鳥の声。
あぁ、朝だ。そう思いながら私は目覚めた。
目覚ましがなくても、私はいつも同じ時間に目が覚める。私の体内時計が目覚まし機能を備えているのか、小鳥達が定刻に私を起こすのか。理由は良くわからないが、とにかく私はちゃんと起きるのだ。
部屋に掛かった時計を見る。――7時50分。今日もいい感じだ。
私は周囲から早起きだと思われているらしいのだが、実はそうでもない。早起きの基準が何時なのかは知らないが、8時ちょっと前はどう見ても早起きとは言えないだろう。
私はベッドから立ち上がると、大きく伸びをした。そしてカーテンを開ける。
窓から朝の眩しい光が入ってきて、私は思わず目を細めた。窓の近くの木の枝で小鳥達が踊っていた。美しい声で鳴きながら、軽快なステップを私に披露した。
いい天気だ。心も晴れやか。
小鳥達は羽ばたいた。それは朝の神々しい光の中で舞い、そして空の中に飛び込んで行った。
窓を閉めて部屋の中に入った。
私はいつものように、服を着るなどの朝やるべきことを済ませた。いつものことなので特筆することはない。全くもっていつも通りの朝である。正確に言えば、足の指を物にぶつけてしまって苦しんだが、それを除けば完全なるいつも通りの朝である。
◇
私は外に出た。気持ちの良い朝だ。
私は毎朝、散歩に出る。ゆっくり、のんびり、この美しき幻想郷の景色を見ながら歩くのが、私は好きだった。
しかし、そんなことは普段の私からは想像できないだろうと思う。いつも動いている、というイメージを私は周囲に持たれているらしいのだ。
まぁそのようなことはともかく、私はぶらぶらと歩いた。その結果、まず辿り着いたのが神社であった。巫女さんはまだ夢の中だろうか。
小銭を持っていたので、私はそれを賽銭箱に入れた。その音は「チャリーン」ではなく「カランカラン」なのだろうなと私は思った。
私は神社を出た。――何をお願いしたのかって? もちろん「幻想郷が平和でありますように」だ。
私は散歩を再開した。幻想郷の景色は自然の素晴らしさを私に訴えかけ、毎日散歩をしていても飽きることはなかった。木々は静かに私を見下ろしていた。
次に訪れたのは、チルノ達がよく遊んでいる湖だった。もちろんこの時間には誰もいなかったから、私は大きな湖を存分に眺めることができた。
そうだ。この湖を一周してみようか。
湖はとても大きく、1周するのに1時間は掛かると言われている。しかし私は歩き始めた。湖の周りを散歩するのは初めてのことなので、私は新しいことに挑戦する子供のような気持ちになっていた。
◇
そして今、私は帰宅した。私の体は疲れなどを一切訴えなかった。私はタフなのだ。
多くの仕事が私を待っていたので、私はそれを片づけることにした。掃除、洗濯、などなどである。
食事を作り終えて、全ての仕事が終わったのはそれからかなり後のことであった。
私は、ふぅ、と一息。仕事を終えた後は、やはり清々しい。
時計を見ると、7時55分。
◇
「朝ですよ! おじょ――」
「わかってるわ!」
レミリアは叫ぶようにして言った。私が部屋の外で待っていると、レミリアが部屋の中からゆっくりと出てきた。朝のレミリアからはカリスマを欠片も感じることができず、子供のようにしか見えなかった。
「おはよう、咲夜」
「おはようございます。朝食の準備はととのっております」
「ええ」
時計の針は8時10分を示していた。これが朝の8時であることは言うまでもなかろう。
「今日はどこかお出掛けになりますか」
「そうね……」
レミリアはちょっと考えて、それからこういった。
「散歩に行きましょ。――湖の周りなんてどう?」
もしかしたら咲夜は、またかと思ったかもしれない。しかし咲夜は笑顔で言った。
「はい。喜んでお供致します」
こう言うところは、やはり流石の咲夜なのである。