※作品集62「わたしやっぱりドMだったみたい!」の設定を流用しております。読んでないと理解できない部分が多々あるかと思いますのでご注意ください。
「お父様のバカッ! 桃の食べ過ぎで死んじゃえっ!」
天子お嬢様の叫び声が聞こえたと思ったら轟音と共に比那名居邸が揺れ、廊下を歩いていた下女は倒れそうになった。慌てて踏み止まると、揺れはすぐに収まった。地震か、と思って、ここが地上でなかったことを思い出す。天人の下女としてこの天界に召し抱えられて早数百年にもなるが、彼女の意識は大部分がまだ地上人だった頃のままであった。
ともかく従僕として何が起きたのか確認しなければ、と思い、声のした方へ向かう。すり足で廊下を走り、曲がり角をいくつか曲がると、驚くべき光景が目に飛び込んできた。
現場は正面玄関の近く。壁に大穴が開いてそこら中に瓦礫が散らばり、砕かれた箇所からはパラパラと壁土の欠片が剥げ落ちている最中だ。
そのそばに、ひょろっとした体格の天人が一人、途方に暮れたように突っ立っている。この屋敷の主、比那名居氏だ。当然ながら、下女にとっても主人に当たる。
「旦那さま」
声をかけながら近寄ろうとすると、比那名居氏はようやくこちらに気がついて、すっと手の平を差し出しながら止めた。
「ああ、こちらへ来てはいけないよ。瓦礫に躓いて怪我をするかもしれない」
その言葉に、下女は足を止める。しかし、躊躇いつつも瓦礫を踏まないよう注意して主に歩み寄った。
「旦那さまこそ、お怪我はございませんか」
「いや、大丈夫だ。ありがとう」
言葉少なにどこか上の空で言ったあと、比那名居氏はその場に佇んだまま黙って大穴の向こうを見つめている。その視線を追うと、いつも明るく晴れ渡っている天界の空が見えた。しかし、そこには鳥一匹飛んではいない。
「天子は」
不意に、比那名居氏が呟くように言ったので、「はい」と下女は慌てて居住まいを正す。主は大穴の向こうを見つめたまま、抑揚のない口調で問いかけてきた。
「最近、よく地上に遊びに行っていると聞いているが」
「はい、左様でございます。お友達が出来たとかで、毎日上機嫌にお出かけになります。ああ、ただ」
その事実を伝えていいものか少し迷いつつも、下女は躊躇いがちに付け足した。
「ただ、この一週間ほどでございましょうか。何か、上手くいかないことがおありのご様子で、毎日気難しいお顔でご帰宅なさいます。何かございましたかと聞いても『なんでもない』と仰るばかりで。あまりしつこく聞いてもご機嫌を損ねてしまいますし」
「そうかね。つまり間が悪かったということか……いや」
比那名居氏は少し寂しそうに微笑んだ。
「違うな。私が相手では、いつ話しかけても同じことだな。余計なことなどするべきではなかったか」
「一体何を……」
下女の分際で無礼かもしれないとは思いつつも、ついつい声が出た。だが比那名居氏は特に気にした様子も見せず、
「いや、それほど大したことはしていないのだよ。ただ少し話をしようとしただけだったのだが」
小さなため息。
「やはり、難しいものだね」
「そうでございますねえ」
二人はしばらくの間、黙って天界の空を見上げていた。
「……お父様のバカ。お父様のアホ。お父様のクズ。お父様の……」
一つ悪口を言うたびに、一つ小石を川に投げ込む。
幻想郷の外れを流れる、小さな川の岸辺である。秋晴れの空の下、そこにあった手頃な大きさの岩に腰を下ろして、天子はひたすら父への悪口を垂れ流していた。
だがどれだけ小石を投げ込んでもちっとも気分が晴れないので、やがて嫌になって止めてしまった。膝の上に頬杖をつき、重苦しく息を吐く。
「やっちゃったなあ」
小さく呟く。
事の発端は今朝のこと。今日こそは、と決意を固めて屋敷の廊下を歩いていたところ、向こう側から父がやってくるのに気がついた。それだけで、緊張していた気分がさらに最悪のものになったが、身を翻して逃げるのは癪だったので、天子はただ黙って通りすぎることにした。
ところが、父の隣を行き過ぎかけたところで、
「天子」
と、硬い声で呼びかけられたのだ。予想外のことだったので、無視するという選択肢を思いつく前に立ち止まってしまった。後悔しつつも、このまま歩いていくのはどうも決まりが悪いと思い、天子は仕方なく振り返った。
「なんですか、お父様」
「ん。いや、なんだな。おはよう」
「はい、おはようございます。今日もいい天気でございますね」
作り笑いを浮かべて慇懃無礼にそう言うと、父は明らかに怯んだ様子だった。ただ黙ったまま、何か言いたげにそわそわし始める。こっちは忙しいのに、と苛々し、天子は顔をしかめて問いかけた。
「御用があるんでしたら、さっさと仰ってほしいんですけど」
「む。うむ。いや」
父は何か言いにくそうに数秒ほども躊躇ったあと、また硬い声で言ってきた。
「今日は、どこかへ出かけるのかね」
その言葉が非難のように聞こえて、天子は小さく顔をしかめる。
だが、我慢して答えた。
「出かけちゃいけないんですか」
「いや、いけないということはないが。なんだ、その」
口ごもる父の心情を察して、天子は澄まし顔で言う。
「ご心配なさらなくても、この前みたいにお父様のご迷惑になることは一切いたしませんから」
「なっ。いや、迷惑などと」
驚いたように目を見開く父の表情が、この上なくわざとらしく感じられる。我慢できずに天子が顔を背けると、父は取り繕うように言った。
「天子、私は何もそういうことを言っているのではなくてだね」
「じゃあなんですか。今のお父様の態度は、比那名居家の恥さらしを外に出さないようにって必死になってるようにしか見えないんですけど?」
「天子。お前はどうしてそう……いや、なんだ」
父の言葉が途中で止まったのを見て、より一層苛立ちが募った。と言うより、言葉を交わすごとに居心地の悪さが高まるばかりで、今すぐこの場から逃げ出したくなるほどだ。
父が何も言わずにいるためにとうとう耐え切れなくなり、天子は黙って背を向ける。すると、背後から慌てたような声がかかった。
「待ちなさい、天子」
「だから、なんですか」
うんざりして振り返ると、父はこちらに向かって小さく手を出したままの姿勢で固まっていた。歩み寄っても来ないし、何か言うでもない。天子の方はと言うと、そんな父を見ているだけで吐き気がこみ上げてくるほど苛々してくるのだった。
「ああ、そうだ」
と、その内、父が思いついたように言った。
「あれだ、友達とは、仲良くしているかね」
その言葉で、抑えつけていた苛立ちが一気に限界点を超え、炎のような憤怒へと転じた。全身が沸騰したように熱くなり、自分でも驚くほど激しい怒声が口から吐き出される。
「なによ、わたしなんかが友達と仲良くなれるわけないって言いたいわけ!?」
「は!? い、いや、誰もそんなことは」
「顔に書いてあるわよ、お前なんか何やったってろくなことにならないんだから黙って家に閉じこもってろって! そう思ってるならはっきり言ったらいいじゃないの!」
「て、天子、少し落ち着いて」
「お父様のバカッ! 桃の食べ過ぎで死んじゃえっ!」
叫びながら、天子は家の壁を蹴り壊して外に飛び出した。天人として鍛えに鍛えた体を持ってすれば、こんなことなど造作もないのだ。
そうして勢いに任せて空に飛び上がり、少ししてから急に怖くなる。夢中で壁まで壊してしまったが、あれで父が怪我などしていないだろうか、と。
恐る恐る振り返ると、眼下にある比那名居邸の壁に開いた穴から、父がこちらを見上げているのが見えた。遠目には外傷などないように見える。少しほっとしたが、父が途方に暮れたように佇むばかりで、追いかけてくる気配すらないのに気がつくと、また腹が立ってきた。
「……お父様のバカ。死ねば良かったのに」
ちょっとした恥ずかしさを誤魔化すために呟きながら、天子はもう振り返らずに地上へと向かったのだった。
そうして今、彼女は幻想郷外れにある小川の岸辺に座っている。今日も友達が集まっているであろう神社には行こうともせずに、だ。
「なにやってんだろ、わたし」
溜息交じりに呟き、また小石を一つ川に向かって投げる。ぽちゃん、と小さな飛沫が上がった。
こんな風にただ黙って座っていると、心配事があれこれと胸の中に浮かんでくる。お父様は本当に怪我なんかしていなかっただろうか。あんな風に派手に飛び出してきたから、きっと騒ぎになっているだろう。そしたらまた比那名居は不良天人だって風評が酷くなって、真面目に働いてくれている下女たちにも迷惑がかかるかもしれない、とか。
「なによ。わたしのせいじゃないもん、お父様が悪いんだもん」
岩の上で膝を抱え込み、拗ねたように呟く。
そうだ、悪いのは父だ。ずっとほったらかしだったくせに、最近……特に自分が異変を起こして以降、打って変わって気にかけるようになった。また娘が馬鹿なことして比那名居家の評判を落としはしないかって監視しているのがバレバレだ。本当に、嫌になる。
「そうよ。全部、お父様が悪いのよ」
重ねて呟くと、少しだけ気が楽になった。だが同時に、後ろめたさのようなものも湧いてくる。天子は無理矢理それを無視しながら、「あーあ」と声を漏らして、ぼんやり天を仰ぎ見た。秋晴れの空を、見回り中らしい鴉天狗が一羽きりで飛んでいく。
「……これから、どうしようかなあ」
誰に言うでもなく呟きながら、考えてみる。
しばらく家には帰りたくない。だが野宿なんてしたこともないし、したいとも思わない。かと言って、泊めてくれそうな知り合いなどほとんど思い浮かばなかった。
神社へ行こうかな、という考えはすぐに消える。こんな気分で行ったら、また変なことをしでかしそうで怖いのだ。親のことなんか話そうものなら、「この歳になって子供っぽい奴」と笑われてしまうに違いない。
そんな発想が浮かんでくる自分に、天子は強い戸惑いを感じた。
「どうしちゃったんだろ、わたし」
最近、天子は自分でも驚くほどに他人の目を気にするようになっていた。他人、と言っても、それはたとえば自分を不良天人と呼んで蔑む天界の連中などのことではない。博麗神社に集まる、霊夢や魔理沙、それにアリスと言った、友人連中のことだった。
天子は今でもよく博麗神社に行って、あの連中と弾幕ごっこをしたり取り留めもないお喋りに興じたりするのだが、最近になって以前では気にも留めなかったことが気になりだしていた。
それはたとえば、自分は今変なことを喋っていないだろうか、とか、話についていけているんだろうか、とか、外から見て浮いていないだろうか、ちゃんとみんなの仲間として溶け込めているんだろうか、とか、そういったことだ。
あまりにもそういったことが気になってしまうために、近頃では以前のように友人たちとの会話を楽しめず、神社へ行っても借りてきた猫のように大人しくしていることが多い。
それでもアリスなどはよく気にかけてくれて、
「どうしたの、天子」
などと問いかけて気遣ってくれるのだが、天子の方はそういう質問に答えを返すときも何か変なことを言って嫌われやしないだろうかと気になって仕方がなく、ついつい、
「別に、なんでもない」
と素っ気ない答えを返してしまうのだった。そして、せっかくアリスが話しかけてくれたのにそういう答えしか返せない自分の情けなさを顧みてまた落ち込んでしまったりする。
別に、神社にいるのが楽しくなくなったわけではない。相変わらず魔理沙は馬鹿で面白いし、アリスは優しいし、霊夢が黙って座ったままお茶を啜っているのを見ると、この上ないぐらいに安心する。
それでも、何か一種の居心地の悪さのようなものを覚えるのも事実だ。そのためにここ一週間ほどは神社へ赴く足取りも重く、地上へ降りはするのだが結局当てもなくブラブラして、日暮れとともに天界へ帰る、ということばかりだった。
「今日こそは、と思ってたのになあ」
一人でぼやきながら、本当にどうしたものか、と天子は途方に暮れる。
ともかく、こんなところにいたってどうにもならない。そう思って立ち上がったところで、天子はふと、近くの茂みに何かカラフルなものが落ちていることに気がついた。
なんだろう、と少し気になって近づいてみると、それは薄汚れた冊子だった。表紙には、見たこともない街を背景に、見たこともないほど鮮明な女性の姿が描かれている。一応、それが写真というもので、絵とは違うものだ、という知識ぐらいはある。多分外の世界の本なのだろうということも察しがついた。
表紙の上の方には、題字らしき「Sweets Smile」の横文字。やたらと丈の短い上着とスカートを着た女性の横には、「週末セレブの隠れ家的お店紹介」やら「専用コスメで自分らしさを演出」やら「この夏一番のモテカワガール」だのといった文字が躍っている。
いったい何の本なんだろう、と考えて、天子はすぐに気がついた。
「そっか、これが『エロ本』ってやつね!」
少し前、魔理沙が神社で笑いながら言っていたのだ。「川原でエロ本拾ったから『今日のオカズに使え』って香霖にプレゼントしてやった」とかなんとか。エロ本ってなんだろ、と思いつつもその場で聞くと無知を晒しそうな気がしたので聞かなかったのだが。
ともかく、これで「エロ本」について学べば、少しぐらいはみんなとの会話にもついていけるかもしれない。そう期待して、ドキドキしながら拾い上げてみた。
表紙に書かれている文章の意味はよく分からないが、何となく興味を惹かれるものはある。どうせやることもないし、と思い、また近くの岩に座りなおして、パラパラとページを捲ってみた。
この本によると、外の世界のモテカワガールたちは小悪魔系メイクで自分らしさを演出しつつ、ロハスなお店に通って草食系男子をゲットするのだそうだ。
正直、さっぱり理解できない。
「草食系男子ってどんな妖怪だろ。草食べるのかな」
首を傾げつつ、ほとんど内容を理解できないまま読み進めていた天子だったが、あるページでぴたりと指を止めた。
そのページに書かれているのは、「パジャマパーティ」とやらの特集だった。可愛らしいパジャマに身を包んだ女の子たちが、笑いながら寝そべって楽しそうにお喋りしている写真が大きく載っている。
とても、心が惹きつけられる光景だった。
「ええと、なになに……愛されガール……姫系パジャマ……恋の作戦会議……」
論語や史記の原本を読むとき以上に頭を使いながら、天子はそこに書かれている内容を必死に解読する。
この特集によると、パジャマパーティというのは仲のいい少女たちのお泊まり会のことなのだそうだ。可愛いパジャマに身を包んで、甘いお菓子や飲み物などを持ち寄り、夜通しお喋りやゲームを楽しむのだとか。
「いいなあ、いいなあ」
岩に座ったまま、天子はパタパタと足をばたつかせた。
自分もこういうのに参加してみたいと、心底思う。たとえば神社に集まる連中と一緒にやったらとても楽しいだろう。魔理沙はたくさん面白い話をしてくれそうだし、アリスはとっておきの人形劇なんか見せてくれるかもしれない。それで自分は霊夢の横に座って、みんなの話を聞いて笑ったりするのだ。
そういう場所でなら、父に対する不満なんかもさらっと話せるかもしれないし。
「なーんて」
ふっ、と天子はため息を吐く。
所詮は夢物語だ、と思う。たとえば今この特集に載っている写真に、自分たちの姿を当てはめてみる。可愛らしいパジャマを着た霊夢、魔理沙、アリス、そして自分。霊夢はあれでいて凄く清楚な面立ちだからとても似合うだろうし、魔理沙も乱暴な言動に似合わず小柄で子供っぽい顔立ちをしているから、きっと可愛いに違いない。アリスなんかそれこそお人形さんみたいだから、こういうのは普段着みたいなものだろう。
そんな三人の中に、同じような可愛いパジャマを着た自分を放り込んでみたら、なんだか非常に妙ちくりんで場違いな感じがするのだった。それだけでこの場がぶち壊しになるような気すらする。
「無理だなあ……」
「なにが?」
ぼんやりとした呟きに予想外の答えが返ってきたので、天子は悲鳴を上げながら飛びあがってしまった。慌てて振り向くと、そこに日傘を差した金髪の女が立っている。妖艶で不気味な微笑みを浮かべたその美女に、天子は勿論見覚えがあった。ついでに言えばトラウマもある。
「ゆ、紫……さん」
「あら、余所余所しいのねえ。呼び捨てでも構いませんことよ」
その美女……幻想郷でも指折りの大妖怪八雲紫は、口元に手を添えてクスクスと笑った。その微笑みを見ているだけで、天子の背筋はゾクゾクと震えて来る。
先の異変の際、激怒した紫から喰らったお仕置きの数々は、未だに強い恐怖となって天子の心にこびりついている。具体的に言えば、今でも電車に追いかけられる夢を見るぐらいに。
「な、なんか用? わたし、忙しいんだけど」
「あら、そうは見えませんでしたけれど」
精一杯の虚勢を張る天子に、「ところで」と紫は小さく首を傾げた。
「その本は何かしら」
「こ、これはその」
ほとんど無意識の内に、天子はあの本を背中に隠してしまっていた。こういうのを真面目に読んでいたとバレたら、馬鹿にされるような気がする。
しかし黙っていたらまた拷問を喰らうかもしれないという恐怖もあったので、仕方なく正直に答えることにした。
「エロ本よ!」
「……いや、そんなに胸を張って言われても困るのだけど」
「と、ともかく、あんたが読むようなもんじゃないから!」
「そう言われると俄然読みたくなりますわねえ」
「駄目だったら!」
天子は微笑む紫から必死に本を隠そうとしたが、次の瞬間、何かに引っ張られたように、本が手からすっぽ抜けた。驚くと同時、まるで手品の如く、あの本が紫の手の中に出現する。愕然とする天子に、隙間妖怪がからかうように微笑みかけた。
「わたしから何かを隠そうとしても無駄でしてよ。さーて、天子ちゃんたら、あんな真剣な顔で一体どんないやらしい本を……あら?」
奪った本に目をやった紫が、怪訝そうに眉をひそめた。
「……これ、エロ本にはとても見えませんけれど」
「えっ、エロ本じゃないの!?」
「ええ。エロ本っていうのはもっとこう……いやいや」
若干赤い顔で首を振ったあと、紫は本のページをパラパラとめくり出した。そして、困ったようにぎこちない笑みを浮かべる。
「これは……何と言うか、エロ本とはまた違った意味で反応に困る雑誌ですわねえ」
「なによ、馬鹿にしてんの!?」
天子が噛みつくと、紫は不思議そうに目を瞬いた。
「今の言葉をどう解釈したらそんな発想が出てくるのかしら? あなたもなかなか難しい思考回路を持っていらっしゃるようね」
「うるさいわね! いいから早く返しなさいよ、それ!」
叫びながら飛びかかったが、紫はひらりと身をかわし、「駄目駄目、まだよ」と悪戯っぽく言った。
「だって、まださっき天子ちゃんが読んでたページを見ていませんもの」
「見なくていいから!」
「そうはいきませんわ。ええと、確か……ここだったかしら」
と、開いたページがさっきの特集ページだったので、天子は焦りに焦った。しかしどれだけ飛びかかろうとも、紫はゆらりゆらりと避けてしまう。しかもそうしながら、着実に本を読み進めているらしかった。
「ふむ……愛されガール……姫系パジャマ……外の世界の言葉も日進月歩ですわねえ。私みたいなお年寄りにはとてもついていけませんわ」
「そうよ、ババァの出る幕じゃないのよ! だからさっさと返しなさい、それ!」
「ええ、分かりましたわ」
紫が突然素直に本を放り返してきたので、天子は慌てて受け取った。戻って来た本と、何か得体のしれない微笑みを浮かべている紫の顔とを、戸惑いながら交互に眺める。
「なんのつもり?」
「なんのつもりもなにも。大体読み終わりましたもの、それ」
「うそっ、こんな短時間で!?」
「ええ。ある意味ネクロノミコンとか読む以上に精神力を消耗しましたけれど」
どことなく疲れた様子で言いながら、「ああ、でも」と、紫は悩ましげに息を吐いた。
「いいですわねえ、パジャマパーティ」
その単語に、天子はぶるっと身を震わせた。何を言われるのかと思うと怖くなり、自分の身を守るようにあの本をぎゅっと抱きしめる。一方の紫はそんな天子のことなど気にも留めないように、頬に手を添えてうっとりと呟いていた。
「ああ、霊夢があんなパジャマを着てくれたらどんなに素晴らしいかしら。思わず我が家にお持ち帰りして一日中布団の中で可愛がってしまいそうだわ、うふふ」
ババァが壊れた。
慄く天子に、ふと正気に立ち返った紫が「ところで」と問いかけてきた。
「天子ちゃんは、これから神社へ行くところなのかしら」
「な、なんでよ?」
「いえね」
どきりとする天子の前で、紫は空間の裂け目を作ってそこに腕を突っ込み、何やら風呂敷包みを取り出してみせた。何のつもりだと混乱する天子に向かって、にっこり笑いながらそれを差し出してくる。
「これ、ちょっと霊夢に届けてほしいのですけれど」
「はぁ? なんでわたしがそんなこと。大体あんたなら一瞬で着けるんだから、自分で行けば」
「ところで今日は絶好の電車日和だと思いません?」
「謹んで拝命させて頂きます」
天子はうやうやしく風呂敷包みを受け取った。誰だって、電車が迫りくる中でレールを枕に寝かせられたらこうもなる。笑ってはいけない。
「それじゃあお願いしますね。ああ、そうそう」
紫はくすくす笑いながら、天子が右手に持っている本を扇子で指し示した。
「どうせだから、それを話の種にみんなで盛り上がったらいかがかしら。若い人同士でなら話も弾むと思いますけど」
「そ、そっかな……いや」
一瞬期待しかけて、天子は慌てて首を振った。これを見たとき、みんながどんな反応を返してくるか分からない。危ない橋は渡りたくなかった。
「もういらないわよ、こんなもん」
天子は川に向かって本を投げると、踵を返してその場から飛び去った。
紫の頼みを断るとどうなるか分からないし、と心の中で言い訳しながら、天子は神社へ向かって飛んだ。わざわざ裏手から近づき、社の影から境内の様子を盗み見る。
話声が聞こえていたからきっといるだろうと思っていたら、案の定そこにはいつものメンバーが集まっていた。拝殿の正面、賽銭箱前の階段に腰かけている人影が三つ。霊夢と魔理沙、それにアリスだ。魔理沙はともかくアリスは来ていないことも多いので、少し嬉しくなる。
出ようか出まいか迷っていると、突然、誰かから軽く背中を押された。予想外のことだったので、踏み止まれずに二、三歩前へよろけてしまう。慌てて振り返ると、空間の裂け目が素早く閉じていくのが見えた。
「あれ、天子か」
心の中で紫に文句を言おうとした瞬間に声をかけられ、天子はどきっとして振り返った。魔理沙とアリスが不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。霊夢はちらっとこっちを見ただけで、またお茶を啜り始めたが。
ともかく、何も言わないのも変だと思ったので、天子はぎこちなく笑みを浮かべた。
「こ、こんにちは」
「おう。そんなとこで何やってたんだ、お前」
「いや、別にその、なんでも」
口ごもる天子に、魔理沙は怪訝そうな顔で首を傾げる。その隣に座っていたアリスが、何かに気づいたように微笑み、口を挟んだ。
「噂をすれば影、ってやつかしら」
「え?」
「今ね、ちょうどあなたの話をしてたところなのよ」
アリスがちょっと意地悪く笑って魔理沙を見る。
「魔理沙ったらね、最近あなたが来ないものだから寂しがっちゃって、『天子はどうしたのかなあ』『あいつが来ないと張り合いがないんだよなあ』なんて」
「い、言ってないよそんなこと!」
「あら、言ってたじゃないの。ごめんね天子、この子ったら恥ずかしがり屋さんだから」
「やめろっつーの! マスパぶち込んでアフロにすんぞこの人形女!」
そんな風に騒いでいる魔理沙とアリスを前にして、ああ、気にしててくれたんだ、と、天子は小さな安堵を覚えていた。
「ねえ」
不意に、涼やかな声で呼びかけられた。何か不思議そうな顔をした霊夢が、こちらに向かって歩いてくる。そんな風に、霊夢が自分から歩み寄ってくることはあまりないので、天子は少しどきりとした。
「な、なに?」
「ん。いや、なにかしらね」
自分でもわけが分からぬと言った様子で、霊夢が小さく眉をひそめる。
「なーんか、あんたが凄くいいもの持ってるっていう予感がするんだけど」
「いいもの……あ、そうだった」
天子は慌てて風呂敷包みを突き出した。
「これ、届け物。紫から」
「ゆかりぃ?」
霊夢が顔をしかめたので、天子は少し怖くなった。
「え、なに?」
「んー。いや、紫の届け物、って時点で、ちょっと受け取りたくないなあ、みたいな」
「ああ、そういうこと」
自分が原因ではなかったらしい、と知って、天子はほっと息を吐く。
「でも受け取ってもらわないと困るわよ。わたしもう電車に轢かれてミンチより酷いことになりかけるのは嫌なんだから」
「電車? なんのことだか分かんないけど……まあいいわ」
霊夢はため息混じりに風呂敷包みを受け取ると、うんざりした様子で結び目をほどき始める。
「どうせロクでもないものに決まってうおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」
霊夢が突然目を見開いて叫び声を上げたので、天子のみならず言い争いをしていた魔理沙とアリスまでもが驚き、こちらに駆け寄って来た。
「なんだなんだ」
「どうしたの、霊夢」
「何が入ってたの」
「こ、これ、これは……!」
何か言語を絶する宝物でも受け取ったかのように、霊夢は全身をプルプルと震わせながら、風呂敷包みの中身を天に向かって掲げ上げた。その手に握られているものは、何か、茶筒のように見えた。
ごくりと唾を飲み込みながら、霊夢が勝手に解説を垂れ流し始める。
「グラム数千円を下らないとまで言われる、至高にして最高級の宇治茶……! まさかこの目で拝める日が来るだなんて……!」
「いやなんでそんな詳しいんだよお前」
「昔見た、外の世界のお茶百科に載ってたのよ」
「中身は全然別物とか言うオチなんじゃないの?」
「いや、この香りは間違いないわ。少なくとも普通の煎茶とは一線を画す代物であることは間違いない……! うーん、マンダム……!」
意味不明なことを言いつつ、缶の蓋を開けてしばらくの間香りを楽しんだあと、霊夢は見たことがないぐらい上機嫌な笑みを浮かべてポンポンと天子の肩を叩いた。
「ありがと、天子! あんたもたまにはいいことするわね!」
「そ、そう? えへ……ま、まあ、わたしにかかればこのぐらい当然っていうか」
「いや、それ届け物なんだろ紫からの」
「んなもんなんでもいいわよ。ああ、早速試飲してみなくっちゃ! 掃除なんかやってられないわ!」
「今までだってしてなかったでしょうに」
友人たちの指摘もなんのその、霊夢は茶筒を抱きしめ、鼻歌交じりにスキップしながら社の裏手へ向かっていく。その場に残された魔理沙とアリスは顔を見合わせ、やれやれと言いたげに苦笑しつつ後を追い始めた。
自分も行っていいんだろうかと天子が迷っていると、アリスが振り返って優しく微笑みかけてくれた。
「折角だから、天子もご馳走になっていきなさいよ」
「え? ええと」
「ん、何か用事でもあるの?」
「そういうわけじゃないんだけど」
つい不安になってもじもじしていると、アリスが何かを察したように、「そう、残念ね」と声を漏らした。
「わたし、久し振りにあなたとお喋りしたいと思っていたのだけど」
「え、わたしと? そ、そうなんだ……」
自然と顔がにやけてくるのを堪えながら、天子は何度か頷いた。
「そ、そういうことだったら仕方がないわね、うん。付き合ってあげるわ」
「あら、いいの? ありがとう、嬉しいわ」
「えへ。まあ、アリスのお願いだからね。特別に聞いてあげるわ、うん」
霊夢に劣らぬ軽やかな足取りで、天子も社の裏手に向かって歩き始めた。
博麗神社のいつもの縁側でご馳走になった緑茶は、確かにいつもよりもずっと味わい深いものだった。霊夢など、一口啜った瞬間恍惚とした笑みを浮かべながら「生きてて良かった」と涙を流し始めたほどである。よっぽどお茶が好きらしい。天子はちょっと笑いそうになった。隣ではアリスが「大げさねえ」と笑いながら上品な仕草で湯呑を傾け、さらにその隣では眉をひそめた魔理沙が一口、一口とお茶を啜っては理解しがたいと言いたげに首を傾げている。
「そんなに美味いか、これ? わたしはいつもの味の方が好きだけどなあ」
「ふふん。魔理沙は貧乏舌だから分かんないんじゃないの?」
天子がからかうように言うと、「あ、言いやがったなこいつ」と、魔理沙は唇を尖らせた。
「ケッ、こんなもん有難がる連中なんてロクなもんじゃあないぜ」
不貞腐れたように言いながら、ぐいっと湯呑を傾けて一気にお茶を飲み干す。それを見た霊夢が「あーっ!」と抗議するように叫んだ。
「ちょっと、何勿体ないことしてんのよあんた!?」
「うるへー、お前こそ味も分からんのにこんなん有難がるんじゃないよ」
「あんたと一緒にしないでよね! こちとら毎日十杯はお茶飲んでんだから」
「そんなに飲んでたのかお前!? さすがのわたしも呆れたぜ」
「いいからほら、二杯目飲みなさいよ。あんたも緑茶教徒にしてやるわ」
「巫女のくせに邪教にはまるなよ! だーっ、注ぐな注ぐな、わたしは絶対飲まんからな!」
急須と湯呑を突き合わせ、二人は一進一退の攻防を繰り広げる。それをぼけーっと眺めていたら、隣のアリスがくいくいと天子の袖を引いた。
「え、なに?」
「ううん。大したことじゃないんだけどね」
悪戯っぽい表情で、アリスが唇に人差し指を当てる。それから、取っておきの秘密を打ち明けるような調子で言った。
「わたしもどっちかって言うと紅茶党だから。二人には内緒ね?」
「いやそれ、絶対ばれてるから」
「あらそう。ちっとも知らなかったわ」
大袈裟に驚くアリスに、天子は少し笑った。
そうやって、四人は取り留めもないことを話しながら穏やかな午後を過ごした。天子としてもあまり緊張せずに話に加わることができ、久方振りにくつろいだ時間を味わった。。
しかし、楽しい時間というのは過ぎるのも早いものだ。気付くと部屋に差し込む光も赤みを帯び、夕暮れの空に鴉が鳴き交わす時間になっていた。
「さって、ぼちぼち帰るとするかな」
最初にそう言ったのは、魔理沙だった。傍らに置いてあった帽子を被って立ち上がり、こちらに背を向ける。それがあまり唐突だったので、天子は大いに慌てた。
「えっ、もう行くの?」
「もう、って」
魔理沙が怪訝そうな顔で振り返る。
「空を見ろよ。そろそろ妖怪どもが起き出す時間帯だぜ? お前だっていっつもこのぐらいに帰ってたじゃんか」
「そ、そうだけど、そのう」
「あのなあ、天子」
魔理沙はうんざりした口調で言った。
「なんだか分からんが、わたしはもうこれ以上ここにいたくないんだよ。これ以上飲まされたら、血までお茶になっちまうぜ」
「ああ、それいいわ。そうなったら常にお茶の香りを楽しめるわね。魔理沙にしては素敵な発想よ」
「お前はもう黙ってろよ霊夢」
歯を剥いて吐き捨てる魔理沙の前で、天子は焦っていた。魔法使いの言うことはもっともだが、天子としてはまだまだこの場に留まっていたいのだ。楽しい時間を終わらせたくないというのもあり、出来れば家に帰りたくない、というのもある。だが魔理沙やアリスがもう帰る刻限だ、というのも理解しているので、どう言って引き止めたらいいのか分からない。
そうして迷いに迷っていた天子の耳に、ふと何かが落ちるバサッという音が聞こえてきた。それを聞いたのは天子だけではなかったらしく、魔理沙も喋るのをやめてキョロキョロと周囲を見回し始める。
「なんだ、今の?」
「何か落ちてきたような……あ、これだわ」
不意にアリスが身を屈めて、近くの地面から何かを拾い上げた。その正体を見て、天子はぎょっとする。
それは間違いなく、昼間川原で投げ捨てたあの本だった。
(な、なんで……!?)
いや、こんなことが出来るのは紫しかいないのだが。一体何のために。
混乱する天子の前で、アリスがパラパラと本を捲り始める。魔理沙も興味津々で彼女の手元を覗き込んでいるようだった。
「なんだこれ」
「外の世界の雑誌みたいね」
「へぇ。何が書いてあるんだ?」
「んー……単語の意味は分からないのが多いけど……まあ、多分若い女性向けの情報誌ってところじゃないかしら」
「ほう。じゃあこの『鏡に向かって頑張れ私!』っていうのはスペルカードの名前かなんかか」
「本気で聞いてるの?」
「んなわけないだろ。馬鹿かお前は」
「馬鹿はあんたでしょ」
二人はいつものように軽口をたたき合いながら、次々にページを捲っていく。霊夢は「これが最後これが最後」と呟きながら、どこか狂気じみた虚ろな目で茶葉を交換していて、会話には参加していない。
そんな光景の傍らで、天子は強く胸を押さえていた。自分が夢中になったあの特集に、二人がどんな反応を返すか気になってしょうがない。もしも笑われたり、小馬鹿にするような調子で読み飛ばされたら、と思うと、今すぐこの場から逃げ出したくなった。
そうして、しばらくの後。
「へえ。外の世界でもこんなことやってるのね」
「なんだ? パジャマパーティ?」
そんな会話が聞こえてきたので、いよいよか、と天子はぎゅっと目を瞑った。傍から見れば滑稽だろうとは分かっていたのだが、直視するのはとても怖い。それで二人が会話を止めるわけでもないのだが。
一方、そんな天子の様子など知らぬげに、アリスが懐かしむような口調で語り出す。
「そう、パジャマパーティ。魔界にいた頃、よく似たようなことしたものだわ。夢子姉さんの部屋に姉妹みんなで押しかけて……」
「あー、そういやお前、何人か姉さんや妹とかがいるんだっけ」
「何人か、っていうか、何人も、ね。あと妹はいないわよ。欲しいと思ったことはあるけど」
「へえ。お前の妹ねえ……性格悪そうだな」
「どの口が言ってんの。まあともかく、みんなでお菓子とジュース持ち寄ってわいわい騒いでたわけよ。ある日を境にぴたっと止めちゃったけど」
「なんでだ?」
「……自分の母親が可愛いパジャマ着て登場して、しかも自分たちの誰よりも幼く見えちゃったときの気持ち……あんたに想像できる……?」
「……すまん、残酷なことを聞いたな」
一瞬、二人の間に何か居たたまれない空気が流れる。
だがすぐに、アリスが気を取り直したように言った。
「でもまあ、今思い返してみても楽しい時間だったわ。今度里帰りしたらみんなを誘ってみようかしら」
「そうか。そんときはぜひともわたしも誘ってもらいたいもんだな」
「嫌よ。なんで泥棒を自分の家にあげなくちゃならないのよ」
「心外だな。ちょっと魔界の秘宝とかを貸してもらおうと思ってるだけなのに」
「少しは罪の意識ってものを知りなさい、あんたは」
二人の会話に耳を傾けながら、天子は必死に思考を巡らせていた。
どうやら、二人ともパジャマパーティに悪い印象は持っていないらしい。いや、むしろ好印象のようにすら思えるのは、天子の勘違いだろうか。
これなら、頼めばやってくれるかも。
「あ、あのっ!」
迷いに迷った末、ついに天子は大声で呼びかけた。暮れなずむ空の下、本を読んでいた二人が驚いたようにこちらを振り返る。
「なんだ?」
「どうしたの、天子」
「あの、そそそそ、それっ」
顔が熱くなっているのを自覚しながら、天子は必死に本を指さす。
そして、ごくりと唾を飲みながら思い切って言った。
「それっ、やりたいんだ、けどっ……!」
「それ、って」
魔理沙が紙面と天子の顔を見比べながら、どこか慄いた様子で言う。
「お前、『ハッピースピリチュアルメイクアップアドバイザー』をやりたいのか……?」
「へっ!? あ、ち、違うの、そのページじゃなくって……!」
「違うに決まってるでしょ、馬鹿ね」
アリスが呆れた様子で口を挟み、それから優しい口調で天子に問いかけてきた。
「天子。つまりあなた、パジャマパーティをやってみたいのね?」
「そ、そう、なんだ、けど……」
答える声が尻すぼみになった。
「……ダメ?」
「ああ、ダメ、ってことはもちろんないけど」
アリスはちらっと母屋の中を振り返る。ちゃぶ台の前で、湯呑を握り締めた霊夢が恍惚とした顔で宙を見ていた。
「霊夢。ねえ、霊夢」
「ん。あ、ああ、なに、アリス?」
「天子がね、ここでパジャマパーティをやりたいって」
「パジャマパーティ? なにそれ?」
ぼんやり首を傾げる霊夢に、魔理沙が答えた。
「まあ要するに、泊まり込みで騒ぐことだな。わたしらもよくやるじゃないか」
「ああ、そういうの」
意外なほどあっさりと、霊夢は理解を示した。そのことと、霊夢や魔理沙がよくパジャマパーティを行っているという事実に、天子は強い驚きを感ずる。やはり、仲のいい友人の間ではごく当たり前に行われる催しらしい。
ということは、今ここで許可が下りれば、自分も友人として認められているということになるのではないだろうか。
「で、どうかしら、霊夢? あんたのことだから、今からわたしか魔理沙の家に行くってのは嫌でしょう?」
「うん、そりゃ面倒臭いわ」
「だったら、ここでやるしかないってことになるんだけど」
アリスが説明する声を、天子は祈るような心地で聞いていた。受け入れられればいいが、もしも受け入れられなかったら? 天国か地獄か。そこそこに善行と悪行とを積んだ末に、閻魔の前に立っている人間のような気分。
果たして霊夢は、ごくごく何でもない様子で頷いた。
「うん、まあいいんじゃないの。その代わりタダ飯はなしよ」
その言葉を聞いて、天子は喜びのあまり飛び上がりそうになった。が、すぐにタダ飯という言葉に気が付き、恐る恐る問いかける。
「あのー、それじゃ、わたしは……?」
「あんたはいいわよ。お茶持ってきてくれたし。ああ、今日だけでもうこんなに使っちゃった……! 明日からは一日一杯だけにしておかないと」
霊夢は名残惜しそうに茶筒の蓋を閉める。それが天子でなくて紫からの贈り物だということはすっかり忘れているようだ。今言ったら何か他の物を要求されるかもしれないので、天子は何も言わなかったが。
ところで、魔理沙やアリスの反応も心配だった。特に魔理沙は何かと貧乏臭いし、タダ飯禁止と言われたら来ないのではないか、と危惧したのだが、
「まあ当然だな。久し振りの泊まりだし、とっときの奴を持ってくるぜ」
ごく当たり前のことのようにそう言ったので、天子は内心ほっと息を吐いた。
一連の流れを聞いていたアリスが、一つ頷く。
「話はまとまったみたいね。それじゃあ、一度家に帰っていろいろと準備してくるわ」
「あ、待って」
飛び立ちかけたアリスを、天子は慌てて呼び止めた。「どうしたの」と不思議そうに振り返る彼女に駆け寄り、他の二人に聞かれないよう声を潜めて言う。
「あの、わたし、パジャマとか持ってなくて」
「ああ、そういうこと」
アリスは納得したように頷き、安心させるように笑った。
「大丈夫よ、あなたの分も持ってくるから」
「あるの?」
「ええ、まあ。服を仕立てるのも趣味の一つだから」
「でも、採寸とかしてもらったことないのに」
「一目見れば大体分かるわよ。人形遣いだから、わたし」
微妙に理屈が成り立っていないような気がしたが、ともかく本当のことらしい。アリスって凄いなあ、と天子が感心していると、不意に彼女が顔を寄せてきた。
「霊夢や魔理沙の分も持ってきた方がいいわよね?」
「え?」
「あの二人が可愛いパジャマなんて持ってるわけがないでしょうに。みんなでパジャマ着て騒ぐのが重要、なんじゃないの?」
穏やかな問いかけに、少し顔が熱くなる。天子がこくりと頷くと、アリスは笑って頷いた。
「じゃ、決まりね。なるべく可愛いの持ってきてあげるから、天子はここで霊夢と一緒に待っててちょうだい」
そう言い残すと、アリスは魔理沙と連れ立って飛んで行った。
みんなが帰ってくるまでに夕飯の支度を済ませておきましょ、と霊夢が言ったので、天子はとりあえず彼女にくっついて博麗神社母屋の炊事場へ向かった。
とは言え、何分天子は桃ぐらいしか食べるもののない天界に住まう身。料理など出来ようはずもない。霊夢も「まあ下手に手を出されて失敗しても困るし」と言ってくれたので、とりあえず横で見ていることにした。
エプロンを身に着けた霊夢は、鼻歌混じりに調理を始めた。天子にとっては意外なことに、その手際は実に手慣れたもので、全く迷いがなかった。
ぽかんとして見つめる天子の視線に気づいたらしく、霊夢が調理の手は休めないまま怪訝そうにこちらを見る。
「なに、どうしたの?」
「あ、ううん。料理、できるんだなあって」
以前天子に料理を振舞ってくれたアリスはともかく、霊夢まで料理上手というのはなんだか不思議だった。
だが霊夢はその言葉を聞いて、「何言ってんの」と苦笑する。
「当たり前でしょ。できなかったら毎日どうやって食べてるのよわたしは」
「庭のリンゴでも食べてるのかと思ってた」
「そりゃ食べることもあるけどね。それだけじゃ生きていかれないって」
「そっか。そりゃそうよね。あ、じゃあひょっとして、魔理沙も料理出来るの?」
「んー。ま、出来ないことはないけど」
「けど?」
「なんていうか、大雑把っていうか。ついでに訳わかんないキノコとか突っ込んでくることがあってさ。それで一回ぶっ倒れて以来、あいつのキノコ料理は絶対食べないって誓ったのよわたし」
「あはは、魔理沙はやっぱり馬鹿ね」
「おーおー、今度是非ともそう言ってやりなさいな」
天子とお喋りしている間も、霊夢は少しも手を休めない。竈の火加減を見る傍ら中華鍋の中の炒め物をかき混ぜ、味噌汁の味見をしては納得したように頷く。
そうしてふと、天子の方を見て首を傾げた。
「あんた、そんなところでじっと見てて退屈じゃない?」
「ううん、全然。あ、気になる?」
「別に、気になりゃしないけどね。ま、あんたがいいならいいわ」
そう言って、また調理に戻る。その背中を見て、天子はかすかに微笑んだ。
(お母様も、こんな風にお料理してたのかな)
天子の母は、比那名居一族が天人に取り立てられるよりも前に死んでしまっている。天子が幼い頃、それこそもう数百年も前の出来事だ。だから彼女の記憶に、母の思い出はほとんどない。
それでも、台所に向かう霊夢の背中や、漂ってくる香りには母という存在を感じさせる何かがあるように思われて、ただこの場にいるだけで天子はとても安心できるのだった。
「おかわり!」
「もうないわよ。あんた食いすぎ」
おひつの蓋を開いて顔をしかめる霊夢に、魔理沙が「えー?」と抗議の声を上げる。
「なんだよ。四人集まるんだからちゃんと量多めに作っとけよな」
「作ったわよ。五杯もおかわりしておいて何言ってんのあんたは」
「いいじゃんか。最近研究が忙しかったせいでキノコしか食ってないんだぞわたしは。もっと気遣え」
「どんだけ図々しいこと言ってんのよ、ったく」
霊夢がうんざりした様子で言うと、魔理沙は「そうかあ?」と不満げに唇を尖らせた。
「わたしだけじゃなくて天子だって三杯お代わりしたじゃんかよ」
「な、なによ、文句あんの?」
天子はちょっとどきっとする。魔理沙が凄い勢いで料理を平らげるものだから、ついつい対抗して食べ過ぎてしまったのだ。
だが霊夢は小さく首を振った。
「今日のこの子は上客だからいいのよ。お茶持ってきてくれたし」
「まだそんなこと言ってんのか。まあ見とけよ。わたしが持ってきた奴だって相当なもんだぜ?」
「あんたがそう言うんじゃ期待できないわね」
「なにおう。今に見てろ、吠え面かかせてやるぜ」
魔理沙がやたらと挑戦的に言うものだから、天子は隣のアリスと顔を見合せて、ちょっと笑ってしまった。
魔理沙とアリスは、霊夢が配膳を終えるのとほぼ同時にやって来た。魔理沙は何かガチャガチャ言う風呂敷包みを右手に提げ、アリスは少し大きめの旅行鞄のようなものを持っていた。
そうして、四人でちゃぶ台を囲んでの夕餉が始まった。魔理沙曰く「人が多いせいかいつもより豪勢だな」だそうで、アリスも並べられた料理を見てずいぶん感心した様子だった。霊夢を横で見ていた天子にしても、ずいぶん楽しそうに料理するなあ、と思ったものだが、やはり今日は特別張り切っていたようだ。これもお茶のおかげだろうか。
ともかく、夕餉は楽しいものだった。他人と食卓を囲むのがずいぶん久しぶりな天子にとっては尚更で、食べすぎてしまったのはそのせいもある。特にイワナの塩焼きは絶妙の味だった。「旬の時期は外してるんだけどね」と霊夢はぼやいていたが、食卓を囲んだ他の三人は口を揃えて絶賛したものである。他にも秋の山菜を利用した天ぷらや炒め物などがいくつか並んでいたが、全員が食べ終わる頃にはほとんどの皿が空になっていた。
「ごちそうさまでした」
「はいはい、お粗末様。魔理沙、あんたあんだけ食べたんだから、せめて片付けぐらいはしなさいよ」
「へーへー、分かってますよっと」
「あ、わたしも手伝う」
魔理沙がちゃぶ台の上の皿を重ね始めたので、天子も慌ててそれに倣う。
そうして二人で炊事場へと歩いて行く傍ら、天子は魔理沙に尋ねた。
「ねえ魔理沙。あんた、何持ってきたの?」
「何って?」
「ほら、あの風呂敷包みよ」
「ああ、あれか」
慣れた手つきで流し台に食器を置きながら、魔理沙が得意げに笑う。
「ま、期待しとけよ。今回は正真正銘の取っておきだからな。お前のお茶に負けないぐらい霊夢をビックリさせてやるぜ」
「へえ。楽しみね」
表面上はちょっとからかうような口調で言ったが、実際天子は物凄く期待していた。何せ、霊夢とよくお泊まり会をするという魔理沙の持参品である。きっと場を盛り上げてくれる素晴らしいものに違いない、と。
そうして魔理沙と一緒に居間に戻ってみると、アリスが畳の上に鞄の中身を広げていて、その前に座った霊夢が何やら気難しげに唸っていた。その様子を見た魔理沙と天子が、
「うへぇ」
「うわぁ」
と、それぞれ違った感嘆の声を漏らす。
アリスが畳の上に並べていたのは、持ってくると宣言していたパジャマであった。人数分よりも少し多めで、どれもこれも柔らかそうな生地にフリルやレースがあしらわれた、天子が期待した以上に可愛らしいデザインのものばかり。
アリスは天子と魔理沙が戻って来たのを見つけると、にっこり笑ってパジャマを示してみせた。
「お帰り。魔理沙のはこの辺りので、天子のはこの辺りのね。どれでも好きなの選んでいいわよ」
「いいわよ、ってお前」
魔理沙がパジャマの内の一枚を持ち上げて広げながら、顔をしかめる。
「なんだよこのフリフリのやつは。畳部屋にこんなん、どう考えたって似合わないぜ」
「同感ね。っていうかそもそも、趣味に合わないんだけど」
霊夢も一着持って首を傾げている。
こんなに可愛いし、二人にも似合うと思うのに、着てくれないんだろうか、と天子はちょっと不安になる。
だがアリスはちらっとこちらを見て安心させるように微笑むと、霊夢と魔理沙に向かって言った。
「そう言わずに、ね? たまにはこういう趣向を試すのも悪くないと思わない? 今回は天子もいるんだし、ちょっと気分を変えるつもりで。どう?」
魔理沙と霊夢は顔を見合わせ、どことなく釈然としない表情ながらも、それぞれ一着ずつパジャマを手に取った。
「んー、まあ」
「そこまで嫌なわけでもないから、別にいいんだけどね」
「ありがと。あ、天子もどれか一着選んでくれる? お気に召すのがあればいいんだけど」
「あ、うん」
アリスの勧めに従い、天子は慌ててパジャマの前に座った。選択肢はそう多くはないが、折角のパジャマパーティだ。ちゃんと、自分に似合うものを選びたい。
そんな風に慎重に吟味を重ねていた時、ふと衣擦れの音が聞こえてきたので、天子はきょとんとして顔を上げた。そして、霊夢と魔理沙が何でもない風に服を脱ぎ出しているのを見てぎょっとする。
「ちょ、あ、あんたたち、何やってんの!?」
「は?」
「なに、って」
霊夢と魔理沙が怪訝そうに顔を見合わせる。
「着替えてるんでしょ、パジャマに」
「何言ってんだお前」
そう言う二人は、もう半ば上着を脱ぎかけて下着姿になりつつある。霊夢はサラシを巻いていて、魔理沙は機能性一点張りと言った感じの簡素な下着を身につけている。天子にとっては非常に衝撃的な光景だった。
「だ、だってそんな、人前で服を脱ぐなんて」
「人前って」
「女同士だぜ? 別に恥ずかしがることじゃあないだろ」
「あー、案外着心地いいわねこれ」
「ホントだ、いい生地使ってるぜ。寝心地も良さそうだな」
「サイズもピッタリね」
「ああ、うん……いや、ホントピッタリだよ。ピッタリ過ぎて気持ち悪いぐらいだ……」
ごくごくあっさりとした口調で会話を交わしながら、二人は全く恥じらう様子なく服を着替え終える。天子は口を半開きにしてそれを見ていた。
自分もあんな風に、今ここで着替えなければならないのだろうか? 霊夢と魔理沙の会話を聞く限り、友人同士ならばそれが当たり前なのかもしれないが、何と言うかとても恥ずかしくて、気後れする。
そうやってもじもじしている天子を見て、霊夢と魔理沙がが呆れたように言った。
「なによ天子、なにをそんなに恥ずかしがってんの、あんた?」
「そうだぜ。適当にぱーっと脱いでぱーっと着替えちゃえよ」
「で、でも……」
天子が戸惑っていると、「まあまあ」とアリスがなだめるように言った。
「いいじゃないの。他の部屋で、一人で着替えさせてあげましょうよ」
「まあ、別にいいけど」
「何がそんなに恥ずかしいんだかな。さっぱり分からんぜ」
肩を竦める魔理沙の前で、アリスが「そこはほら」とこちらをちらちら見ながら言った。
「人それぞれ、ね? 事情っていうものがあるじゃない」
「あ、あー」
「なるほどなあ」
アリスの言葉に、霊夢と魔理沙も何やら納得した様子で頷いた。それから、微妙に気の毒そうな笑みを浮かべて言ってくる。
「じゃあ天子、廊下の突き当たりにある部屋で着替えてきなさいよ。そこなら姿見とかもあるから」
「だな。あとその、あれだ。別に、気にするこたあないと思うぜ。わたしたちもどっちかと言うとそっち側だからな」
何が何やら分からないが、ともかく他の場所で着替えてもいいらしい。
天子はちょっと釈然としないものを感じつつも、並べられたパジャマの内気に入った一着を手に取ると、「すぐ戻ってくるから」と一応言い置いて部屋を出た。
後ろ手に襖を閉め、ほぅ、と息を吐く。心臓が少し高鳴っていた。まさか、あんな風に何の躊躇いもなく素肌を晒すなんて。友達って凄いな、と思う。
(それにしても)
霊夢から教えられた通りに廊下を歩きながら、天子は小さく首を傾げる。
(どうしてみんな、あんな気の毒そうな顔でわたしの胸の辺りを見てたんだろ)
まだまだ分からないことが多いなあ、と、ちょっとため息を吐く天子だった。
<続く>
点数は後編にてー
こんな形で料理されてると、スイーツ系の単語が出てくるたびに笑ってしまうw
>「……いや、そんなに胸を張って言われても困るのだけど」
ここで吹いてしまったw
成長途上な天子や、それに理解あるアリス、相変わらずお節介焼きの紫など良かったです
後編も期待しています
無茶しやがって・・・
続き期待してます。
そしてアリスが天子のお姉さんっぽい
そして神綺ママ…………。
天人といってもやっぱりタイクツ。今日も父様とちょっとしたことで口喧嘩になった。
成り上がりだとこんなこともあるからストレスが溜まるよね☆
そんな時アタシは地上で異変を起こしたりする。
頑張った自分へのご褒美ってヤツ?自分らしさの演出とも言うかな!
「あームカツク」……。そんなことをつぶやきながら挑んでくる地上人を撃退する。
「カノジョー、ちょっと話聞いてくれない?」どいつもこいつも同じようなセリフしか言わない。
「すいません……」……またか、とバーミヤンなアタシは思った。シカトするつもりだったけど、チラっと女の顔を見た。
「……!!」
……チガウ……今までの女とはなにかが決定的に違う。有頂天な感覚がアタシのカラダを駆け巡った……。「……(臭い……!! ……これって加齢臭……?)」
女は妖怪の賢者だった。スキマに連れ込まれた。「キャーやめて!」フルボッコにされた。
「ガッシ! ボカッ!」アタシは目覚めた。ドM(爆)
ahoさんの神綺様と天子ちゃんは可愛いすぎる
続きかなり楽しみです
アリスもゆかりんももうどうしたらいいのか分からないぐらい魅力的だ。
天子いじましすぎるぜっ。
それに加えてアリスがいいお姉さん役になってるのがいいね
一人一人のキャラにすごく魅力があってみんな良いヤツだから安心して読める
後編にも超期待
天子がんばれ!
理解の及ばない異次元単語が出るたびに頬が引きつって読み進められなく。
そして保護者連中があまりに可愛い過ぎる。天子の父ちゃんに始まりゆかりんに神綺様に。
でも肉体も精神も鋭く読みきるアリスがとっても素敵ー!
ゆかりんのお茶のおかげで天子はパジャマパーティーのきっかけが掴めるし、
いっぱいいっぱいの天子がほかに気を使いすぎないようにうまく事が運ぶし…
もう、紫の奴\(^o^)/
後半も期待です
後編にも期待!
お姉さんアリス最高!
期待をこめてこの点で
優しいアリスも最高です。
神綺様・・・
後編を待ちわびております。
楽しみで仕方がない。
いやもうホント最高。
そして遅すぎる天子の反抗期
パパンと和解できる日がくることを願いながら後編を待つ!
まぁいいや、ahoー、結婚してくれ
とはいってもどれがスイーツ系の雑誌なのか見当つかないんだけど
しかしこういうのをまさに老婆心って言うんでしょうか紫さ(ピチューン
続きに期待!
続き、楽しみです。
天子はかわいいなぁ!
天子はかわいいなぁ!!
天子はかわいいなぁ!!!
天子が可愛すぎて死にそうなんですが
そしてアリスはできる子
あと本屋のレジ打ちに言わせてもらうと、その程度のアレさなら1分もしないうちに忘れられてしまうレベルだと思うので、文字通り気にしたもの負けでしょう
後編楽しみにしてますね。
パパとの和解もどうなるんだろうなぁ
あとバ…ゆかりんグッジョブ
着替えであわてるのも、深窓の令嬢っぽくて最高b
アリスーーー!
というかそれを当然のようにこなせるアリスかっけぇ!!
あと、スイーツ(笑)の資料にするならSEVENTEENやCawaii!といったローティーン向けの雑誌の方がネタにしやすいかと思いますよ
ahoさんの作品では、こういうのが一番好きかも。
急かすつもりはないけど、早く後編読みたいです…
いや、急かすつもりはないんですけど!!
後編も楽しみにしてます!むしろ番外編でもいいから魔界編がみたい気もしますがw
ahoさんの天子かわいいよ天子
お姉さんアリスが良すぎて生きるのが辛い
善意のみを凝縮した宝石みたいな話だなぁ
是が非でも続編を・・・!
続編を!
ahoさん、なにとぞ続編を~(泣)
待ってます。
天子ちゃん何年待たせてるの