「パチュリー……ってあれ?」
フランドールがパチュリーの自室を訪ねると、珍しくパチュリーの姿はそこには無かった。
「珍しいなぁ……図書館にも居なかったのに。あれ、なんだろこれ?」
パチュリーの机の上に真っ黒なノートが1冊。
表紙には――
『COS NOTE』
と書かれていた。
「何だろ?」
フランドールが表紙を捲ると、まず最初にノートの説明が書いてあった。
1.このノートに名前と服の名称・設定を書くと、名前を書かれた人物の服装が、強制的に設定した服に変わる。名前はフルネームじゃなくても可能。
2.服や時刻設定を書かずに、名前だけ書いた場合は、名前を書かれた人物が15秒後に全裸になる。
3.服が変わる時刻を、名前を書き入れた後の15秒以内に書かない場合は、15秒後に設定した服に変わる。
「パチュリーもこういう遊び心あるんだ……」
フランドールはこのノートを全く信じていなかった。
しかし、丁度目の前にペンがあったから、遊び心で誰かの名前を書いてみることにした。
「う~ん、誰書こうかな~そうだ! 魔理沙にしよう」
適当に思い浮かんだ人物が魔理沙だった為、魔理沙の名前をノートに書き入れた。
『霧雨魔理沙、メイド服』
「時刻設定は面倒だから良いよね。どうせ遊びだし」
――その頃、某森の某家では。
「なぁ、アリス」
「何よ? というか平然と当たり前のように私の秘蔵の紅茶を飲むな!」
「良いじゃないか、私とアリスの仲だろ?」
「どんな仲よ……」
「犬猿の仲」
「物凄く相性最悪ね!」
「じゃあ『堅い氷』と書いてあずきバーと読む仲、『魚』に『青』と書いて鯖と読む仲」
「ああぁぁぁ意味分かんないわよ!」
「まぁそうラリラリするなよ」
「カリカリしてんのよ! ラリラリってどんな状態よ!」
「とりあえず落ち着けよアリス。アリスから『冷静さ』を奪ったらただの平凡以下魔法使いだぜ?」
「誰が平凡以下魔法使いよ!」
「安心しろ。平凡以下でもこの強い魔理沙様が守ってやるから。いや、別にアリスを傷付けるやつを許さないなんて思って無いぜ。出来ればちゃんと仲良くなりたいとか全然思って無いぜ?」
「何突然意味分かんないことを――って魔理沙!?」
「あー? どうした」
「服…………何でメイド服?」
「は?」
自分の服装を見る魔理沙。すると、着ている服がメイド服に変わっていた。
可愛いらしいが、普段の魔理沙からは想像すら出来ない格好だった。
アリスは思わず笑いを堪える。それに気付いた魔理沙は、羞恥に顔が染まってゆく。
「笑うなぁ!」
「ま、まだ笑ってないわよ……あはははは!」
「笑ってんじゃんか!」
「あはははは。可愛いじゃない魔理沙、っく……」
「~~っ! 誰だぁこんなことした奴は!?」
魔理沙の怒りや恥ずかしさやらを込めた叫び声が、森中に響いたそうな。
「う~ん、他に誰の名前書こっかな~」
フランドールはパチュリーが中々帰って来ない為、もう一人書いて時間を潰そうと考えた。
「霊夢にしよう! いつも巫女服な霊夢に何を着せようかな~」
効果など塵一つも信じてはいないが、実際にその服を着ている場面を想像して楽しんでいた。
「う~ん、服が思い付かない……」
世間に疎いフランドールでは、服といわれても数える程度しか知らなかった。
そして――
『博麗霊夢』
だけ書いた状態から、15秒が経ってしまった。
「あー思い付かなかったや。ま、いいか」
――その頃、某神社では。
「取材に来ました――ってあれ?」
文が見たものは、いつも縁側で座ってお茶を飲んでいる霊夢が、珍しく、眠っている姿だった。
心地良い春の陽射しに負けたのだろう。眠っている霊夢の横には、飲み欠けのお茶が入った湯飲みが置いてあった。
「ふむふむ。これはこれで予想外の収穫ですね」
文はカメラを構えて写真を撮る。
穏やかに眠っている霊夢は、起きる気配が無い。
その間に、さらに数枚撮る。
「しかし、ここまで大人しく眠っていると悪戯したくなりますね」
そんなことを呟きながら写真を撮り続けていると――
「な!? なななななななななNANA!?」
突然、文の目の前で眠っている霊夢の巫女服が消えた。いや、巫女服だけならまだしも、下着まで消えた。つまり全裸。生まれたままの状態の霊夢。
文は驚きのあまりに大声を上げた。勿論、カメラで写真を撮りまくりながら。
「うぅん……」
大声に反応して、霊夢の目が次第に覚めてゆく。
「あれ、文来てたんだ?」
「あ、あはは。わ、私はもう帰りますから!」
「あら、そう――って?」
そこで、霊夢は気付いた。
目の前には顔が赤い文。そして、文の右手にあるカメラ。なにより、自分が何も着ていないことに、気付いた。
「待ちなさい文」
「な、何でしょうか? 私早く帰らないと、明日英単語テストあるんです。勉強しなくちゃいけないんです。Nudeの意味がどうしても覚えられないんで帰ります」
「Nudeの意味、覚えさせてあげるわ」
「遠慮します」
「もうっ、遠慮なんかしないで。私の全てを写真に収めたくせに」
文は、何故か一歩が踏み出せなかった。後ろから感じる、鬼を越える気迫、風見幽香以上の殺気のせいである。
「あの、一応言っておきますが……」
「なにかしら?」
「霊夢さんが全裸なのは、私のせいじゃありませんよ?」
「へぇ~じゃあ私が寝ぼけて下着まで脱いだって言うのね?」
「いえ、一瞬で全てが、霊夢さんを包んでいた布全てが消えたんです!」
「はいはい~言い訳は24時間耐久くすぐりした後に聞いてあげるわ」
「それもはや拷問の域ですよ!?」
文は別に嘘は吐いていなかった。ただ、この状況であんな理由を言っても、信じてもらえる可能性が無かっただけ。
そしてこの後、24時間耐久くすぐり地獄が文を待っている。
「とりあえず先に服を着た方がよろしいかと思います。あ、別にその間に逃げようなんて考えてませんよ? 写真を現像しに行こうなんて考えてませんよ?」
「さあ、文。じっくりじわじわとしてあげるからね」
「うぅ……動物虐待だぁ!」
楽しそうな霊夢の声とは真逆に、嘆きの声を発した文だった。
「う~ん、パチュリーまだ帰って来ないなぁ」
フランドールは、とりあえずもう一人くらい書いて遊ぶことにした。
「ん~そうだ! 咲夜にしよう。いつもメイド服だからたまには違うのを……」
『十六夜咲夜』
「うにゅ~服……何があるかなぁ」
うにゅうにゅ悩むフランドール。しかし、今回は直ぐに思い浮かんだ。
「巫女服にしよう!」
『十六夜咲夜、巫女服(腋露出版)』
「でも咲夜の巫女服姿……全く想像つかないなぁ」
――その頃、某館の門前では。
「美鈴、ちゃんと仕事してる?」
「あ、しゃくやさん」
「今噛んだわね?」
「うぅー」
噛んだことが恥ずかしかったらしく、それにツッコミを入れた咲夜を恨めしそうに睨む。
「どうせ寝起きだから噛んだんでしょ?」
「いえいえ、寝てませんよ?」
「どんな内容の夢だったの?」
「なんかよく分からないですけど、私がひたすらヒャダインって叫んで右脚が凍傷になる夢でした」
「ほら、やっぱり寝てたんじゃない」
グーで軽く美鈴の額を小突く。
「あうっ! 酷いですよ! 誘導尋問なんて!」
「引っ掛かるのは貴女くらいよ?」
「なうぅー意地悪ですよ……」
再び恨めしそうに睨む。咲夜は勿論、涼しい顔で美鈴の視線を軽く流す。――が、
「さ、咲夜しゃん!?」
「また噛んだわね」
「そ、そそそそんなことよりその格好は何ですか? 時を止めて着替えたんですか?」
「私の格好が何なのよ――って何これ!?」
咲夜は自分の姿を見る。
普段見慣れた、そして着慣れたメイド服では無く、巫女服が自分の体を包んでいたのだ。しかも、非常に霊夢の巫女服に近くて、腋出し版だ。地味に寒かった。
美鈴は驚きのあまり口を開けたまま。
咲夜は、メイド服以外を着ることが少ない。そのせいか他の服に耐性が無く、妙な気恥ずかしさを感じてしまう。それも、こんな巫女服なら尚更だ。
「あぁうぅ……?」
咲夜は顔に紅葉を散らす。
美鈴はやっと正気に戻る。そして、恥ずかしくて困っている咲夜が視界に入る。
美鈴は思った。フォローしてあげないと、と。
「咲夜さん」
「な、なに?」
「巫女は良いねぇ、巫女は心を潤してくれます。和の生み出した文化の極みですよ」
「~~っ! 美鈴の馬鹿ぁ!」
美鈴の一言はどうやらフォローにはならなかったようだ。咲夜は涙目で館内の自室へ走っていった。
「何がいけなかったんだろう。あれは最高の褒め言葉のつもりだったのに……」
美鈴は一人疑問を抱いたまま、門前で突っ立っていた。
「うにゅ~もういいや」
フランドールは、もうパチュリーを待つのを止めることにした。
「あ、勝手にノート書き込んだの謝っておこう。でも今はパチュリーいないから書き置きにしてこーっと」
フランドールはノートに書き込んだ。
『パチュリー、ノート勝手に書き込んじゃってごめんなさい。byフランドール』
「よし! お姉様に遊んでもらおうかな」
フランドールは部屋を出た。
15秒後、廊下を歩いていたフランドールと、本回収の為に魔理沙の家へ向かっていたパチュリーが、全裸になったそうな。
俺もほしいぜ
巫女服咲夜に不覚にもやられてしまった。
個人的には咲夜さんには普通の巫女服のほうが似合うかなぁ…と思ったり。
そして最後にはフランとパチュリーも全裸に……。
これでフランもこのコスノートの効果を信じることになったと。
面白いお話でした。
物足りないっ!物足りぬぞ!
スカートリグル、ゴスロリ幽香、ショートパンツ椛、スパッツ橙、全裸藍、ブルマ早苗とかもっと色々あるだろうっ!もじもじしている幽香は正義だ!
惜しむべきはフランの交友関係の狭さか…
フランが使うとまさに死神のノートなわけだw
という冗談はさておき、この後スッパフランに出くわしたレミリアがどういう行動を取るのか、それが問題だw
あとパチェはどう帰ればwwwww
無邪気なフランが可愛い。
八雲藍と書くんだー!
パチュリーさん・・・なんてものを作り出したんだ・・・
てか外で全裸なんてこの季節だと喘息即発動しそうだが、大丈夫だろうか。
次回作は「東方全裸郷」ですね。分かります。
いや、いいですねコスノートw
そしていつも通りの魔理沙とアリスwww
この続きはどうなるんだろうか…フランは襲われそうな気がs(ry
さすがですね。
メイド魔理沙と腋巫女咲夜さんがすっげーみたい。
妹様のと言うより、むしろ妹様を見た人のご冥福を祈ります。
ギャグもシリアスも全部サッパリしてて読みやすくてもうすっかりファンです。
つっこみフランとつっこみアリスが好きすぎるw
定番になってるネタ(カリカリとかアズキバーとか短気は損気とか)も毎回笑ってしまうw
修行中でもこんな感じでちょこちょこ書いて欲しいなぁ。
あと神奈子様にブルマ、勇儀姐さんにふりるたっぷりのエプロン(コスじゃねぇ)、姫さまに黒服(それもなんか違う)、にとりんにワンピース(うん、黙れ)位しか思い付かなくて尚且つフラ様と接点全く無いのです……orz
魔理沙さんが相変わらず面白いキャラしてますね。
Suicaと勇儀姉さんにバニー着せてみたいなぁ
いや、別にアリスを傷付けるやつを許さないなんて思って無いぜ。
出来ればちゃんと仲良くなりたいとか全然思って無いぜ?」
相変わらず喉飴さんの魔理沙はwwww
修行が順調そうでなによりです。オチも素晴らしい!
もうちょいネタを広げてもよいのでは…でも面白かったです!
コスノートもある意味恐怖なのですw
>>12様
ありがとうございます。私は毎回オチから考えて作っています。
>>煉獄様
楽しんでいただいて幸いです。
>>14様
番外編とか書いた場合、そういうキャラも書くかもしれませんw
>>竜宮城様
コスノートも立派に怖いですw
>>名前を表示しない程度の能力様
フランはレミィが美味しくいただきました。パチェが一番問題ですw
>>20様
フランの可愛さは正義でぃす!
>>21様
フランが藍まで交友関係があれば……
>>灰華様
私の場合は天候によって喘息出やすいでぃす。パチェはどうなんでしょうかね。
私の書くパチェは何処かがおかしいですw
>>紅葉様
コメントありがとうございます。私のキャラは毎回同じやりとりだから飽きられないか不安でぃす。
フランはレミィが美味しくいただきました。
>>27様
お褒めいただきありがとうございます。
>>28様
コスノートの前では全てが真実に暴かれます(全裸的な意味で)
>>名前を見せない程度の能力様
わふっ。お褒めいただきありがとうございます。
>>al様
私は『読み易く、分かり易く、短く纏める』を心掛けているため、楽しんでいただいて幸いです。というか、過去作全てって凄いでぃすね。恥ずかしいですが、嬉しいです。
これからもちまちま書き続けますので、気軽に読んで下さい。
>>謳魚様
番外編を書く余裕があれば、他のキャラも書きたいと考えてますw
>>40様
オチは二つ考えていましたが、こちらを選んで良かったです。楽しんでいただいたようですから。
>>敬称略様
私の書く魔理沙は、素直になれないけど、周りからはバレバレというタイプですw
はい、まだ修行半ばですが、順調です!
>>51様
私はどうしても短く纏めようとしてしまって、ネタを削ってしまうのが癖になっちゃってます。次は少し広げてみます。
楽しんでいただいて嬉しいです。
読んで下さった方、コメントを残して下さった方、全てに感謝します!
最後の一行で頭と鼻の粘膜が吹っ飛びま…ブフォ!
いろいろフランの設定で悩んでいる中、喉飴さんのフランに癒されました。
やっぱフランは可愛くて良い子だとものすごく和みますね。
このあと、全裸になった妹様がお嬢様に見つかったと考え…ブフッ!!
良いSSをありがとうございました。
流石分かっていらっしゃる。フランは純粋で良い子ですよね。
こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます。
24時間耐久くすぐりを描写したらここで投稿出来ない内容になりますよw
惜しむらくはサンプル数が少ない事だ。ナース服妖夢やブルマ映姫、ブレザーみすちーにゴスロリ輝夜にセーラー大ちゃん…etc
もじもじしている幽香は俺のジャスティスでもあります。
非常に気になりますw
最近無理にオチにつなげる人が多かったですが、これはなんか違いますねー
>79
「ええと、魔法で服を具現化する方法は…」
>23
実際、誰が作ったんでしょうねえ