キラキラかがやくおつきさま わたしはあなたに手がとどく?
ここは静かな永遠亭。
竹林深くのお屋敷で 今日は大事な例月祭。
大人の兎は皆で一緒に 一つ搗いてはカグヤさま 二つ搗いてはエイリンさま。
そこからちょっと離れた所。
お庭の中では小さな小さな子兎達が 夜空の下で楽しく騒ぐ。
今日は皆で鬼ごっこ。
逃げる兎に追う兎。
鬼さんこちら 手の鳴る方へ!
「……あれー?」
だけどなんだかおかしいぞ?
鬼になった子兎が ちっとも追いかけてきやしない。
振り向く兎の視線の先に 夜空を見上げる子兎が。
真ん丸お目めが見詰める先は やっぱり真ん丸おつきさま。
「ねぇー、ちゃんと追いかけてよー!」
「……あっ! ご、ごめんごめん!」
ハッと気付いた子兎が 慌てて皆を追いかける。
全くあの子はまたなのね。 いっつも月を眺めてる。
皆はちょっと呆れながら 捕まらないように散らばった。
鬼さんこちら 手の鳴る方へ!
「はい、捕まえた!」
「捕まっちゃった~」
やっと鬼の交代ね。
お目めを瞑って10秒数えて、さあ鬼ごっこの再開だ!
「……あれ?」
「あの子またー?」
暫くしてから捕まったのは やっぱりさっきとおんなじ兎。
綺麗な真ん丸眺めてて またまた鬼に捕まっちゃった!
「もー、ちゃんとやんないんだったらあっち行っててー!」
「そーだそーだ!」
「あ、ごめん……」
あーあ、結局おみそにされちゃった。
それでもやっぱり子兎は 縁側座って空見上げ 黄色い真ん丸見詰めてる。
今日も夜空に真ん丸と ぷかぷか浮かぶお月様。
とっても綺麗なお月様。
「……あら、どうしたの?」
「ひゃっ!? あ、てゐ長老……」
「え? もう一回言って?」
「あ、て、てゐお姉ちゃん!」
ああビックリ! 子兎思わず跳ね上がる。
だけど顔見て ああ安心。
隣に座ったお姉ちゃん。
ずっと前から此処に住む 彼女は因幡素兎(いなばのしろうさぎ)。
「よし、よろしい。
で、どうしたのあんた? 皆と遊ばないの」
「う、うん……」
「どうして?」
首を傾け聞くてゐに 子兎こくりと黙り込み 静かな夜空に目を向ける。
上にはやっぱりお月様。
とっても眩しいお月様。
それ見た子兎手を挙げて、小さな月へと手を伸ばす。
「私、あの月を見てるのが好きなの。
でも、あんなに近くに見えるのに手が届かないから、どうやったらあそこまで行けるんだろうなって……」
「ずっと考えてたの? 馬鹿ねえあなた。
まだ空も飛べない位小さいってのに」
てゐの言葉に子兎ギクリ。
あなたはまだまだ小さな兎 空もまともに飛べやしない。
だけど彼女は元気良く キラキラした目で返事した。
「うん、でも、いつか行きたいの!
お姉ちゃんはお月様に行った事ある?」
「勿論よ。 ここだけの話だけどね、実は私は鈴仙と一緒に月から来た兎なのよ」
「え!? 本当!?」
「本当も本当。
よし、お姉ちゃんが特別内緒で、月に行く方法を教えてあげよう。
ただし、誰にも言っちゃいけないよ?」
「うん、分かった!」
「よ~し、良い?
今日は満月、月と地上が繋がる月にたった一度の日よ。 だけどあれはまだ完全な満月じゃないわ。
今だと、そうね……後1時間位で月が完全に満ちるわね。 そうしたら此処から真っ直ぐ進んだ先、石が一つだけある空き地があるのよ。
そこでずっと飛び跳ねてなさい。 月が本当の満月になる一瞬まで、ずっと」
あらあらてゐちゃんったら嘘吐きね。
あなたはずっと地上の因幡 ずっと地球に居たでしょう?
だけどそうとは知らない子兎 てゐの話に耳を向け 一生懸命聞いている。
「ありがとうお姉ちゃん!」
「いえいえ良いって事よ。
さあもう時間が無いわ。 行ってらっしゃい」
「はい、行ってきます!」
子兎ペコリと頭を下げて てててててっと駆け出した。
手を振り見送る因幡てゐ 顔はにんまり笑い顔。
一体これからどうなるのかしら?
◇
「――着いたー!」
竹林ガサガサ越えた先 子兎薮から顔出した。
ポッカリ空いた空き地の姿に 彼女はえへへとご満悦。
「えっと……ここだっけ?」
空き地の真ん中置かれた石に 子兎ぴょんと飛び乗った。
そのまま試しに一回ピョコン。 やっぱり何にも起きやしない。
「う~ん、まだなのかな~? えいっ! えいっ!」
月が見守る竹林で 子兎ずっと飛び跳ねる。
ぴょこりんぴょこりんぴょんぴょこぴょん。
ひとつとんではおつきさま。 ふたつとんではおつきさま。
あんよが痛くて泣きそうだけど
それでも彼女は飛び跳ねて
いつかは届けおつきさま。
だけどおつきさまは答えてくれません。
「痛っ……う”ぇ~ん……」
ずっと飛んでて疲れた子兎 ふとした拍子にすってんころりん。
あーあ、お膝がまっくろけ。
折角綺麗なピンクの服も 泥にまみれて真っ茶色。
痛くてベソかく彼女の事を 竹がサヤサヤ笑ってる。
もうおしまいかい? 意外と早いね。
だって痛くて怖いんだもん。
そうだね 君には無理かもね。
君は地上のウサギだもん。
竹はセラセラ囁いて 彼女を指差しまた笑う。
可哀想に。 兎はすっかりしょげ返り 耳を垂らして下見てる。
ほら泣くぞ そろそろ泣くぞ。
風の囁く音に乗せ 竹の騒ぎが大きくなった。
ころりと横になる兎。
彼女はずっとそのまんま。
ぐすぐすえっぐと泣き声いっぱい、竹の笑いに消されてく。
痛いし怖いしもう嫌だ
見てるだけでも良いんじゃない?
きっとどんなに頑張ったって
あんなとこまで飛べやしないもん。
怪我して弱気の彼女の耳に 誰かが静かに囁いた。
暗くてお顔は見えないけれど きっとそこには自分のお顔。
うんいいかもね それでもね。
例え私が空飛べたって あそこに届くかわからない。
だけど。
だけどそれでも あきらめない!
涙を拭って立ち上がり 服をパンパン叩いた兎。
キッと紅い目睨んだ先は 黄色くまあるいお月様。
も一度石に飛び乗って、一生懸命ぴょんぴょこりん。
毎日ずっと見上げてた 優しく輝くお月様。
いつかはあそこでお餅を搗こうと ずっと密かに夢見てた。
手を伸ばしたら届きそう。 だけど絶対届かない。
あともうちょっと。 あと少し。
ほんの少しで届くんだ。
だってあんなに近くにあるのに 届かないなんて絶対嘘だ!
「……!?」
その時でした。
月を目指して跳ねていた 一羽の兎の起こした奇跡。
体がふわりと宙に浮き どんどん月へと向かってく。
やった! とうとう願いが叶ったわ!
兎は喜び月を見る。
さあ待っててねお月様 今からそっちへ向かうから!
喜び勇んだ子兎だけど あれあれなんだかおかしいぞ?
月がどんどん離れてく。
慌てて下を見てみたら 竹がぽっかり両手を広げ 彼女の帰りを待っている。
おかえり小さな兎さん 良い夢見る事できたかな?
兎はそれでも必死にもがき 月に向かって手を伸ばす。
だけどやっぱりだめでした。
月は手を振りさよならと 彼女に向かって言っている。
ああ、やっぱり駄目だったんだ……
落ち込む兎は体を丸めて ずっとそのまま動かない。
大変!
もうすぐぶつかっちゃう!
「――今日の丸い物はこれでいいのかしら?」
「……え?」
やれやれなんとか間に合った。
丸まる子兎キャッチしたのは へんにゃり耳の兎さん。
月から来たって噂を聞いた 永琳師匠の一番弟子。
「鈴仙様ぁ……!」
「よく頑張ったわね。 おめでとう」
「え? おめでとう?」
「帰ったら詳しく話すわ。
まずはてゐを捕まえて来ないと……」
「お姉ちゃん?」
頭にハテナをいっぱい浮かべ 何が何だかわからない。
「ああ、いいのよあなたは気にしないで。
まずは永遠亭に戻りましょう」
「は、はい!」
◇
「――何で此処に呼ばれたか分かってるわね?」
「は~い……」
「返事は『はい』よ、てゐ」
「はい……」
正座で俯くてゐの前 師匠はカンカンご立腹。
少し離れて襖の影には ぴょこりと小さなお餅耳と その次へにゃれた長い耳。
「わー、てゐが怒られてるの久々に見たわー珍しい。
写真に撮っておきたいわ」
「あ、あの、お姉ちゃん私の所為で……」
「あなたは気にしないでも良いの……
って言いたいけど、皆を心配させたんだから当然罰もあるわよ
そうねえ、鰐の綱渡りの刑か、切り株に突進する刑か~……迷うわねえ」
「あう~……」
こわいこわ~い罰の中身に 子兎涙を浮かべてる。
それでも絶対泣くまいと 一生懸命堪えてる。
それ見た鈴仙くすりと笑い 小さなおでこに指当てた。
「それじゃあ……
来月の例月祭りで餅搗き1時間の刑よ! 良いわね?」
「! は、はい!」
襖を挟んで中と外 二羽の兎が叱られる。
片っぽ笑顔で良かったけれど 問題なのは中の方。
師匠がずっと見詰める先は 俯き黙った因幡てゐ。
静かな空気はもう飽きたのか 師匠がそっと呟いた。
「……なんでこんな事をしたの?」
「…………」
「そう、言わないのね。
ほら、入ってらっしゃい二人とも」
そう、師匠は何でもお見通し。
ああバレちゃったと言いたげに 鈴仙えへへと舌を出す。
「やっぱり気付いてましたか。
見えない様に波長を弄ってた筈なんですけどね」
「私を上回ろうなんて四十六億年早いわよ」
「精進しますぅ。 で、何の用ですか?」
「大体分かってるでしょ、ずっと聞いてたんだから。
てゐが口を割らないのよ。 だから貴女に頼んでおいた……」
「自白剤ですね。 わかります」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
なんだか話が物騒だ。
師匠に手渡す薬の色は なんだか赤くて黄色く青い。
それ見た子兎思わず叫び てゐの前へと飛び出した。
「あら、あなたが聞き出してくれるって言うのかしら?」
「は、ははははい! そうしますから、止めてください!」
「……分かったわ。
ほら、てゐ? ここまで言われて黙ってたんじゃあ因幡の名前が廃るわよ?
いい加減 ”彼女に” 話してあげて頂戴?」
「…………分かったわよ。
答えは簡単。 その子に飛び方を教えたかっただけだったの」
「え? 飛び方?」
いったいどういう事だろう?
言ってる事が分からずに 子兎首をう~んと捻る。
「その子はそろそろ空を飛ぶ程度の能力があってもおかしくないと思ったのよ。
私はそれの手助けをしただけ。 これで良いでしょう? バイバーイ!」
「あっ、こらわけ分かんないこと言ってないで待ちなさい! てゐー!」
ピョコンと跳ねた因幡てゐ。
そのまま廊下に飛び出して 最後にベーッ!っと舌出した。
怒った鈴仙追いかけて 部屋に居るのは一人と一羽。
廊下を走る音二つ 師匠はやれやれ溜め息吐いて 静かに廊下を見やってる。
「……全く、しょうがないわねてゐも。
で、あなたにも聞きたい事があるんだけど」
「は、はい!」
「どうしてそんな所に一人で居たの?
夜の竹林がどれだけ危ないか、知らないわけじゃないでしょう?
下手をすれば焼き兎になっていたかも知れないのよ」
「はい……ごめんなさい。
でも」
「でも?」
「どうしても、月まで行きたかったんです」
「え?」
兎の言った一言に 師匠はぽかんと真ん丸お目め。
だけど少しした後に くすくす聞こえる笑い声。
首を傾げた視線の先は 師匠の小さな笑い顔。
「ああ、そうだったの。
だけどね、あそこはあなたが思ってる程良い場所じゃないわよ?」
「え!? 永琳様は月に行った事があるんですか!?」
「ええ、”一度だけ”ね
何にも無い場所よ。 穢れも 人も 心もね」
「そうなんですか……」
そういう師匠の顔見れば 少し作った綺麗な笑顔。 なんだか少し怖いかも。
だけどやっぱり。
「だけどやっぱりあそこに行ってみたいんです」
「……そう。 兎の性ってやつなのかしらね。
だけど、例えあなたが月まで行けるとしても、私達はそれを許さないわよ」
「え! どうしてですか!?」
「どうしてもよ。 さ、この話はおしまい。
今夜は満月。 まだ起きてても怒らないから、皆の所に戻りなさい」
「で、でも」
「良いわね?」
有無を言わせぬ師匠の声に 子兎なんにも言えなくなって とぼとぼ部屋から出て行った。
残ったのは永琳師匠 その場に静かに立ち尽くし 天井越しに月を見る。
「……あら、永琳。 何をやってるの?」
「あ、輝夜。 いえね、実は……」
だぁれも居ない部屋なのに 師匠は姫に近づいて ごにょごにょこそりと内緒の話。
「ふぅん……そう言う事。
分かったわ。 難題だったら私に任せて」
師匠の話を聞き終わり 輝夜は笑ってそう言うと 静かに部屋から立ち去った。
◇
永遠亭の縁側に ちょこんと座って空見る兎。
さっきと同じ大きさで 月は皆を見詰めてる。
試しに両手を伸ばしてみても やっぱりあれには届かない。
足をぷらぷらさせながら 下向き加減の子兎に 静かに近づく人影一つ。
「あらイナバ、皆と遊ばないの?」
「あ、姫様……」
彼女に声をかけたのは 永遠亭のお姫様。
兎の横にちょこんと座って 一緒にお月見いかがかしら?
「ねえ、イナバ。
さっき永琳から聞いたんだけど、あなた月に行ってみたいんですって?」
「あ、はい……でも、永琳様から駄目だって」
「まあ、永琳は色々知ってるみたいだからね~。
私も、例え行けたとしても行かない方が正解だと思うわよ?」
「う~……」
「ほら、またそうやってベソ掻いて。
そんなんでよく空なんて飛べたわね」
「……え? 何で知ってるんですか?」
「私が知らない事なんて永琳の歳くらいのものよ!
なんだって知ってるんだから!」
驚く兎の視線を受けて 姫様えへんと大威張り。
それで、と一言付けたして 姫様続けてこう言った。
「月に行く事は出来ないけど。
月に手を届かせる方法なら教えてあげても良いわよ」
「え!? どうやって!?」
「ちょっと待ってなさい。
永琳ー!」
姫が両手を叩くとすぐに 廊下の奥から御盆を持った 永琳師匠がやってきた。
御盆の上にはお酒が一本 それと真ん丸盃一つ。
「はい、注いでちょうだい」
「はいはい。 どうぞ」
とっくりとっくり たぷんたぷん
月の模様をあしらった 綺麗な漆の盃に お酒がいっぱい注がれた。
姫様それを両手で持つと 子兎横目で流し見て こっちへおいでと声かけた。
「……わぁ!」
「ね、やっと手が届いたでしょう?」
真っ赤な両目に映った物は とっても近くてとっても綺麗 黄色い真ん丸お月様。
子兎とっても喜んで 辺りをずっと飛び跳ねる。
「ふふっ、でも本番はこれからよ。
さあ、これを飲み干しなさい」
「え? で、でも、私お酒飲めない……」
「大丈夫。 私を信じて」
姫は静かに両手を伸ばし 兎に盃手渡した。
中には波打つお酒の海と 黄色く見守るお月様。
こうなったらもう構うもんか!
両目を固く縫い縛り えいっと一気に飲み干した。
「……あれ? 大丈夫だ」
体を見ても何ともない。
頭も全然痛くない。
不思議に思った兎の耳に パチパチ拍手の音がする。
音の方へと目をやれば そこには姫と師匠の姿。
にっこり笑顔で子兎見詰め 姫は静かに口開く。
「おめでとう、イナバ。
たった今、貴女の体には満月の力が宿ったわ。
試しに一度、空を飛んでみなさい」
「は……はい」
よく分かんないけどやるしかない。
どうして飛べるか分かんないけど やり方だけは覚えてる。
見上げる夜空の果ての果て 遠くて近いお月様。
あそこを目指して跳べば良い。
高く 高く 空より高く。
今度はきっと 大丈夫。
「――あの子はきっと強くなるわね」
「ええ、月の力を取り込んだんだもの。
きっと強い子に育つわよ」
月夜に浮かんだ子兎見詰め 姫様ぽそりと呟いた。
永琳師匠も目を細め 夜空をジッと見上げてみれば 月に浮かんだ影二つ 遠くと近くで肩寄り合わせ 楽しそうに笑ってる。
ねぇねぇきこえるおつきさま?
もっとわたしがおっきくなったら そしたらこんどはぜったいに あなたのところにとんでくね!
◇
永遠亭の縁側を ちょっと進んだ屋敷の裏手。
そこでは餅耳へにゃり耳 二羽の因幡が隣り合う。
両手にお茶持ち夜空を見上げ 空飛ぶ子兎眺めてる。
「――ねぇ、てゐ」
「ん?」
「どうしてあんな嘘吐いたの?」
「あ、バレてた?」
「そりゃ長い付き合いだもの……で、どうしてなの?
なんか理由があるんだったら、正直に言えば良かったじゃない。」
「ん~……これを言うのは中々恥ずかしいのよねぇ……」
「良いじゃない減るもんじゃないし」
「恥ずかしくって寿命が縮んじゃうわよ」
「もっと恥ずかしい思いしたい?
知ってるのよ、あんたが夜な夜な大黒様の……」
「わっ、ちょっ、ストップスト~ップ!
言うから! 言うから止めて!」
「ふふっ、じゃあお願い」
「分かったわよ……」
月を見上げた因幡てゐ。
遠い昔を見詰める様に 古い思い出話し出す。
「……昔ね、私もあの子と同じ事を考えてたのよ。
月に向かって跳ね続けてたら、いつかあそこに行けんじゃないかって」
「ふぅん。 てゐも意外とロマンチストだったのねぇ」
「年上をからかうもんじゃないわよ。
それで、月に向かってずっと飛び跳ねてたのよ……あの子が跳んでたあの場所でね。
そんなある日の事だったわ。 体がふわっと浮いたのよ。 その日も確か満月だったわ」
「で、あの子と同じ事になったと」
「ええ、でもその時は私一人だったからね。
地面と接吻した瞬間にはもう死ぬかと思ったわ。
だけど……」
「だけど?」
「それからね。
同じ様に月を見上げてる子が居たら、何となく分かる様になってきたのよ。
『ああ、この子はそろそろかな?』って」
「そろそろって、空を飛べる年頃ってこと?」
「うん。 月に惹かれるって事は、いち早く月の持つ力を理解してるって事じゃない?
そういう子なら、すぐに月の力を受け入れる事が出来るのよきっと」
「あんたが言うと胡散臭いわねぇ」
「いちいち茶々を入れないの。 久しぶりに真面目な話なんだから……」
「ごめんごめん。 いやぁ、でも今日は竹の花よりも珍しい物が見れたわ。
それも二つも」
「全く、今度覚えてなよ?
それにしても、今も昔も兎は月に惹かれる運命にあるのかしらね?
私はお師匠様と姫様に会ってから幻想がぶち壊された気がするけど」
「あら、と言う事は、月のイメージを保っているのは私だけって事ね。 嬉しいわ」
「で、鈴仙でトドめを刺されたと」
「え~っと、なになに? 昨日の夜は自分の部屋で『大黒様、大黒様ぁ……』と呟きを漏らしながら、やがてスカートへと手を伸ばし……」
「わ~わ~!
兎に角、そんな訳で私は彼女に親近感を抱き、そして空の飛び方を教えました!
危ない事も承知しておりました! 申し訳ございません! これで良い?」
「うむ、よろしい。
褒美に明日キャロットケーキを作ってしんぜよう」
「はは~っありがたき幸せ!」
月のイナバと地上の因幡 月に浮かんだ一羽のイナバ 地上で見上げる空飛ぶ因幡
そして月からやってきた ちょっと変わった二人組
みんなそれぞれ笑い合い 例月祭を締めくくる
ひとつとんではおつきさま ふたつとんではおつきさま
月におわす大きなウサギの為に 跳び続けましょ はぁ続けましょ
みっつとんではおつきさま よっつとんではおつきさま
それでは次の満月も 月を見上げる兎が居たら その子に飛び方教えましょ
月に浮かんだ兎を見上げ てゐがパチリとウィンク一つ また来月もよろしくね!
~おしまい!~
いつかこのイナバもてゐのように幻想郷を自由に跳ね回るのでしょうね。
毛玉さんの姫様は独特なカリスマ醸し出していますね。
あと、てゐ色んな意味でGJww
可愛い子兎のいるとてもいい永遠亭だった
満身創痍そしてコンティニュー、エンドレス。
そんないいお話でした。そしててゐ自重、いろいろとwww
うどんちゃん、ちょいとα波を弱めておくれ。