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天空から緩やかに落下する五つの球体を残さず口で受け止める。代わり映えしない味だが,不味くはない。ただ、今日はいつもより出てくるのが遅かった気がする。
ご主人様は私にはさして興味が無いらしく。既に先ほどまで読んでいた本に取りかかっている。
それにしても最近この丸い部屋にも飽きてきた。部屋が丸い所為で風景が何となくのっぺりしているように感じる。たまには四角い部屋に住んで外を見てみたいと思う。それと最近部屋の中が淀んでいるように感じるのだが、そろそろ掃除をしてくれないのだろうか?
訴えるようにご主人様を見た所で,あの人は本から一ミリとも目をそらさない。やっぱり私には興味が無いのだろうか。そもそも自分がなんであの人に飼われる事になったのか、全く覚えてない。
やる事も無いので部屋をぐるぐる回る。適度に運動をしなければ太ってしまう。あの球体は意外と栄養価が高いのだ。
ご主人様の住居はお世辞にも綺麗とは言えない。部屋には所狭しとわけの分からない道具が並べてあり、ご主人様はいつも同じ所に座っていて本を読んでいる。
突然、がちゃりと戸が開く音がする。お客様が来たようだ。立て付けが悪いため、きしむ音が波動となって伝わり,私の住む水を揺らす。
水
そういえばまだ名を申していませんでした。
私は金魚です。現在、里から離れた古道具屋にて、夏の風物詩,金魚鉢の中で飼われております。名前は頂いておりません。ご主人様の名前も知りません。
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あの時やってきたお客様に買われました。
こんな大きな家庭で飼われるのは初めてだ。
「どうせならもっと大きくて強そうなのにすれば良いのに。赤いことには好感が持てるけどね」
「あのお店では大型のペットは取り扱ってません。この金魚だって初めて見ましたし」
不満げに口を尖らせてつんつんと私の住居をつつく方と,つい先ほど古道具屋に訪れたお客様、そして先のご主人様のように本を読み続けて,私には目もくれない方に囲まれて,私はいつもと変わらず円運動を続けていた。
所謂メイド服と呼ばれる物を着こなした背の高い女性が客人として訪れてから,私を持ち去るまで十分もかからなかった。その時にお客様と前のご主人様が喋った事は殆ど聞き流していたが,前のご主人様が彼女の事を咲夜と呼んでいたのは覚えている。しかし咲夜様は前のご主人様の事を店主と呼んでいたので,結局彼の名前は分からなかった。
「それにしても、なんで急にペットを飼いたいなんて言い出したの? 犬なら間に合ってるでしょうに」
本を読んだまま微動だにしない紫色の髪の少女が先ほどから私を凝視している赤い服の少女に発言をした。ぼそぼそしていて聞き取りにくい。
「あら、パチュリー様も十分猫ですわ。鼠取りもよくなさってますし」
「言葉が通じない奴とのコミュニケーションがフランに効果的だと思ったのよ。それに気分転換にも使えるでしょう?」
「それでお嬢様、この金魚鉢は何処においておきましょうか?」
「ホールのテーブルの上で良いんじゃない? 私の部屋に置いたら私が世話しなきゃいけないし」
世話をしたくないのだろうか。どうやらお嬢様と呼ばれた少女は相当我が儘のようだ。しかし、彼女がこの場にいる三人の中で最も立場が上であろう事は容易に想像できた。
そこで私は、このお嬢様が大きな館の主で、咲夜様が直属のメイド。本を読んでいるパチュリー様と呼ばれた方は図々しい居候か何かだろうと仮説を立てた。
その後、私は大きなホールに移され、お嬢様の手によって餌を与えられた。九つ降ってきた。店で食べた物よりおいしかった。
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今日も七つ降ってきた。咲夜様は几帳面な性格らしく、いつでもそれ以上でもそれ以下でもない。あれ? 七つ以上でも七つ以下でもないということはいくつだ?
ここで飼われてから数日が経過し,私は紅魔館と呼ばれるこの豪壮な館の構成を把握しつつあった。
まず,ここの主は私の予想通りあの少女であった。名をレミリア・スカーレットと言うらしく、吸血鬼だそうだ。見た時から人間ではないのが一目瞭然であったが,まさか吸血鬼程位が高い妖怪だとは,思いもしなかった。
咲夜様はこの館に使えるメイドを束ねる長のような仕事をこなしつつ,レミリアお嬢様の直属の世話係をなさっていると聞いた。彼女は人間らしいのだが、どうもただの人間ではない。というのも、咲夜様が掃除の時間に私の目の前を通りかかると、中の水がいつの間にか綺麗にされているのだ。掃除が手早く住むのは良いのだが,まだ慣れておらず,毎日驚かせられている。
あの時私の旋回ではなく活字のみを追っていた少女はパチュリー・ノーレッジという方で,この紅魔館内にある大図書館の館長をお務めしているとのことだ。博学なのは言動を見れば分かるが,金魚の飼育はする気にもなれないらしい。
それと、あまり出会わないのだが、紅美鈴という門番がいた。どこかお気楽そうな笑みをたたえていて、私に初めましてと挨拶をしてきた。挨拶をしてくれたのは彼女だけだったので,少し嬉しかった。
それから大多数、名前も分からぬ妖精メイド達。彼女達はたいてい私には目もくれず,四六時中同僚とのおしゃべりに夢中になっている。
問題は後一人、レミリアお嬢様の妹、フランドール・スカーレット様についてだ。
どうも話を聞いていると,お嬢様はその妹様の為に私を購入なさったそうなのだ。
要約するとこうだ。妹様は勿論お嬢様と同じ吸血鬼で、森羅万象、ありとあらゆる物を破壊する力を持っている。その能力がむやみに振るわれる事を危惧したお嬢様は,実に495年もの間、妹様を地下の部屋に幽閉なさっていたのだ。それが最近とある事件により、稀に地下室からの外出を許可される程度にはなったとのこと。しかし妹様の能力はまだ自制の聞かない所があり、徒に物品や生命を破壊してしまう事も少なくない。そこで情操教育の意味合いを込めてペットを飼い,付き合わせてみたらどうか。概ねそんな魂胆であったそうだ。
つまりそれは、私がいつ妹様の能力の犠牲になって生涯を閉じてもおかしくないという事だ。最初こそ冗談ではないと思って壁に体当たりをして抗議をしたが,餌が三粒落ちてきただけだった(悔しい事に美味だった)。しかし数日たった今でも妹様の顔は見ていないので,些か気を緩めている所なのです。
ああ、そうそう。私はまだ名前を与えてもらっていません。てっきりお嬢様が名付けてくださるのだろうと思っていたのですが、私が運命を決めたらフランに世話をさせる意味が無いじゃないのと、私にはよく分からない事を言い,命名を放棄したのでした。
この館に対する難を挙げるとすれば、先ほどの名前の件と,いまだに四角い部屋を構える事ができていないという事だろうか。折角の豪奢な内装も,水とガラスの曲線を通すと、些か歪んでいる気がする。
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出会いは、やはり七つだった夜のこと。
「あははははは! 何これ!」
何がそんなに面白いのか、私を指差して大声で笑い出す妹様。ともあれ、これが初対面での出来事だった。私が購入されてからおよそ一週間後の事である。
妹様は,姉の銀と対照的な金髪と宝石のような石が七つついた無骨な翼が印象的で,お嬢様に似てとても可愛らしい少女だった。しかし私は彼女を見て納得した。彼女の無骨な羽、姉にも劣らぬ赤い瞳,時たま覗く八重歯等が、彼女の無邪気さの奥に潜む狂暴さ、禍々しさを体現している。
成る程確かに恐ろしい。 当の妹様はというと,私の恐怖等知る由もなく、相変わらず私を見て腹を抱えて笑っていらっしゃる。
「見て見てお姉様! こいつ私の方見て何かぶつぶつ言ってるよ!」
口を開閉しているだけなのですが。
「餌でも欲しいんじゃないかしら? フラン、貴方は今日からこのペットを飼育するのよ。決して壊さないように。餌やり,掃除はまだ咲夜にやらせるから,貴方はこいつと遊ぶ方法を考えなさい」
「はぁい」
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それからは毎日一回、妹様は私の元を訪れた。とはいえやる事もさして無く、大抵は妹様が一方的に今日の出来事等をお話しになるだけだ。
話はそれなりに面白かった。妹様は私がこれまで見てきたどんな人物よりも特異な生活を送っているので,言葉足らずに紡ぎだされる彼女の日常は退屈を紛らわすのには十分だった。私に語るその表情が心底楽しげだったので,本当はこの方は見かけ通りに無邪気なだけなのではないかという思いが少しずつ芽生え始めていた。そもそも本当に危険ならば私に会わせる為に地下室から解放する等という事はせずに,私を地下室に置こうとするはずだ。レミリアお嬢様も、突き放すようでいて妹様に甘いのは見ていれば分かった。
最近は咲夜様から動物の飼育法を学んでいらっしゃるようだ。咲夜様が大図書館に資料を探しに行ったら,悪魔や精霊の手なずけかたしか分からなかったそうだ。
しかし何を勘違いしてらっしゃるのか、私にそういった話をした後,一度ぴたりと言葉を止め,私の方をじっと見る。そして暫くすると少し落胆した様子で,次の言葉を紡ぐのだ。
ひょっとして妹様は私が自分の話に返答をできるとお思いになっているのだろうか? 私には鳴き声は備わっていない。犬の躾け方でも習ったのだろうか。あれで咲夜様も良く分からない所がある。私は今の所口パクしかできない。
「でもね、キンギョ」
発音がおかしい。それはまるで種ではなく私個人を示す名前のようだった。
「最近咲夜が怒ってたのよ。庭が鴉に荒らされてるんだって」
返事はできない。確かに最近は鴉が多い時期だ。鴉天狗も便乗するように活発になる(逆か)。私は妹様の顔を見つめる。どうにも金魚鉢の曲線の所為で,妹様の顔も歪
んだ。妹様も私を見つめていた。返答を待っているのか。
彼女には私はどう見えているのだろう。
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今日も七つであった。咲夜様は本当に律義な方だ。
購入されてから一ヶ月程が経った。経験上、そろそろ飼い主の飽きが現れる時期だと知っている。そしてそれは、この館の住人も例外ではなかった。
レミリアお嬢様は、段々私に対して無関心になってきたし、パチュリー様はもとより私に興味が無い。咲夜様は相変わらず完璧に掃除をこなしてくださるのだが,どこか億劫と感じているように見える(私の感覚だが)。
しかしそんな中、妹様だけは変わらずに私に接して下さった。一日に一回会うだけ。だが私は日が経つに連れその時間が楽しみになってきていた。彼女があらゆる物を破壊する悪魔であることは、半ば失念していた。
レミリアお嬢様も妹様の執心ぶりには少々驚いていたようだ。まさかあんなに夢中になるとは思わなかった、せいぜい二週間程で私のように放り出すだろう,と言っていた(ひどい話だ)。だが私も虚をつかれた事は事実である。何故自室をぐるぐる回るだけの魚に、彼女が夢中になるのか。
「今日は雨だから気分が悪いの」
間が空く。吸血鬼が流水に弱い事は知っている。
続く言葉が無い。一瞬の沈黙が訪れる。
何も言わず、妹様は背を向けた。その背中は明らかに落胆したようだった。
妹様は、何に落ち込んでいらっしゃるのか。雨か、自分か、それとも、私なのだろうか。
その数日後、事件は起こった。
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事件が起こったのは、妖精メイドが餌係として私に八つ与えた日の夕刻であった。
ふと自分が影に覆われていることに気づき、視線を動かす。
普段なら日光を遮断するための窓は、その日に限って開いていた。なんでも、換気で開いたのを妖精メイドが忘れていたそうだ。そしてその格子にいたのは、一羽の鴉。猛禽類独特の鋭い眼光で私を凝視している。
厄介な事に、そいつはただの鴉では無かった。遠くからでも察知できる妖力。恐らくは鴉天狗の使い走りか何かだろう。相当気が立ってるらしく、忙しなく体を動かして私を睨んでいる。
身の危険。
鴉が私のそばまで近づき、首を動かして私の目を覗き込む。得物を見る時の目だ。しかしそんな威嚇でさえ、金魚鉢から見ると変に歪んでいて滑稽だ。
にいい、と嘴を歪めて奴は笑う。やはり私を食うつもりらしい。生ゴミでも食していれば良かろうにと思ったが、そんな態度を示せる程私は勇敢でもなかったし阿呆でもなかった。しかしだからといってこの場で命乞いをする程未練もなかったし阿呆でもなかった。
そんなことを考えている間に鴉の顔面は水面まで来ていた。俊敏な所は流石天狗の遣いといった所だろうか。奴の嘴が私に迫っている。できればあまり苦しませずに食って欲しい。しかし走馬燈現象とかいうものが体感時間を引き延ばし、恐怖を増長させる。あらゆる主人のことを思い出すが,特にここ最近のことが鮮明に蘇ってくる。店主、咲夜様、パチュリー様、お嬢様、美鈴様、そして妹様。死に際にどうしても気がかりになるのは妹様のことだ、結局彼女への答えは分からず、私は
「……何やってるの?」
戦慄した。走馬燈が現実に現れたようだ。妹様が私と鴉を見つめている。こんな時間にやってくるなんて。
鴉を見つめる妹様の瞳は真っ赤で、人を殺せる視線をもっていた。理性等かけらも見受けられない。何故こんなにも怒っていらっしゃるのか。
なんてことだ、これが妹様の本性か。本能が危険信号を発している。これから語るもおぞましい破壊が始まるのは想像に難くない。そんなものを体験するくらいなら鴉に喰われていた方がマシだった。
いや、それよりも同情すべきは鴉に対してか。ちらりと見やると、完全に萎縮してしまっていて,今かと逃げる機会をうかがっていた。謝ろうにも我々は言葉を発せないしな。
以上の事を私は恐らく妹様がいらっしゃってから一秒足らずで考えたのだと思う。何故なら妹様は、鴉を視認したその時から鴉を殺そうと思っていたに違いないのだから。その殺意は誤魔化し様がない。
きゅ、というあっけない音とともに悲鳴も無く鴉が爆ぜる。布団を引き裂いたように羽毛が飛び散り、脳漿が、臓器が、血液が,肉片が、視神経が、消化されかけている虫が館と金魚鉢に模様を作る。血の色は自分昔に見た私の体色と似ている気がした。
しかし、鴉を構成するのは、柔らかい組織だけではない。飛び散った骨片や嘴も、細かい破片となってものすごい勢いで吹き飛ぶのだ。鴉は金魚鉢の近くにいたものだから、その破片一つ一つが嵐のときの雨粒のように私の部屋に叩き付けてくる。
そして、丸い部屋は崩壊した。
先端の鋭い骨片が金魚鉢に穴をあけたのだ。亀裂はそこからどんどん広がっていき、水が漏れていく。その穴から、水の流れに乗って私は飛び出した。
直に見る景色とは非常に繊細であった。見えるものの大半が人工物であったのは惜しいが,部屋から見たものとはやはり違う、色鮮やかな景色が見える。
外に出た水の流れは更に私を押しやり、机の上をたゆたっていた私はずるりと床に落ちた。片目が地面しか見えない。この館は随分と天井が高いんだなあ。
ああ,水が、遠く離れていく。息が苦しい。体を動かせてもがく。そんな事をしても詮方ないのは、自分が一番よく分かっているはずなのに。だが不思議と確信があった。私を助けてくれる方がいる。
「あ、あ……」
妹様の掠れた声が聞こえる。彼女の視線を皮膚で感じる。その感覚に痛みは無く、殺意はなかった。
「えと、お水……?」
その通りです、妹様。よく、お勉強されましたね。
妹様は慌てて手で器を作るようにして少量の水とともに私を拾い上げ、一目散に駆け出した。水のある場所へと連れてってくれるのだろうか。
私の片目は妹様の手のひらに触れていた、吸血鬼らしく冷たかった。
反対側の目は上を向いている。丸い餌が降ってくる方角。そこには妹様の顔があった、瞳は潤んでいて、息は荒く、病気の息子を病院に連れて行く母親のようだった。
私をきつく握りしめたまま、涙目で見つめてくる妹様を見て,私はようやく,彼女が何故これほどまでに執心しているかを悟った。
何がなんだか分からないまま
ずっと,狭い部屋に閉じ込められ
夢を溜め込んでも,どうにもならず
丸い部屋から見る世界は歪んでいて,美しいものは美しくなくなる
彼女は、私と似ていたんだ。
厨房へと駆け込んだ妹様。幸か不幸か、他に人はいない。
流し台に立ち、蛇口を捻って私を洗う。勢い良く水に打たれて少々体が痛むが,苦しくはなかった。目一杯息を吸う。妹様の表情は真剣そのものだ。
「これで、元気になる、よね……?」
尋ねてくれても私は返答を返す事ができない。しかし、生き返った心地がしてきたのは確かだ。
妹様はようやく緊張が解けたらしく、表情を緩めた。
それでは妹様、どうか私を,泳がせて下さい。
「えっと、容れ物、容れ物……」
幸いな事に厨房にはワインや調味料の空き瓶がたくさんあった。できれば丸くないものがいい。
「これで、いいのかな?」
妹様の選んだのは見事に四角い透明なウィスキーの空き瓶だった。入れ口が狭い。それに水を張って私を入れる、(恐らく咲夜様の手により)綺麗に洗われていたので,あまり臭わなかった。
「今、ご飯とってくるから」
表情に笑みを浮かべて妹様が言い、厨房を出ていった。たかが金魚一匹とはいえ,ものを壊さずに済んで嬉しいのだろう。見ているこちらが微笑ましくなる成長ぶりだが、鴉に関してどう感じているのかは知らない。
妹様が戻ってくるまで、しばしこの部屋を堪能する。四角い部屋に住んだのは初めてだ。金魚鉢は夏の風物詩と言うが,ずっと同じ部屋にいるというのも辛いものだ。
部屋が四角くなると壁に沿うような泳ぎ方ができなくなってしまうが、部屋の外の景色が生き生きとしている。
暫くは、ここに住み着きたい。
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20個降ってきた。何かの間違いなのでは無いかと思った。
「元気になるかなあ」
いくら先ほどの出来事で疲弊しているとはいえ、これは流石に多すぎではありませんか? 食べ過ぎると太ってしまいます。
かと言ってこれ以上妹様に心配をかけるわけにもいかないので,それらを全て食す。妹様は大変喜んで下さって、こんな事をおっしゃったのだった。
「これからは、私が世話をするから」
喜んで。
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今日は25個降ってきた。これでも昨日より少ないのだ。
妹様が飼育係になるという案は、あっさりと可決された、レミリアお嬢様なんかはしたり顔で「うまくいったようね」とおっしゃった。場所は前と同じホールの机の上。部屋も四角いウィスキーの空き瓶のまま。
しかし就任してから問題が生じた。餌が多いのだ。
妹様はこの前私が20個全て食べたのを見て咲夜様のように毎日7つでは足りないとお思いになったのだろう。そのため妹様が飼育係に就任した初日から11個も落とされた。私もどうにも世話焼きで、全て食べてしまう。美味しいし。
今までよりも食事の量が増えれば、当然の事ながら太る。私は日が経つにつれ肥大化していった、するとそれを見て妹様が更に餌を増やすというサイクルだ。
既に私は瓶の入れ口を通り抜けられない程に大きくなってしまっていて,暫くはこの四角い部屋から出ずに住みそうだ。
「大きくなったね」
と妹様は褒めて下さった。返事をしても良かったのだが。
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36個降ってきた。そろそろこの四角い瓶も窮屈になってきた。そのうち割れてしまいそうだ。
遠くから足音がする。この音は、妖精メイドだろうか。
それは最近就職したばかりの新米のメイドであった。
彼女はホールを通り過ぎる時に一度びくりと体を震わせてから突然立ち止まり、私に視線をよこした。そして私を指差して声を震わせながら言った。
「よよ、妖怪!?」
私はそれに対して
いつか私を喰おうとした奴がやったように
口を歪めて
体に力を込め
嘲笑うように言ったのだ
「今頃気づいたのか」
と。
おもしろかったです
良い意味でビックリした。
ああ、なんかほのぼのしてるなぁ…と思ってたのに。
それまでの金魚の独白が味があってとても面白いものでした。
フランが餌を投下しすぎだというのを誰も教えなかったのだろうか?
脱字の報告。
>名をレミリア・スカーレット言うらしく、~
スカーレットと言うらしく、~になるかと。
修正しました。
ご指摘+ご感想ありがとうございます。
想像力の乏しい私には最後のオチは強烈過ぎた。
しかし既に腐ってる私の脳は。ホラーにも見えるこのオチから、話せるようになった金魚とフランちゃんのほのぼのストーリーしか連想させてくれんのだ…。
なんとなく我輩は猫を読んでいるような気にさせられました。
読みやすくて面白い話だと思います。
でも13.さまと同じく、
仲良しになったフランちゃんと金魚妖怪、それにやきもちを妬くレミリアさまのほのぼのバイオレンスコメディしか思いつけません♪
やたらデカくて、やたら知能の高くて、やたら長生きする金魚になるんですね。
幻想郷だもの金魚もそのうち宙を泳ぐさ
これからも長い付き合いになるのでしょうね。
そうか・・・。 あいつ、喋れたのか・・。
ポテチ好きの「ぎょぴ」と鳴くピンクのキンギョにしか思えない。
「今頃気づいたのか」と言われても、声に迫力ないな。
きっとこのキンギョならフランちゃんと仲良くやっていけそうだ。
最後のオチで納得。まあ妖怪クラスでないと紅魔館では生きていけないですな。
誤字報告をば。
>几帳面な正確
性格かと
修正しました。
ご指摘+ご感想ありがとうございます。
きっと金魚は今日も平和に飼われていることでしょう。
その後、広い部屋には移してもらえたんでしょうか
普通の金魚じゃないなーとは思ってましたが、見せ方が良いですねー。
フランの健気さが好きです。