に必要なのは勇者でしょう!書道家とかいらないでしょ!?一応世界の危機なのに!そういうのは私達が帰ってきてからだって遅くはないでしょうが!何考えてるんだこの年増!)
しかし、その発言を受けた幽々子の目は真剣そのものだった。
「ユーカリ・・・貴女、本気なのね。分かったわ。私、ここに残る!」
「えー!?」
何故か、幽々子は妖夢がこれまで見たことないほど上機嫌だった。具体的に言うと、目はあくまでユーカリを見据えながら、足は華麗なタップを踏んでいた。その様子を見て、頭を抱える妖夢。
(残るって言っちゃったよ!さっきまであんなはりきってたのに!じゃあ何か、剣も持ってない私一人で世界を救えってか!?無理ー♪何考えてるんだこの大食漢!)
妖夢の思考は、普段では考えられないくらい乱暴なものとなっていた。それだけ余裕がなかったのだ。
「それじゃあ妖夢、私の分も頑張ってきてね!」
「期待していますわ、妖夢」
「アハハ、イッテキマース」
妖夢はもうやけくそだった。
こうして、妖夢の妖夢による妖夢だけの冒険が始まったのだった。
それから半年後。幻想王国に、千鳥足で顔を真っ赤にし、寿司なぞ掲げて入ってくる酔う夢の姿があったが、彼女が飲み比べの末魔王を倒せたのかどうかは、未だ定かではない―。
―『書いた字うま!騎士幽々子、由々しき、舞う事態か』―
4.
どこまでも澄み渡るような青空。今日はすごくいい天気だ。こんな日は、家に引きこもって人形を作るに限る。
ちなみに昨日は雨だった。私は人形を作っていた。
そんな私がいつものようにチクチク縫い縫いしていると、どんどんと無遠慮にドアを叩く者があった。こんなノックをするのは彼女しかいない。
「魔理沙ね・・・」
「よう、アリス。邪魔するぜ」
邪魔だと分かってるなら入ってこなければいいでしょうが。そんな私の嫌味を無視して、魔理沙はテーブルに座ると「茶ー出せ茶ー」などと言ってきやがった。ああもうムカつくなあ。
それでも言われた通りお茶を出しちゃう私って、すごく健気だと思う。誰か褒めてくれないかしら。
「それで、今日はどうしたの?」
「まあ、別段どうということもないんだが・・・ふむ」
「ん?どうかした?」
「いや、何でもないぜ?」
にやにやと私の服を眺めてくる魔理沙。変なヤツ。
とりあえず気にしないことにする。
うん、やっぱり私の入れたお茶は美味しい。
「この茸なんだけどさ、何か新しい魔法に使えそうなんだよなあ」
「うーん、そうは言っても私の見解だと・・・」
その後、予想外に魔理沙と魔法談義に花が咲いてしまった。魔理沙の魔法と私の魔法は全く別物なのだけど、それが故にお互いを刺激しあうような所がある。気が付いたときには、夜の帳を迎えようとしていた。
「お、もうこんな時間か。それじゃ私は帰るぜ」
「はいはい。今度からは来る前に連絡の一本もよこしなさいよ」
「善処するぜ。・・・ところで、アリス」
「何よ?」
「妖怪だからって、無理は禁物だぜ?お前、ここ何日か寝てないだろ」
魔理沙に指摘され、ぎくっとなる私。確かにここ2日ほど徹夜が続いていた。しかし、態度には表れないよう気をつけたつもりだったのに。
「な、何で分かったの!?」
「そりゃ、顔色見れば大体分かるぜ。それに」
そこまで言うと、魔理沙はこみ上げてくる笑いを堪えるかのように「服、裏返しだぜ」と言ってくれたのだった。
「え?ねえ、さ、逆さって本当なの?」
あ、本当。何でこんなことに気が付かなかったんだろう。ということは、今日一日ずっと逆さまに着た服で、魔理沙と真剣に魔法談義をしていたことに―!?
「ぬわああ!忘れろ、忘れろー!」
「ははっ、アリス、またなー!」
魔理沙の去った部屋で一人、落ち込む私。気分はもう最低だ。
ああ、もう今日は寝てしまおう。2日も寝てないから、本当に眠いし。うん。
そう思って、ベッドに入る。と、首筋に何か違和感を感じた。見ると、紙切れが一枚と、薬のカプセルが入った袋がいくつか置いてあった。当然私は、ベッドの上にそんなものを置いた記憶はない。
「何かしら、これ?」
一人呟いて、紙を見てみる。
『霧雨印の睡眠薬。1回1錠。食後に服用してくれ。眠らないのは体に毒だ。例え全く眠くなかったとしても、これを飲めばコロっと眠れるはずだぜ。くれぐれも無茶はしないように。 魔理沙』
「―こんなもん、怖くて飲めないわよ、馬鹿・・・」
これがあいつなりの気の使い方なんだろうけど、思わず私は毒づいてしまっていた。
大体、あんたの方がよっぽど無茶してるんじゃないの?人間なんだから、気をつけてないとあっさり死んでしまうっていうのに、異変が起こると必ずちょっかい出してるし。
こう見えて、私、あんたのことは結構買ってるんだからね?一緒に話してると楽しいし、引きこもってる私のところにも積極的に来てくれるし。そんなのあんただけなんだから。
だから、あんまり無茶して、勝手に死んだりしたら、承知しないんだからね?分かってるの?
「分かってないんだろうなあ・・・」
まあ、それがあいつのいいところでもあるんだけど。
全く、嬉しくなっちゃうなあ。こんなの、私のキャラじゃないのに、思わずベッドの中で一人にやにやしてしまう。
私は、さっきまでと一変し、幸せな気持ちで眠りについたのだった―。
―『え?ね?まさかさかさま?ねえ!』―
「何か良い話だったのに、オチ、こんなの!?」
「おーい皆、この前アリスがなあ」
「わーん!言うなあ!馬鹿魔理沙ー!最低!」
「ユーカリ」コアラの餌になりそうな名前
「ラーン」賢者は尚も学ぶことを忘れないという素晴らしい名前
「チェーン」チャーミング過ぎる
だからこそ内容のつまらなさとの温度差とギャップが酷い。
文章力とかは別だけど。