Coolier - 新生・東方創想話

ホワイトデーの惨事

2009/03/14 01:16:21
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3月14日
その日は穏やかに始まりそのまま穏やかに終るはずだった。

――

「ねぇねぇお燐、今日が何の日か知ってる?」

「ん?」

いつも通り怨霊の管理をしていると突然お空にそんな事を聞かれた。

はて、今日は何か特別な日だっただろうか?
考える。

自分は勿論、お空やさとり様、こいし様の誕生日だとかではない。
特に何かの記念日とかではなかったはずだが……

「……」

解らない。

どんなに考えても今日が人に聞く程何か特別な日だったとは思えない。
お燐は質問して来たお空の方を見る。

お空はニコニコしながらソワソワと何だか落ち着きがない。
何となく台詞をつけるとしたら

『早く気付かないかなぁ?早く気付かないかなぁ?』

が妥当な感じだった。

必死になって考えるが、結局答えが解らないので早々にギブアップする。

「ん~、ゴメン解んないや、降参」

ヒラヒラと手を振り降参する素振をすると

「も~お燐はダメダメだなぁ~」

お空が勝ち誇っている。

お前だけには言われたくない!!

「今日はね、好きな人にチョコをあげる日なんだよ」

「へ?」

チョコをあげる日?バレンタインデーの事か?
それはもうすでに一ヶ月も前の話で、今日はホワイトデーのはずだが?

「へ?じゃないよ、だからね、今日は好きな人にチョコをあげる日なんだよ」

「……」

何故二回言った?大事な事だからか?
まぁ、アレか?
今日がチョコをあげる日だって思ってるのはつまり、
目の前の烏はバレンタインデーとホワイトデーを勘違いしているんだな。

「ねぇ、お空?」

「なぁに、お燐?」

お空は先程と変わらず、ニコニコしながらソワソワしている。

大方、アタイからチョコが貰えるとでも期待しているのだろう。
だがそれはもうすでに一ヶ月も前の話だ。

「多分お空が言ってるのってバレンタインデーの事だよね?」

「うん!そうだよ、何だお燐もちゃんと解ってたんだね」

無邪気に頷くお空が何だか哀れに思えてくる。

何がって?間違いに気付いていないその無邪気さが

「お空、それはもう一ヶ月前に終ったんだよ?」

その言葉にお空は『うにゅ?』と首を傾げる。
どうやら解っていない様だ。

「だからね、お空の言ってる日は今日じゃないの、お空の言ってる
バレンタインデーはもう一ヶ月前に終ったんだよ」

「え?」

そうして彼女は、ようやく気付いたようで、先程までニコニコしていたのに
今はショックを受けた様な顔をしている。

少し可哀想な気がするが事実なのだから仕方がない。

「そうなの?」

確認する様なお空の言葉に

「そうなの」

お燐は深く頷いた。

お空は目に見えてガッカリしている。
そこまで落ち込まれるとこっちが悪い事をした気分になってくる。
そんなにチョコが食べたかったのだろうか?
それともアタイから貰いたかったのだろうか?

どちらにせよ、そこまで落胆する姿を見せられると本当に可哀想になる。
別段、今日誰かにチョコをあげてはいけない日でもないので
あげてもいいかな?

とか考えていると

「じゃあ、お燐は私の作ったチョコはいらない?」

「え?」

予想外の変化球が飛んできた。

「今日が好きな人にチョコあげる日だって思ってたから、頑張ってお燐に
チョコ作ったんだだけど、でも、今日が違う日ならお燐はいらない?」

「……」

落ち着け火焔猫燐クールになるんだ。
お空は今なんと言った?
アタイの事が好きだからアタイの為に頑張ってチョコを作った!?

ヨッシャー!!

いやいやいや、落ち着けアタイ、自分にはそっちの気はないはずだろ?

ないよな、ないな、うん、ないはずだ。

ってか、普段からチョコは食えないって言ってるのにこの鳥頭は
本当に何考えてやがんだ?

だけど、アタイの大切な友達がアタイのために頑張って作ったチョコ
を無駄にするわけにはいかないだろ!?(喰えないけど)

これは彼女の純粋な気持ちなんだから
こちらも純粋な気持ちで受け取るべきだ、きっと、うん。

そうだ、食べなければ問題はない。

アタイは何か間違っているか?

いいやそんな事はない、きっと間違ってはいない。

「うにゅ……、お燐はやっぱり私からのチョコはいらない?」

目の前には不安そうにしているお空の姿
安心しろ大丈夫だ。

「そんな事ないよ」

「ホント!」

お空はパッと笑顔になる。
彼女は本当に嬉しそうだった。

うん、なんだか可愛い。

『何か』に目覚めるかもしれないとお燐は思った。

「じゃあね~、じゃあね~、はい、お燐にプレゼント」

そう言われてお空から、可愛らしい綺麗な布に包まれた袋を渡される。

包装はお世辞にも綺麗とはいえない。
しかし、だからこそ彼女が頑張って作ったという事実が伝わってくる。
何度も包み直しをしたために付いた皺も
不器用に結ばれたリボンも全てが可愛らしかった。

「わぁ、お空ありがとう」

お燐の口からは自然に感謝の言葉が出てきた。
そしてその言葉に

「えへへへへ」

お空は嬉しそうにはにかむ。

さて、コレは食べる事はできないけど大切にしよう。
お燐が思っていると

「ねぇお燐、開けてみて」

「へ?」

お空に袋を開ける事を催促された。

「いいの開けちゃって?」

こういった物は後で開ける物ではないだろうか?

「いいの、開けてみて開けてみて」

「うん」

催促するお空に促されるままリボンを解く。
中には大小様々な大きさのハート型のチョコが入っていた。
所々歪なのが混じっているのはご愛嬌だろう。

お空は徐に袋に手を突っ込み中から一口サイズのチョコを摘み、お燐の口元に持ってくる。
そして、

「はい、お燐あ~ん」

「!?」

お空はよりにもよってチョコを食べさせようとする。

「え?ちょ、ちょっとお空!?」

お燐の驚いた声に

「やっぱり嫌?食べたくない?」

お空は泣きそうな顔になる。

「う、くっ……」

その行為自体は望むところだが食べさせようとしているモノがいただけない(文字通り)。

コレがお空の恐ろしいところだ。

チョコはあれ程食えないって言ってあるのにも関わらず
無邪気な笑顔と純粋な好意でこうして食べさせようとしてくる。

こんなの断れるか?
否、無理だ!!

冷汗が流れる。

もし、この好意を断ればきっと彼女を傷つける事になるだろう。
かと言ってこのまま感情に流されてあの黒い物体を口にしたら……

どちらも望まない結果を生む。

果たして自分はお空に『チョコは食べられない』と打ち明けるべきだろうか?

目の前にはニコニコしながらアタイの口元にチョコを寄せているお空。

……時には、どんなにムチャな事でも退けない時がある。

そもそも、チョコを食べてはいけないのは普通の猫だ。
しかし、自分は妖怪である。
人化出来るほどの妖力を持つ猫又(火車)だ。
普通の猫とはスペックが違う。

ならば、すでにチョコなど克服している可能性だってある。
様は気持ちだ、きっと気持ちの問題のはずだ。

お燐は覚悟を決めた。

「あ、あ~ん」

「はい」

チョコが口の中に放り込まれる。

ニコニコと微笑むお空の前でお燐はかみ締める様にチョコを咀嚼する。

ゆっくりと味わう様に咀嚼する。咀嚼する。咀嚼……

お燐はまるでメトロノームが傾く様にゆっくりと横に傾いていき、倒れた。

「あれ?お燐どうしたの?」

何があったのか解らないお空は、お燐の身体を揺する。
しかし、お燐は白目で口から泡を吐きながらピクピクとしか動かない。

「あ、あれ?お燐?お燐!?」

お空はそこでお燐の異変に気付く。

やっぱり、駄目でした。

――

さとりは自室で一人、読書をしていた。
ふと窓から外を見るとお燐が倒れていて、お空がオロオロしている。

慌てている彼女の心を読む事でだいたいの事は理解した。

助けに行く必要がありそうだったので、さとりは
読みかけていた本に栞を挟み立ち上がる。

部屋を出る前にさとりはこちらを見る。

「お空がチョコを作っていたのは知っていましたが
別に、お燐にチョコをあげたのに、私にくれない事なんて
まったく、コレッポッチも気にしていませんからね、念のため
そもそも、今日はそういった日ではありませんからね
ええ、本当に気にしてなどいません、本当です」

それだけ言ってさとりは部屋から出て行く

部屋には彼女の読んでいた本が置いてある。

タイトルは『甘くて美味しいチョコレートスィーツ』だった。
Q、『本当は楽しみにしてました?』

A、『……少し』

――

八度目の投稿になります。H2Oです。

犬や猫にチョコを与えてはいけません。
今回はリサイクル品です。
本当は2月14日に出したかったのですが、間に合わずそのまま放置していたネタを
修正して投稿しました。
ヘタり(作品集69に投稿してあります。よろしければ見てみて下さい)
を書いた直後だったため、お燐とお空のノリが若干ヘタりに近いです。

どうだったでしょうか?

感想やアドバイス、誤字脱字、文法の間違い等がありましたら教えてやって下さい。

最後に
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
H2O
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コメント



0.890簡易評価
2.90名前が無い程度の能力削除
ちょっとチョコ持って地霊殿行ってくるわ・・・
5.90名前が無い程度の能力削除
まずはお燐の人工呼吸が先決だろ
しょうがねえから俺がするよ
8.90名前が無い程度の能力削除
俺もさとりんのためにチョコもって行くわ…
13.100名前が無い程度の能力削除
チョコは口移しでないといけないという言い伝えがあってだな、
16.無評価H2O削除
2様、8様
さとりは自分の中では甘党のイメージです。
フルーツ(笑)ではなく、スィーツ(笑)です。きっと

道中お気をつけ下さい。
特に橋を渡る時はご注意下さい。嫉妬に駆られたあの御方がいるはずです。

パルパルパルパルパルパル…

5様
ご安心下さい。お空がやります。
ただそれでも不安なときは、よろしい、では、勝負です。

13様
そんな事をすると泡のほかに血も出ます。鼻から……
ただ、倒れている彼女はきっと満ち足りた表情になる事でしょう。
21.100流離いのhigasi削除
私にもあ~んってして欲しい…
よし、お空の代わりに私がさとり様にチョコを渡してきます
22.100名前が無い程度の能力削除
じゃあ私はこいし様に渡します。
23.無評価H2O削除
流離いのhigasi様
多分お空はやってと言えば喜んでやってくれると思います。
ですが、それと同時に猫を敵にまわす可能性が発生するのでご注意下さい。

そして、チョコを渡すに行くのでしたら橋にご注意下さい。
日付が変わってもあの御方は健在のはずです。パルパルパルパルパルパル……

22様
きっと喜ぶ事でしょう。ですが、現在行方不明です。無意識ゆえに誰もどこにいるかわかりません。
もしかしたら向日葵畑にいるかもしれませんのでご注意下さい。