※めーさくのような、さくめーのような。
百合要素強めでお送り申し上げ候。短い上に中身がうすいお。
小話感覚で読んでいただければ幸いだす。sssくらい
雨が降っている。
風は強く、雷も唸り声を上げていた。
・・・嵐だ。
雨の降らぬ紅魔館で、その威力を直接知る事はできないが、遠くから聞こえてくる音で、その強さの程はなんとなく知れた。
もう三日三晩になるだろうか。
叩きつける雨粒は、ガラスに当たったかのように遮られ、はじかれている。
あそこが結界の境目なのだろう。
あぁ、明日は晴れるだろうか。
至極間近にあるその光景を見つめながら、直立不動の美鈴はぼんやりと考えた。
■ ■ ■ ■
「あー!!晴れたっ!!」
翌朝、美鈴の願いともつかぬ思考をすくい上げたかのように、空は近日珍しいほどに晴れ渡った。
真っ青な空と、それを反射する水溜り。
青の二重奏に、メイド長である十六夜咲夜が大きく伸びをする。
滅多にあげない大声を上げて、朝霧に濡れる空気を深く吸い込んだ。
明るい二重奏に目がちかちかしたが、これだけ清々しく晴れた空は久しぶりで、踊りだしたい気持ちを抱きながら、咲夜は軽やかに地を蹴った。
ぬかるみを踏まぬように、早足で進んでいく。
いつか美鈴に教えてもらった、リズムを刻む遊びを思い出した。
あの時のように地面に丸は描かれてはいないが、水の溜まっていない場所を探して歩いていくのも、これはこれで楽しい。
(・・・けんけん、ぱっ。)
心の中で呟きながら、ぽ、ぽ、ぽ、と地面を踏みしめる。
誰か見ているだろうか、と思ったが、今日はなんだかあまり気にならなかった。
「楽しそうですね。」
足元を見つつ、てこてこと歩いていると、前方から面白そうな声が聞こえる。
相手の足が、視界の端に入った。
「楽しいわ。久しぶりの晴れだもの。」
「晴れではしゃぐ咲夜さんなんて、何年ぶりでしょうか。」
目的地まではあと少し。
顔を上げずに答えながら、咲夜は確実に歩を進めていく。
目の前の人物は楽しそうに笑って、咲夜を待ち構える。
もう相手の胸まで視界に入っていた。
小さく短く息を吐いて、心持ち大きくジャンプする。
それと同時に顔を上げたら、両腕を広げて待ち構える、にこにこ顔の美鈴が視界いっぱいに映った。
「はい、いらっしゃい。」
嬉しそうな美鈴は、自分からも一歩踏み出しながら咲夜を引き寄せ、抱きとめる。
暖かな腕に包まれながら、咲夜は、ふふ、と笑った。
「あぁ、なんだか懐かしいわ。」
「私もです。」
足が地面につかない。
腰の辺りをしっかりと抱きしめる腕が、言葉と共にもう少しだけ強くなる。
鳩尾の辺りがきゅんとして、咲夜は頬を穏やかに緩めた。
「いつになく逞しいのね。」
「いつになく、が余計ですよ。」
お互い軽口を叩き合って、くすくすと笑う。
足は相変わらず地面につかない。
空を飛ぶ以外で足が地面につかないのは久しぶりで、嬉しいような、落ち着かないような。
美鈴の肩に手を置いて安定を取りながら、宙ぶらりんの足を小さくパタパタと動かしてみた。
「ふふ、本当に今日はどうしたんですか?」
微かな揺れが美鈴の体も動かしたが、その腕も、足も、ぴくりともよろける事はない。
力強い腕がいつにも増して嬉しくて、咲夜は満面の笑みと共に、その頭を抱きしめた。
耳の裏を指で撫でたら、くすぐったそうに美鈴が頭を振る。
額がぐりぐりと心臓の上を押して、咲夜も声を上げて笑った。
「たまには甘やかしてよ、ね?」
「たまにじゃなくても大歓迎なんですがね。」
美鈴の帽子を取り、ヘッドドレスの上からぎゅっと被る。
彼女の額にかかる前髪をどけて頬を包んだら、至極嬉しそうな笑顔と視線が合った。
群青の瞳が、穏やかな光で咲夜を見つめている。
その目を見つめ返しながら、咲夜もゆっくりと目を細めた。
あぁ、愛おしい。
包み込んだ頬を引き上げながら、同時に身をかがめる。
柔らかな額をつき合わせたら、不意に泣きたいような気持ちになった。
「可愛いなぁ、可愛い。」
「ふふ。」
「大好きですよ、咲夜さん。」
優しい妖怪は、嬉しそうに笑いながら、ただ咲夜の熱を感受する。
何度も何度も可愛いと囁いては、咲夜を抱きしめる腕の力を強くした。
「あら、私のほうが好きだわ。」
「なにをおっしゃる。私のほうが好きに決まってるじゃないですか。」
二人、言葉にむっと表情を変えながら、絡む腕は決して弱くならない。
それどころか余計に強くなって、咲夜は息苦しさに耐え切れず、ふっと小さく息を吐いた。
「苦しい、苦しいわ美鈴。」
「それくらい好きってことです。愛ですよ、愛。」
「ちょ、卑怯者。あぁもう、苦しいったら!」
遠慮なくぎゅうぎゅうと力をこめてくる美鈴に、さすがに顔をしかめる。
このままでは、背骨をぽきっとやられかねない。
さすがにそれは困るので、早めに降参を申し立てた。
慌てる咲夜に満足したのか、美鈴は腕を緩めて咲夜をおろす。
吸えなかった分の酸素を吸い込んで、咲夜はほっとため息をついた。
「わかりました?私がどれくらい咲夜さんのことを好きか。」
「・・・・・。」
そんな咲夜の前で、美鈴がにこにこと笑っている。
下手に文句を言って、圧死するまで抱きしめられるのはごめんだが、このまま引き下がるのも癪だ。
さて、どうしようか。
「・・・そうね。あなたの想いはよくわかったわ。」
とりあえず、苦しくなる程度には好きでいてくれているらしい。
それは咲夜も美鈴も、という意味だろうか。
その能天気な笑顔からは、想いに身を焼いて苦しむ姿はあまり想像できない。
けれどまぁ、本人がそういうのだからそうなのだろう。
なら、さて自分はどうだろうかと思った。
彼女なしでは生きていけないくらい?
まぁそれは確かにそうなのだが、何か今ここで体現できるものがいいな、と思う。
しばらく腰をさすって考えて、やがて一つだけいい考えが浮かんだ。
「うん、じゃあ・・・。」
「?」
「私はね。」
にっこりと笑いながら、頭一つ分高い美鈴を見上げる。
首をかしげる彼女に笑い返してから、すばやくナイフを引き抜いた。
「っ!」
「私は、殺したいくらい愛してるわ。」
ひゅっと風を切り、そのナイフの切っ先を美鈴の喉に押し付ける。
一瞬身を固くした美鈴は、咲夜の言葉をしっかりと咀嚼して、やがてしまりの無い顔で、にへら、と笑った。
「じゃあ私も言葉をかえましょう。」
そうしてから、やおら真剣な顔になって、ゆっくりと身を屈める。
その拍子にナイフが皮膚を裂いて、真っ赤な血がとろりと流れた。
身を引く咲夜を反対に抱き込んで、ぐっと引き寄せる。
門の影にするりと入り、自分の背中を壁に押し付けた。
先ほどまで見えていた景色が見えなくなり、代わりに美鈴の笑顔と風雨に汚れた壁が見える。
ナイフの切っ先は、いまだ美鈴の喉に押し付けられたまま。
鮮血が徐々に銀のナイフを伝っていくが、双方とも動じる事はしなかった。
「咲夜さんが殺したいほど私のことを好きだって言うんなら。」
自ら退路を断って、妖怪は笑う。
先ほど咲夜がしたようにその頬を包んで、綺麗な面差しをそっと引き寄せた。
「私は、殺されてもいいくらい愛してます。」
上向いた咲夜を、いささか乱暴に抱きしめる。
ナイフを持った腕はすでにだらりと投げ出されており、彼女の瞳は喉元を流れる血を見つめていた。
しばらく何も言わずにいて、やがて咲夜はその血に舌を這わせる。
ざらざらとした舌が、丁寧に血を拭っていく。
傷口に直接舌先を当てられると、ぴりぴりとした痺れがあって、くすぐったかった。
「くすぐったいです。」
だからそう言ってくすくすと笑うと、喉の上下が面白いのか、咲夜は軽く歯を立てて喉元に喰らいついてくる。
あぅ、と変な声を上げながら、美鈴はされるがままのほほんと笑った。
どうやら今日の咲夜は、ひたすらかまってモードらしい。
こういうときは無駄な抵抗などせずに、したいようにさせてやるのが一番だ。
一応死角には入ったし、見られたところで美鈴は痛くも痒くもない。
むしろ仲良しなんだからいいじゃないですか、と、胸を張って言ってやりたいくらいだ。
揺れる銀灰の髪を撫でながら、やっぱり美鈴は笑う。
「咲夜さん。」
「・・・・・。」
「咲夜。」
二度目の呼びかけでやっと顔を上げた咲夜の後頭部を捕らえて、深く唇を押し当てた。
咲夜は一瞬体を強張らせたが、すぐに緊張を解いて目を閉じる。
美鈴の背中に空いている腕を回すと、長い髪をくしゃりとつかんだ。
時折、ふ、と息をつく美鈴の体温を全身で感じながら、もう片方の手で握っていたナイフを放る。
かしゃんと音を立てて地に落ちたナイフを見もせずに、咲夜はぎゅっと美鈴にしがみ付いた。
交わされる吐息が熱い。
「めい・・・りん・・・。」
息継ぎの折に名前を呼んだら、咲夜を抱きしめる腕が強くなる。
乱暴にも感じるその力が嬉しくて、咲夜も美鈴の背に回した腕の力を強くした。
あぁ、愛おしい。
あいにくと、美鈴が唇を離してくれないから愛を囁く事はできなかったが、その分甘く、その唇を受け入れた。
一つ触れるたびに、笑いたいような泣きたいような、不思議な感覚が胸を締めた。
その感情に名前を付けるのは難しかったが、咲夜はただ胸中で、愛おしい、と言う言葉を転がし続ける。
晴れ渡った空は、見えない。
あえてそれから逃れるように、咲夜は小さな世界で束の間の休息を得るのだ。
赤の占める、世界で。
お、俺は好きだぞ。
でもいいなぁ、こういうめーさくも。
読んでてにやにやでした。
あー最高です。めーさく最高です。こんなに素直な咲夜さんは珍しいかも。
いいぞもっとやれ!!
ぷちにでも載せなさいな。
たまらん。
ラブラブ過ぎる二人の日常がもっとみたいな!!
おつ
もっとやれ!!
カカオ0%のチョコくらい甘い
ぐふぉっ。
しかしそれが今更ながら点数をつけたくなる効果がある
これは良いさくめー。
想いの強さを言い合うなんてさ! 素晴らしい。