つまり、こういうこと。すべて嘘だった。
彼女の言葉で分かった。ああ、なんてこと。
私が理解できているのは嘘ということ。それだけで充分。
だって、それだけが「意味」だったから。だから、否定されても。
私は動いた。何をしたのだろう。
きっと、右手のそれで首筋を。さくり、ぷしゅう。
世界は紅い。だって、そうでしょう?
人間には葉緑体なんてないのだもの。ヘモグロビンなんて無粋よね。
ふふ、綺麗。でも、それもすぐに終わる。
NH3aqの噴水。そんな実験を思い出した。
いつもと変わらない日常。でも、それは面白い日々。
刺激はあまりない。でも、それが面白い日々。
いつもと同じくサークル活動。それしか、私にはないですし。
待ち合わせの場所に付くと、蓮子が既に。つまり、私は遅れてしまった。
残ったのはそう。遅刻してしまった、という結果だけ。
謝る。何度も謝る。
蓮子は許してくれる。だって、持ちつ持たれつ。
私たちは談笑する。歩きながら、ずっと。
目的の場所もなく、ふらりふらり。さて、一体どこへ?
私にも分からないし、蓮子にも分からない。目的なんてない。
でも、人生もそんなもの。目的は分からなく、あってないようなもの。
行き着いて見つけるだけ。その場で見つけるだけのもの。
ぴたりと止まる。何かを見つけたらしい、蓮子が。
目の前にはこじんまりとしたコーヒーショップ。香ばしい匂いの漂う。
入ろうか。それだけを口にして、蓮子は中へと。
いつもと同じ。談笑して、飲んで。
お金を払って出てきて、夕暮れ。夜の始まり。
じゃあ、また明日ね。それがサークル活動の終わり。
活動らしい活動もないままに、終わる。終わりという結果だけ残る。
だって、そうでしょう? 境界を越えるにしても、境界が無ければ。
情報が入らなければ、ふらりふらり。まるで浮雲。
家へと向かおう。だって、ここは寒い。
夜の帳もおりてきた。月だけが輝く世界。
家へと帰ると、ここからも同じ日常。変わらない。
変革が欲しいと願う。それは、おかしいこと?
そんなことを考えながら布団へと。だって、叶わないこと。
叶わないなら、頼みの綱は夢。自分の力で変えられるのは、その中だけ。
ゆっくりと沈む。沈み込むのはどこへ?
まるで胡蝶の夢。誇張した表現だけれど、どうなのでしょう。
ふわりふわり。ああ、開けてくる、世界。
いつもとは違う日常。違う世界に降り立った私。
だって、違うのだから。違うのだから、違うとしか。
まず、違う。何が?
蓮子が格好良い。つまり、蓮子が生物学的に男性。
でも、名前は蓮子。さすがご都合主義の夢の世界。
結果だけが先行して、それに付随するものがない。でも、面白い。
見た目が若干変わっただけで、それ以外は変わらない。そのはずだった。
でも、惹かれていた。知らないうちに。
笑う顔。貴方の声。
気付いたら、サークル活動は終わり。また、いつもの夕焼け。
でも、違う世界。違うことを、私自身もやらないと。
だから、はっきりと、しっかりと。声がふるえていないかしら。
好き。そう、告げた。
ごめん。そう、返ってくる。
え? なに?
付き合っている人がいるんだ。嘘だ。
もう、君とは一緒にサークル活動は出来ない。嘘だ。
だから、これっきりでさようならにしよう。嘘だ。
嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。嘘だ。
嘘じゃない。はっきりと言われ。
私はぐにゃり。ただ笑うだけ。
口元に浮かぶのは、なに? 夜が始まってもう見えない。
だから、ごめん。それを聞いて、バッグから取り出す。
何を? 何だろうね。
起きる。けれど、起きていない。
頭がまだ、起きていない。どうして?
だって、分からない。意味が分からない。
何だったのかしら、あれは。誰にも分からない。
冷たい水で顔を洗う。冷たい。
目が覚める。頭も少しずつ。
何を望んだらあぁなるのだろう。目に焼きつくのは紅の月。
黒い夜に紅く。コンクリートも紅く。
払拭する。そうしないと、今日はきっと。
また、変わらない日常の始まりだから。きっと、そう。
変革なんていらない。少しの刺激だけでいい。
それは、サークル活動。蓮子。
それだけ。それだけがあればいい。
いつもと同じ日常。また、笑いあい、さようなら。
変わりなんてない。代わりなんてない。
だって、それが一番。噛み合わない歯車は壊れるだけ。
願うのは勝手。実行するのは?
そんなのは、分からない。行き当たりばったり。
だって、それが人生だもの。そうでしょう?
夢は今や胡蝶。どこへと飛んでいく?
誰にも分からないし、私にも分からない。神にすら。
それが、一番良い。日常って、そういうものでしょう?
それだけに評価が難しいです。
そして『さすが万点越え作品、面白い』とか思ってたんだけど
何が言いたいかというと、わたくしにとってこの作品は一万点の作品をこえたものでしたってこと。
だって心にジャストヒットしたんだもの。最高