―――幻想郷、里と森の半ば、香霖堂
「おう、香霖。八卦炉修理終わったか?」
「一応ね……どんな無茶をしたらこんなになるのか、今度レポートにして持ってきなさい」
「ごめんだぜ」
僕も大概暇とはいえ、この娘の厄介事に毎度毎度付き合ってはいられない。
無論、放置しておくこともできないが。
「それで、だ。にとりを連れてきてくれたかい?」
「ああ、あとで道具を持って来るそうだ」
「わかった」
「それより……何する気だ?」
今から僕らは(といっても僕と河童の娘だけだが)ちょっとした作業に入る。
「前々から言ってたと思うが、君の魔法……いや魔砲に無茶があってね。
所謂、グレードアップと思ってくれて構わない」
「は?まあ、よくわかんないけど、強くなるってことか?」
「そうだ、ね」
多少、語弊はあるが。
「お待たせ。霖之助」
「遅いぜ、にとり」
さて、始めるか。
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正直、無理がたかっている。
魔理沙は紅魔の大賢者のように修行を終え、魔女になったわけではない。
人形遣いのように生まれた時から在るべくして魔術師というわけでもない。
無論、この子の師匠のように霊体というわけでもない。
「あとどれくらいかかるんだ?」
この子は人間だ。紛れもない。
あんな巨大な魔砲を放つこの子は人の身なのだ。
この子はわかっていないだろう。自分がどれほど危ない橋を渡っているのか。
「にとりー。まだかぁ?」
「んー……今日は徹夜かな」
「マジかよ。はあ、箒弄るったってそんなかかんないだろ?」
僕にできることはこの子を陰ながらサポートしてやることぐらいだ。
「とりあえず飯にしよう。今夜は長くなりそうだ」
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正直、霖之助が何を考えてるのかはまるでわからない。
しかし簡単な話ではないようだ。顔には表していないが。
「魔理沙は寝たか。じゃあ、続きを、」
「何故だい?」
「ん?」
とぼけている。裏があるのは見え見えだ。
「これ以上、魔理沙を強くする意味があるのかい?
まあ、確かに霖之助が過保護だってのは周知の事実ではあるけど」
「過保護、ね」
「これ……」
今、私達がやっているのは、魔理沙の箒の改造。
魔理沙の要望もあり見目は変えてはいないが……
「どう考えたって、度が過ぎる品だよ。人間にはってことじゃない。
霖之助、あんたが作るにはってことでさ。正直、目つけられるよ」
「……わかってるさ」
話してくれないか。
「君だってわかっているなら、何故手伝う?」
「放っておけないね。捨て置いたらあんたは箍を外すかもしれない」
「箍ね……まあ、箍を外すのは僕じゃないかもしれないよ」
「どういう意味?」
正直、不可解だ。
「魔理沙は、別に道具が無くとも……箒や八卦炉(これ)が無くてもってことだ。
十分、魔法を使えるってこと知ってるかい?」
「……いや」
「使えるんだ。実際昔は……まあ、それはいいとして。
ただね、危ないんだ。八卦炉を渡したのもそれが理由だ」
魔理沙に八卦炉。もはや当たり前のように思えるが、よくよく考えるとおかしな話だ。
彼女は人間だもの。職業、魔法使いなだけの。度し難い。
「……君は生まれてすぐ水を自由に操れる様になったかい?」
そんなわけない。修行はした。
忘れられてるかもしれないが、私は水妖だ。技術屋は悪魔で趣味。
今レベルの術を扱うまで数百年はかかった。
「今のレベルになるまでなら数百はかかる。君でさえ、ね。
魔理沙は、天才なんだろう。努力家でもあるが。
僕は魔法使いじゃないからよくわからないが。
昔、彼女の師匠が言ってた。あの子は幻想郷一の魔女になるだろう。
でもね……」
人間、なのね。
「ああ、彼女は人の子だよ。しかし、基に在るものは人間には過ぎるものだ。
そうだな……これをみてくれ」
霖之助は桶を二つ用意した。片方には水が入っている。
「水(これ)が彼女の魔力だ。あと人間である限り生命力と考えてもらってもいい。
いいかい。これが尽きた時、彼女は……る。まあ、無論回復はできるけどね」
「……わかった。で、その枡はなんなんだい?」
霖之助は大きな枡を取り出した。
「これが八卦炉。こいつで、こう」
水を一方の桶に移した。
「魔砲を撃つ」
ザバァ……
「さあ、計算が得意で、且つ水に詳しい君ならすぐわかるだろう。
……あと何杯だ?」
ゾッとした。
「それは、本当かい?」
「因みに、八卦炉(枡)無しだと、」
桶を引っ繰り返す。
「こうなる」
……バシャッ。
「極論だ、ありえない」
「言いきれるかい?まあ魔力=生命力は言いすぎかもしれないが」
確かに人間は脆弱だ。か弱い少女と言ったら猶のこと。だが話が飛びすぎてる。
「彼女が捨食の術を手に入れれば、話は別だ。君も魔女ら二人から聞いたことあるだろう」
「まあ、話程度には。要は人間辞める術でしょ」
二人と言うのはアリスとパチュリーだ。そういえば二人は魔理沙が術を覚えるのに執着していた。
まさか、この為とは思えないが……魔術師にとっては文字通り死活問題なのだろう。
「でも、力をセーブすれば問題ないんじゃない?
そんな頻繁にぶっ放してるわけじゃないし」
そうだ。魔理沙とて魔力が枯渇するほどの無茶はしてないはず。
「慧音に歴史を、あの子が今までどれだけ無茶をしてきたか調べてもらった。
なんとも化け者だね……並の年相応の少女なら廃人になっててもおかしくないレベルだよ。
まあ、紅魔館のメイド長ほどじゃないが」
「そんなことは……どうでもよくは無いけど、現に今だって上手くやってるじゃない。
廃人寸前だっていうならその前兆だって見えるはず」
「そう。見えるはずなんだ。でもどうだい?君は魔理沙がそうなったところを見たことがあるかい?」
「無いよ。あったら誰かしらには相談してるさ」
言っている意味がわからない。
つまり、霖之助は何を言いたいのだ?
「事前策だよ。そうなる前のね。」
「事前?」
今度は本を取り出した。求聞史紀の写しか。
「仮説だが、、あの子は自分が『どんな』魔術師・魔法使いなのかわかってない。
五行やら降霊、召喚、精密操作等々。わかってないから魔力の使い道がわからない。
言葉は悪いが魔力の垂れ流し魔女だよ。今の魔理沙は」
「パワー&スピード特化じゃないの?」
「それは戦闘スタイルだよ。
いいかい。魔術師というのは本来目的があってなるものなんだ。
実際見たことは無いが、パチュリーなら錬金術と七曜を混ぜ『石』の錬成に成功している。
アリスは実現途中だが、完全自立(フル・オート)の人形(ひとかた)の誕生。
魔理沙の師匠の場合は特殊で……まあ、昔は全ての人間に復讐をなんて言ってたけど。
パチュリーが言うには『第六法』とかなんとか。詳しいことはわからない。
もう一人いるが……聖さんはいいか。兎に角!」
……?
「魔理沙には目的が、無い。これでは魔女としての意味が無いんだ。
ただ弾幕ごっこをして異変を解決する。僕もこれがあの子の魔女としての意義だと思ってた。
しかし、意義じゃダメなんだ。
これは三人とも言ってたんだが、それなら退魔師にでもなれ、だって。
目的があって創めて動き出す。それが魔法使いなんだ。あの子は魔法に、使われているらしい……」
「なら、それを教えればいい。誰に聞けばいいんだ!?
アリスかい?パチュリーかい?それともその御師匠さんに?
どうとでもなる問題じゃないか!」
「声が大きいよ」
「む……」
確かに魔理沙に聞かれてはいけない話かもしれない。
……いや、いっそ聞かせて気付かせるか。
「馬鹿なことは考えない方がいい。君が彼女の親友ならね」
親友、か……
「確かに、魔術師は自らの目的を隠すものではあるが……
ここ(幻想郷)で秘匿にする意味は無いだろ。現に二人は公だ。
メリットも無いが逆も無い。魔理沙が目的を隠す必要もない」
「『恋』の魔法使いなんじゃ?」
「……莫迦言うな」
本を仕舞う。
「……まあ、話は掴めてきた。しかしだよ、それはマスタースパークの話でしょ?
他にもブレイジングやメテオなんかは大魔力だけど」
「言ってて、気づかないか?」
「え?」
どういう……
「いいかい。この大枡一杯が八卦炉を『使った』、マスタースパークだよ」
そういうことか。箒星も隕石も『使ってない』。
「そうだ。しかし、あの子は負担なんてお構いなしだ。
第一、自分に負担がかかってるかどうかすらわかって無いのかもしれない。
性質が悪いことに八卦炉無しでもこれらを使える……使えてしまうってことだよ。
同業者や紫、幽香ならこれら全て、わかるのかもしれないが、ね」
「どうして……止めないの?」
「ん?」
「わかってて止めない貴方がわからない。見す見す壊れていくのを許しているようなものじゃない」
「君は……魔理沙の家、いや、部屋(ラボ)を見たことがあるかい?」
正直、汚くて見れたもんじゃない。というか玄関にすら入れなかった。
「まあ、片づけられないのは今に始まったことじゃないが……あの子は必死に探してるのさ。
自分の姿、為るべき形をね」
「為るべき……」
「あの子はよく物を盗むだろ。本人は借りてるだけと言ってるが。
少々歪んでるけど、あれが魔理沙の研究さ。自分の中から姿を探せない。姿=目的だと思っていい。
だから外側から探すことにしてる。不器用なんだね。きっと死ぬまで続けるんだろう……」
盗みが研究?
「昔、止めたことがある。魔法じゃない。盗みをだ。
今だって止めろって?まあ、仕方ないよ、あれはね。
なんせ研究だ。君の工芸を止めるようなものだよ。
兎に角、多少だが見えてきているのかもしれない。自分の特化、目的を」
「成程。つまり霖之助は魔理沙の盗みの本質に気付き、頑張る姿に心打たれ、何も言えなくなったと」
「恥ずかしい限りだがね」
「はあ……死ぬまで、借りてくぜ。ねぇ」
どうしようもない保護者だ。
「八卦炉はあの子の制御盤さ。あれで消費を抑えている。完璧ではないが。
今回はこれ、」
小さい計量カップを取り出した。
「このくらいに燃費を抑える。どうだ?これなら魔力の回復は余裕を持って追いつくだろう」
コポッ……パシャ。
「……わかったよ。しかし霖之助。あんたの話、どこまで、本当かい?」
「正直、確信は得てない。仮説レベル、ただ可能性としては十分在り得ることだ。
僕は事後策に回るつもりは無いんでね。だからこうして君を呼んだんだ」
共犯になるのは構わないが……何故私なんだ。
「……他に、この話を知っている連中は?」
「彼女の師匠。あとパチュリー。慧音、それに……親父さんだ」
親父さん?
「魔理沙の父親だよ」
「ああ、人里の大道具屋か……なんで知ってるんだい?」
もしや系統魔術師か?
「僕と魅魔さん……魔理沙の師匠が話しておいた方がいいと判断したんだ」
確かに娘の命にかかわることだからね。だが……
「しかし、よく親父が許してるね」
「許してないから、家出してるんだろ」
違いない。しかし……パチュリーと魔理沙の師匠は何をしてるのだ?
「パチュリーは、というかこの理論は彼女から半分聞かされたものなんだ。
莫迦魔力の半端者。ただ、まあここは同意したが、努力家だ。
魔理沙が頼めば弟子にしてやらないことも無いが……まず無いだろう。
魔理沙の師匠は生涯一人だろうからね。あと死ぬまでパチュリーとは親友でいたいのだろう。
たぶん彼女が本を盗まれても寛容なのはそれが在るからかもしれないね」
「ほう……白澤は?」
「魔理沙の歴史を調べる際に、ね。対策は練る、だそうだ」
「……成程。じゃあ、件の師匠さんは?」
「……さあ」
「は?さあ?なんでよ。弟子が心配じゃないの!?」
「この件を考えるようになったのは彼女がきっかけだ。『魔理沙は壊れるよ』って一言ね……
元々あっさりしてた人(?)だから。正直、紫に似たタイプで僕は苦手なんだよ。
まあ、仮にも師匠だ。何かしら動いているんだろう」
「そう願いたいね。ところでアリスは同じ魔術師なのに知らないのかな?」
私だってアリスが高位の魔術師だってことくらいわかっている。なのにどうして知らないのか。
「……女性の年齢の話をするのはよくないが、パチュリーは何歳くらいだと思う?」
本当に失礼な男だ。
「まあ、百は越えてるよね」
「そのくらいだろうね。じゃあ、アリスは?」
「同じくらいじゃないのかい?」
「はずれ」
何を言ってる。確かに日本妖怪は西洋魔女とは基盤が違うとはいえ、レベル、年季くらいはわかる。
アリスくらいの魔女であれば百はゆうに越えているだろう。
霖之助は指で1と5を作っていた。
「150?」
「はずれ」
「まさか……1500?」
「……15前後だ」
「からかうのもいい加減に、魔理沙達と大して変わらないじゃない」
「アリスは捨食は必要ないと……思う」
何を言ってる?
「出の違い。アリスは魔界、パチュリーは外から来た」
「それが?」
「こういう言い方は彼女に申し訳ないが……アーティフィシャル・チャイルド」
「……『できた』ばかり、か」
「萃香の言葉を借りれば『魔族』らしい」
そういうことか。年季が違うと。
「それに流石の彼女でも、知識じゃパチュリーには敵わない。
あと、この件に気付いたら……面倒だ」
言えてる。クールだが、魔理沙のこととなると感情的になる彼女だ。難しい。
「同じ理由で霊夢もね」
「彼女たちなら魔理沙を再起不能にでもして止めかねないからね。
でも、どうして私に話したの?私だって再起不能にするかもよ」
それが知りたい。
「僕の『やり方』は魔術的じゃない。河童(きみら)寄りだ。協力を仰ぐのも兼ねて。
そして君はその手の分野で誰よりも魔理沙に親しい。僕が見る限り冷静、いや慎重だ。
話しても大丈夫だろうと……勘だが、ね。それに、」
―――君の『お姉さん』も多少、知ってるからね―――
?!!……そういうこと、ね。嫌がおうにも手伝えってことか。
「気に障ったなら謝る。しかし……君がさっき言ったろう。
僕を一人にしたら箍が外れると。自分でもそう思う。
きっとこの子と一緒に外れてしまうだろう。頼む。手を貸してくれ」
「……わかったよ。ただ材料は確保してあるんだろうね」
くしゃくしゃの紙を数枚。
「できそうかい?」
……正直、驚きだ。確かに魔理沙の兄貴分なんだろう。
神奈子(新参神様)が持ってきた『ぱそこん』、『掃除機』、『ばいく』の設計図と変わらないレベル。
幻想郷には過ぎたる能力。道具の名前と用途がわかる程度?そんな甘いもんじゃない。
彼はきっと、もっとすごい能力。それが何か、一介の水妖にすぎない私にはわからないが。
これが山の老人連中や紫に見つかったら大変なことになる。
「パチュリーにはOKをもらった。魔力回路もどうにかなるらしい
「できるよ……ああ、嫌でもやってやるさ」
「流石『河城』だ」
「次、名字で呼んだら……からね」
私は私(にとり)。
「すまない。よろしく頼むよ、にとり」
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「ちがうって!だから、レーザーにはこう螺旋がね―――」
「箒は竹じゃなくて木なんだからもっと大胆に―――」
「―――自爆装置は!!」
「仕込み刀は必需で―――」
「うるせぇ!!寝れねぇ!!」
「フレアはホーミングに―――」
「実弾より光線の方が―――」
「アリスゥ!泊めてくれ!!」
「立体ホログラムも―――」
「―――段ボールは?」
「圧力ガスと緋々色金のレスポンスが―――」
「填まる時の音は、ガシャーンッ!で―――」
「ガチャンッ!だろ―――」
「魔力光は変わらず―――」
「魔理沙は?」
「出てった」
「まあいい……でスコープは―――」
「いやサーチポインタの方が―――」
「フフフ―――」
「ハハハ―――」
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「ただいま……って大丈夫か、お前ら?」
「「お帰り……」」
屍人(グール)二匹。
「一応、できたよ。試しては無いけどね」
「ほいな」
私はにとりから箒を受け取った。別段、変わった様子は無いが。
「八卦炉を先っぽに填めて御覧」
ガチャ……プシュー……
「おお!!スゲー!!よっし!これで勝てるぜ!」
「喜ぶのはいいが、まだ調整が……」
「ありがとよ。香霖、にとり!霊夢のやつ、ヒイヒイ言わせてくるぜ!」
「ちょ!待て、魔理沙!」
「ああ、嫌な予感しかしない……」
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「あれでよかったの?」
「たぶんね。試し作動くらいしたかったが」
眼の下にクマをこさえて僕らはぼやいた。
「とりあえず……オヤスミ」
「きゅう~」
本日休業。
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……ドー―ーン!!
「!!なんだ!!」
森の方からドでかい音がした。
「おい、にとり!起きるんだ!」
「らめぇきゅうりいっぱいすごいのぉはいらないよぉ」
「お・き・ろ!」
「んにゃ!!」
麓の、博麗神社の方からだ。光の柱が動いている。
「何、あれ……」
「成功したと言えば成功だ」
「霖之助……」
「ああ……」
「予想、以上……じゃない?」
「……逃げるか」
「設計図、燃やそう」
「ヴワルに控えあるから、おk」
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「何処へ行く気だ、霖之助」
嫌な声がした。
「慧、音?」
「何故逃げる」
「逃げてないよ……ただ今から、ちょっと買い出しに」
「ここが、店だろう」
「無縁塚に、品拾いに」
「そうか。しかし、今は何処も『危険』でな。出ない方がいい」
ああ、慧音さん。怒ってらっしゃる。
「あと、にとり。何故お前がいる?」
「か、買い物だよ!ネジが、そうネジが足りなくて!」
「本日休業、と出てるが?」
「あ!!」
「どうやらネジが足りてないのはお前ら自身らしいな。
さあ、どういうことか話してもらおうか。御二人さん」
やばい。慧音の折檻はごめんだ。どうにかして逃げねば……って。
「にとりは?」
「……さあ。気配は近くにあるが」
「逃げた……一人で」
光学迷彩。卑怯な!まだ近くに!
「まあいい。じっくり聞かせてもらおうか。霖之助」
「……僕一人では、説明しかねるのだが」
「じゃあ、もう一方いればいいんだね」
「「!?」」
ドアの所に、一匹。
「ほい―――パチンッ―――っと」
ボスンッ!!
「ひゅい!!」
地面に穴が。
「協力感謝する。因幡」
「なに、同じ被害者さね」
「あの、てゐさん……怒ってる?」
久しぶりに杵持ちの彼女を見た。何というか……オーラが。
「例えば、自分の店『薙ぎ払』われたら……霖。お前どうする?」
「ごめんなさい。いや、実際やったのは僕じゃなくて……
確かに、僕も関わってはいるんだがね。テストする前に魔理沙が八卦炉を、」
「「……だから?」」
ああ……刻が見える。
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〈彼の場合〉
結果から言って成功だろう。燃費は良くなったようだ。
しかし拙かったのは、バリエーションだ。
余計な事を教えすぎた。いや、教えたわけではない。あの子は感覚派だ。
壁で押し出す。シャープにして、薙ぐ。そう言っただけで実際行える。
まったくもって天才なのだろう。
「で、この内容では納得いかんのだが」
「慧音。わかってくれないか?わかるだろ?これを公にはできないんだ」
あの子に気付かれてはいけない。一応、話はわかっているはずだ。
「はあ……今回はお前の八卦炉修理『ミス』として報告しておく。貸し一だぞ」
「ごめん、慧音」
「まったく、事前に私に言っておけばこうはならなかったものの……」
「すまない」
「過ぎたことはいい。で、うまくいったのか?」
一応は。ただ別の問題点も出てきたが。
「永遠亭(うち)や紅魔にはどう説明する?」
「永遠亭(そちら)はてゐさん、お願いします。深くは聞かないでください。
紅魔にはパチュリーに。管理者(紫と霊夢)やヤマ様には慧音、一緒に頼む」
「山は?」
「にとりに。あと天魔様もいます」
「相変わらず、恐ろしいコネクションだな。お前は」
自分でもそう思うよ。
……魔理沙が無事ならなんだっていいさ。
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〈共犯者の場合〉
霖之助は無事だろうか。私は山の会議へ出席(呼び出し)。
老人たちは何としても彼の技術を欲しがるだろう。
神様や若い衆は知らないが。
「で、にとり。あれは霧雨魔理沙の八卦炉の暴走と?」
「はい、諏訪子様」
「本当か?嘘はいかんよ、『河城』」
「本当です……」
「まあ、わかった。兎角、今回の件はお前と森近の二人が原因なんだな?」
「はい、神奈子様」
神奈子は事情を察してか話を穏便にしようとしてくれている。諏訪子も然り。
「それじゃあ、納得がいかないよ。ねえ『河城』の」
「そうそう。詳細を頼むぞい『河城』」
……こいつらはッ!!
「あんた等、いい加減にしな!」
「諏訪子様……」
「そう言われましても『神様』や。これは圧力ですよ、人間側からの。
事故で済まされては山としても威厳が立ちませぬ」
「ここは然るべき対応か、または『誠意』を見せてもらわねば」
何が『誠意』だ。反吐が出る。貴様らが欲しいのは、強大な力だろう。
それも幻想郷(ここ)のルールお構い無しの。
旧派閥の大天狗や八百万の神様の一部がが危ないことをしている。
山に住んでいる連中なら赤子でも知っていることだ。しかも合法ギリギリだから裁くに裁けない。
「なあ『河城の二番目』。言ってごらん。悪いようにはせんから。さあ」
「ッ!!誰が―――」
「あやややや。遅れました!」
「ようやく来たか。シャメ、早く座れ」
「射命丸!?誰が呼んだ!?」
「二柱か!?」
「私らじゃないよ」
「いやあ、すいません。調べものしてたら遅れました。
さて、にとり。話を遮ってすいません。お願いします―――冷静に」
……貸しだね、こりゃ。
「先の通り……八卦炉の整備ミス。以上!」
「クッ!仕方ない、お前の住処と奴の店、捜査させてもらうぞ!」
な!?
「おお、まったく遅い。すろ-りー、です。御老公。全て調べは終わってます。
これは彼女の部屋から。こっちは香霖堂から。他に探しても『無い』ですよ。
結果は、まったくの事故。ああ、事故って怖いですね」
ありゃあ……流石次期天魔候補。やることがエゲツナイ。
「私ら(二柱)は納得した。後は……お前らだ」
文、神奈子様、諏訪子様。ありがとう。
「クソっ!射命丸!」
「二柱の犬め!」
「射命丸!」
「射命丸ぅ~」
「文ちゃ~ん」
兎に角、今回は何とかなりそうだ。
「天魔!いかがなさる!?」
忘れていた。この方が最終的な決定権を持っている。
いくら『神様』が居るとはいえ、長は天魔だ。
正直、この人の動態は誰にも掴めない。派閥も。住処でさえ。
「んあ?」
「……話聞いてました?」
「おい……天魔。てめえ寝てたとか言わねえだろうな」
「まさかぁ。寝ちゃいませんよ、諏訪子様。
あれでしょ。早苗ちゃんと美鈴(みすず)ちゃんとチルノが、今度の異変解決主役だってことでしょ」
「「「マジで!」」」
話が変な方に行く……
「早苗二つもおめでとう!……じゃねえよ!
まあ、確かにそっちも大事だけどさ。今は今回の事件の話だ!」
「ああ……にとり。おめえ、悪いことしたのか?」
え?
「だから、何か迷惑かけたのか」
「は、はい!すいません……」
「そうか……わかった」
沈黙が走る。恐ろしいほどのプレッシャー(カリスマ)を感じさせる天魔様。
「今回の件は俺の家を建て直す、それでOKだ」
……え。
「何を莫迦な!被害は大きいですぞ!」
「被害って言ってもねぇ……八手ちゃん。被害報告」
白狼天狗の秘書が話を始めた。
「山肌を数里削られました。居住区は被害ゼロ。主要施設被害ゼロ。河川の汚染は無しです」
「「「んな!?」」」
これには私も驚きだ。あれだけの魔力、どうやって……
「あの、八手ちゃん……俺の家は?」
「以上です」
「ひでぇ」
私は文を見た。小さくVサイン。諏訪子様まで。
「判決だ!俺の家ができるまで、にとり、お前の家に泊めること!
いじy、
―――魔獣『鎌鼬ベーリング』!!
うをッ!!危ねえ!!何しやがる、キ○ガイ女!」
「クラゲがいました」
「付くならもっとましな嘘つけ!てめえ!第一なに南斗○鳥拳使ってんだ!」
「五月蠅い!女見っけたら誰それ追いかけやがって!この孕ませ屋が!」
「ああ、そういうこという!?哨戒隊や報告部の若い衆に色目使ってるお前が!」
何、これ?
「おほん。まあ今回の件は、にとり、きちんと各所に謝罪に行きなさい。
付き添いとして『私』が付く。いいな、皆の衆」
「はい!」
「「「……クッ!御意」」」
結局、神奈子様が閉めた。最後、ぐだぐだだったが。
「以上、解散だ……お前ら、終わりだぞ」
「てめぇ!まだ言うか!んな昔のこと忘れろっての!」
「そうやって誤魔化す!男はズルイデスネ。おおテンマずるい流石テンマ汚い」
「キシャーーー!!」
「フシューーー!!」
*******************************************
〈本人の場合〉
「いってぇ……クソ親父」
「いい薬だよ」
気軽に言いやがって。結局今回の件は香霖の修理ミスだって言うじゃないか。
「注意を聞かずに出て行った君も悪い」
「むう……でもさあ、最後に私リストに無いスペカまで使ったみたいなんだ」
「リストに無い?」
「ああ」
誰も、詳しくは教えてくれないんだがな。
「霖坊……腹減った」
「香霖。この人(?)は?」
「ああ、僕の知り合いだよ。昔、君も会ったことあるはずなんだが」
ふーん……覚えて無いぜ。
「弾幕ごっこ強いから、今度からテストにはこの人を使いなさい」
「霖……てめえ」
「おう、よろしく。おっちゃん」
「お、おっちゃん!?あのね、嬢ちゃん。俺はまだまだ若くてだな。
スキマやら嗜虐趣味の変態やら兎詐欺やらよりずっと若いんだ。
せいぜい妹紅かヒス文くらいだぜ。俺の歳」
やっぱ、おっちゃんじゃねえか。
「第一、俺が女かも知れないぞ?どうする?」
顔立ちは……わからないな。
「ククク、違いない。ただね、魔理沙。
人は見た目によらないから、実はこの方お偉いさんかも。
年上は敬っておきなさい」
「よよよ、早苗ちゃんはあんだけ素直なのに……どうしてこうも違うかなぁ」
あれは敬虔な信者精神なだけだぜ。
「まあ霊夢ちゃんより愛想はいいけどね」
そーなのか?
「あの似非聖者の物真似は止めとけ。腐っちまう」
「おっちゃん、捻くれてるぜ」
「だからおっちゃんは……もう!」
だって名前しらないもん。
「そうだな……Mrカ○テと、」
「「ダメ」」
「むう……天(テン)ちゃんと呼びなさい」
「おう。よろしく天ちゃん。早速だが弾幕ごっこを、」
「莫迦モノ」
「痛!叩くな!冗談だよ、冗談」
あの後、紫やら閻魔やらにクドクド説教され、数週間、八卦炉と箒は没収された。
「ああ、つまんねえの……」
「よしじゃあ俺とだな、デートと行こうか」
霊夢のとこにでも茶ぁ集りに行くか。
「無視!?」
「香霖、行ってくるぜ」
「気をつけて」
****************************************
「……これでよかったのか?」
「はい。山の件、助かりました」
正直、にとりだけでは心許無かったが彼のおかげでなんとかなった。
「ったく、老人連中黙らせんのも疲れんだぜ。いくら天魔っつってもよぉ」
感謝してもしきれない。幻想郷古参の勢力である妖怪の山。
いくつもの派閥が鬩ぎ合ってる中、手回しをしてくれたのだ。
それだけではなく……
「天満さん自ら『防衛』に回っていただくなんて、何と言っていいか」
「ふん。口だけなら何とでも言えるさ。それより……呑むか」
「はい」
幻想郷屈指の実力者、天魔。そして僕の腐れ縁。
「天満さん……文になんか言われました」
「天満のくせに生意気だ。だって。うるせえ!こっちは天魔だってえの!」
違いない。
「あの子……一度、八意に見せときな」
「ッ!?……危ないですか?」
やはり……ダメか。
「お前が悪いわけじゃねえ。ただ、無理がたかってるんだよ。残念なことにな。
まあ、あと数年は持つだろ。今のままでもな」
「急ぎます」
「お前が、壊れるなよ」
「……はい」
******************************************
後日、彼を匿っていたことが文にばれて大騒ぎになったとか、ならなかったとか。
「おう、香霖。八卦炉修理終わったか?」
「一応ね……どんな無茶をしたらこんなになるのか、今度レポートにして持ってきなさい」
「ごめんだぜ」
僕も大概暇とはいえ、この娘の厄介事に毎度毎度付き合ってはいられない。
無論、放置しておくこともできないが。
「それで、だ。にとりを連れてきてくれたかい?」
「ああ、あとで道具を持って来るそうだ」
「わかった」
「それより……何する気だ?」
今から僕らは(といっても僕と河童の娘だけだが)ちょっとした作業に入る。
「前々から言ってたと思うが、君の魔法……いや魔砲に無茶があってね。
所謂、グレードアップと思ってくれて構わない」
「は?まあ、よくわかんないけど、強くなるってことか?」
「そうだ、ね」
多少、語弊はあるが。
「お待たせ。霖之助」
「遅いぜ、にとり」
さて、始めるか。
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正直、無理がたかっている。
魔理沙は紅魔の大賢者のように修行を終え、魔女になったわけではない。
人形遣いのように生まれた時から在るべくして魔術師というわけでもない。
無論、この子の師匠のように霊体というわけでもない。
「あとどれくらいかかるんだ?」
この子は人間だ。紛れもない。
あんな巨大な魔砲を放つこの子は人の身なのだ。
この子はわかっていないだろう。自分がどれほど危ない橋を渡っているのか。
「にとりー。まだかぁ?」
「んー……今日は徹夜かな」
「マジかよ。はあ、箒弄るったってそんなかかんないだろ?」
僕にできることはこの子を陰ながらサポートしてやることぐらいだ。
「とりあえず飯にしよう。今夜は長くなりそうだ」
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正直、霖之助が何を考えてるのかはまるでわからない。
しかし簡単な話ではないようだ。顔には表していないが。
「魔理沙は寝たか。じゃあ、続きを、」
「何故だい?」
「ん?」
とぼけている。裏があるのは見え見えだ。
「これ以上、魔理沙を強くする意味があるのかい?
まあ、確かに霖之助が過保護だってのは周知の事実ではあるけど」
「過保護、ね」
「これ……」
今、私達がやっているのは、魔理沙の箒の改造。
魔理沙の要望もあり見目は変えてはいないが……
「どう考えたって、度が過ぎる品だよ。人間にはってことじゃない。
霖之助、あんたが作るにはってことでさ。正直、目つけられるよ」
「……わかってるさ」
話してくれないか。
「君だってわかっているなら、何故手伝う?」
「放っておけないね。捨て置いたらあんたは箍を外すかもしれない」
「箍ね……まあ、箍を外すのは僕じゃないかもしれないよ」
「どういう意味?」
正直、不可解だ。
「魔理沙は、別に道具が無くとも……箒や八卦炉(これ)が無くてもってことだ。
十分、魔法を使えるってこと知ってるかい?」
「……いや」
「使えるんだ。実際昔は……まあ、それはいいとして。
ただね、危ないんだ。八卦炉を渡したのもそれが理由だ」
魔理沙に八卦炉。もはや当たり前のように思えるが、よくよく考えるとおかしな話だ。
彼女は人間だもの。職業、魔法使いなだけの。度し難い。
「……君は生まれてすぐ水を自由に操れる様になったかい?」
そんなわけない。修行はした。
忘れられてるかもしれないが、私は水妖だ。技術屋は悪魔で趣味。
今レベルの術を扱うまで数百年はかかった。
「今のレベルになるまでなら数百はかかる。君でさえ、ね。
魔理沙は、天才なんだろう。努力家でもあるが。
僕は魔法使いじゃないからよくわからないが。
昔、彼女の師匠が言ってた。あの子は幻想郷一の魔女になるだろう。
でもね……」
人間、なのね。
「ああ、彼女は人の子だよ。しかし、基に在るものは人間には過ぎるものだ。
そうだな……これをみてくれ」
霖之助は桶を二つ用意した。片方には水が入っている。
「水(これ)が彼女の魔力だ。あと人間である限り生命力と考えてもらってもいい。
いいかい。これが尽きた時、彼女は……る。まあ、無論回復はできるけどね」
「……わかった。で、その枡はなんなんだい?」
霖之助は大きな枡を取り出した。
「これが八卦炉。こいつで、こう」
水を一方の桶に移した。
「魔砲を撃つ」
ザバァ……
「さあ、計算が得意で、且つ水に詳しい君ならすぐわかるだろう。
……あと何杯だ?」
ゾッとした。
「それは、本当かい?」
「因みに、八卦炉(枡)無しだと、」
桶を引っ繰り返す。
「こうなる」
……バシャッ。
「極論だ、ありえない」
「言いきれるかい?まあ魔力=生命力は言いすぎかもしれないが」
確かに人間は脆弱だ。か弱い少女と言ったら猶のこと。だが話が飛びすぎてる。
「彼女が捨食の術を手に入れれば、話は別だ。君も魔女ら二人から聞いたことあるだろう」
「まあ、話程度には。要は人間辞める術でしょ」
二人と言うのはアリスとパチュリーだ。そういえば二人は魔理沙が術を覚えるのに執着していた。
まさか、この為とは思えないが……魔術師にとっては文字通り死活問題なのだろう。
「でも、力をセーブすれば問題ないんじゃない?
そんな頻繁にぶっ放してるわけじゃないし」
そうだ。魔理沙とて魔力が枯渇するほどの無茶はしてないはず。
「慧音に歴史を、あの子が今までどれだけ無茶をしてきたか調べてもらった。
なんとも化け者だね……並の年相応の少女なら廃人になっててもおかしくないレベルだよ。
まあ、紅魔館のメイド長ほどじゃないが」
「そんなことは……どうでもよくは無いけど、現に今だって上手くやってるじゃない。
廃人寸前だっていうならその前兆だって見えるはず」
「そう。見えるはずなんだ。でもどうだい?君は魔理沙がそうなったところを見たことがあるかい?」
「無いよ。あったら誰かしらには相談してるさ」
言っている意味がわからない。
つまり、霖之助は何を言いたいのだ?
「事前策だよ。そうなる前のね。」
「事前?」
今度は本を取り出した。求聞史紀の写しか。
「仮説だが、、あの子は自分が『どんな』魔術師・魔法使いなのかわかってない。
五行やら降霊、召喚、精密操作等々。わかってないから魔力の使い道がわからない。
言葉は悪いが魔力の垂れ流し魔女だよ。今の魔理沙は」
「パワー&スピード特化じゃないの?」
「それは戦闘スタイルだよ。
いいかい。魔術師というのは本来目的があってなるものなんだ。
実際見たことは無いが、パチュリーなら錬金術と七曜を混ぜ『石』の錬成に成功している。
アリスは実現途中だが、完全自立(フル・オート)の人形(ひとかた)の誕生。
魔理沙の師匠の場合は特殊で……まあ、昔は全ての人間に復讐をなんて言ってたけど。
パチュリーが言うには『第六法』とかなんとか。詳しいことはわからない。
もう一人いるが……聖さんはいいか。兎に角!」
……?
「魔理沙には目的が、無い。これでは魔女としての意味が無いんだ。
ただ弾幕ごっこをして異変を解決する。僕もこれがあの子の魔女としての意義だと思ってた。
しかし、意義じゃダメなんだ。
これは三人とも言ってたんだが、それなら退魔師にでもなれ、だって。
目的があって創めて動き出す。それが魔法使いなんだ。あの子は魔法に、使われているらしい……」
「なら、それを教えればいい。誰に聞けばいいんだ!?
アリスかい?パチュリーかい?それともその御師匠さんに?
どうとでもなる問題じゃないか!」
「声が大きいよ」
「む……」
確かに魔理沙に聞かれてはいけない話かもしれない。
……いや、いっそ聞かせて気付かせるか。
「馬鹿なことは考えない方がいい。君が彼女の親友ならね」
親友、か……
「確かに、魔術師は自らの目的を隠すものではあるが……
ここ(幻想郷)で秘匿にする意味は無いだろ。現に二人は公だ。
メリットも無いが逆も無い。魔理沙が目的を隠す必要もない」
「『恋』の魔法使いなんじゃ?」
「……莫迦言うな」
本を仕舞う。
「……まあ、話は掴めてきた。しかしだよ、それはマスタースパークの話でしょ?
他にもブレイジングやメテオなんかは大魔力だけど」
「言ってて、気づかないか?」
「え?」
どういう……
「いいかい。この大枡一杯が八卦炉を『使った』、マスタースパークだよ」
そういうことか。箒星も隕石も『使ってない』。
「そうだ。しかし、あの子は負担なんてお構いなしだ。
第一、自分に負担がかかってるかどうかすらわかって無いのかもしれない。
性質が悪いことに八卦炉無しでもこれらを使える……使えてしまうってことだよ。
同業者や紫、幽香ならこれら全て、わかるのかもしれないが、ね」
「どうして……止めないの?」
「ん?」
「わかってて止めない貴方がわからない。見す見す壊れていくのを許しているようなものじゃない」
「君は……魔理沙の家、いや、部屋(ラボ)を見たことがあるかい?」
正直、汚くて見れたもんじゃない。というか玄関にすら入れなかった。
「まあ、片づけられないのは今に始まったことじゃないが……あの子は必死に探してるのさ。
自分の姿、為るべき形をね」
「為るべき……」
「あの子はよく物を盗むだろ。本人は借りてるだけと言ってるが。
少々歪んでるけど、あれが魔理沙の研究さ。自分の中から姿を探せない。姿=目的だと思っていい。
だから外側から探すことにしてる。不器用なんだね。きっと死ぬまで続けるんだろう……」
盗みが研究?
「昔、止めたことがある。魔法じゃない。盗みをだ。
今だって止めろって?まあ、仕方ないよ、あれはね。
なんせ研究だ。君の工芸を止めるようなものだよ。
兎に角、多少だが見えてきているのかもしれない。自分の特化、目的を」
「成程。つまり霖之助は魔理沙の盗みの本質に気付き、頑張る姿に心打たれ、何も言えなくなったと」
「恥ずかしい限りだがね」
「はあ……死ぬまで、借りてくぜ。ねぇ」
どうしようもない保護者だ。
「八卦炉はあの子の制御盤さ。あれで消費を抑えている。完璧ではないが。
今回はこれ、」
小さい計量カップを取り出した。
「このくらいに燃費を抑える。どうだ?これなら魔力の回復は余裕を持って追いつくだろう」
コポッ……パシャ。
「……わかったよ。しかし霖之助。あんたの話、どこまで、本当かい?」
「正直、確信は得てない。仮説レベル、ただ可能性としては十分在り得ることだ。
僕は事後策に回るつもりは無いんでね。だからこうして君を呼んだんだ」
共犯になるのは構わないが……何故私なんだ。
「……他に、この話を知っている連中は?」
「彼女の師匠。あとパチュリー。慧音、それに……親父さんだ」
親父さん?
「魔理沙の父親だよ」
「ああ、人里の大道具屋か……なんで知ってるんだい?」
もしや系統魔術師か?
「僕と魅魔さん……魔理沙の師匠が話しておいた方がいいと判断したんだ」
確かに娘の命にかかわることだからね。だが……
「しかし、よく親父が許してるね」
「許してないから、家出してるんだろ」
違いない。しかし……パチュリーと魔理沙の師匠は何をしてるのだ?
「パチュリーは、というかこの理論は彼女から半分聞かされたものなんだ。
莫迦魔力の半端者。ただ、まあここは同意したが、努力家だ。
魔理沙が頼めば弟子にしてやらないことも無いが……まず無いだろう。
魔理沙の師匠は生涯一人だろうからね。あと死ぬまでパチュリーとは親友でいたいのだろう。
たぶん彼女が本を盗まれても寛容なのはそれが在るからかもしれないね」
「ほう……白澤は?」
「魔理沙の歴史を調べる際に、ね。対策は練る、だそうだ」
「……成程。じゃあ、件の師匠さんは?」
「……さあ」
「は?さあ?なんでよ。弟子が心配じゃないの!?」
「この件を考えるようになったのは彼女がきっかけだ。『魔理沙は壊れるよ』って一言ね……
元々あっさりしてた人(?)だから。正直、紫に似たタイプで僕は苦手なんだよ。
まあ、仮にも師匠だ。何かしら動いているんだろう」
「そう願いたいね。ところでアリスは同じ魔術師なのに知らないのかな?」
私だってアリスが高位の魔術師だってことくらいわかっている。なのにどうして知らないのか。
「……女性の年齢の話をするのはよくないが、パチュリーは何歳くらいだと思う?」
本当に失礼な男だ。
「まあ、百は越えてるよね」
「そのくらいだろうね。じゃあ、アリスは?」
「同じくらいじゃないのかい?」
「はずれ」
何を言ってる。確かに日本妖怪は西洋魔女とは基盤が違うとはいえ、レベル、年季くらいはわかる。
アリスくらいの魔女であれば百はゆうに越えているだろう。
霖之助は指で1と5を作っていた。
「150?」
「はずれ」
「まさか……1500?」
「……15前後だ」
「からかうのもいい加減に、魔理沙達と大して変わらないじゃない」
「アリスは捨食は必要ないと……思う」
何を言ってる?
「出の違い。アリスは魔界、パチュリーは外から来た」
「それが?」
「こういう言い方は彼女に申し訳ないが……アーティフィシャル・チャイルド」
「……『できた』ばかり、か」
「萃香の言葉を借りれば『魔族』らしい」
そういうことか。年季が違うと。
「それに流石の彼女でも、知識じゃパチュリーには敵わない。
あと、この件に気付いたら……面倒だ」
言えてる。クールだが、魔理沙のこととなると感情的になる彼女だ。難しい。
「同じ理由で霊夢もね」
「彼女たちなら魔理沙を再起不能にでもして止めかねないからね。
でも、どうして私に話したの?私だって再起不能にするかもよ」
それが知りたい。
「僕の『やり方』は魔術的じゃない。河童(きみら)寄りだ。協力を仰ぐのも兼ねて。
そして君はその手の分野で誰よりも魔理沙に親しい。僕が見る限り冷静、いや慎重だ。
話しても大丈夫だろうと……勘だが、ね。それに、」
―――君の『お姉さん』も多少、知ってるからね―――
?!!……そういうこと、ね。嫌がおうにも手伝えってことか。
「気に障ったなら謝る。しかし……君がさっき言ったろう。
僕を一人にしたら箍が外れると。自分でもそう思う。
きっとこの子と一緒に外れてしまうだろう。頼む。手を貸してくれ」
「……わかったよ。ただ材料は確保してあるんだろうね」
くしゃくしゃの紙を数枚。
「できそうかい?」
……正直、驚きだ。確かに魔理沙の兄貴分なんだろう。
神奈子(新参神様)が持ってきた『ぱそこん』、『掃除機』、『ばいく』の設計図と変わらないレベル。
幻想郷には過ぎたる能力。道具の名前と用途がわかる程度?そんな甘いもんじゃない。
彼はきっと、もっとすごい能力。それが何か、一介の水妖にすぎない私にはわからないが。
これが山の老人連中や紫に見つかったら大変なことになる。
「パチュリーにはOKをもらった。魔力回路もどうにかなるらしい
「できるよ……ああ、嫌でもやってやるさ」
「流石『河城』だ」
「次、名字で呼んだら……からね」
私は私(にとり)。
「すまない。よろしく頼むよ、にとり」
********************************************
「ちがうって!だから、レーザーにはこう螺旋がね―――」
「箒は竹じゃなくて木なんだからもっと大胆に―――」
「―――自爆装置は!!」
「仕込み刀は必需で―――」
「うるせぇ!!寝れねぇ!!」
「フレアはホーミングに―――」
「実弾より光線の方が―――」
「アリスゥ!泊めてくれ!!」
「立体ホログラムも―――」
「―――段ボールは?」
「圧力ガスと緋々色金のレスポンスが―――」
「填まる時の音は、ガシャーンッ!で―――」
「ガチャンッ!だろ―――」
「魔力光は変わらず―――」
「魔理沙は?」
「出てった」
「まあいい……でスコープは―――」
「いやサーチポインタの方が―――」
「フフフ―――」
「ハハハ―――」
********************************************
「ただいま……って大丈夫か、お前ら?」
「「お帰り……」」
屍人(グール)二匹。
「一応、できたよ。試しては無いけどね」
「ほいな」
私はにとりから箒を受け取った。別段、変わった様子は無いが。
「八卦炉を先っぽに填めて御覧」
ガチャ……プシュー……
「おお!!スゲー!!よっし!これで勝てるぜ!」
「喜ぶのはいいが、まだ調整が……」
「ありがとよ。香霖、にとり!霊夢のやつ、ヒイヒイ言わせてくるぜ!」
「ちょ!待て、魔理沙!」
「ああ、嫌な予感しかしない……」
********************************************
「あれでよかったの?」
「たぶんね。試し作動くらいしたかったが」
眼の下にクマをこさえて僕らはぼやいた。
「とりあえず……オヤスミ」
「きゅう~」
本日休業。
********************************************
……ドー―ーン!!
「!!なんだ!!」
森の方からドでかい音がした。
「おい、にとり!起きるんだ!」
「らめぇきゅうりいっぱいすごいのぉはいらないよぉ」
「お・き・ろ!」
「んにゃ!!」
麓の、博麗神社の方からだ。光の柱が動いている。
「何、あれ……」
「成功したと言えば成功だ」
「霖之助……」
「ああ……」
「予想、以上……じゃない?」
「……逃げるか」
「設計図、燃やそう」
「ヴワルに控えあるから、おk」
*********************************************
「何処へ行く気だ、霖之助」
嫌な声がした。
「慧、音?」
「何故逃げる」
「逃げてないよ……ただ今から、ちょっと買い出しに」
「ここが、店だろう」
「無縁塚に、品拾いに」
「そうか。しかし、今は何処も『危険』でな。出ない方がいい」
ああ、慧音さん。怒ってらっしゃる。
「あと、にとり。何故お前がいる?」
「か、買い物だよ!ネジが、そうネジが足りなくて!」
「本日休業、と出てるが?」
「あ!!」
「どうやらネジが足りてないのはお前ら自身らしいな。
さあ、どういうことか話してもらおうか。御二人さん」
やばい。慧音の折檻はごめんだ。どうにかして逃げねば……って。
「にとりは?」
「……さあ。気配は近くにあるが」
「逃げた……一人で」
光学迷彩。卑怯な!まだ近くに!
「まあいい。じっくり聞かせてもらおうか。霖之助」
「……僕一人では、説明しかねるのだが」
「じゃあ、もう一方いればいいんだね」
「「!?」」
ドアの所に、一匹。
「ほい―――パチンッ―――っと」
ボスンッ!!
「ひゅい!!」
地面に穴が。
「協力感謝する。因幡」
「なに、同じ被害者さね」
「あの、てゐさん……怒ってる?」
久しぶりに杵持ちの彼女を見た。何というか……オーラが。
「例えば、自分の店『薙ぎ払』われたら……霖。お前どうする?」
「ごめんなさい。いや、実際やったのは僕じゃなくて……
確かに、僕も関わってはいるんだがね。テストする前に魔理沙が八卦炉を、」
「「……だから?」」
ああ……刻が見える。
********************************************
〈彼の場合〉
結果から言って成功だろう。燃費は良くなったようだ。
しかし拙かったのは、バリエーションだ。
余計な事を教えすぎた。いや、教えたわけではない。あの子は感覚派だ。
壁で押し出す。シャープにして、薙ぐ。そう言っただけで実際行える。
まったくもって天才なのだろう。
「で、この内容では納得いかんのだが」
「慧音。わかってくれないか?わかるだろ?これを公にはできないんだ」
あの子に気付かれてはいけない。一応、話はわかっているはずだ。
「はあ……今回はお前の八卦炉修理『ミス』として報告しておく。貸し一だぞ」
「ごめん、慧音」
「まったく、事前に私に言っておけばこうはならなかったものの……」
「すまない」
「過ぎたことはいい。で、うまくいったのか?」
一応は。ただ別の問題点も出てきたが。
「永遠亭(うち)や紅魔にはどう説明する?」
「永遠亭(そちら)はてゐさん、お願いします。深くは聞かないでください。
紅魔にはパチュリーに。管理者(紫と霊夢)やヤマ様には慧音、一緒に頼む」
「山は?」
「にとりに。あと天魔様もいます」
「相変わらず、恐ろしいコネクションだな。お前は」
自分でもそう思うよ。
……魔理沙が無事ならなんだっていいさ。
**********************************************
〈共犯者の場合〉
霖之助は無事だろうか。私は山の会議へ出席(呼び出し)。
老人たちは何としても彼の技術を欲しがるだろう。
神様や若い衆は知らないが。
「で、にとり。あれは霧雨魔理沙の八卦炉の暴走と?」
「はい、諏訪子様」
「本当か?嘘はいかんよ、『河城』」
「本当です……」
「まあ、わかった。兎角、今回の件はお前と森近の二人が原因なんだな?」
「はい、神奈子様」
神奈子は事情を察してか話を穏便にしようとしてくれている。諏訪子も然り。
「それじゃあ、納得がいかないよ。ねえ『河城』の」
「そうそう。詳細を頼むぞい『河城』」
……こいつらはッ!!
「あんた等、いい加減にしな!」
「諏訪子様……」
「そう言われましても『神様』や。これは圧力ですよ、人間側からの。
事故で済まされては山としても威厳が立ちませぬ」
「ここは然るべき対応か、または『誠意』を見せてもらわねば」
何が『誠意』だ。反吐が出る。貴様らが欲しいのは、強大な力だろう。
それも幻想郷(ここ)のルールお構い無しの。
旧派閥の大天狗や八百万の神様の一部がが危ないことをしている。
山に住んでいる連中なら赤子でも知っていることだ。しかも合法ギリギリだから裁くに裁けない。
「なあ『河城の二番目』。言ってごらん。悪いようにはせんから。さあ」
「ッ!!誰が―――」
「あやややや。遅れました!」
「ようやく来たか。シャメ、早く座れ」
「射命丸!?誰が呼んだ!?」
「二柱か!?」
「私らじゃないよ」
「いやあ、すいません。調べものしてたら遅れました。
さて、にとり。話を遮ってすいません。お願いします―――冷静に」
……貸しだね、こりゃ。
「先の通り……八卦炉の整備ミス。以上!」
「クッ!仕方ない、お前の住処と奴の店、捜査させてもらうぞ!」
な!?
「おお、まったく遅い。すろ-りー、です。御老公。全て調べは終わってます。
これは彼女の部屋から。こっちは香霖堂から。他に探しても『無い』ですよ。
結果は、まったくの事故。ああ、事故って怖いですね」
ありゃあ……流石次期天魔候補。やることがエゲツナイ。
「私ら(二柱)は納得した。後は……お前らだ」
文、神奈子様、諏訪子様。ありがとう。
「クソっ!射命丸!」
「二柱の犬め!」
「射命丸!」
「射命丸ぅ~」
「文ちゃ~ん」
兎に角、今回は何とかなりそうだ。
「天魔!いかがなさる!?」
忘れていた。この方が最終的な決定権を持っている。
いくら『神様』が居るとはいえ、長は天魔だ。
正直、この人の動態は誰にも掴めない。派閥も。住処でさえ。
「んあ?」
「……話聞いてました?」
「おい……天魔。てめえ寝てたとか言わねえだろうな」
「まさかぁ。寝ちゃいませんよ、諏訪子様。
あれでしょ。早苗ちゃんと美鈴(みすず)ちゃんとチルノが、今度の異変解決主役だってことでしょ」
「「「マジで!」」」
話が変な方に行く……
「早苗二つもおめでとう!……じゃねえよ!
まあ、確かにそっちも大事だけどさ。今は今回の事件の話だ!」
「ああ……にとり。おめえ、悪いことしたのか?」
え?
「だから、何か迷惑かけたのか」
「は、はい!すいません……」
「そうか……わかった」
沈黙が走る。恐ろしいほどのプレッシャー(カリスマ)を感じさせる天魔様。
「今回の件は俺の家を建て直す、それでOKだ」
……え。
「何を莫迦な!被害は大きいですぞ!」
「被害って言ってもねぇ……八手ちゃん。被害報告」
白狼天狗の秘書が話を始めた。
「山肌を数里削られました。居住区は被害ゼロ。主要施設被害ゼロ。河川の汚染は無しです」
「「「んな!?」」」
これには私も驚きだ。あれだけの魔力、どうやって……
「あの、八手ちゃん……俺の家は?」
「以上です」
「ひでぇ」
私は文を見た。小さくVサイン。諏訪子様まで。
「判決だ!俺の家ができるまで、にとり、お前の家に泊めること!
いじy、
―――魔獣『鎌鼬ベーリング』!!
うをッ!!危ねえ!!何しやがる、キ○ガイ女!」
「クラゲがいました」
「付くならもっとましな嘘つけ!てめえ!第一なに南斗○鳥拳使ってんだ!」
「五月蠅い!女見っけたら誰それ追いかけやがって!この孕ませ屋が!」
「ああ、そういうこという!?哨戒隊や報告部の若い衆に色目使ってるお前が!」
何、これ?
「おほん。まあ今回の件は、にとり、きちんと各所に謝罪に行きなさい。
付き添いとして『私』が付く。いいな、皆の衆」
「はい!」
「「「……クッ!御意」」」
結局、神奈子様が閉めた。最後、ぐだぐだだったが。
「以上、解散だ……お前ら、終わりだぞ」
「てめぇ!まだ言うか!んな昔のこと忘れろっての!」
「そうやって誤魔化す!男はズルイデスネ。おおテンマずるい流石テンマ汚い」
「キシャーーー!!」
「フシューーー!!」
*******************************************
〈本人の場合〉
「いってぇ……クソ親父」
「いい薬だよ」
気軽に言いやがって。結局今回の件は香霖の修理ミスだって言うじゃないか。
「注意を聞かずに出て行った君も悪い」
「むう……でもさあ、最後に私リストに無いスペカまで使ったみたいなんだ」
「リストに無い?」
「ああ」
誰も、詳しくは教えてくれないんだがな。
「霖坊……腹減った」
「香霖。この人(?)は?」
「ああ、僕の知り合いだよ。昔、君も会ったことあるはずなんだが」
ふーん……覚えて無いぜ。
「弾幕ごっこ強いから、今度からテストにはこの人を使いなさい」
「霖……てめえ」
「おう、よろしく。おっちゃん」
「お、おっちゃん!?あのね、嬢ちゃん。俺はまだまだ若くてだな。
スキマやら嗜虐趣味の変態やら兎詐欺やらよりずっと若いんだ。
せいぜい妹紅かヒス文くらいだぜ。俺の歳」
やっぱ、おっちゃんじゃねえか。
「第一、俺が女かも知れないぞ?どうする?」
顔立ちは……わからないな。
「ククク、違いない。ただね、魔理沙。
人は見た目によらないから、実はこの方お偉いさんかも。
年上は敬っておきなさい」
「よよよ、早苗ちゃんはあんだけ素直なのに……どうしてこうも違うかなぁ」
あれは敬虔な信者精神なだけだぜ。
「まあ霊夢ちゃんより愛想はいいけどね」
そーなのか?
「あの似非聖者の物真似は止めとけ。腐っちまう」
「おっちゃん、捻くれてるぜ」
「だからおっちゃんは……もう!」
だって名前しらないもん。
「そうだな……Mrカ○テと、」
「「ダメ」」
「むう……天(テン)ちゃんと呼びなさい」
「おう。よろしく天ちゃん。早速だが弾幕ごっこを、」
「莫迦モノ」
「痛!叩くな!冗談だよ、冗談」
あの後、紫やら閻魔やらにクドクド説教され、数週間、八卦炉と箒は没収された。
「ああ、つまんねえの……」
「よしじゃあ俺とだな、デートと行こうか」
霊夢のとこにでも茶ぁ集りに行くか。
「無視!?」
「香霖、行ってくるぜ」
「気をつけて」
****************************************
「……これでよかったのか?」
「はい。山の件、助かりました」
正直、にとりだけでは心許無かったが彼のおかげでなんとかなった。
「ったく、老人連中黙らせんのも疲れんだぜ。いくら天魔っつってもよぉ」
感謝してもしきれない。幻想郷古参の勢力である妖怪の山。
いくつもの派閥が鬩ぎ合ってる中、手回しをしてくれたのだ。
それだけではなく……
「天満さん自ら『防衛』に回っていただくなんて、何と言っていいか」
「ふん。口だけなら何とでも言えるさ。それより……呑むか」
「はい」
幻想郷屈指の実力者、天魔。そして僕の腐れ縁。
「天満さん……文になんか言われました」
「天満のくせに生意気だ。だって。うるせえ!こっちは天魔だってえの!」
違いない。
「あの子……一度、八意に見せときな」
「ッ!?……危ないですか?」
やはり……ダメか。
「お前が悪いわけじゃねえ。ただ、無理がたかってるんだよ。残念なことにな。
まあ、あと数年は持つだろ。今のままでもな」
「急ぎます」
「お前が、壊れるなよ」
「……はい」
******************************************
後日、彼を匿っていたことが文にばれて大騒ぎになったとか、ならなかったとか。
ネタ的には面白いのだが、表現が追いついていない。
誰が喋っているのかわかり辛い上に状況が伝わってこない。
ちょっと残念だね。
特に山の天狗達の会議?の辺りが誰がいて、誰が喋ってるのかが解り辛い。
俺設定入れるのはいいけど分かるように説明して欲しい。
まぁそれはそれとして所々誤字がありますのでお気を付けを。
それと無理は祟るものなのでたかっちゃいけません、若くてもね。
表現力とキャラ分けについては、にべもございません……
補足を兼ねて、私の『山』の設定ではいくつかの派閥に分かれています。
それについての詳細は次回の投稿で上げるとして、その一派に『老人』達と呼ばれる大天狗陣がいます。
しきりににとりを『河城の』と呼んでいたのはそれらです。
「にとりとみとり」ネタはわりとやり尽くされていますが……はい。
そしてアリスについて。
これは求聞史紀での設定ではなく、萃夢想の萃香のセリフからです。
あと魔界出身ということも兼ねての判断です。
誤字の指摘はありがとうございます。
次回も性懲りもなくあげるつもりなのでよろしくお願いします。
白澤→白沢
>「にとりとみとり」ネタはわりとやり尽くされていますが……はい
作者が創想話を全く見ていないのがこれだけでもわかります。
誰が喋っている台詞なのかがさっぱり
本文で表現した方がいいと思いますが、どうでしょう。
今回の話で老人達とかは出さなくても良かった気がします。
ぶっちゃけ組織物が書きたいなら書きたいで、魔理沙周辺を主軸にした今回の話とは別に書いた方がまとまりがいいのではないかと。
パチュリーに弟子入りなど、解決策はある。でも嫌。
なんだかね。結局の所、魔理沙の現実にそぐわない我侭を押し通す為に、リスクを幻想郷そのものや周囲の者に押し付けてるってだけじゃないの。
泥棒行為を容認してるけど、それは魔理沙の為に他の誰かが被害を蒙っているって事だと理解できないのかね。
ぶっちゃけて言えば、魔理沙が魔法使いを諦めれば済む話。霖之助が個人的に協力するのは勝手だが、他の人妖に迷惑をかけて良いって道理は無い。言っちゃ悪いが、魔理沙が紅魔館でやっているのは押し込み強盗だぞ。パチュリーが黙認してるから良いって話じゃない。
結論としては、中身が薄い上に御都合が過ぎる。居住区に被害が出なかったからって、一つの県ほどの広さもない(公式設定)幻想郷で山肌を数里も削るような被害を出して無罪御免で済むはずがない。少なくとも、八卦炉の所持禁止くらいはされて然るべきじゃない?
なんてゆーかね、作者の書きたい場面ありきで、脇が甘くなってる感じ。
色んな勢力が有るなら、神奈子達と天魔だけで収められないよ。それこそいきなり魔理沙を殺すとかでもおかしく無い。
いくら信仰されてても、後から来た神様だ、というのもだけど、にとり関連の発言とか設定が一番おかしく感じる。
せめて魔理沙の異変解決の功績ととんとんで、くらいの理屈はつけるべきなんじゃ。幻想郷は別に魔理沙一人のためにあるわけじゃないんだから。
魔理沙が天魔や神奈子達といった幻想郷の主だった人妖全体から愛されているって設定なのかも知れないけれど、少なくともそれが公式設定じゃない限りちゃんと作中で説明されてなくちゃダメですよー。
妖怪の山の組織が自身への攻撃行為とそれへの加担した裏切り者を許すはずも、幻想郷を愛する紫が大結界の攻撃を許すはずもありません
魔理沙至上主義的な周囲への悪意すら感じます
A・B合わせてこれだけの長さの物語を、オチつけるところまで、
めいいっぱい頑張って持っていったのは伝わってきました。
それなりには楽しめましたよ。話のテーマもなかなか興味深い切り口だと思いますし。
天魔さまのキャラとかえらく独特で、個人的にはお気に入りw
旧作や最新作の要素もさりげなく濃く盛り込まれているところもニヤリとしました。
まあ突っ込み所は色々あるのですけども、僕が書くまでもなく指摘する人はいるようだし。
そうした方々のコメントを参考に、執筆を重ねてお話づくりに慣れていってみてはいかがでしょうか。
素材はかなり良いものだし、こういう路線を極めていけば名作に化ける予感。
今後の作品に期待しますので、今回の点数は控えさせてください。