その日、魔理沙は珍しい人物の訪問を受けていた。
「パチュリー、よく来たなあ。というかよく来れたというか…」
テーブルについたパチュリーに茶と菓子を出しながら、魔理沙は言った。
いつもと同じく眠そうな目をしたパチュリーは、ありがとう、とお菓子に手をつける。
パチュリーが紅魔館の外に出た話など、魔理沙は聞いた事がない。
ましてここは安全な街道ではなく、瘴気の立ちこめる魔法の森の中だ。
いかに強力な魔力を有しているパチュリーとはいえ体は虚弱。
疲労や突然の喘息発作で倒れでもしたら、命に関る。
「最近は体の調子がいいの」
「へぇ…いやぁなんにしても驚いた。それで、わざわざうちまで何の用だ?」
ぴく、とパチュリーの片眉が跳ねたのを魔理沙は見逃さない。
「貴方にそうを言われると、本気でこの家を吹き飛ばしたくなるわ」
魔力を宿したパチュリーの瞳に、冗談だぜと、魔理沙は苦笑いする。
パチュリーがわざわざ出向いてくる理由なんて、ほぼ決まっている。
「そんな事したら私が借りているパチュリーの本まで燃えてしまうぜ」
「へぇ、私の本であることは忘れていないのね。自分の所有物だと思い違いをしてるかと」
「言ってるだろう。死ぬまで借りてるだけだって」
「許可した覚えなんて無いわ…魔理沙に言っても無駄な事でしょうけど」
「おお、ありがたい、とうとう公認か?」
「いいえ、口で言っても無駄だから実力行使で対応するという事よ」
「そうか、今までと変らずだな」
図書館へ本を盗みに入る魔理沙とそれを撃退するパチュリー。
そもそもの出会いから続くこの関係は、茶を酌み交わす仲になった今でも変らない。
図書館の本を賭けにして、日夜磨いた己の技をぶつけ合い戦う。
パチュリーにとっては不公平な話だが、それでも今の関係を許容してくれている。
魔理沙は得がたい友人だと思っていた。
口にも態度にも出さないが。
パチュリーの菓子に魔理沙が手を伸ばす。
その手をパチュリーがぺチンと叩いた。
「いいえ、魔理沙、これからは少し変る」
「へ?」
「これからは私も貴方の家を襲撃する。そして本を取り返す」
魔理沙はちょっと驚いた後、にやりと口を歪めた。
「へぇ、そいつはまたおもしろい事を考えたな」
我が家を襲撃する、なんて宣言された事は初めてだ。
それも、普段あまり積極的ではないこの魔女が、そんな大胆な事を言う。
こいつはエキサイティンっだぜ!と心が躍ると同時に、ふと心配にもなる。
「でも大丈夫なのか?体に負担がかかるんじゃないのか?」
パチュリーの魔力の強大さは身を持って理解しているが、その体の弱さも良く知っている。
「私にそうさせているのは貴方でしょ。心配するなんて、おかしな話」
ごもっともであった。
「いや、そういうふうに言われると…そのなぁ…。あれか、今日来たのもそれが目的か」
「他に何の用があるの。さて…さっそくだけど本を返しなさい」
「む、いきなりか」
椅子から立ち上がったパチュリーに、勢い良く魔力が集まっていく。
それを感じて魔理沙の目が輝いた。
もはや目の前にいるのは、ただの虚弱体質少女ではない。強力な魔術を操る希代の魔法使い。
頭にあった心配事など全部吹き飛んで全身の血が騒ぎ始める。
「へへん!返せと言われて素直に従う私だと?」
「思っていないわ。今日は喘息の調子がいいから本気でいくわよ。ここでは狭い。表にでなさい」
「おうよ!」
パチュリーはフワリと浮かびあがり、開け放たれていた窓から外へ飛び出す。
魔理沙も愛用の黒帽子を被り、箒にまたがって同じように飛び出した。
誰もいなくなって静かになった魔理沙の家。
しかし次の瞬間、ゴオッという爆風が窓ガラスをガタガタと揺さぶった。
さらに激光と轟音と強い振動も加わり家全体が揺れる。
テーブルの上のお菓子が乗っていた皿が、ガシャンと音をたてて床に砕けた。
結局その日は絶好調のパチュリーに軍配が上がった。
悔し涙を浮かべる魔理沙に、「明日も来るから」と嫌味だか別れの挨拶だかを告げるパチュリー。
魔理沙から借りたふろしきにごっそりと本を抱え、ふらふらしながら(本が重い)紅魔館へ飛んで
いった。
パチュリーが取り返した本の中には、魔理沙が近々行う予定の研究に必要不可欠な本もあった。
「みてろパチュリー。取られたものは必ず盗り返すからな!くそ!迎撃魔法と攻撃補助魔法の研究だ!」
刺激的になるであろう明日からの日々を思い、魔理沙は胸を躍らせる。
きっとスリリングで楽しい毎日になる、魔理沙はそう思っていた。
翌日も、昨日の言葉通りに再びパチュリーが魔理沙宅を襲撃した。
魔理沙は八卦炉を片手に箒に跨り、空中に舞い上がる。
同じく空に浮かび、周囲に魔力を展開しはじめるパチュリー。
しかし、弾幕戦が開始されようとしたその時、
「…ぐっ!?」
突然、パチュリーの魔力が霧散した。
それと同時に、ほとんど自然落下するような速度でかろうじてバランスを取りながら地面に降り
ていくパチュリー。
「お、おいどうした?」
あわてて後を追い地面に降りる魔理沙。
パチュリーは地面に膝をついて、胸を押さえてあがき始めた。
「うっぐ…ごほっごほっ…ひゅーっひゅーっ、がっ…げほっ」
耳障りな咳の後、からっぽになった肺が空気を求めている。
けれど、上手く呼吸できていないようだった。
あきらかな喘息の発作。
「おいおい!?調子がいいんじゃなかったのか!?ほら背中におぶされ。ベットに運んでやる」
「ひゅーっ…まったく…ひゅーっ…ちょっと遠出しただけで…げほっ」
「やっぱり無理なんだぜ…。…いやまぁ、無理させたのは私のせいかもしれないが…」
背負ったパチュリーの体は、想像以上に軽い。
自室に向かう魔理沙の耳もとで、パチュリーの掠れた呼吸音は今にも消えてしまいそうだった。
発作がおさまるまでの数十分、魔理沙はパチュリーの額の汗を吹き、背中をさすってあげた。
この脆弱な体のどこに、あの膨大な魔力が秘められているのか、あらためて不思議に感じる。
「どうだ?よくなったか?」
「ええ、もう落ち着いたわ…ありがとう魔理沙」
病気をすると弱気になるというが、なんだか妙にしおらしい感じのパチュリー。
「まったくだぜ。お礼としてまた本を貸してもらおうか」
気弱なパチュリーというのはなんだか見ていて落ち着かない。ここは一発怒らせてやろうと思って魔理沙はそう言ったのだが、なぜかパチュリーは笑った。
「あなたらしい物言いね」
「な、なんで笑うんだよ。怒れよ」
見透かされた気がして恥ずかしい、と魔理沙はそっぽを向く。
そんな魔理沙が可笑しかったのか、パチュリーはしばらく静かに笑い続けた。
「ねぇ魔理沙。自分が死んだら私に本を返すというけど、本当に貴方が先に死ぬのかしら」
突然なにを言い出すのかと、魔理沙は首をかしげる。
「そりゃそうだろ。私は人間、パチュリーは魔女。寿命がまったく違うんだ。今の所は人間を止める
気もないしなぁ」
ここぞとばかりに魔理沙の口が回り始める
「というわけで、パチュリーは私が死んでからゆっくりと本を読めばいいわけだ。私がもう80年
ほど本を貸してもらっても許されるってもんだろう?」
やれやれ、とパチュリーは首を振った。
「無茶苦茶ね」
「はっはっは、魔女は我侭なんだぜ。私も一応人間の魔女でな」
「魔女の気質としては好ましいわね。欲望や目的のためには手段や人の迷惑はおかまいなし…。
ねぇ魔理沙、もう一度言うけど、可能性は0ではないわ」
「あん?なんのことだ」
「だから、私が貴方より先に死ぬこともありうるという事よ。魔理沙は自分が死んだら本を返す、と
言うけど、私が先に死んだらどうするのかしら?魔女らしく、喜んで自分の物にしてしまうのかしらね」
パチュリーは皮肉や嫌味で魔理沙にそう聞いてる風ではなかった。
かと言って真剣に問いかけている様でもなく、ただ何となくに気になったから口にした、という感じだ。
「ど、どうするって…言われてもなぁ…。パチュリーが私より先に死ぬなんて事、考えた事ないし…」
「考えておく事ね。これから貴方の家に本を取り返しに来るたび、私は発作を起こすでしょう。私の体がどこまで持つか、正直なところ自信がないわね」
「…待ってくれわけがわからん。発作が起ころうが何しようが、パチュリーは本を取り返しにくるっ
てのか」
「そうよ」
「そうよって、な、なんだよそれ。駄目だろ。また今日みたいな事になったらどうするんだよ。大人
しく図書館にいろよ」
「貴方は私の本を盗んだわ。本は私の命。命を懸けてでも取り返す」
はっきりと言い切るパチュリーに、魔理沙は言い知れぬ焦りを感じる。
パチュリーの話が理解できない。
だがはっきりと、自分の好いていた日常が目の前で壊れようとしているのを感じる。
今までは自分が本を取っていっても、パチュリーはそんな事いわなかったじゃないか!
魔理沙はそう口にしようとしたが、言えなかった。
自分がパチュリーに甘えていたのだと、認めるような気がしたのだ。
「…でも、レミリアや咲夜が止めるだろ。そんな無茶なこと…」
「私は魔女。我侭なのよ。親友の頼みでもこれは聞けない」
これは本を盗んだ事への報復なのだろうか、と魔理沙はパチュリーを顔色を疑う。
我慢の限界を超えたパチュリーが自分を懲らしめるためにこんな事を言うのだろうか、と。
しかしパチュリーの顔を見る限りでは、たんたんと自分の考えを話すいつもの彼女と変らない。
「貴方の行為は腹立たしいけど、魔女同士の関係としてはこれは正常だわ。お互いの目的のために
争う。これは古来から続く私達魔女の伝統的なコミュニケーションの一つなんだから。私も今の関係を続けていたいわ」
自分が死ぬかもしれないのに、今の関係を続けていたいとパチュリーは言う。
考えるだけ頭が混乱して、魔理沙は理解する事を諦めた。
「ああ、くそ、百年以上も生きてる連中の考える事はわからんぜ…」
「怒り狂った私が貴方に絶交を申し付けたほうがよかったのかしら」
「そのほうがまだわかりやすい。な、なあ、本当にこれからこんな無茶を続ける気なのか?」
「あなたが本を盗むのを止めない限りね」
そんな言い方は止めてくれ!と魔理沙は叫びたかった。
「さてと、一応体は回復はしたけど今日はもう戦えそうにないわね。帰る。また会いましょう。
図書館か、この家で」
「…ほんとに大丈夫なのかよ。なんなら泊まっていっても…」
「あらおかしい。今日は優しいのね。でも大丈夫。さよなら」
「………」
おかしいのはお前のほうだ!と魔理沙は口に出さずに言い返した。
静かになった家の中で、パチュリーの話の意味を考える。
「なんだったんだ…?」
自分が本を盗むめば、パチュリーはかならず取り返しにくる。
けれどパチュリーにそんな体力は無い。
だがそれで命が危険にさらされるとしても、パチュリーは止めないと言う。
遠まわしに、本を盗むのを止めろと言っているのかと思えば、今の関係を続けていたいと言う。
けれども、自分が本を盗み続ければ、パチュリーの命の危険につながる…。
「…なんなんだ…どうしろってんだよ…?」
これはパチュリーの企んだ嫌がらせか何かだろう、魔理沙はそう考えようとした。
けれどその度に、背負った時に感じたパチュリーの異様な体の軽さや、今にも消えかけた細い呼吸
が頭に浮かんでくる。
あれらはたしかに、「死」というものを近くに感じさせた。
大人しく本を盗むのを止めようか…そんな魔理沙らしからぬ事すら頭に浮かんでくる。
そんな事を考える日がくるなんて。
魔理沙はなんだか泣きたくなった。
友人は失いたくない。
魔理沙が悩みに悩んでいる頃、パチュリーは無事にヴワル図書館に帰り着いていた。
やれやれとお気に入りの読書机に向かい、早速本を読み始める。
いろいろと疲れていたが、本を読むのが一番休まる。
するとどこからともなく小悪魔が現れた。
どこかソワソワとしている。
「あ、パチュリー様~、お帰りなさいませ」
「ただいま」
「今日はどうでした?本を取り返せました?」
「いいえ。喘息の発作が起こってしまってそれどころではなかったわ。…もう少し持つかと思った
のだけど」
ため息を吐くパチュリーとは対称に、小悪魔は目をキラキラと輝かせた。
少しは私の心配をしなさい、とパチュリーは溜息をつく。
「わぁ!じゃあ早速作戦開始ですね。どうです上手くいきましたか!?」
「もちろん。私が体を張ったのよ。必ず上手くいかせる」
「やったー!それでそれで?魔理沙の反応はどうでした?」
「落ち着きなさい。そんなにはしゃいで…あなたも悪趣味ね」
「あはは~、小悪魔ですから~」
まぁ無理もないけれど…とパチュリーは思う。
そもそも事の始まりは、小悪魔の不遜な一言だった。
「パチュリー様が先に死んだらどうするんでしょうね」
小悪魔が突然そんな事を言い出したので、とりあえずパチュリーはセントエルモピラーを打ち込んだ。
「ぎゃー!ななな何するんですか!」
「なんだか無礼な事を言われた気がする」
「ご、誤解です!違うんです!」
「じゃあなんなの」
「魔理沙さんがよく言ってるじゃないですか。私が死んだら本を返すぜ!って。それって、パチュリー様
の方が長生きだから先に本を読ませろって事ですよね?ならそうじゃない場合はどうするのかなって…」
「あなたは時々おかしな事を考えるのね…。まずその仮定がありえないし、よしんば状況がそうだと
しても、魔理沙の行動は今と同じでしょうね。何か違う戯言を考えてくるだけでしょう。もともとあ
の無茶苦茶な言い分に意味は無いわ」
パチュリーはこのくだらない話はそこで終わったと思っていた。
けれど、小悪魔の中ではずーっと燻り続けていたようで、ある日突然、
「パチュリー様!私面白い事考えました!」
と、妹様の様にハシャギながらパチュリーに飛びついたのだ。
「こんなくだらない計画をよくもまぁ真剣に…」と計画の手順を聞いたパチュリーは呆れたが、まったく興味が無いわけではなかった。
要するに、パチュリーの命とパチュリーの本、そのどちらを選ぶか。という問いを出来る限り差し
迫った状況で魔理沙にぶつけてみよう、という話である。
僅かながら、興味を引かれた。
うぬぼれているようで恥ずかしいが、あるいは本の被害が減るのでは、と思った。
だからこそ体を張ってまで小悪魔の企みに付き合ってやる事にしたのだ。
「ねぇパチュリー様~、じらさないで早く教えてくださいよぅ。魔理沙さんはどんなでした?」
腕にしがみ付いてくる小悪魔をパチュリーは鬱陶しそうに振り払う。
「そうね、思ったより困っている感じだったわ。どうしていいか分からなかったみたい」
「へぇぇ~~あの魔理沙さんが!」
小悪魔はいつになく目をキラッキラさせている。よほど自分のたくらみが上手くいった事がよほど嬉しいのか。
「けど少々拍子抜けではあったわね…。私が死んだら図書館をいただく、ぐらいの胆力は見せてほし
かったわ。魔女失格よ」
「またまたぁ~。本当は嬉しかったんじゃないんですかぁ~?魔理沙が悩んでくれて☆」
グォッと、パチュリーの拳に魔力が収束した。小悪魔の顔色がかわる。
「はしゃぎすぎると痛い目を見るわよ」
「すすすすすいません」
小悪魔は背中を向けて逃げていった。
ふぅ、とため息をついて、魔力を霧散させる
「…けれどたしかに、魔理沙はどうするのかしらね…」
くやしいけれど、無関心でいることはどうしても出来なかった。
ドォン、ドォン、と図書館に爆音が鳴り響く中、小悪魔は必死に本を守っていた。
パチュリーと魔理沙が図書館の中ではた迷惑な弾幕戦を繰り広げている。
次々と繰り出される二人のスペルに合わせて、余波被害の及びそうな区画に防御魔法を展開させていくのだ。
「それにしても意外だなぁ。魔理沙さんが結論を出すまでには、もうちょっと時間がかかるかと思ったんだけど」
作戦を実行したのは、まだ昨日の事である。
つまり魔理沙は「パチュリーか本か」という問いに、たった一日で結論を出したのだ。
しかも小悪魔にとって意外だったが、魔理沙はパチュリーの命よりも本を選んだようだ。
魔理沙襲撃の知らせを聞いた時、パチュリーが一瞬目を伏せたのを小悪魔は見逃さなかった。
「それでこそ魔女ね、魔理沙。私を失望させないでくれてよかった」
強がり言っちゃって可愛いなぁ、と内心小悪魔はニヤニヤしていた。
しかしこうなるとパチュリーは、命を掛けて魔理沙の家を襲撃し続ける事になるのだろうか。
「うーん、こうなっちゃった以上はしかたないけど、死なない程度に頑張ってほしぃなぁ」
魔理沙を困らせてみたい、という目的は果たせたのでかまわないのだが、できればパチュリーの健康に害の無い結果であってほしかった。
まあいいか、と小悪魔は納得する。
何か上手い屁理屈を考えてパチュリーの魔理沙宅襲撃を止めさせることもできるだろう。
「もうちょっとやきもきしてる顔のパチュリー様をみていたかったけどなぁ~」
昨日から今日の魔理沙襲撃の瞬間まで、どこかパチュリーはうわの空だった。
きっと魔理沙の事を考えていたのだろう。
短い間だけど、パチュリーのめったに見れない表情を楽しめたし、まぁいっか、と小悪魔はイタズラを締めくくった。
この日、弾幕戦の軍配は魔理沙にあがった。
「今日は疲れたからもう寝るわ…」
と、肩を落として寝室に向かうパチュリー。
肩を落としていたのは、今日の勝負に負けたからだけではないだろう。
小悪魔は、またもニヤニヤしていた。
「気落ちしたパチュリー様もかわいいなぁ」
上機嫌で、仕事に向かう。
魔理沙に強奪された本の被害リストを作成しなければならない。
ヴワル図書館では全ての本に固有の魔力タグが付与され、図書館内にある限りその所在を把握できる。
魔力タグ一覧から、所在を感知できなくなった魔力タグを検出すれば、盗まれた本が特定できるのだ。
「…あれ?」
リストを作成しながら、小悪魔はおかしな点に気づいた。
魔理沙が強奪していく本の種類には概ね決まった傾向があるのだが、今回はその傾向から大きく逸脱した本が盗まれている。
「ええと、『医療用魔法基礎編』、『テオフィリンの作用副と作用について』、『喘息予防』、……はぁ?『家庭の医学』?」
こんな本を盗んだのは初めてだけど…と小悪魔が首をかしげる。
だがすぐに、魔理沙の行動の意味に気づいた。
「……あっ!」
小悪魔の口が、耳に届いてしまいそうなくらい、ニヤァ~と歪んだ。
「あーあーあー!そーゆことかぁ!うふふ!うふふふ!」
今日一番の目の輝きを見せながら、小悪魔は飛び上がって小躍りを始める。
「なんだぁ~、パチュリー様より本を選んだわけじゃないんだぁ!うわぁ、そうきたかぁ!うふふ、
人間っておもしろいなぁ!」
魔理沙が自分の予想を超えた行動を取った事が、小悪魔はたまらなく楽しかった。
そうだ、これを知らせたらパチュリーはどんな顔をするだろう?
それを考えただけで、小悪魔は溢れ出す笑いを止める事ができなくなった。
「うふっ!うふふふっ!!うふふふふふっ!!!わぁ~い!パチュリー様ぁ~!」
小悪魔は走り出す。
落胆して不貞寝しているであろうパチュリーを叩き起こすために。
一刻も早く主がどんな反応をするか見たい!という、己の欲望を満たすために。
この発想はなかったわ。うん、おもしろかった。
の下りは明らかにおかしいかと
内容は珍しいパターンだし面白かったですー
そういう選択肢を選んでも、門から行かないのが魔理沙ですね…。
テオフィリンが幻想入り?
パチュリーが現代医学レベルの治療ができないとも思えなので、喘息はステータス?かあるいはすごい呪いか何かだと個人的には思っています。
でも誤字が数ヶ所あった気が
悪巧みしてる小悪魔は魅力的だと思う
あと、ヴワル魔法図書館は曲名DA☆
つ ミ ⑩×10
面白かったので感謝の意を込めて誤字指摘をば。1234。
魔力のこもったの視線 五割り増し 空中に飛び上がっる 空に浮かんび
背中もさすってもやった 人の迷惑はおかましなし 自身がない
分けも分からず パチュリーとは対象に パチュリーため息をつく
うっとしそうに振り払う 目の輝きみせながら パチュリ様ぁ~!
何度も試しているだろうから、知識も魔力も劣る魔理沙では
そのパチュリーの本を盗んだぐらいではどうにもならないんだけどな。
それこそパチュリーの心労を増やすだけであって。
いや、待て。魔法の森でもし倒れたりしたら誰が看病するんだ?
よし、OK!
感想を書こうだなんて思ったばっかりに…
面白くて爽やかでした
今度はパッチェさんが感情の板挟みになったりもぞもぞしたりするんですねわかります
でも、魔法使いってのは本に書かれている事をなぞるだけの連中ではないよ。
本に書かれている知識が全てなら、魔法使いなんて種族はただの記憶媒体になっちゃうじゃん。
既存の知識に、自分の知識と知恵と技術を加味して新しいものを創造するのが研究者や魔法使いってもんだろ。
よって、パチュリーとは体系も発想も違う魔理沙ならではの解決法を見出すことに期待しても良いんじゃないかな。