発光
夜だと言うのに瞬く空
月よりも美しい虹
真夜中の篝火
太陽よりも赤い炎
歌うように高貴な声で発せられる憎悪の言葉、罵声
死ねと、純粋に伝えるその絶叫
もう真夜中なのに、空が、五月蝿い。
現送懐古
やせ細った月を茎に花が咲くように虹色の弾が放出される。
満月でも敵わない華やかさの大輪。
それを破壊する、焼き尽くす炎。
その中心に、二人はいた。
蓬莱の珠の枝を手に、浮く少女。
鳳凰の羽を背負い、飛ぶ少女。
どちらも服は破れ、まるで襤褸衣に
四肢はすでに幾多の傷を負い、もう少し深ければ命に関わるものまである。
しかし、彼女たちはそれも気にせず、撃ち合い、撃たれ、落ちそうになっては、また戻
る。
無限に繰り返して、まだ彼女らに、死は、こない。
竹林の外れで、それを見上げるモノ。
銀髪で長いお下げの女は、聞こえるのか、口元まで見えるのか、どちらも信じられない
距離をとったその地上で
姫様も口汚くなったものですね…月にいたころでは考えられない。
などと漏らす。
弾の光に照らされてできた木陰から、またひとり。
しなやかな白い髪をそのまま後ろに垂らす女。
「止めなくていいのか」
「そっちこそ」
同じ位置に立って、二人はまた、空を見上げた。
咆哮とも絶叫ともつかないその声が木霊する。
ふと、口を開く。
「永琳、あの二人は…妹紅と輝夜の憎しみ合いは、どうにもならないのだろうか」
目が少し、細くなった。しかし、これと言って返答はなく、仕方なくそのまま話を続け
る。
「私が生きてきたより長い間、あの子たちは憎しみ合ってきたのか。妹紅の復讐は…」
そう言おうとしたところで、永琳の口から、笑い声がこぼれた。
「…何が可笑しいんだ」
むっと、口を尖らせて言う。それでも永琳はまだ笑い足りないといったように
「やっぱりあなたは堅物ね」
と、細い目でこちらを見つめた。
「本当にあなたには、あの二人が、憎しみ合うだけで殺しあうと思っているの?上白沢
慧音」
ふいに呼ばれた名前に、少したじろぐ。だが、名前を呼ばれたそのことよりも、気になる言葉。
「どういうことだ」
その語気の強さに退いたわけではなく、永琳は少し考えて
「まだ姫も降りてこないだろうから、少しお話をしてあげるわ」
「蓬莱の薬、それは飲んだものに永遠の命を与える月人の秘薬。」
「本来、人間には過ぎた代物。永遠という長い時間のうちに蓬莱の魂が劣化して、肉体
だけが残る。」
ごくり、と生唾を飲む音が聞こえる。それも気にしないで永琳は言葉を続けた。
「つまり、蓬莱の人形。生きても、死んでもいない蓬莱の奴隷。」
「姫は、そうなる前に、妹紅を殺そうとしているわ。」
「なぜ…そうなるんだ」
まるで自分の事のように深刻に、俯く。
「一つは、妹紅をそんな体にしてしまった事、その罪悪感。もう一つは」
また、誰かを笑う永琳の声
「…きっと、自分に何も抱いていない妹紅なんて見たくないんでしょうね」
はっ、と、永琳を見る。さっきまで話をしていた場所にはもう影すらなく
「そろそろ、妹紅も落ちてくるわよ。自分の家に帰りなさい」
竹林の中から少し反響した声が聞こえるだけだった。
未明の半月、そこにもう花は咲いていない。
もうすぐ地上だ、永遠亭に帰れる。
そう思ったとたんに、力が入らなくなった。もう少しだというのに、浮力を失い、落ちる。
ああ、ここまで来てまた痛い思いをするのかと思ったら、地上につく寸前でふとその勢
いが失われた。
「…永琳」
抱きとめて、顔をのぞき込む形。
「家に、帰りましょうか。」
「…うん」
永琳には悪いが、もう歩けそうにない。疲労に身をまかせてまどろむ。
ゆっくりと、眠りに入る感覚。
眠るように死んでもらうときは、どうすればいいのだろうか。
恨みを残さず?それはきっと私が死ぬときだ、だから出来ない。
いつか
いつかちゃんと殺してあげるからね私の妹紅。
私の最愛の人。
夜だと言うのに瞬く空
月よりも美しい虹
真夜中の篝火
太陽よりも赤い炎
歌うように高貴な声で発せられる憎悪の言葉、罵声
死ねと、純粋に伝えるその絶叫
もう真夜中なのに、空が、五月蝿い。
現送懐古
やせ細った月を茎に花が咲くように虹色の弾が放出される。
満月でも敵わない華やかさの大輪。
それを破壊する、焼き尽くす炎。
その中心に、二人はいた。
蓬莱の珠の枝を手に、浮く少女。
鳳凰の羽を背負い、飛ぶ少女。
どちらも服は破れ、まるで襤褸衣に
四肢はすでに幾多の傷を負い、もう少し深ければ命に関わるものまである。
しかし、彼女たちはそれも気にせず、撃ち合い、撃たれ、落ちそうになっては、また戻
る。
無限に繰り返して、まだ彼女らに、死は、こない。
竹林の外れで、それを見上げるモノ。
銀髪で長いお下げの女は、聞こえるのか、口元まで見えるのか、どちらも信じられない
距離をとったその地上で
姫様も口汚くなったものですね…月にいたころでは考えられない。
などと漏らす。
弾の光に照らされてできた木陰から、またひとり。
しなやかな白い髪をそのまま後ろに垂らす女。
「止めなくていいのか」
「そっちこそ」
同じ位置に立って、二人はまた、空を見上げた。
咆哮とも絶叫ともつかないその声が木霊する。
ふと、口を開く。
「永琳、あの二人は…妹紅と輝夜の憎しみ合いは、どうにもならないのだろうか」
目が少し、細くなった。しかし、これと言って返答はなく、仕方なくそのまま話を続け
る。
「私が生きてきたより長い間、あの子たちは憎しみ合ってきたのか。妹紅の復讐は…」
そう言おうとしたところで、永琳の口から、笑い声がこぼれた。
「…何が可笑しいんだ」
むっと、口を尖らせて言う。それでも永琳はまだ笑い足りないといったように
「やっぱりあなたは堅物ね」
と、細い目でこちらを見つめた。
「本当にあなたには、あの二人が、憎しみ合うだけで殺しあうと思っているの?上白沢
慧音」
ふいに呼ばれた名前に、少したじろぐ。だが、名前を呼ばれたそのことよりも、気になる言葉。
「どういうことだ」
その語気の強さに退いたわけではなく、永琳は少し考えて
「まだ姫も降りてこないだろうから、少しお話をしてあげるわ」
「蓬莱の薬、それは飲んだものに永遠の命を与える月人の秘薬。」
「本来、人間には過ぎた代物。永遠という長い時間のうちに蓬莱の魂が劣化して、肉体
だけが残る。」
ごくり、と生唾を飲む音が聞こえる。それも気にしないで永琳は言葉を続けた。
「つまり、蓬莱の人形。生きても、死んでもいない蓬莱の奴隷。」
「姫は、そうなる前に、妹紅を殺そうとしているわ。」
「なぜ…そうなるんだ」
まるで自分の事のように深刻に、俯く。
「一つは、妹紅をそんな体にしてしまった事、その罪悪感。もう一つは」
また、誰かを笑う永琳の声
「…きっと、自分に何も抱いていない妹紅なんて見たくないんでしょうね」
はっ、と、永琳を見る。さっきまで話をしていた場所にはもう影すらなく
「そろそろ、妹紅も落ちてくるわよ。自分の家に帰りなさい」
竹林の中から少し反響した声が聞こえるだけだった。
未明の半月、そこにもう花は咲いていない。
もうすぐ地上だ、永遠亭に帰れる。
そう思ったとたんに、力が入らなくなった。もう少しだというのに、浮力を失い、落ちる。
ああ、ここまで来てまた痛い思いをするのかと思ったら、地上につく寸前でふとその勢
いが失われた。
「…永琳」
抱きとめて、顔をのぞき込む形。
「家に、帰りましょうか。」
「…うん」
永琳には悪いが、もう歩けそうにない。疲労に身をまかせてまどろむ。
ゆっくりと、眠りに入る感覚。
眠るように死んでもらうときは、どうすればいいのだろうか。
恨みを残さず?それはきっと私が死ぬときだ、だから出来ない。
いつか
いつかちゃんと殺してあげるからね私の妹紅。
私の最愛の人。
でも、面白かったです!
ちょっと短いですね。
でもおもしろかったです。
……もしかして、さかばと好きですか?
悪いとも良いとも言えないです。
雰囲気は悪くないんですけどね。