Coolier - 新生・東方創想話

ひかげのうた

2009/07/24 22:23:33
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作品集81の「ひなたのうた」に関係してます
先にそちらを読むことを推奨します







布団からむくりと体を起こす 

手で顔をぬぐってボーっとする頭を少し起こす

外を見る、明るくなってきているがまだ陽は昇っていない

私は何でこんな時間に起きたんだっけと自問自答する

そして枕元においてあるいつもの巫女服とはまったく違う洋服を目にしてようやく思い出す

(あぁ、そういえば今日やろうと思ってたんだっけ)

少し前から計画し、いろいろ準備して昨日それが終わって今日実行しようと思っていたこと

やることを思い出せたのなら後は早い

布団を片付け、洋服へと着替えを済まし、朝食をとる

全部終える頃には陽も昇り、朝になっていた

出発前にやるべきことを全て終え、最後に必要なものを持って外に出る

「さてと、後はこれで」

取り出したのは人型の紙 といっても何か描き込まれているが

霊夢はそれを境内に置くと力をこめる

すると紙はだんだんと変形していき、いつもの巫女服の霊夢とまったく同じ姿になった

「上手くいったかな?」

「そうね、特に欠点はないんじゃないかしら」

霊夢が自身と瓜二つになった紙型の様子を見ているとそれは霊夢と同じようなしゃべり方で返事をしてきた

「うん、大丈夫そうですね。それでは後はお願いします」

「はいはい」

その反応に満足そうに頷くと霊夢は神社から出発しようと歩き出した

その時

「おーい!霊夢ー!!」

空のほうからよく聞く声が聞こえた

声の主 魔理沙は神社の入り口に降りると少し早足で歩いてくる

そして霊夢を“通り過ぎ”後ろの霊夢の偽者の霊夢のほうへと向かった

「効果は上々のようですね。さ、出発しよ」

こちらに気づくことなく偽者と話をしている魔理沙を確認した後、今度こそ霊夢は神社から歩いて出発した




なんとなく静かに散歩をしてみたくなった

そんな思いつき

でもどうしてもやってみたくて計画を立てたのだ

まず問題になったのは普通に出たのではばれるということ

静かに気ままに動こうかと思っているのになぜか自分はトラブルに巻き込まれてしまうのだ

誰から見てもばれない必要があった

なので博麗としての力を封印した

これでただの人と同じになった

さらに服装も普段着ている服ではなく洋服にした

髪型もわからないようにリボンや飾りを全て取って髪もおろした

口調も変えることにした いつもは喋らないような丁寧なしゃべり声を出すようにした

『博麗 霊夢』ではなく『どこにでもいる人間の娘』になりきった

もうひとつは自身が神社を不在にすること

ここ最近は暴れる妖怪もいなかったので特に問題はないと思ってはいたがさすがに不在なのはまずいと考えた

なので先ほどの人型 式神を作ったのだ

丁寧に作り、力もかなりあるものにできた

弱い妖怪が出てきても問題なく戦えるだろう

式神と見抜かれることも心配だったが先ほどの魔理沙を見る限り問題ないだろう

私の散歩計画の始まりは成功に終わったようだ




なので後ろから聞こえてきた断末魔は無視した




まず最初に向かったのは紅魔館

日差しも気持ちよかったので湖のほとりで時間を過ごそうと思ったのだ

到着するとチルノと大妖精、リグルが弾幕ごっこで遊んでいた

「リグルいくよ!!これがアタイのとっておきだー!!」

「新しいスペカだね、よしこい!」

「二人とも無茶しないでねー」

それを見ながら近くにいた美鈴に話しかける

「本当にに子供みたいですね」

「クスクス、でもかわいいでしょう」

確かに無邪気に遊んでいる様子を見ているとこちらも安らいでくる

先ほどの美鈴の言葉に同意しながら二人で頬を緩ませる

「だからって貴女が気を抜いていいわけではないのだけれど?」

「げっ、咲夜さん!?」

「げっ、とはなによ。げっ、とは。大体貴女ね…」

急に出てきた声に美鈴が驚いて反応すると咲夜はむっとしてそのまま説教を始めてしまった

私も巻き込まれてはたまったものではないので気づかれないうちにさっさと逃げ出した





次は永遠亭に行った

イナバ達が追いかけっこしながら駆けていくのを見ながら竹林を歩いていると屋敷から爆発音が聞こえた

「な、なんでしょう?」

霊夢が少し焦りながら音のほうへかけていくと屋敷の一室から煙が上がっていた

呆然と見ているとその部屋からてゐが転がり出てきてそれを追って永琳が飛び出してきた

「て~~ゐ~~~~~!!!」

「ご、ごめんウサ!こんなになるなんて思ってなかったウサ!許してーー!」

「だまらっしゃい!!そこを動くな!!」

「ひいいいいいい!!」

羅刹だった 修羅だった

普段あまり怒らない人が怒るとひどいことになることはよくあるがあれは別だろう

だって顔の形変わってる ぶっちゃけ目を合わしたくない

こちらに走ってくるので横にずれてそっと足を出す

ガッ

「うひゃぁ!」

てゐが見事に転ぶ

転んだショックで動けないてゐを永琳が捕まえる

「うふふふふふふふ、捕まえた」

「ま、待って!待ってください!話せばわかるウサ!」

「ええ、そうね。だから私の部屋でゆっくり話しましょう。ゆっくりね…」

必死で弁明をしようとするてゐに対し永琳は菩薩のような笑顔を浮かべていた

掴んでいた肩からはみしみしときしんだ音が漏れていたが

「ノオオオオオオオオ!!誰かヘルプミイイイイイイ!!」

断末魔のような声を上げながらてゐが引きずられていく

目があった気がしたので知らぬ存ぜぬを決め込んでそらした

そらした先には鈴仙がいた

「私は見てない聞いてない知らない私は……」

うずくまって耳をふさいでぶつぶつ呟いていた

(まぁあれはトラウマものだものね)

苦笑いしながら近づいて方に手を置く びくっとされた

「貴女は何も悪くないですよ、だから気にすることなどないのです」

慰めのお言葉をかける すると鈴仙はがばっと立ち上がって

「そうよね!そうだよね!私は何も悪くない!」

そう叫ぶと竹林のほうへと走っていってしまった

「…完全にトラウマですね」

あまりの勢いに置いていかれた霊夢はもうここにとどまっていてもしょうがないと見切りをつけて永遠亭を後にした





お昼も近かったのでその後里に行った

店先に置いてあった食べ物の中で気になったものを適当にとってお金を置いていく

それを食べながら歩いていると 向こうから藍と橙、紫が歩いてきた

「ねぇ藍、あれ食べたいわ」

「何いってるんですか紫様。先ほどご飯食べたばっかりでしょう」

紫の我侭に藍が呆れ顔で言っている

「藍様ー、私あれが食べてみたいです」

「いいぞ!どれだ橙!?」

「ちょ、ちょっと待ちなさい藍!貴女ご主人様の言葉はないがしろにして式には甘いってどういうこと!?」

自分の我侭には素気無く否定したくせに自分の式には甘い藍に紫が慌てている

「かわいいからいいんです!!」

「意味不明だわ!?」

わけの分らない問答に思わず噴出してしまう

笑ったのに気づかれたのか三人はこちらを向いてきた

慌てて顔を伏せてすれ違う 顔は笑いっぱなしだ

「ほら、紫様のせいで笑われてしまったではありませんか」

「何でよ!何で私のせいなのよ!」

後ろから聞こえる漫才に肩を震わせながら私は次の食べ物を探しに里を歩き回った





食後は妖怪の山に行った

文は今何してるだろうと彼女の仕事場に向かうと

「ネタがなーい!」

叫んでいた

窓からこっそり覗き込むと文が手で頭をガシガシこすりながら机に向かっていた

ここ最近平和だったせいか新聞のネタがないようだ

事件がかかれてあって何ぼの新聞だ どこかの里のおじいさんが長寿記録を更新なんて書いていても長命な種の多いここではなんだそりゃで終わってしまう

「あーあ、霊夢さんあたりがまた何かしでかしてくれませんかねぇ」

スコーンッ

失礼なことを言ったのでそこらにあった石を投げつける

見事頭に命中 頭からプスプスと煙が出ていた

「お茶持ってきましたって大丈夫ですか?!」

奥からお茶を持って現れた椛がその惨状を見て慌てて介抱する

私はそれに満足するとそこから離れた




山の神社は平和そのものだった

早苗は境内の掃除をしており諏訪子は昼寝だった

「ふっふふ~ん♪」

問題は神奈子だった

笑顔で御柱としめ縄の整備をしていた 丁寧に布で拭いている

平和だ 平和であるのだが …どこかジジ臭い

なんというか盆栽いじっている老人のようだ

微妙な気分になったが平和な時間を壊す気にもならなかったので魔理沙のように悪戯はせずその場を去った




白玉楼は相変わらず静かで騒がしかった

音はないが亡霊が多く騒がしい

少し辟易しながら門を通る

適当に中を散策していると幽々子がいた

「あら、霊夢じゃない。こんにちは」

驚いた 気づかれないと思っていたのに

「わかるんですか?」

「あたりまえじゃない、いつもと服は違うし力も無い、封印してるのかしら?でも魂は同じだからね」

なるほど納得した 幽々子は幽霊だ だからほかの人とは違う見方を持って私を見ていたのだろう

容姿を変え 力を封印しても魂の形までは変えることはできない

しかるべきなのだろう

「久しぶりに来たのだし、いろいろお話しましょうよ」

「そうですね、あぁお茶をもらえますか?少し喉が渇いて」

「いいわよ。でも自分で入れてもらえる?」

「かまいませんよ。それくらい」

客人用の湯飲みを用意してお茶を入れる うんいいお茶だ

「それで、何でそんなことしてるの?」

「なんとなく思いついたので。特に意味はありませんよ」

「話し方まで変えてるのね」

「当然です。やるなら徹底的にやらないと。どこからばれてしまうかわかりませんから」

その後 私は幽々子と世間話に華を咲かせた

時間が過ぎ 陽が沈もうとする頃 私は立ち上がった

「帰るの?」

「えぇ、そろそろ貴女も夕食でしょう。邪魔したらまずいしね」

「私はかまわないけどね」

「じゃあまた今度、そうさせてもらうわ。それじゃ」

「また」

私は白玉楼を出た 最後に行こうと思っていた場所に向かって





少し空を飛んで降りたのは里の近くの丘の上

ここから見る風景がとても綺麗だったので一度ゆっくり見てみたかったのだ

「こんなのもいいわねぇ」

黄昏時の儚いような綺麗な風景の中 誰に言うでもなしに呟いた

こんな日がまたありますように

そんな風に思いながらやさしく吹く風を感じた
うら側で何が起きてたか
犯人この人でした

さてこれで全部謎はなくなったっけ?
犬にほえられる程度の能力
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コメント



0.930簡易評価
12.100名前が無い程度の能力削除
改めて前作読み返してすっきりした。