長く寒い冬も暖かい春と交代する時季だというのに雪が降る。
白く幻想的な雪がまるで春告精が来るのを嫌がっているように思えた。
・・・実際何処かの妖怪や妖精が拒んでいるのかもしれない。
「雪だな」
「そうだね」
「止みそうにないな」
「降り始めてるのに来たのは君だろ?」
雪によって視界も悪く、冷えるのに来るとはわざわざご苦労なことだ。
こんな時は、家でのんびり本を読むのに限る。
魔理沙も飛び回ってばかりいないで、たまには家の中で大人しく過ごすことを学ぶべきだ。
「外は寒いから出たくない」
「厚着しても寒いだろうね」
「服持ってきてないぜ、貸してくれないか?」
「君が着れそうな服を、今すぐ僕が渡せるとでも?」
「それもそうだな」
・・・暫く雪も止みそうにないし、時間を潰そうか。
「何か飲むかい?」
「熱い茶とついでに湿気ってない煎餅を頼むぜ」
「分かった、探してみるから少し待っててくれ」
相変わらずちゃっかりしている・・・
少し量が物足りないかもしれないが、一応湿気ってない煎餅がまだ残っていたはずだ
「家探ししながら待ってるぜ、・・・って何で嬉しそうなんだ?」
魔理沙が変わっていないことが嬉しいのか、草薙の剣を思い出して嬉しいのか
無意識の内に笑みが零れてしまっていたようだ。
「いやなんでもない、売り物を壊さないでくれよ?」
まぁ、魔理沙に限ってそんなヘマはしないだろうが念のため
「人様の物を壊すような、非人道的な真似はしないぜ」
「勝手に持って行くのにか?」
「んー?何か言ったかー?」
ちょっとした皮肉のつもりだったが、距離が開いてしまって魔理沙には聞こえなかったようだ
「いいや、何でもない」
「ならいいや、ところで私はただ死ぬまで借りてるだけだ死んだら返す」
「・・・あまり軽々しく死ぬと言うのはやめてくれないか?」
僕は人間と妖怪のハーフだけど、人間との寿命の差はとてつもなく大きい。
他の妖怪が聞いたら笑うかもしれないが、別れは寂しい。
・・・まぁ、魔理沙だったら冥界から抜け出してきて、何時でも会えるかもしれないが。
「あー、うんごめん」
少し、重たい空気になってしまった。
お茶と煎餅で少しはマシになってくれると有難いのだが・・・
と思いつつ、店に戻る。
ミ☆
「ズゾゾゾゾゾ」
「何て飲み方をするんだ君は」
「ちょっと前に霊夢がこうやって飲んでいたんだ」
「全く、あの子は・・・」
「そういえば服出来たか?あとこの煎餅辛いぞ口の中がヒリヒリする」
「確かに辛いな・・・、服は今日中には完成するよ」
煎餅にしてはあまりにも辛いので袋をよく見てみると、後ろに注意書きが貼ってあった。
辛すぎて生産中止になったみたいだから気をつけてね。
・・・次からは貰いものを素直に受け取るのをやめようと思いつつ、僕も魔理沙と同じように煎餅に手を伸ばすのをやめた
僕はその注意書きを魔理沙に見せる。
「すまないな、どうやら僕の注意不足だったようだ」
「スキマめ・・・こんな辛い物を押し付けていくなんて、今度会ったら文句言ってやる」
「僕の分も頼むよ」
「あぁ、尾ひれ背びれ胸びれ付けて言っておくぜ」
「言ってないことは言わなくていいだろう・・・」
「あぁ、冗談だ。ちゃんとどうせ外から持ってくるなら美味しいもの寄越せって言っとく」
「話は変わるが、今日は泊っていくだろう?」
雪も少し積もっているようだし、まだまだ止みそうにない
いくらそんなに遠くないとは言え、何か面倒に巻き込まれてしまったら困る
幻想郷でやり返されるのを分かっていながら、魔理沙を襲うような妖怪はいないだろうが念のため
「んー?泊ってっていいのかー?」
「外の天気酷いぞ?」
「・・・有難く泊まらせて貰うぜ」
「じゃあ食事用意するから、待っててくれ」
「じゃあ私は風呂を沸かしてくるぜ」
「それは助かる、でも火力出し過ぎないようにな」
「ははっ、何回今まで使ってきたと思ってるんだそんなヘマしないぜ」
ミ★
「このきのこ美味しいなー、どこで採ってきたんだ?」
「その茸は確か・・・って君が持ってきたんじゃないか」
「・・・そうだったか?うーん食べた覚えがないな」
「まさかとは思うがというか思いたいが、毒見させようとしてないだろうね?」
「そんな酷いことするわけないじゃない♪」
「そうか・・・そうだよな流石にそんなことするわけ、ってこら目を逸らすんじゃない」
っく・・・一応人間とは違って体も丈夫だし
毒茸を食べたくらいで何とかなるわけじゃないが、まさかこんなことをさせられるとは
「いや・・・な?何が目的だったか思い出せないから困ってるんだ」
「まぁ・・・美味しかったし、何ともなかったから別にいいが今後は止めてくれよ?」
「あぁ、これからは先に言ってから渡すぜ、ところで眠いから寝ていいか?」
「毒見頼まれて素直に許可するわけないだろう、寝てもいいよ」
「おやすみこーりん♪」
「あぁ、おやすみ魔理沙」
ミ☆
魔理沙が寝てから僕は、服の仕上げに取り掛かった
いつの間にか雪も止んで、服も完成間近だ
今更だけれども、あの茸には睡眠促進でもあったのだろうか・・・
見たことない茸だったし、やはり素直に贈り物を貰うのは止めた方がいいかもしれない
「んー、こーりんまだ起きてるのかー?」
「あぁ、完成させないとお得意様からの催促がまた来るからね」
「それは困った奴がいるんだなぁ・・・zzz」
「あぁ、手のかかる可愛い妹がいるんでね」
・・・自分で言っておきながら、かなり恥ずかしいことを言ったかもしれない
天狗は当たり前として、誰にも聞かれてないといいと思いながら魔理沙を抱き上げて布団に戻す
「全く、冷えるのに布団から出てきて・・・風邪でも引いたらどうするんだ」
そんな愚痴を言いつつも自分の顔が緩んで行くのを止められない
今の僕は、人里から離れて人と関わるのをなるべくやめているけど
こうして、頼りにされたり世話をしながら生きていく
人間のような生活をするのも悪くはないかもしれない
あとがきで卑下はしない方が良いらしいですよ。
もっと自信持ってください!
頬が緩みました。
文末に句読点を打った方が良いかもしれないですね。
ただ、この季節で冬の話をされても、ちょっと…
ただ何故、冬ww
だが、それが良い!
と、思ったら終わっただと!?
だがそれがいい!
あとがきで卑下はしないようにしますね、ありがとうございます。
>>11
季節を間違えたのは百も承知ですが、書かずにはいられませんでした。
>>20
ホッとしていただけたのならなにより、何で冬かは……静かそうだったからかな?
>>26
涼しく……なれました?
>>34
私の中での終わりがここだったんだ……、何だか申し訳ない。
1年越しのコメレスで申し訳ねぇ。