すばらしいとおもうものは?
▷おっぱい
「OKすか?(CV:ZUN)」
▷はい
いいえ
迷いの竹林の奥深く、永遠亭。
「永琳様ー!!」
「え?」
薬師、八意永琳が自分を呼ぶ声に振り向くと、小さな妖怪兎が胸元に飛び込んでくる。
普通……例えば、ここの兎達を統括するてゐが彼女を受け止めたのならば、恐らく後ろ向きに倒れていた事だろう。
そうならなかったのは偏に、衝撃を吸収してくれる緩衝剤を彼女が持っていたからに他ならない。 勿論、その緩衝剤と言うのは……
「わ~い、永琳様のお胸ふかふか~♪」
「こら、止めなさいって、全くもう」
そう、彼女の胸だ。 全身全霊を持って全体重を掛け突撃してくる子兎の勢いを、柔軟なクッションで以て相殺させたのだ。
そんな事などつゆ知らず、懐に潜り込みたわわに実ったそれを存分に堪能する子兎は、何とも幸せそうな顔をしている。
母親も居るだろうに、何故そちらに行かないのかと永琳は問い質してみるものの、彼女から帰ってきた答えは至極簡単な物であった。
「だって永琳様の方がふかふか柔らかくって気持ち良いんだもん!」
「あ、あら、そう。 ありが、とう?」
屈託の無い笑顔に対し、戸惑いを感じながらも満更では無い笑顔を返す永琳だが、その実内面では多少の恥ずかしさはあった。
女性としてのシンボルでもあるこの胸を子兎達が好いてくれるというのは満更でもない。
思い切り甘えてくる子兎の頭を撫で、永琳は彼女に部屋へ戻るように優しく促した。
その出来事に、まあたまにならこう言うのも良いかな、と笑みを浮かべながら、永琳は実験室へと戻っていった。
「――だけど、これは無いと思うの……!」
先に話した出来事から数日後。 永琳は襲い来る兎達の迎撃に疲労困憊していた。
恐らくあの子兎が話を漏らしたのだろう。 廊下を歩いていると、唐突に何処からともなく呼びかけられ、兎達が胸元に突進して来る様になったのだ。
いや、面倒くさい兎達は何も言わずに目の前から突っ込んでくるから質が悪い。 良く見ると稀に雄兎達が混じっている事もある。
ある時は室内で。 ある時は居間で。 またある時は天井裏から。
兎達はありとあらゆる手段で永琳の胸元の触り心地を味わう為に、虎視眈々と彼女の隙を窺っている。
だが、そこは永琳も長けた物で、且つて月からの使者達を返り討ちにした時の様に、一匹、また一匹と彼女……稀に彼等の襲撃を巧みに交わしていった。
「永琳さっま~ん!」
「アスタ・ラ・ビスタ・ベイビー(私は死なないから関係無いわ)」
床下から木目を剥がし出て来るも、哀れハリセンで叩き落とされる兎。
パァンという心地良い音が鳴り止むと、何処から現れたのか黒子姿の鈴仙に搬送される。
「OK、雄兎。 ウドンゲ」
「ウィ」
襲撃に失敗した兎達の末路は悲惨な物だ。
雄兎は去勢され、雌兎は一日人参抜きという過酷な刑を処される。
こうして性欲豊かな兎達に厳罰を与える事で、永琳はなんとかこの騒動に終止符を打とうと奔走していた。
だが、それが益々兎達の情欲に火を点ける結果になった。
永琳が直々にここまですると言う事は、彼女の胸元は至高の触り心地なのだろうと言う噂が兎達の間で真しやかに伝達し、結果として永琳が気を抜く事が許されるのは、結界を張る事が出来る自室のみになってしまったのだ。
「はあ、全く、何でこんな事に……」
厠で一人溜め息を吐いている時も、安息は訪れない。
狩人達は知っているのだ。 獲物が最も油断する瞬間。 それは用を足している時だと。
「永琳様ぁ~ん!」
「甘いわ」
だが勿論そんな事は狩人である永琳も熟知している。
永琳が完全に座り込んだと確信して天井裏から飛び出してきた雄兎が最後に見た光景、それは自分を取り囲む無数の弾幕の嵐だった。
当の彼女はと言えば、慈悲の欠片も無い冷めた目で彼の事を見据えていた。
「ボン・ヴォヤージュ(小野塚小町によろしく)」
こうして月人に歯向かった地上の因幡は天呪を受け、永琳直属の月のイナバ、鈴仙の手によって医務室へと搬送される。
彼を待っているのは、恐らくアレの摘出手術だろう。
何処であろうと気が抜けなくなった永琳は唯一信用の置ける愛弟子、鈴仙を常に護衛に付けて行動をするようになっていた。
「ふぅ、疲れたわウドンゲ。 肩を揉んで頂戴」
「はい師匠」
むにむにもにゅもにゅ。
お前もかプルータス。
肩から逸れ、違う所を揉みしだく手を取り、にこりと微笑みかける。
鈴仙は頬を赤くしている。 可愛いんだけど。 可愛い弟子なんだけど。 だったんだけど……
「レ・イ・セン! レ・イ・セン!」
漂う熱気。 溢れるパッション。
多くの兎達が見守る中、回転する的に鈴仙・優曇華院・イナバが括り付けられる。
彼女の両足に僅かに空いた隙間からは『牛車』『タワシ』という天国と地獄の境界が垣間見える。
他は全てお葉書をくれた兎達へのプレゼントだ。
だが永琳の狙いはただ一つ。 円盤のほぼ全てを占める月の兎だ。
「言い遺す事は?」
「ついムラッとしてやりました。
後悔はしてません」
弓矢を引き絞る永琳が最後に見た鈴仙の笑顔。
それはまるで極楽浄土を見たかの様な、人生に一片の曇りを感じさせない笑顔であった……
(終)
「一体何が原因なのかしら……ウドンゲ、貴方なにか知ってる?」
「いやあ、とんと検討が付きませんね。 あ、師匠もうちょっと下お願いします」
永遠亭、風呂場。
結局この異変の原因は分からず、冷静さを取り戻した鈴仙の背中をタワシで擦りつつ相談を持ち掛けた。
時にはこういうコミュニケーションを取る事で新たな発想が浮かび上がる事がある。 だが、どうやら解決は見込めないようだ。
タワシを動かす手から意識を外し、一人この状況を冷静に分析する。
「あ、師匠もうちょっと下で」
まず、この異変の発端だ。
あの時の子兎が引き金だとしても、今回の事態は常軌を逸している。
恐らく、何か原因がある筈だ。 それも永遠亭全てを巻き込む程の、巨大な何かが。
「もうちょい下」
かといって、向こうが尻尾を出すまで待つのはあまりにもまずい。
蓬莱人という特性に胡座を掻いて持久戦に持ち込んでも良いが、結末は恐らく兎達の絶滅だろう。
「あ、そこそこ……て何処までいくんですか? ねえちょっと。 お師匠様。 師匠。 おっぱいさん。 ババあぅ……!」
ならば話は早い。
些か危険だが、こちらから仕掛ける。
兎達はてゐを中心にして定期的に集会を開いているようだ。 そこに潜り込み、一気に叩く。
「あの、し、しょ、駄目ですってば、~~~~~!」
よし決まった。
結構時刻は明日昼1300。 そうと決まれば早速変装の準備をしなければ。
「……あら? 何やってるのウドンゲ」
「し、師匠……愛してます」
「ええ、私もよ鈴仙」
倒れ臥す彼女ににこりと微笑みかける。 どうやらあの時に私の矢が擦っていたのだろうか。
湯槽に浸かっていないと言うのに顔を真っ赤にした鈴仙が体をくねらせている。恐らくのぼせってしまったのだろう。
しょうがないので彼女を抱えて更衣室へと向かう。 夜はこれからだ。 鈴仙には頑張って貰わねばならない。
……そういう意味ではない。
――
「――どう、似合うかしら? 」
「マジか」
翌日。
私は鈴仙と共に夜なべして作った二つの『お手軽因幡変身セット』を身に着け、診察室で集会の時間を待っていた。
妖怪兎達が着用しているピンクのワンピースとお餅みたいな柔い耳を付けた私は鏡の前に立ち、くるりと一回転をしてみる。 うむ、完璧だ。
自分で言うのもなんだが、幼い容姿と低い身長を永久のコンプレックスとする私ならば、違和感無く兎達にとけ込める自信がある。
対して鈴仙が身に着けたその姿は、お世辞にも一般的な地上の兎の姿とは言えなかった。
まず耳が4つある。
ヘニャリ耳が2に餅耳が2。 いやあ、この生物は何なのだろうか。 是非とも一度解剖して調べてみたい。じゃなくて。
一度耳をオールバック(と言う表現であってるかしら……?)にし髪に混ぜる事で見えなくさせ、改めて耳を付けてやる。 あ、可愛い。
そして目付きである。
横に細められた双眸はお世辞にも草食動物の持つそれではないと断言できる。
心無しか、以前はもっとパチクリ真ん丸お目めだった様な気がする。 私が着替えてから変貌してしまったのだろうか?
だが総合的客観的に見てその可能性は0であるとの結論に辿り着く。 月の頭脳は伊達じゃない。
時計を見ると、そろそろ集会が始まる時間である。
私を見てうなだれるを繰り返している鈴仙に声を掛け、私達は集会場へと向かって行った――
『永琳様が来たぞぉーーーー!!!!
みんな掛かれぇーーーーー!!!!』
「え!? 何!? なに!? なんでバレたの!?」
「だから師匠ったらもうバカぁ~ん!!」
集会場に着いてすぐ、この騒動に巻き込まれる。
どうやって感づいたのかは分からないが、兎達は確かに私の姿を見て動きを止めた。
次の瞬間にはこれである。
私の分析によると、恐らく彼等の視線はまず鈴仙を捕らえた筈である。
そこから『鈴仙の横に居る可愛い兎 = ってことは、あのマブいの師匠じゃね?』の方程式が成り立ったのだろう。
全く、鈴仙は帰ったらお仕置きである。
しかしまあ、バレてしまった物は仕方が無い。
怒濤の様に押し寄せる柔らかい兎達を一匹ずつ沈黙させる。 みんな抱きしめると静かになってくれるのだ。
不意に横を見ると、鈴仙の姿が見えない。 恐らく姿を消して原因を探してくれているのだろう。
私は時間稼ぎの為、集会場の真中へと躍り出ると兎達を睨みつけ、啖呵を切った。
「この永琳・思兼頭脳(おもいかねぶれいん)・イナバ、逃げも隠れもしないわ!
月に代わって摘出よ!」
決まっ、た……!
即興で考えた私の因幡時の名前と大立ち回りの台詞に怖れを抱いたのか、兎達は皆遠巻きに私を見ながら冷や汗を掻いている。
一部の雄兎に至っては股間を抑えた前屈みで後ずさった。
無理も無い。 自分自身、生まれ持ったネーミングセンスが恐ろしい。
むかし月に居た頃も、異常にあだ名を付けるのが上手いと持て囃されたものだった。
あの頃の仲間達が私を讃える為に付けてくれたあだ名は……ネ、ネ、ネミ……なんだったかしら? まあいいわ。
とにかく私は周囲を囲む兎達を抱っこしては置き抱っこしては置き、その勢力を衰退させていく。
……大体178匹程の兎達を眠りの世界に葬っただろうか。
多勢に無勢、いくら蓬莱人とは言え、圧倒的な物量差までは覆せない。
徐々に私を囲む包囲網が狭まり、万事休すと思われた。
が、しかし。 どうやら私達の方が一歩早かったようだ。
「師匠! 異変の原因が分かりました!」
「ディ・モールト良しよ、鈴仙」
自らの任務を最高の結果を以て終えた鈴仙は、私の背後に付いて同じ様に兎達を抱きしめている。
ああ、だめよそんなんじゃ。 あの子達を安心させるにはこう、むぎゅって、ね?
「で、原因は何だったの?」
「はい、それなんですが……その……」
「ハッキリ言いなさい」
「良いんですか?」
「早くしないと三日間雄兎化の刑よ」
「で、では言います……原因なんですが……この異変の原因は……
師匠のおっぱいです!」
……へ?
「……何、それ?」
「ああもうしゃらくさいっ! これですこれっ! この思兼よろしく重胸(オモイムネ)!」
ばっ、と。
風を切る音と共に晒されたのは、ワンピースを捲られ露になった私の胸部だった。 これが描写の限界。
「~~~~~~ッ!!?!?!?」
「おぉーー!! ムニムニだ! ムニムニの悪魔だ!
やっほう!! イヤッホォォォーーーーウ!!!!」
胸を抑え蹲る私を取り囲む様にして囃し立てる兎達。 中には涙を流して拝んでいる者も居る。
一方私は事態の把握が追いつかない。 何でこんな事になってるのだろうか。
「私が調べた限りでは、師匠のそのおっぱいは兎達の間では『ムニムニの悪魔』と呼ばれ崇め奉られているようです!
なんでも師匠の持つおっぱいから溢れる母性が兎達の副交感神経の裏側にある幸福交換神経を伝達して兎達を持て余させる……っててゐが言ってました」
まことか。
いや、ありえない。 一瞬たりとも考えてしまった自分を恥じる。
冷静に考えれば、兎達を扇動出来る様な奴はこの永遠亭に一人しか居ない。
因幡てゐ。 未だ姿を見せない彼女が十中十二の確率で黒幕だろう。
彼女をなんとかしないと、このままでは兎達に本気で襲われかねない。 イコール私の貞操が危ない。
あとおっぱいおっぱい連呼するのは止めて欲しい。
凄い恥ずかしいの。 永琳恥ずかしいの。
「じゃ、じゃあどうすればこの兎達は収まるって言うの?」
「それはですね、良いですか? てゐをおびき出すんです」
「どうやって?」
「まずはこの騒動を沈静化させましょう。 はい師匠」
「何これ?」
「絵本です」
「何て言うタイトルなの?」
「『やまのぼり』です」
「……あんまりそういう宣伝じみた事、永琳感心しないわ」
「まあいいからいいから。 はい師匠、読んで下さい」
「仕方ないわねえ……みんなー、こっちに集まってー!」
私の一声に、先程まで目をギラつかせていた兎達はきょとんとした目に戻り、なになにーと興味の色を示して集まってくる。
全くもう、どうしてこんな可愛い子達があんなになっちゃったのかしら。 元々はこんなに大人しい子達ばかりなのにね。
最初の頃はやり過ぎちゃったわね。 ちゃんと雄兎達にもアレを戻してあげないと。 頑張りたい年頃だものねみんな。
落ち着きを取り戻した私は、正座して絵本を広げる私の周りにモフモフと集まった兎達を一度見渡し、ゆっくりと絵本を読み始めた。
『――ほうらいさんほうらいさん。 おやまのてっぺんみんなのえがお、たのしいかぞくのしあわせみえた!』
やや長めだった絵本を読み終わり、ほっと一息つく。
大分静かになったと思い辺りを見渡してみると、兎達はみんな目がとろんとしていた。
このまま暫くひなたぼっこでもさせれば、皆すぐに眠ってしまうだろう。
「……ふふっ、可愛いわねえ」
「師匠、そろそろ……」
「ええ、聞かせて貰おうかしら?
てゐの誘き寄せ方を」
「それはですね……まず肩の力を抜いて下さい」
「? こう?」
「グラッツェ(張りがあるね)。 てゐー!」
ウドンゲがてゐの名を叫んだ。 馬鹿馬鹿しい、そんな事で来る様なら苦労はしない。
「はーい!」
唐突に背後から、いや頭上から声が聞こえる。 どうやら私の頭の上に顎を乗せていた因幡がてゐだったようだ。
上手く紛れ込んでいたらしいが、こちらとしても好都合だ。 このまま捕らえて皮を剥いでやろうか。
「師匠、そのままで」
てゐに掴み掛かろうとしたが、どうやらウドンゲに策があるらしい。
兎達は寝ぼけた眼を擦りながら、事態の行末をぼけっと見守っている。
どうするのか見守っていると、ウドンゲは無言で両手を掲げるジェスチャーをしている。
その仕草に首肯したてゐはおもむろに私の頭から飛び退く。 しかし背後から退く様子は無い。
訳も分からずウドンゲに視線を送ると、彼女は静かに口を開いた。
「師匠、実はですね。 今回の異変、てゐは関わってないんですよ」
「え? どういう事……?」
てゐが背後から私の体に手を回す。
「何て言うかですねー、簡単に言えば、先程言った通り師匠のフェロモンが原因っぽくて」
「じゃあどうすれば……?」
ゆっくりと、私の手首を掴む。
「まあ、一回なっちゃった以上解決策は無いっていうか、私達も所詮兎と言うかなんていうか……グッドラック師匠」
「は、謀ったわねうどんげ!?」
…………え? てゐ? いや、ちょ、ちょっと待って、お願
『PKおっぱい!』
~ ※永琳はこの後ウサッフ達が美味しく頂きました ~
えーりん愛してる。
レイセン、えーりんから離れるんだ! それは俺のもn(ry
揉み揉みー
ええええ永永遠遠亭亭へへよよううここそそ
ぽえーん