Coolier - 新生・東方創想話

夏の神社でだらだらり

2009/08/03 19:12:08
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「あー、今日もあっついですねー……」

 そう言って畳の上に大の字に寝転がっているのは、
 腋をおっぴろげに見せているという奇妙な巫女装束に身を包んだ
 守矢神社の風祝――東風谷早苗。

「おー、暑いぜー……」

 早苗の隣で彼女と同じく大の字になり寝転がっているのは
 皆様おなじみ普通の魔法使い――霧雨魔理沙である。

「て言うかなんでアンタら私の家でそんなくつろいでんのよ……」

 これまた早苗と同じくして魔理沙の隣に大の字に寝転がっているのは
 ここ博麗神社の巫女にして、幻想郷の元祖ワキ巫女――博麗霊夢である。

 星蓮船自機の3人は、今日も仲良く何をするでもなくのんびりまったり、
 といった感じで、霊夢の居住空間の中でも一番大きい畳の部屋でだらけていた。

「いやぁ、あまりにも暑くて何にもやる気が出なくてなぁー」

 霊夢の言葉に、魔理沙は体を伸ばしながら答える。
 甲高い声で「んぅー……!」と気持ちよさそうに体を弓なりに震わせて、
 5秒後に「ふゆん――」という変な声と共に再び脱力した。
 非常に幸せそうな顔で、魔理沙は瞳を閉じてニヨニヨしている。

「んー、なんというか、くつろぎ空間ですよねー。この神社」
「勝手にアンタらのくつろぎ空間にしないでよ、まったくもう……」

 早苗の言葉に、霊夢は溜息と共に体を起こし、すっくと立ち上がった。

「おー? どうしたんだぁー? 便所かー?」
「きっとお茶が切れたんですよー。霊夢さん、カテキン中毒だから」
「ほほう、貴様ら家主に対していい度胸ね」

 なんだか失礼な魔理沙と早苗の言葉を聞いて、
 霊夢は両手をワキワキさせながら寝転がっている2人へと近付いていった。

「クックック……脇腹を責められて苦悦の声を上げるがよい……」

 いやらしく指先を動かす霊夢は、グヘヘヘへと声を上げて2人ににじり寄る。

「げ、」

 それまで気持ちよさそうに半眼で腹をボリボリと掻いていた魔理沙は
 迫り来る身の危険を感じてぱっちりと目を覚まし、寝たまま起立の姿勢になり、
 ゴロゴロと畳の上を転がって霊夢から逃げ始めた。

「あ、待ちなさい魔理沙! 人の家でゴロゴロするんじゃないわよ!」

 キーッ! という声を上げて魔理沙を追い掛け回す霊夢。
 小走りで追いかけているのに、魔理沙はそれを上回るスピードで
 畳の上をゴロゴロと転がっている。

 どう考えても、普通ならありえないことである。
 畳の上を転がる方が、小走りで追いかけるよりも圧倒的に遅いはずだからだ。

「ちょっと! 何でそんなに転がるのが速いのよ!」

 いつまでも捕まらない魔理沙に、霊夢は痺れを切らして声を上げた。

「ハッハッハ、これぞ霧雨魔理沙さんの301の特技のうちのひとつ!
 『猛スピードで畳の上で捕まらない程度にゴロゴロ』だ!
 ここ2週間の練習の成果を今見せてやるぜ!」

「そんなことのために2週間も努力してたの!?」

 外野から、上半身だけ起き上がった早苗のごもっともなツッコミが入るが、
 魔理沙はゴロゴロ転がりながらしたり顔で解説を始める。

「まったく分かってないな早苗。いいか?
 本当のエンターテイナーってのは、一見無駄かもしれないと
 思うような地味で苦しく辛い努力を影でしているものなんだ。
 そして、いつ訪れるか分からない一瞬のために全力を注ぐ!
 サイレントマジョリティーを考慮した結果なんだぜ! 魔女だけにな!」

 魔理沙は魔法使いであるが、ただそのダジャレが言いたかっただけなので
 魔法使いとか魔女とかの定義の概念はここでは不問にする。

「とりあえず、まったく意味が分かりません」

 早苗の冷静な言葉に、魔理沙は転がりながらやれやれと言った様に首を振る。
 普通ならありえない、非常に器用なテクニックである。
 物理の限界を超えた、魔理沙の涙ぐましい努力のなせる技であろう。

「フフフ、早苗はまだまだ青いな……。
 常識に捕らわれているようでは東方の自機は務まらないzぶべらっ!」

 魔理沙は言いかけたまま、部屋の奥の押入れの襖に激突した。

「あーっ! 何やってんのよー!」

 霊夢がそれを見て、青い顔で怒鳴りつける。

「ま、魔理沙さぁーん!」

 早苗はキッチリとオチをつけた魔理沙の英雄的な姿に、涙しながら咆哮した。
 グワッシャアアア、という音と共に襖が外れ、魔理沙の方に倒れてくる。

「いってぇー! クソ、前方不注意だったぜ……。って、やば――」

 魔理沙は上方から襲い来るそれを避けようとするが、
 普通の魔法使いらしく普通に間に合わず、襖の下敷きになってしまった。

 しかし惨事はそれだけに留まらなかった。

 襖が外れたことにより、それまで押入れに無理やり詰められていた
 布団や羽毛布団やコタツ布団や枕や座布団が雪崩となって魔理沙にのしかかった!

「うげえ、重い! 重い! ギブギブ! てか何で布団ばっかなんだよ!?」
「もう何やってんのよ馬鹿魔理沙ー! また片付けなきゃいけないじゃないー!」
「わかった、片付けるの手伝うから、早くこれどけてくれ! 動けん!」

 魔理沙が襖と畳の間から唯一動かせる右手だけでバタバタと畳を叩く。

「ぷっ……あはははは!」

 早苗は何だかその様子がおかしくて、お腹を抱えて笑い始めた。

「笑ってんじゃねー! 早苗も早く助けてくれよ!」

「あはは、ごめんなさい……。今助けますよ」

 早苗は立ち上がって、魔理沙と霊夢のいる部屋の奥の方へ歩いていった。





        ◆





 霊夢と早苗の協力あって、魔理沙は無事に襖と布団の下から救出された。
 破壊してしまった襖を直して布団類を押入れに戻すのも面倒だったので、
 魔理沙の救出で疲れた霊夢が、「とりあえずかき氷でも食べましょ」と提案した。
 今3人は縁側に座り、霊夢の用意したかき氷に舌鼓を打っているところである。

「まったく……、人の家で暴れるからこうなるのよ?」
「へっ、私は転がっただけだぜ」
「魔理沙さんの無駄なところに全力を尽くす姿勢には涙出ましたよ」
「なんだとコラ」

 お喋りしながら、3人はスプーンで器に入ったかき氷をつつく。
 3人仲良く、森近印のいちごシロップ味だ。

「あー、段々涼しくなってきましたねー……」

 早苗が呟いて空を見上げる。
 空には夕焼けが輝き、庭では蝉がやかましく鳴いている。
 カナカナカナという、ひぐらしの鳴く声も蝉の声に交じって聞こえる。
 少し風も出てきたのか、そよそよと風が少女たちの艶やかな髪を揺らす。
 まだ気温は高いが、それでも日中よりはいくらかマシだった。

「こうやって、だらだらできるのって、すごく幸せですよねー……」

 シャク、と音を立てて早苗のスプーンがかき氷に突き刺さる。
 蝉とひぐらしの合唱を聞きながら、早苗はスプーンを口に運ぶ。
 ひとくちの量が多かったのか、早苗は頭痛に見舞われ、
 「あいたたた……」と声を上げて眉をしかめた。

「魔理沙のせいで疲れたけど、たまには、ね……」

 霊夢は「はぁ……」と息を吐きながら、かき氷をひとくち口に運ぶ。
 溜息を吐きながらも、その顔はまんざらでもないと言うような顔だった。

「まったく、素直じゃないな」

 魔理沙は霊夢の態度にやれやれと言ったように、かき氷を口に運んだ。

「うっさいわ」

 少し照れたように、霊夢の軽い手刀が魔理沙の頭に直撃する。
 魔理沙はチロっと舌を出して、そんな霊夢の様子にくすくすと笑い声を上げた。
 早苗もそれに釣られて、くすくすと笑い声を上げる。

「な、なんなのよもう――!」

 霊夢が顔を赤くしながら早苗と魔理沙をキッと睨みつける。
 その様子がなんだかひどくかわいらしくて、魔理沙はまた噴出した。
 霊夢は怒って、ぽこぽこと魔理沙をにぎり拳で叩き始める。
 魔理沙は笑いながらそれを手で受け止める。

 そんな変わらない友人たちの姿を見て、早苗は優しく微笑んだ。



 ――いつまでも、こんな日が続きますように。



 そう、心の中で願いながら。





<終>
 こんばんは、Takuです。
 某氏の星一面ボスのSSを読んで、かき氷が食べたいなあと思っていたらこんな話が出来上がりました。
 ゆっくりまったりだらりだらりと、私の大好きな早苗さんと主人公組でお送り致しました。
 それでは最後になりましたが、お読み頂き本当にありがとうございました。

※追記
コメント本当にありがとうございました。
励みになります。どうかレスさせて下さい。

>>6. 与吉 さん
 魔理沙を気に入って頂けて嬉しいです。
 魔理沙だけに可愛さが偏ってしまったかな――とは、少しだけ思いますが(笑)。
 楽しんで頂けて何よりです。

>>10.名前が無い程度の能力 さん
 嬉しいお言葉、ありがとうございます
 常識が何なのか、もう私はゲシュタルト崩壊起こしそうです。

>>19.名前が無い程度の能力 さん
 僕の中では、人間組はこんな感じでのんびりだらだらしている感じです。
 むむ、咲夜さんですか。了解です。人間集めて宴会させたら楽しそうですね~。

>>26.名前が無い程度の能力 さん
 とりあえず守矢神社と博麗神社に、そう願ってきますね!


 それでは最後にもう一度。
 読んで頂いた全ての人に感謝します。
 ありがとうございました。
Taku
http://3ehorloge.web.fc2.com/
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コメント



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6.90与吉削除
早苗さんの素敵についてはさておきまして。

可愛い魔理沙が居ると聞いてとんできましたっ!
畳ゴロゴロ魔理沙!これは最強。良いですよね、すっごく良いですよね。
可愛い。魔理沙かわいい。すっごく可愛い。

>甲高い声で「んぅー……!」と気持ちよさそうに体を弓なりに震わせて、
>5秒後に「ふゆん――」という変な声と共に再び脱力した。
>非常に幸せそうな顔で、魔理沙は瞳を閉じてニヨニヨしている。

主にこのあたりから引き込まれはじめました。素敵! 可愛い魔理沙は大好物!
10.100名前が無い程度の能力削除
非常に人間っぽくていいですね。

そしてまた「常識にとらわれない」ことと「非常識」をはき違えてる⑨がいるww
19.100名前が無い程度の能力削除
人間組は皆仲良しこよしな友達同士だと良いなぁ

…次は咲夜さんもいれてください
26.100奇声を発する程度の能力削除
YES!!!!

いつまでも、こんな日が続きますように願います!