「もう夏だなぁ」
私はそう呟いて、いい加減に焼けたヤツメウナギを裏返した。特性のたれが香ばしく香る。
まだ6月半ばというのに、もう風鈴や素麺が恋しい時期になってきた。"ちきゅうあんだんか"とかいうやつのせいらしい。
外の世界ではこういう蒸し暑いときには"くーらー"とか言う冷たい息を吐き出す箱を家に置くと言う。
私も"くーらー"は欲しいと思うが、実際それはなかなか手に入りにくく、手にはってもこんせんととか言うものが無くては使えない。
ここらで"こんせんと"があるのはあの陰険メガネがいる店しかない、あそこなら"くーらー"もあるし、涼しいが、あそこへ行くには蚊だらけの魔法の森を通っていかなくてはいけないので行く気もしない。そんな事を考えると、イライラして来るので考えるのをやめよう。
私は出来上がった蒲焼を皿に盛り、少しだけつまんだ。我ながら最高のできばえ。もう1口つまんだところで、聞き覚えのある声が耳に入った。
「オース! ミスティア、鰻もらいに来たぞ」
どこで飲んできたかは知らないが、既に酒臭い氷精が、千鳥歩きになってきた。
「チルノ、食べてくのは良いけどちゃんと払ってよ、お金。前の付けも残ってんだから」
そう言って私はメモを確認する。ルーミアの次に未払い金が多いはずだ。
「ホイホイ、また今度また今度」
そのまた今度をいったい何度聞いただろうか……。その前にチルノに収入はあるのだろうか……。とりあえず私は聞いてみた。
チルノはへらへらと何処かの飲んだくれのおっさんの様に笑った。
「良くぞ聞いてくれたっ! これからがアタイの稼ぎ時なんだよ!」
「稼ぎどきねぇ」
私の稼ぎ時はいつ来るのだろうか、それはともかく何をして稼ぐんだ?それを聞こうとしたところで、チルノを呼ぶ声がした。
見ると魔理沙が袋をほれと突き出している。
「チルノ、例の物をくれよ」
「はいはい了解。500円ね」
そう言ってチルノは大きな氷をつくって渡した。
「くぅーっ、やっぱ夏はコレだぜぇ」
「あっ、あたしにも頂戴」
「私にも頂戴!」
……あっという間にチルノのところに行列ができる。その割私の店には誰も来ない。冷たいビールがあるのに……
氷を配り終わったチルノは、得意げに私にお金を差し出した。
「付けの分これで全部足りるよね?」
「うん……」
若干多いけどそこは気づかなかった事にしておこう。私はお金を懐に入れると、500円だけ渡した。
「私にも氷ちょうだい」
「毎度あり~」
私はチルノが作った氷を受け取ると、その氷を空いたビール箱の中にしまった。
「何それ?」
「こんせんと無しくーらー」
「……なにそれ?」
チルノは目をくるっと回していった。これだから馬鹿は困る。
「つまりアレよ!今までこんせんとが無くちゃ使えなかったくーらーが、何所でも使えるって事よ!」
「そ、それってすごいのかぁ!? やっぱあたい天才?」
私の天才的な発明に、チルノは酒臭い鼻息を荒くして顔を寄せてきた。この調子で乗せていこう。
「チルノが氷を作って私が箱に入れる。この経費は0!」
「おぉー!」
「そして夏に近づくにつれ、売り上げは伸びていく!」
「うぉぉ!」
「これで大金持ちだぁ!」
「ヒヤッホーイ!」
私は店の棚から取って置きの1本を出した。
「セレブ入り祝いで乾杯しよう!」
「よっしキター!!」
開けるやいなや、すぐに杯に溢れるくらいに盛り、一気飲み。
「どんどん飲め、どんどんノメェ!」
――うーん、頭痛い…、何してたんだっけ? 横に目をやると、チルノが濡れた箱にダイブしている。
とりあえず起こして聞いてみた
「私たち何してたんだっけ?」
「さぁ?」
むしろこの文章の最後からSSはスタートするような気がします。
はたして、チルノは本当にくーらーとしてやっていけるのか、何か問題は起きないのか、
そしてそのときミスティアは――と、まだまだ妄想を膨らませることができそうです。
本当は展開についてあーだこーだとするのはご法度かもしれませんが
何かのヒントになればということで書かせていただきました。
文章自体はとても読みやすいので、これからのSSに期待、ということで。
ただ、お話としてオチが弱い(或いは無い)ので是非とも続きを書いてほしいです。
ただ何本も一気に読みたいタイプのSSですね。
もうちょっとふくらませればもっと良くなりそうです
一ヶ所誤字で氷が凍りになってます。
ちょっとグダグダな内容も酒の席と考えれば丁度良い感じでした。