気だるい残暑もやっと翳りを見せ、幻想郷も秋と呼ぶに相応しい季節を迎える。
野分さえ来なければ、春と並んで過ごしやすい季節と言えよう。
さて、周りからは、やれ引き篭もりだ、出不精だと、とやかく言われる僕ではあるが、全く外に出ていないと言う訳では無い。
朝起きて顔を洗うためには、外の井戸を使うし、暑い日には打ち水だってする。
香霖堂が潰れる直前には渋々雪下ろしをするし、外の道具を拾いに……もとい、無縁仏を弔うために無縁塚に出向く事もある。
そして、自家製の菜園で育てている野菜にも、枯れないようきちんと水をやっているのだ。
今日は、そんな育てた野菜の一つを収穫し、採れたての味覚を存分に味わうべく、朝からせっせと働いている。
僕は純粋な人間とは違い、生きるための食事を必要としない。
だから僕にとって食事とは、あくまでも趣味の一つである。
趣味だからこそ、半端に手抜きは出来ず、少しでも美味しく食べるための労力を惜しまない。
さて、その僕が今日収穫しているものは何かというと、蕎麦である。
蕎麦の自慢はお里が知れる、なんて言う諺が示す通り、米の採れない冷涼の地でもしっかり育つ、非常に丈夫な穀物だ。
山奥であるが故、ここ幻想郷の冷涼な気候は、米よりも蕎麦の育成に適した地であると言える。
とは言え、不毛の地で育てた、不味い蕎麦なら、あえて苦労してまで食べる意味が無い。
美味しい蕎麦に育て上げる必要があるのだ。
それには、まず、肥沃で陽当たりの良い場所で育てる必要がある。
香霖堂の裏庭では日当たりも悪いし、やけに白いあの桜を見ていると、肥沃な土壌にも思えない。
向かいの草叢を草焼きして、立派な菜園に作り変えようかと思いつきそうになった頃、魔理沙の放った魔砲の一部が、丁度向かいの草叢を焼いたので、そこを菜園として利用している。
「ふう……」
涼しくなったとは言え、これだけ力仕事をすれば、もう汗まみれである。
こんな地道で大変な作業は、出来る事ならしたくないものだが、蕎麦だってそう簡単に食べられるようには出来ていない。
全て刈入れたところで、せいぜいニ十食分に満たない量であるが、普段動かない僕にとっては重労働だ。
早朝から始めた刈入れ作業が終わると、もう昼食に良い時間になっていた。
「さて、天気が良ければ一週間、かな……」
作業が一段落し、僕は少しため息を吐く。
蕎麦の実は収穫して直ぐに食べられる訳では無い。
蕎麦粉にするためには有る程度、実を乾燥させなくてはいけないのだ。
天気がよければ、十日程度で乾燥が終了するだろう。
僕は刈り取った蕎麦をいくらかの束にして、良く日があたるように直立させる。
「なあ、香霖。それって蕎麦か?」
丁度、一番大変な作業が終わったところで、魔理沙が現れた。
まるで見計らっていたかのようなタイミングである。
「ああそう、蕎麦だよ」
「新蕎麦は大好きだ。楽しみに待ってるぜ」
魔理沙はにんまりと嬉しそうな顔を浮かべる。
一方の僕は、早朝からの重労働ですっかり草臥れて、嫌味の一つでも言ってやりたい気分だった。
「なら、少しくらい手伝ってくれないか? 結局、三分の一は魔理沙が食べてしまうんだし」
「畑を焼いたのは私だろ?」
「……全く。その程度の仕事で三分の一を要求するのか」
「いつもの事だろう。それに香霖だって、蕎麦を打つたびに、さあ食べろと言ってくるじゃないか。煽てるのも私の仕事だぜ」
ああ言えばこう言う、屁理屈では魔理沙に勝ち目が無いので、僕はもう一つため息をついた。
「じゃあ、魔理沙にはせめて蕎麦をもう一段階、美味しくするための労働をしてもらおうか」
「えー。でも天日干しももう終わりそうだし、何すりゃいいんだ?」
「一段階と言わず、二段階は美味しくなるかもしれないぞ。魔理沙だって美味しい蕎麦が食べたいだろ?」
「まぁ、食べたいから付き合うぜ」
「そうだな、じゃあ、蕎麦以外の材料を揃えてもらおう。と、言っても一つだけだがね」
うん、と魔理沙が頷く。
こんな時の魔理沙の顔は、決まって自信に溢れている。
魔理沙は意外と仕事が好きである。
何しろ霊夢の仕事は勝手に奪い、厄介事には揚々として首を突っ込むのだから、そうなのだろうけど。
「荒れた土壌でもしっかり育つ蕎麦だが、肥沃な土壌でしっかり作られた蕎麦はって言うのは、タレも何も漬けないでも十分に美味しい」
「長い前置きが始まったぜ」
「やかましい。まぁ、何も漬けないせいろでも香りが素晴らしく、美味しいものなんだが、僕は温かい蕎麦も捨て難い。悩んだんだが、今年は最初に温かい蕎麦を美味しく食べようと――」
「ああ、はいはい、そこまで言えば十分だ。アレを捕まえてくればいいんだろ?」
と言って、魔理沙は腕をパタパタさせてアレの物まねをする。
「……まぁ、そう言う訳で、頼んだよ魔理沙。天気がよければ十日後の夕食に打つから、忘れないようにね」
「任せてくれ」
そういって、魔理沙は自分の胸をポンと叩く。
それはそうだろう、アレを加えた蕎麦の美味しさと来たら尋常ではないのだ。
魔理沙もそれは良く知っているはずである。
こんな丁寧に頼まなくたって、勝手にやってくれたかもしれないなと思うと、少し損した気分になった。
その日、僕は朝から大忙しだった。
天候にも恵まれたお陰で、予定通り十日目に乾燥した蕎麦を、脱穀する作業に入る。
倉庫から、足踏みの脱穀機を引っ張り出す。
昔は千歯扱き、その前は箸を使って脱穀をしたものだが、道具と言うのは常に進化し続けるものだ。
この道具は、幻想郷が隔離された後に、外の世界で発明されたものだが、こうして幻想郷の住人が普通に使うくらいには時間が経った。
ちなみに、この脱穀機は僕が僕のために自作したもので、やや身長の高い体躯にあわせ、腰を曲げたり負担をかけぬような大きさに仕上げている。
それでも面倒臭い作業である事には変わり無いのだが。
脱穀が終わっても、さあ、粉にしようと言う事にはならない。
脱穀直後は、関係の無い枝葉や塵が混ざっていて、このまま粉にする事は出来ず、唐箕 (とうみ )を使って上手く実だけを選別しなければいけないのだ。
唐箕というものの原理は簡単で、脱穀したばかりの実を少しづつ漏斗から落として、そこに横から風をあてて軽い塵だけを吹き飛ばす。
それを何度か繰り返す事で、実だけが残ると言う寸法である。
それだけの道具なのだが、大変効率が良く、天才的な発想によって生まれた道具である。
『唐の箕』と言うくらいなのだから、恐らく大陸で発明された道具なのだろう。
唐箕のハンドルを廻していると、先人達の偉大さに敬服したくなる。
外の本を調べてみたところ、素材や動力こそ変われど、外の世界でもいまだに唐箕の風選の原理は用いるらしく、その発想がどれだけ素晴らしいものであったかという事を証明している。
唐箕が終わる頃には、また丁度、昼の時間になっていた。
ただ、今日は出来るだけ腹を空かせておきたいので、水を飲むだけに留める。
井戸から冷たい水を汲み出すと、桶からそのまま冷たい水を飲む。
「――さて、魔理沙は上手く捕まえてくれるかな?」
さて、残すところ、製粉と蕎麦打ちの過程だけである。
霧雨の親父さん直伝の、蕎麦打ちの腕を存分に振るうしかあるまい。
――カランカラン
石臼を轢き、人数分の蕎麦を打ち終えた頃、香霖堂の表の扉が開く音がした。
「香霖、捕まえてきたぜ!」
「こんばんは、霖之助さん。当然、私の分も勿論あるんでしょうね?」
ガーガーという、哀れな獲物の鳴き声と供に、魔理沙が霊夢と一緒に入って来たようだ。
僕は作業をしていた土間から、表に向かって返事を返す。
「ああ、勿論作ってあるよ」
美味しいもの、ご馳走があるときは、必ずと言っていいほど霊夢が来る。
元々、呼ぶつもりではあったが、もし隠そうとしても、あの異常な勘の鋭さで察知してしまうのは目に見えていた。
だからあらかじめ、三人分の蕎麦を用意しておく。
一人分足りなかったら、ありつけないのは間違いなく僕だろうし。
「丸々太った真鴨だぜ」
魔理沙が鴨背負ってやってきた。
麻袋に入れられた哀れな鴨は、未だガーガーと鳴いて暴れている。
魔理沙は袋に手を入れて、鴨の青い首根っこをぐいと掴んで、自慢げに獲物を見せ付ける。
うん、丸々太っていて、本当に美味しそうな鴨だ。
「ああ、これで美味い鴨南蛮が作れるだろう。ありがとう、魔理沙」
「蕎麦はもう打ち終っちゃったのか?」
「丁度、今さっきね」
「そっか。一度蕎麦打ちってのもやってみたかったんだけどな」
「僕は霧雨の親父さんに教わったんだ。蕎麦打ちは大黒柱の仕事だからね」
「……あー、そう。なら香霖に任せるぜ」
魔理沙は悔しそうな顔を浮かべてそう言った。
僕が打った蕎麦は、蕎麦殻も一緒に挽く、所謂田舎蕎麦である。
ツナギの小麦粉と蕎麦粉を二対八の割合で混ぜる、二八蕎麦でもある。
この二八の田舎蕎麦が、鴨南蛮に最も良く合う蕎麦だと僕は思う。
更科よりも蕎麦の風味が強く、スープにも蕎麦の香りと美味しさが一杯に広がり、十割蕎麦よりも歯応えがあって、食感が良い。
この田舎蕎麦をやや太めに切る事で、のびにくく、香り高い鴨南蛮を作る事が出来るのだ。
「お腹空いちゃったわ。何でもいいから早く捌いて食べましょうよ」
続いて霊夢が現れ、無責任な事を言う。
「鴨さえ捌けばすぐにでも作れるけど……」
「うむ、じゃあ、さっさと捌こう。私もお腹空いたしな」
「手伝うわ、魔理沙」
霊夢は包丁を二本、魔理沙は鴨の首根っこをもって、裏口から外へと出て行った。
程無くして、ガーガーと鳴き喚く鴨の声はぷつりと途切れる。
僕は彼女らが鴨を捌いている間、少し休む事にした。
椅子の上で、意識がややまどろみかけた頃、二人は捌いた鴨を持って裏口から入って来た。
「出来たわよ、霖之助さん」
「はー、疲れた。後は頼むぜ」
哀れな鴨は羽毛を全てむしられ、僅かに残った毛も焼かれ、食べられる部分は全部きっちり捌かれていた。
二人がかりにしたって、中々見事と言うか、流石に手慣れている。
「余った部分は頂戴ね。今日全部使うわけじゃないでしょ? ああ、あと羽毛も頂くわ」
「ああ、霊夢待った。心臓は私が貰うぜ。薬に使うんだ」
「それは二人で相談して決めてくれ。もう二十分くらいは時間があるから、外で弾幕ごっこでも何でもすればいい」
余った部分は、捕まえたもの、捌いたものの権利である。
僕が使うのは腿肉だけだし、残りの部分は二人で分けてくれれば良い。
二人は放っておいて僕は鴨南蛮の仕上げに取り掛かる。本当に長い一日だった。
さて、ここからは再び僕の番だ。
脂ののった赤い鴨肉は本当に美味しそうである。
特に鴨南蛮には、特に味の濃い腿肉を塊のまま使う。
脂ののった鴨の肉は、油を敷かずとも、皮を下にするだけで、身から溶け出す油で香ばしく焼き上がる。
余分な味付けはせず、鴨の風味を活かすのだ。
少し表面に焦げ目が出るくらいに炒めても、中はまだ少し赤い。
土間は、香ばしい鴨の匂いで大変な事になっていた。
鴨が焼き上がっても、油を捨ててはいけない。
この油を使って、葱をじっくり炒めるのだ。
鴨の風味を含んだ葱は、それだけで料理と言えるほどのご馳走である。
葱も当然、この日のために菜園で一緒に育てていた葱を使う。
美味しい葱は、果物のように甘く、中はまるで溶けるような舌触りがする。
この蕩ける様な部分が、旨みをたっぷりと吸い込む部分なのだ。
外側は、黒い焦げ目がはっきり付くほど、良く焼く事で、葱自体の香りを引き出す事も出来る。
鴨と葱が焼きあがれば、もう鴨南蛮は七、八割出来たといって良い。
あとは、あらかじめ用意したタレに入れて、出来上がり直前に一煮立ちさせ、スープに味を馴染ませる。
可能な限り熱い状態で出すのが、蕎麦を美味しく食べるコツでもある。
スープよりも今重要なのは、蕎麦を茹でる過程だ。
茹で方に失敗すれば、今までの苦労が全て台無しになってしまうと言っても過言ではない。
茹で上がってすぐを食べてもらいたいので、魔理沙、霊夢に声をかけておく。
「霊夢、魔理沙。そろそろ蕎麦を茹でるよ。食器とか色々用意してくれ」
蕎麦を茹でるには、なるべく大きな鍋を使い、かまどの火もなるべく強くしておかなければいけない。
強い火力で、短時間煮込むのがポイントだ。
だから一度に茹でる量は一人前だけにしておく。
蕎麦を沸騰した湯に入れてから、四十、数えて、笊でさっと掬う。
笊で掬いきる時間まで含めて四十だ。掬った蕎麦は、井戸から汲んだばかりの冷水で軽くゆすぐようにして洗い、締める。
今回作る、鴨南蛮蕎麦はなるべく温かい状態で出したいので、締めた後、再び沸騰した湯にさっとくぐらせて暖める。
盛り付ける丼も、少しだけ熱湯にくぐらせ、暖めておくのが良い。
蕎麦を入れ、汁を注ぎ、鴨肉と葱を整え、ほんの爪の先程度の柚子の皮を添えて完成である。
ほんの少しであるが、柚子の皮を添えるだけで、味がグンと引き締まるのだ。
「最初は私の分ね。勝ったから」
「一番何もして無いのに図々しいヤツだぜ」
鴨や葱を焼いている間に、なにやら勝負が付いていたようだ。
僕は忙しかったり、匂いに誘惑されたりで気づかなかったが。
「魔理沙の分もすぐだよ」
「現物見ると腹が空くなぁ……。早くしてくれ、香霖」
同じ調子で、魔理沙の分、自分の分と鴨南蛮を仕上げる。
嗚呼、早く食べよう。
「――ああ、何て美味いんだろう」
熱々の鴨南蛮を一口頬張る。田舎蕎麦の強い歯応えと、蕎麦の香り。
鰹節でとった出汁、鴨の油、葱の香り、混然一体となった味の織り成す美味しさは、ただ『美味い』と言う感想しか浮かばなかった。
何しろ、最高の素材と労力でをかけて作った蕎麦である。
最初の一口を入れる瞬間、そのとき全てが報われた気分になり、僕は幸福感に満たされた。
「蕎麦だけでそれだけ感動出来るんだから、霖之助さんも安いもんね。でも美味しいわ本当」
「いいや、安くなんか無いさ。何しろ夏からずっと手塩にかけて育ててきた蕎麦だからね。何もかもに拘って作った――」
「そんな話してる間に、蕎麦が冷めちまうぜ」
「む……。そうだな」
蕎麦殻を挽きこんで作った田舎蕎麦は、表面のざらつきも舌触りが良く、スープにも蕎麦が溶け込む事で、相乗効果を発揮する。
だが、蕎麦はずるずる、飲み込むように食べるものではなく、噛み締めて、甘みと香りを楽しむ食材なのだ。
「本当に幸せそうに食べるわねえ……。薀蓄語っているときより活き活きしてるわ」
「蕎麦もだが、私が獲ってきた鴨も美味いぜ」
「鶏も結構美味しいんだけど、やっぱり鴨肉は別格ねぇ。野生味溢れると言うか」
そう評する彼女らの顔も、すっかり緩んで蕎麦を啜っている。
鴨が葱背負ってやってくると言う諺の通り、鴨肉と葱の相性は抜群である。
僕は鴨肉と葱を合わせて箸でつまみ、口の中にいれて、その風味を楽しむ。
鴨肉には独特の弾力と臭みがある。
その感触は野性的と言う表現がぴったりだろう。
更に、太くて甘い葱を噛み締めると、すっきりとした香りと、中のとろりとした甘い組織が溢れ出す。
この感触は普通の細い葱では決して味わえない。
そして二つが合わさった時の美味さと言えば、まさに筆舌に尽くしがたい。
「ああ~……蕎麦が無くなっていく、残り少なくなっていく」
「卑しいわねえ、そんなの当たり前じゃないの」
少し多めに分量を決めて作ってはみたものの、蕎麦で満腹になると言う事はあまり無いだろう。
当たり前と言えば当たり前なのだが、確かに悲しい事である。
しかし、その名残惜しさこそ、来年も蕎麦を育てようという気力に結びつくのもまた事実だ。
鴨南蛮の美味しさは何も具だけに限らない。
残った汁には、鴨、葱、蕎麦、全ての旨みが溶け込んだ極上のスープなのだ。
スープの底に溜まった、細かい蕎麦のかす、肉の欠片とて、残したくはない。
僕はスープを最後の一滴まで飲み干すと、ああ、と一つ呻いて宙を見上げた。
魔理沙たちは、そんな僕の様子を可笑しそうに笑っていたが、真似をするように、手を後ろについてリラックスした。
「うーん、美味しかったわねぇ……」
「香霖、蕎麦湯持ってきてくれ、出来ればお酒も」
「少し待ってくれ」
「じゃあ自分でとってくるぜ」
まだ、口の中には鴨南蛮の香りが漂っている。
体はすっかりと暖まり、全身に感じる心地の良さに暫く身を任せていたかった。
食べるだけで、これだけ幸せになれるなら、費やした労力だって惜しくは無い。
「ほれ、魔理沙さんが蕎麦湯を持ってきてやったぜ」
「あんたもたまには気が利くわねぇ」
「お前は鴨を捌くとこしか働いてないじゃないか」
「ところで霖之助さん、ずっと気になってたんだけど」
「ん? なんだい」
「鴨南蛮の、南蛮って何?」
「それは……」
ここで、僕は少し言葉に詰まってしまった。
考えた事が無い訳ではない。
むしろ、誰しもが疑問に思う物事の一つではないだろうか。
南蛮と言う字は、大陸、漢民族の使った言葉を語源にするが、この国では専ら西洋を意味する単語である。
『蛮』と言う字が示す通り、本来は侮蔑的な意味合いが込められているのだが、現在ではその意味は薄れ、辛いもの、葱を使った料理に使う程度の言葉になっている。
しかし、どうして葱が南蛮なのか、そこがどうしても結びつかないのだ。
「なんだ、香霖らしく無いな。せっかくの薀蓄を披露出来る機会だぜ?」
「……うーむ。いや、何度か調べてはみたんだが、全然さっぱりわからないっていうのが本音なんだ」
「ふうん、霖之助さんなら知ってそうな事柄なのにねぇ。ほら、アレじゃない? 南蛮人って天狗に似ていたって言うし」
「……ふむ、それで?」
「うーん……。コレより後が続かないわ」
「言ってみただけか。私は、鴨がナンでこんなにバーンと美味しいのかとかだと思うぜ」
「いくらなんでも強引過ぎるわよ」
二人はあーだこーだと、適当な事を言って盛り上がっている。
結局、僕はすっぱりと考えるのを諦めた。
理解できないことは気にしないようにしている。
それにもしかすると、鴨南蛮の謎は、蕎麦をより美味しくしている要因かもしれないのだ。
例えば、土用の丑は鰻、と言う習慣を広めたのは平賀源内という有名な学者である。
丑の日なので「う」のつく食べ物を夏負けしないという伝承を元に、鰻屋の宣伝広告として使ったのが由来だそうだ。
同じように鴨南蛮も、なんだか知らないが南蛮の物なら珍しい、理屈はわからないが凄そう、なんて言う理屈でつけられた可能性は考えられないだろうか。
僕や魔理沙のような蒐集家は『珍しい』と言う単語に弱い。
その珍しい、意味が判らない、と言うスパイスが鴨南蛮の味を広げているような気がするのだ。
「――ああ、そうだ、明日はせいろを作ろう」
美味しい蕎麦湯を一口飲んで呟く。
「二日連続で蕎麦か、私はそれでも構わないけどな」
「冷たい蕎麦も良いわねぇ」
気が付くと外は真っ暗で、秋の虫たちがりんりんと鳴いていた。
もうすぐ、紅葉が来て冬が来る。
年越し蕎麦にも鴨南蛮を作ろうかと考えると、年末が待ち遠しく感じられた。
わさびと海苔だけでずるずる食べたい。
熱々の鴨南蛮が食べたくなってきた・・・なんともいい香りの作品でした
親しい友人のために蕎麦を打つこーりんが微笑ましくて良かったです!
霖之助の畑仕事から始まり、収穫して調理した蕎麦を食べて会話している三人に和みますね。
蕎麦や脱穀に関しての知識も面白かったですし、ほのぼのとしてて良かったです。
脱字の報告です。
>脱穀したばかりの少しづつ漏斗から落として
『脱穀したばかりの実を』になるのでしょうか?
以上、報告でした。(礼)
盛り蕎麦にしてよく冷えたタレにはネギとワサビ、そして刻み海苔。
卵黄も捨てがたいですが、そこはお好みで。
今からでも蕎麦の店、開いていませんかねぇ?
ああ、鴨南蛮食べたい。せいろも食べたい。
つ[100点]
けしからんです。
>中のとろりと甘い組織が溢れ出す。
中のとろりと「した」甘い組織が溢れ出す。ではないでしょうか。
近所で出す店があるんですが、週一くらいで通ってます。
私は鴨汁のつけ蕎麦が好きですが。
ネギとワサビでシンプルに。
プチのほうも期待して待ってます。
あの脂が浮かんだ汁と、焼かれた葱、蕎麦の香りがやべぇ。
よし、明日蕎麦屋行こう!
それにしても鴨を捌いた際の描写に不手際が無いのが何とも。
しっかりむしるだけでは取れない、残った毛も焼いて取ってるしw
はーい
明日のお昼はお蕎麦にしましょう
おなかすいてきたなぁ
今は夏に近づいているから、ざる蕎麦が食いたいなぁ。
でも、鴨蒸篭も捨てがたいなぁ……
三人が仲良くご飯を食べている絵はとてもいいですね。
山の神社の神様家族のような、森の香霖堂の家族。
作るまでの過程も面白いねぇ
鴨を平然と捌ける霊夢と魔理沙に、昔の人の強さを見た
霊夢と魔理沙は普通に捌けるんじゃねーかな
確か原作で朱鷺捌いてたよーな
最後に全てを詰め込んだ一口の感動が良いものです
鴨でも試してみたい!
霖之助の蕎麦への拘りと執着がらしさになっててとても良し。
今日はそーめんだった…
ところで、南蛮には腿肉を使っているのに霖之助氏が使うのは胸肉だけだと言っているのは
どういう事でしょうか。
それもコンビニとかスーパーの安物じゃない、駅前の蕎麦屋で頂こう。
池波御大の時代小説を思わせる、食欲をそそる良SSでございました。
ご馳走様でした。
行きつけの店で鴨南蛮食って来る。
良い話を有り難う御座いました。
次回楽しみにしてます。
暫くしたらうどんも打とうかな…
蕎麦は山葵と海苔で食べると美味しいですよねぇ…
ただ惜しむべきは鴨、熟成期間ゼロじゃ風味も味もスカスカですぜ旦那。
>>37原作読んだ上での判断をしてくれよ 朱鷺さばいてたぜ
一番の幻想はこれかもですねぇ。
…食いたいなあ
腹減ってきた
香霖俺にも一杯くれ
ああ蕎麦食いたいなぁ
暑かったので鴨せいろにしましたが……
蕎麦屋の売り上げに貢献する作者に脱帽
でも蕎麦の旨いところがないんだよなぁ…
ここで無性に悲しくなったwww
>最高の素材と労力でをかけて作った蕎麦
たぶん誤字。労力をかけて?
畜生、蕎麦食いたくなったぜ。でも近くにウマい蕎麦屋が無いんだよなぁ……
ネギいっぱいで
そばつゆに使う鰹節って、手に入るんでしょうかね?
なにか代用品があるのか、あるいはボーダー商事経由で、とか?
よし、今日は蕎麦だ!!!
しかし相変わらずの文章の安定感、プチから見てますがあなたの霖之助は私の大好物ですww
つまり鴨南蛮は鴨ではなく葱がメインであるという。
蕎麦食いてえ
このまりさなんか 凄く可愛いな
明日のお昼は・・・・・・いや、今から食べてこようかな?
あぁ、くそ・・・美味い蕎麦なんて最近メッキリ食ってねえなぁ・・・
今年は鴨南蛮にしてみようかな
霖之助たちの会話がよかった。
蕎麦はあるけど鴨肉が無い……
蕎麦食いてえ、鴨南蛮食いてえなぁ。
あぁ、腹が減った。
買ってきた蕎麦を食べながら、、作中のシーンを思い浮かべています。
買ってきた蕎麦を食べながら、、作中のシーンを思い浮かべています。
個人的には熱い蕎麦はやはり十割田舎蕎麦が好きですw
親の実家で採れた蕎麦を毎年挽いて年越し蕎麦食べてました…。
今はもう味わえない;;
明日は蕎麦を茹でよう。
勿論、副菜があるとなおおいしい!
ただ蕎麦を作って食べるだけの話と言えばそれまでだけれど、
それを過不足無く文章に落とし込めるというのは、なかなか。
「いただきます」があれば、100点だったかな。