六月。夏まっさかりと呼ぶにはまだ少し早いが、春のぽかぽかした陽気からだんだん夏の突き刺すような熱気へと変わっていく時期である。日本の中にある幻想郷にももちろん四季があり、外の世界と変わらず夏は暑い。過ごし方は人妖それぞれで、暑さに負けず自分の職務をまっとうする者もいれば、照りつける太陽に勝てずだらだらする者、いつもと変わらずたんたんと過ごす者など千差万別である。
それはさておき、ここ博麗神社では昼間からいつもと変わらずだらだら過ごしている者たちがいた。
「暑いぜ……」
「あんたを見てるほうが暑いわ」
いかにも暑苦しそうな格好でぼやくツートンカラーをした普通の魔法使い、霧雨魔理沙。いつもなら紅魔館に押しかけ本を死ぬまで借りに行く頃だが、うだるような暑さがそのやる気を奪っていた。
そんなやる気のなさそうな彼女に、さらにやる気がなさそうに返事する紅白巫女、博麗霊夢。だらだらしているのはいつも通りだが、今日はとろけ具合がアップしている。
「そもそも何でうちに来たのよ、家でじっとしとけばいいじゃない」
暑い暑いと連呼するならなぜ自分の家でじっとせずうちへ来るのか?至極もっともな疑問であるが、それにはきちんとした理由があったようだ。
「ああ、家なら爆発したぜ」
「は?」
「ほら、最近特に暑くなってきただろ? だから昨日、魔法を使って秋まで涼しく快適に乗り切ろうと思ったんだが、なにか手順を間違えたみたいでな。 木っ端微塵に吹き飛んだぜ」
へらへらしながら言うあたり、かなり暑さにやられているのだろう。
「それならしょうがないわね」とさもあたりまえのように返す霊夢もかなりキているが。
それからしばらく他愛もない話をしていた二人だったが、いかんせん暑い。少し経つと両者とも押し黙ってしまった。
「なにか……なにか涼しく過ごせる方法はないのか……」
「簡単にできたら苦労しないわよ……」
しばらくあーうーうなる巫女と魔法使い。このまま干からびて死ぬのかと二人とも大げさにかんがえていたとき、唐突に魔理沙が跳ね起きた。
「いきなりどうしたの?」
あまりにも唐突だったので、少しびびりながら聞く霊夢。彼女はほうきを手に取りながら少しにやりとしたあと
「ちょっといいことを思いついたぜ、すぐ戻ってくる」と言い残し、今まで伸びていたとは思えないぐらい凄い速さで神社を抜け出していった。
いきなり飛び出して言った友人を目だけで見送ったあと、一人残った霊夢はただうなるしかなかった。
紅魔館の前に位置する湖では、妖精がおもに活動している。今日もそれは例外ではなく、青いワンピース姿の妖精、チルノが一人優雅に舞っていた。
彼女は氷精である。なので自分の周りを冷気で覆える彼女は夏でも元気いっぱいだ。いつものように元気な彼女は、やっぱりいつものようにやっぱりあたいったらさいきょーねと言いながら、今日はなにをしようかと考えているところだった。
「きのうはリグルたちと遊んだから……きょうもそうしよっと!」
結局いつも通り過ごそうと言う結論に至ったようだ。なに不自由なくいつも通り遊べるのは、今日も幻想郷が平和な証拠である。あまりにも平和なので、彼女の背後にせまりくる極悪な極太レーザーが幻想的なまでに浮いて見えた。
「と、いうわけで捕まえてきたぜ」
少し誇らしげに、黒焦げになっているチルノを抱えながら魔理沙が神社に戻ってきていた。
「……なるほどね。」
冷気を操れるチルノならこの暑さもなんとかできるに違いないと思った魔理沙は、さっそく湖まで飛んでいき、気づかれないようにこっそりかつ大胆に襲撃したあと、このくそ暑い神社へと拉致してきたのであった。
「ほら、起きなさい」
言いつつ、結構な強さで頬を叩く霊夢。二人とも鬼畜である。最初は完全に気絶していたチルノだったが、何回か叩かれるうちにぼんやりと意識が戻ってきたようだ。
「う……」
「お、起きたみたいだぜ」
ぼーっとしながら周りを見回すチルノ。だんだんと意識がはっきりしてきたようだ。
「え……っと。……あれ?…………ここどこ!? なんで!? 痛い!? えっ!?」
すごい勢いで取り乱しはじめている。無理もないだろう、目が覚めたら場所は変わってるわ不敵な笑みを浮かべている二人組が目の前にいるわほっぺは痛いわで、冷静にいられるほうが無理である。
それでも少し落ち着いてきたのだろう、だんだん拉致されたときの記憶が戻ってきたようだ。こうなった原因である魔理沙を睨みつけ、怒鳴り始める。
「いきなり後ろからなんてひきょうよ! きょうもせっかくみんなのところに遊びにいこうとおm」
そこまで言ってから、急に話をやめる。前に立っている二人からとてつもなく黒いオーラが溢れ出していたからだ。どれくらい黒いかというと、あまり恐怖を感じたことがなかったチルノが得体のしれない怖気を覚えたほどである。それ以上なにも言い出すことが出来ないうちに、魔理沙に先手をとられる。
「実はちょっと頼み事があってさ、聞いてくれるよな?」
非常に爽やかな、らしくない微笑を浮かべながら言う魔理沙に圧倒されたチルノは、ただ首を縦に振るしかなかった。
「あ~、生き返るわー」
「まったくだな」
「ちょっとはあたいに感謝してよね!」
強制的に神社を涼めることにされたチルノは、ふてくされながらも二人の言うことをきいていた。下手に逆らえばなにをされるかわからないからである。先月も、霊夢に喧嘩をうったミスティアがぼこぼこにされたあと、白玉楼につれていかれたまま帰ってきていないのである。
「これからは一家に一台チルノの時代ね」
わりと本気でいってるあたり、本当に横暴な人物だとうかがい知れてしまう。
「それにしても……ふあぁぁ……眠いわね」
昨日の夜は暑くてまともに眠れなかったので、居心地がよくなったところで眠そうになる霊夢。魔理沙もそれは同じようで、それじゃあ少し仮眠をとろうということになったようだ。
一人取り残されたチルノは、しばらく退屈そうに冷気を発していた。しかし、安らかそうに寝息をたてている二人を見て、少しいらいらしはじめたようだ。そもそもチルノには二人を助けてやる義理はなく、もう寝てしまったのであれば(今は)襲われることはないだろう。
それに気づき、はやく遊びにいきたかったチルノは早速神社を出て行こうとするが、良いことを思いつく。
「……いまなら仕返ししほうだいよね?」
いきなり襲撃されたり、冷房代わりにされたりしたのだ、ちょっとくらいなら仕返ししても大丈夫だろうということで、神社に残っていたずらすることにしたようだ。
しかし、ちょっとというのは個人差がある。チルノのちょっとは他の人に比べて少しばかり大きかったようだ。
眠ってからしばらくは本当に快適で、これならもう秋まで大丈夫だと思っていたのだが、なにやら様子がおかしい。これは涼しいというより……
「……寒い!?」
異常事態に飛び起きる。そう、ありえないぐらい寒いのだ。
落ち着いて周りを見渡すと、いまだ安らかな顔をした魔理沙と、すっかり真っ白になってしまった部屋が視界に入ってきた。チルノは見あたらず、容易に犯人は特定できる。やっかいなことになったと呟きながら、いまだ目をつぶっている魔理沙を起こすことにした。
「魔理沙、異常事態よ。起きて」
魔理沙の体を強くゆする。しかしまったく反応がない。どうしたことかと思っていると、なにやらぶつぶつ言っているのが聞こえてくる。
「もうちょっと……もうちょっとで向こう岸にいるおばあちゃんに……」
そういえば魔理沙は寒いのがだめだったなあと思い出す。魔理沙の寝言は聞かなかったことにして、冷静に考える。
こんなことになったのは、少し自分たちのせいもあるかもしれない。いきなりぶっ飛ばされたあげく無理矢理言うことを聞けと言われたら、だれだって嫌なものだ。自分だったらそんなことをしてくる相手を一週間ほど永遠亭のお世話にさせるだろう。
少し今日のことを反省しつつ、とりあえずこの部屋をどうやって片付けるか、チルノにどんなお仕置きをするか考えることにした。
それはさておき、ここ博麗神社では昼間からいつもと変わらずだらだら過ごしている者たちがいた。
「暑いぜ……」
「あんたを見てるほうが暑いわ」
いかにも暑苦しそうな格好でぼやくツートンカラーをした普通の魔法使い、霧雨魔理沙。いつもなら紅魔館に押しかけ本を死ぬまで借りに行く頃だが、うだるような暑さがそのやる気を奪っていた。
そんなやる気のなさそうな彼女に、さらにやる気がなさそうに返事する紅白巫女、博麗霊夢。だらだらしているのはいつも通りだが、今日はとろけ具合がアップしている。
「そもそも何でうちに来たのよ、家でじっとしとけばいいじゃない」
暑い暑いと連呼するならなぜ自分の家でじっとせずうちへ来るのか?至極もっともな疑問であるが、それにはきちんとした理由があったようだ。
「ああ、家なら爆発したぜ」
「は?」
「ほら、最近特に暑くなってきただろ? だから昨日、魔法を使って秋まで涼しく快適に乗り切ろうと思ったんだが、なにか手順を間違えたみたいでな。 木っ端微塵に吹き飛んだぜ」
へらへらしながら言うあたり、かなり暑さにやられているのだろう。
「それならしょうがないわね」とさもあたりまえのように返す霊夢もかなりキているが。
それからしばらく他愛もない話をしていた二人だったが、いかんせん暑い。少し経つと両者とも押し黙ってしまった。
「なにか……なにか涼しく過ごせる方法はないのか……」
「簡単にできたら苦労しないわよ……」
しばらくあーうーうなる巫女と魔法使い。このまま干からびて死ぬのかと二人とも大げさにかんがえていたとき、唐突に魔理沙が跳ね起きた。
「いきなりどうしたの?」
あまりにも唐突だったので、少しびびりながら聞く霊夢。彼女はほうきを手に取りながら少しにやりとしたあと
「ちょっといいことを思いついたぜ、すぐ戻ってくる」と言い残し、今まで伸びていたとは思えないぐらい凄い速さで神社を抜け出していった。
いきなり飛び出して言った友人を目だけで見送ったあと、一人残った霊夢はただうなるしかなかった。
紅魔館の前に位置する湖では、妖精がおもに活動している。今日もそれは例外ではなく、青いワンピース姿の妖精、チルノが一人優雅に舞っていた。
彼女は氷精である。なので自分の周りを冷気で覆える彼女は夏でも元気いっぱいだ。いつものように元気な彼女は、やっぱりいつものようにやっぱりあたいったらさいきょーねと言いながら、今日はなにをしようかと考えているところだった。
「きのうはリグルたちと遊んだから……きょうもそうしよっと!」
結局いつも通り過ごそうと言う結論に至ったようだ。なに不自由なくいつも通り遊べるのは、今日も幻想郷が平和な証拠である。あまりにも平和なので、彼女の背後にせまりくる極悪な極太レーザーが幻想的なまでに浮いて見えた。
「と、いうわけで捕まえてきたぜ」
少し誇らしげに、黒焦げになっているチルノを抱えながら魔理沙が神社に戻ってきていた。
「……なるほどね。」
冷気を操れるチルノならこの暑さもなんとかできるに違いないと思った魔理沙は、さっそく湖まで飛んでいき、気づかれないようにこっそりかつ大胆に襲撃したあと、このくそ暑い神社へと拉致してきたのであった。
「ほら、起きなさい」
言いつつ、結構な強さで頬を叩く霊夢。二人とも鬼畜である。最初は完全に気絶していたチルノだったが、何回か叩かれるうちにぼんやりと意識が戻ってきたようだ。
「う……」
「お、起きたみたいだぜ」
ぼーっとしながら周りを見回すチルノ。だんだんと意識がはっきりしてきたようだ。
「え……っと。……あれ?…………ここどこ!? なんで!? 痛い!? えっ!?」
すごい勢いで取り乱しはじめている。無理もないだろう、目が覚めたら場所は変わってるわ不敵な笑みを浮かべている二人組が目の前にいるわほっぺは痛いわで、冷静にいられるほうが無理である。
それでも少し落ち着いてきたのだろう、だんだん拉致されたときの記憶が戻ってきたようだ。こうなった原因である魔理沙を睨みつけ、怒鳴り始める。
「いきなり後ろからなんてひきょうよ! きょうもせっかくみんなのところに遊びにいこうとおm」
そこまで言ってから、急に話をやめる。前に立っている二人からとてつもなく黒いオーラが溢れ出していたからだ。どれくらい黒いかというと、あまり恐怖を感じたことがなかったチルノが得体のしれない怖気を覚えたほどである。それ以上なにも言い出すことが出来ないうちに、魔理沙に先手をとられる。
「実はちょっと頼み事があってさ、聞いてくれるよな?」
非常に爽やかな、らしくない微笑を浮かべながら言う魔理沙に圧倒されたチルノは、ただ首を縦に振るしかなかった。
「あ~、生き返るわー」
「まったくだな」
「ちょっとはあたいに感謝してよね!」
強制的に神社を涼めることにされたチルノは、ふてくされながらも二人の言うことをきいていた。下手に逆らえばなにをされるかわからないからである。先月も、霊夢に喧嘩をうったミスティアがぼこぼこにされたあと、白玉楼につれていかれたまま帰ってきていないのである。
「これからは一家に一台チルノの時代ね」
わりと本気でいってるあたり、本当に横暴な人物だとうかがい知れてしまう。
「それにしても……ふあぁぁ……眠いわね」
昨日の夜は暑くてまともに眠れなかったので、居心地がよくなったところで眠そうになる霊夢。魔理沙もそれは同じようで、それじゃあ少し仮眠をとろうということになったようだ。
一人取り残されたチルノは、しばらく退屈そうに冷気を発していた。しかし、安らかそうに寝息をたてている二人を見て、少しいらいらしはじめたようだ。そもそもチルノには二人を助けてやる義理はなく、もう寝てしまったのであれば(今は)襲われることはないだろう。
それに気づき、はやく遊びにいきたかったチルノは早速神社を出て行こうとするが、良いことを思いつく。
「……いまなら仕返ししほうだいよね?」
いきなり襲撃されたり、冷房代わりにされたりしたのだ、ちょっとくらいなら仕返ししても大丈夫だろうということで、神社に残っていたずらすることにしたようだ。
しかし、ちょっとというのは個人差がある。チルノのちょっとは他の人に比べて少しばかり大きかったようだ。
眠ってからしばらくは本当に快適で、これならもう秋まで大丈夫だと思っていたのだが、なにやら様子がおかしい。これは涼しいというより……
「……寒い!?」
異常事態に飛び起きる。そう、ありえないぐらい寒いのだ。
落ち着いて周りを見渡すと、いまだ安らかな顔をした魔理沙と、すっかり真っ白になってしまった部屋が視界に入ってきた。チルノは見あたらず、容易に犯人は特定できる。やっかいなことになったと呟きながら、いまだ目をつぶっている魔理沙を起こすことにした。
「魔理沙、異常事態よ。起きて」
魔理沙の体を強くゆする。しかしまったく反応がない。どうしたことかと思っていると、なにやらぶつぶつ言っているのが聞こえてくる。
「もうちょっと……もうちょっとで向こう岸にいるおばあちゃんに……」
そういえば魔理沙は寒いのがだめだったなあと思い出す。魔理沙の寝言は聞かなかったことにして、冷静に考える。
こんなことになったのは、少し自分たちのせいもあるかもしれない。いきなりぶっ飛ばされたあげく無理矢理言うことを聞けと言われたら、だれだって嫌なものだ。自分だったらそんなことをしてくる相手を一週間ほど永遠亭のお世話にさせるだろう。
少し今日のことを反省しつつ、とりあえずこの部屋をどうやって片付けるか、チルノにどんなお仕置きをするか考えることにした。
まあ内容がよかったので大丈夫ですがw