「なあ――咲夜ってロリコンなのか?」
「……………………は?」
「その、さ…………咲夜ってロリコンなのか?」
「どうやら、ナイフが二、三本欲しいようね――」
珍しく、正当な手続きを経て紅魔館に入ってきた霧雨魔理沙は、客室で紅茶を飲みながら突然、そんなことをメイド長の十六夜咲夜に尋ねた。ナイフをちらつかせた咲夜に対して、魔理沙は手をぶんぶん振り、慌てて弁解する。
「いや、他意はないんだ!」
「他意がなかったら、どうしてそんなことを言うのよ」
「いや、咲夜の日々の勤労奉仕の精神に感じ入ってだな…………」
「ますます訳がわからないわ」
魔理沙は掌と掌を合わせて、ごめん、悪かった、と謝る。それを見て咲夜はため息をつきながら、ナイフをしまった。白黒の魔女は苦笑しながら咲夜手製のクッキーを一つ頬張った。
「んー、こんなこと訊くのも、何だけどさ、どうして、咲夜はレミリアに仕えてるんだ?」
魔理沙の質問に、咲夜はきつく上げていた目尻を一気に下げて、きょとんとしてしまった。
「私がお嬢様にどうして仕えているか、かしら――?」
「ああ、よくレミリアの我が儘に毎日つき合ってられるよなってことさ」
魔理沙は頭の後ろで手を組んで、そう言った。
『咲夜、紅茶ちょうだい』
『はい、かしこまりました、お嬢様。少しお待ちください』
『早く、早くー』
『申し訳ありません』
『咲夜、かき氷が食べたい』
『かき氷、ですか』
『外に雪が降ってるでしょ。とってきてちょうだい』
『かしこまりました』
『たくさんとってきてね』
『咲夜、退屈なんだけど』
『退屈ですか…………。では、私が手品でも……』
『手品、飽きたー。他のがいい、何かないー?』
『咲夜、今日はお風呂入りたくない』
『何をおっしゃってるんですか、お嬢様。王者たるもの常に身の回りを清潔にしておかなければ』
『えー、面倒くさいよ。一日くらい入らなくてもいいじゃん』
『駄目です、お嬢様。駄々をこねていたら妹様に笑われてしまいますよ?』
『咲夜、ピーマン入れないでって言ったじゃない!』
『お嬢様、好き嫌いはいけません』
『嫌いなものは嫌いだって言ってるでしょ! それなのにどうして入れるのかしら? まったく人間は使えないわ!』
『使えなくて結構。ほら、お嬢様、ちゃんと食べていただきますよ』
『うー、あんな怪しい連中に負けるなんて屈辱の極みだわ……』
『仕方ありません――お嬢様はあの連中にまた明日挑むのでしょう。今日は早くお休みになってください』
『あーもう! 腹が立って眠れないわ!』
『わかりました。お嬢様がお休みになられるまで私がお側におりますから――』
『咲夜、今日はやっぱりカレーライスがいい!』
『あら、お嬢様、ご要望のスパゲッティはどうなさるんですか?』
『んー、それは明日でいいや』
『お嬢様、どうしても今日カレーがいいのですか?』
『うん、カレーが食べたい!』
『……わかりました。ご用意いたしましょう』
紅魔館の主、レミリア・スカーレット――彼女は吸血鬼である。吸血鬼は悪魔の一種族であり、彼らに共通する性格は、誇り高く、自分勝手で意地が悪いということだ。それはこの紅い悪魔も例外ではなく、加えて彼女は容姿相応に子供っぽい性格をしていた。彼女は何かと無理な注文をして他人があたふたする様を楽しんだり、また、自分の思いどおりに事が進まないとすぐ不機嫌になる性格でもあった。それでいて吸血鬼にふさわしい並外れた体力と膨大な魔力をもち、500年間蓄えてきた知識と磨かれた洞察力をもっているのだから、憎たらしいといったらこの上ない。一言で言えば、非常に性質の悪いクソガキだった。
「まあ、確かにお嬢様は我が儘でいらっしゃるけどね…………」
「ああ、月に行ったときに、おまえが負けそうだから先に戦えって言われたときは参ったぜ。まったく、他人が皆自分のために何かしてくれて当然だと思ってやがる」
咲夜は苦笑して、あのときは悪かったわね、と謝った。だが、少し表情を厳しくして、片目だけを開けて言った。
「それで、私がレミリアお嬢様のわがままに付き合っているのは、何か私に特殊な性癖があるからだと――?」
「いや、だから悪かったって」
殺気すら感じる声の冷たさに魔理沙は肩をすくめて見せる。それから、首をかしげて言った。
「でも、何故だろうな。咲夜を見てると、咲夜が忠誠心という名の鼻血を吹いてたり、レミリアのドロワーズを被ってたり、入浴中のレミリアを覗いてハァハァ言ってたりするような気がしてくるんだよな」
「あなた、どこかで変な電波を受信してるんじゃないの?」
呆れる咲夜に対して、ここは地底じゃないから、何も受信しないぜ、と魔理沙は笑った。
ひとしきり笑った後、魔理沙は少しだけ真面目な顔をした。
「でも、さ。本当にどうして、咲夜はずっとメイドやってるんだ? 咲夜だったら人里でも雇ってくれるんじゃないか? そしたら、ここよりもずっと楽な生活ができるぜ?」
紅魔館の家事、炊事、事務の多くは咲夜一人でやっている。妖精メイドたちは少しずつ仕事をするようになってきているが、咲夜の仕事量はほとんど減っていなかった。館を人間一人で掃除しようとしたら、丸三日はかかるだろう。咲夜はそれを時間を操る能力を使い、毎日清潔に保っているのだ。もちろん、手を抜くところは手を抜いているのだろうが、それでも、もし一人で掃除しろ、と言われれば、どんな人間も放り出してしまうだろう。咲夜の仕事はそれだけではない。掃除をしながら、レミリアの専属メイドもこなさなければならないのだ。最近はフランドールの面倒を見ることも多くなった。レミリアの我が儘は言うまでもなく、フランドールはレミリアほで我が儘ではないものの、やはり子供は子供。普通の大人よりも手がかかるものである。二人の吸血鬼の世話をするのは大変なことだった。たとえ、咲夜が時間を操る能力で人知れず休むことができても、決して楽な生活ではないはずである。
咲夜は数少ない人間の友人をじっと見つめた。その目からは純粋な疑問と少しの心配、そして、強い労わりの気持ちが見えた。
メイド長はふっと笑った。
「そうね――――そうかもしれないわ」
空になった魔理沙のティーカップに紅茶を注ぐ。魔理沙が、ありがとう、と応えた。
その後、咲夜は何も話さなかった。魔理沙も先を促すことはない。ひょっとしたら、余計なことを訊いたか、と心配しているのかもしれなかった。
しばらくして、咲夜は口を開いた。穏やかな声だった。
「お気遣いありがとう。でも、心配はご無用だわ」
咲夜は笑っていた。魔理沙は笑わなかった。
「まあ、あなたは他人のためよりも、自分のために何かをする人間ですからね。決してそれは悪いことじゃないわ。でも、他人に何かをしてあげることで喜びを感じる人間と言うのも確かに存在するの」
咲夜は子供に言い聞かすように魔理沙に話しかける。
「ひょっとしたら、あなたにもわかるようになるかもしれない――人によっては、強いものに寄生するような、卑屈な生き方に見えるかもしれないけどね」
それに、と、言葉を続けた。何か遠くのものを見るような目だった。
「私は人里で生きていく気はないわ。私は人間をそれほど信用していませんもの――」
正午のティータイムの後、咲夜は魔理沙をパチュリー・ノーレッジの書斎に案内した。もともと魔理沙は咲夜のところに遊びに来ていた――レミリアも魔理沙を客として紅魔館に入れることを許可していた――のだが、ついで、ということで、知識と日陰の少女が管理する図書館へとやってきたのだった。
「全く、うちの猫は本当に使えないわね…………」
七曜の魔女はメイド長と白黒の魔法使いの並んだ姿を見て、苦々しく言った。
「そこのネズミ……今日も私の本をかじりにやってきたのかしら?」
普段のジト目を知人以外にはわからない程度に鋭くして、パチュリーは魔理沙を睨んだ。魔理沙は肩をすくめ、不敵な笑みを浮かべてみせる。
「今日は咲夜のお客として紅魔館に来たんだ。ここの本を読みにきたのは確かだが、決して借りに来たわけじゃないぜ」
「『借りに来た』んじゃない…………じゃあ、そろそろ正式に盗みにでも来たのかしら?」
「おいおい、人を犯罪者呼ばわりしないでくれよ。咲夜の面子もあるし、残念だけど、今日は図書カードは使わないことにするぜ」
快活に笑う魔理沙を見て、毒を抜かれたのか、七曜の魔女はため息をついて言った。
「……………………邪魔をしないなら、勝手にどうぞ――死なない程度に読んでいきなさいな」
パチュリーの許可が下りると、魔理沙は、流石パチュリー、話がわかるぜ、とにこにこしながら、箒にまたがり、果てしなく長い本棚の群れに飛び込んでいった。
それを見届けて、パチュリーは再びため息をつく。そして、咲夜のほうを向き、言った。
「咲夜、コーヒーを淹れてくれる?」
咲夜は主の親友に恭しく一礼し、かしこまりました、と答える。
「ブラックでよろしいですか?」
「ええ、いつものでお願い」
次の瞬間、咲夜の右手にはコーヒーカップを載せたトレイが存在していた。
咲夜は再び読書にいそしむパチュリーの前にコーヒーを置く。「ありがと」と短くパチュリーは礼を言って、淹れたてのコーヒーに口をつけた。しばらく、黙って本に目をやっていたパチュリーだが、本に視線を落としながら、静かな声で言った。
「――美味しいわね」
「――もったいないお言葉です」
咲夜はパチュリーの賛辞に驚きながらも、頭を下げてそれに応えた。咲夜がパチュリーにコーヒーを淹れるのはよくあることだが、こうして彼女が咲夜のコーヒーを褒めることはとても珍しかった。続けて、パチュリーはつまらなそうな口調で言った。
「そうか、咲夜は犬だから、猫にはならないのか――」
「犬――――ですか」
「そう、犬。ネコ目イヌ科イヌ属――ネコ目の癖に、ネコの代わりにならない」
きょとんとする咲夜にパチュリーはようやく顔を上げた。七曜の魔女の顔は不貞腐れているようにも見えた。
「咲夜は犬なの、以上」
「それは、お褒めの言葉としてもよろしいのでしょうか?」
「良いんじゃない? 生態ピラミッドに関してはともかく、生命の価値に差はないわ――もっとも、生命に価値なんて概念、備わってないけどね。それに人間よりも役に立つ犬はたくさんいるでしょ」
「はあ、そうですか」
「魔女の使い魔には、猫、梟、蜘蛛、蠅、カラス…………まあ、たくさんあるけど、私は一番猫が好きね。レミィは犬が好きだったのかしら? 山犬ならともかく、咲夜は山犬って感じじゃないからね。全く、我が友人ながら、相変わらずおとぼけね」
何が気に食わないのか、ぶつぶつとパチュリーは文句を垂れていた。咲夜は主の親友であるこの魔女に何かと世話を焼いていた。すでにその数年が経っているが、パチュリーはいまだにとらえどころのない人物であり、このときも彼女が何に対して憤慨しているのわからなかったが――決して悪い人間ではないことだけはわかっていた。だから、咲夜を犬と評したり、使い魔のように言う彼女の言葉も、額面ほど悪意のあるものではなく――むしろ、咲夜への好意を表すものであり――棘があるように感じるのは、彼女流のひねくれた表現技法ゆえなのだと咲夜は理解していた。
パチュリーは独り言のように話し続けた。
「使い魔、か…………今日、あの子はちゃんと仕事しているかしら。私としたことが、なんとも頼りないのを召還したもんだわ……」
そう言って、パチュリーが本に目を戻した瞬間、轟音が図書館を揺らした。天井からぱらぱらとほこりが舞い落ちる。そのあとすぐに、何とも情けない女の子の泣き声が聞こえてきた。
『うわーーーーーーーーーーん! パチュリーさま~! 助けてください~~~~~~~~~~~!』
パチュリーの使い魔である小悪魔の声だった。小悪魔の主は深く深くため息をつくと、読んでいた本をテーブルの上に置いて、椅子から浮かび上がった。
「全く…………どうしてあの子はこう学習能力がないのかしら? 何度気をつけなさいと注意したか、覚えきれるもんじゃないわ――――やれやれ、本当に世話の焼ける…………」
文句の多い魔女は広い本棚の雑木林に飛び立っていった。それを見送り、咲夜は愛用している懐中時計を見る。もうすぐ仕事の時間だった。魔理沙はあとで連れて帰れば良いだろう。きっと彼女もここに長居をするだろうし。
――パチュリー様はきついことばっかり言っているけど、何だかんだで使い魔を大切にしているのね。
咲夜はそのことに少し心が温かくなった。
それから、咲夜が仕事を終え魔理沙を迎えに来たのは、陽が山の端にかかりそうなくらいに傾いたときだった。
魔理沙とパチュリーは向かい合って本を読んでいた――というより、談笑しているようだった。魔理沙がパチュリーに議論をふっかけたのだろう。パチュリーは面倒くさそうにしながらも、それに応じる。小悪魔も魔法に興味があるのか、ときどき口を挟むが、トンチンカンなことを言ったらしく、魔理沙がそれをからかって笑った。真っ赤な顔をして恥ずかしがる小悪魔にパチュリーは――これまた知人以外には気づかないだろうくらいに――目を優しく細めていた。
「魔理沙、陽が暮れるわ。そろそろ帰ったほうが良いわよ」
咲夜が声をかけると、魔理沙は椅子から立ち上がり、一つ伸びをした。
「ん――。もうそんな時間か。そうだな。帰るとするか」
魔理沙が出口に身体を向けると、小悪魔も席から立ち――パチュリーも本を置いて、立ち上がった。
「私を見送ってくれるのか、ありがたいな」
魔理沙が嬉しそうに笑った。パチュリーはそれを無視するかのように、机の上の本の山の一つの前まで進んだ。そして、一冊の本を取り出し、魔理沙に押し付ける。魔理沙は目を丸くした。
「え、何だ、これ? くれるのか?」
「誰があげるって言ったのよ――――あなたが今話してた本よ、貸してあげるわ」
パチュリーは相変わらず仏頂面だったが、それは無理をして作っているようなかんじだった。魔理沙はそんなことも気にせず、向日葵のように笑う。
「ああ。ありがとう、パチュリー。絶対、返すぜ」
魔理沙の最高の笑顔にパチュリーは、別に礼なんて、とそっぽを向いた。わずかに頬に朱が差しているような気がした。
「…………何にやけてるのよ」
気づくと、パチュリーはむっとしたような顔で咲夜と小悪魔を睨んでいた。咲夜は、いえ、何でもありませんわ、と素知らぬ振りをして微笑を返し、小悪魔は慌てて口元を引き締めるが、頬がぴくぴくと動いていた。パチュリーはさらに憮然とした表情になったが、それ以上追及しなかった。
パチュリーと小悪魔は図書館の扉まで魔理沙を見送った。パチュリーは「ちゃんと返すのよ」と念を押し、小悪魔はとても嬉しそうな、だが、少し寂しげな顔で手を振っていた。
咲夜は正門まで魔理沙を見送っていた。廊下を歩いている間、魔理沙と世間話をした。その中には今日パチュリーと話したことの内容や、小悪魔が失敗したことの話も入っていた。
やがて紅魔館、正面玄関の扉を通り、庭園へと出る。
太陽は幻想郷の山々の向こうに沈みかけていた。今日の天気は晴天だったが、夕焼けのオレンジ色の光が心地よい程度に眩しかった。わずかに空にかかっている雲を、自然という昔からの名画家が、赤と黄と灰色の光の絵の具で美しく彩色していた。東の空はすでに暗い。夜の足音が聞こえてくるようだった。
「綺麗な夕焼けだな」
魔理沙は目を細めて言った。
「紅魔館の庭からはこんな綺麗な夕焼けが見れるんだな…………」
魔理沙の感嘆の声に咲夜はうなずいてみせた。
二人は夕焼けの赤い光の中を、正門を目指して歩いていった。会話が途切れてしまうほど、世界は優しいオレンジ色の光に満たされていた。地平線に届きそうなほど長い二つの影が、二人の少女に寄り添っていた。
正門にたどり着くと、見知った顔の少女に出会った。
紅美鈴。
紅魔館の門番長をしている妖怪である。
美鈴は二人を見ると、いつもの愛想のいい笑顔を見せて、話しかけてきた。
「おや、魔理沙さん、お帰りですか」
「ああ、そろそろ日も暮れるしな。ここいらで帰ることにしたんだ」
「そうですか、お気をつけて。ちゃんと今度も手続きをして入ってきてくださいよ」
「あ? まあ、そうだな」
「本当ですか? お願いしますよ」
「でもさ、私はおまえと弾幕ごっこするのが楽しみなんだよ。数少ない楽しみなんだから、勘弁してくれ」
「そんな、また自分勝手な」
「ちゃんと門番の仕事をしないとおしおきよ、美鈴」
「ほら、咲夜さんがこう言ってるじゃないですか。私の平和な日々のために協力してくださいよ」
「ああ、気が向いたらな」
「魔理沙のことだから、死んだら許可をとるぜ、とか言い出しそうね」
「違いないですね」
綺麗な夕日の中で三人の少女はそう言いあって、笑いあった。もっと強くなれよ、と魔理沙が笑う。私は格闘戦専門でして、と美鈴が苦笑しながら頭をかいた。まあ、侵入されなければ何でも良いわ、と咲夜はうなずく。
「ところで、一つ訊いていいか?」
魔理沙はもう帰るというところで突然、美鈴にそう訊いた。美鈴は、ええ、何がですか、と返す。
「何で、美鈴は紅魔館の門番をしてるんだ?」
その質問に美鈴は、ぱちくりと目を瞬かせた。
「それはまた…………どうして、そんなことを?」
「いや、気になっただけでな。いや、言いたくなかったら言わなくていいんだ」
魔理沙がちらりと咲夜を見た。美鈴は魔理沙のその仕種に気づいていないかのように、魔理沙だけに顔を向けて、うーん、と首をひねっていた。
「まあ、ここ以外に私を食べさせてくれる場所がないからですか、ね」
「あー、美鈴はそう考えてるのか…………」
「自分で食料を確保するより、他人のために仕事して見返りを受けるってほうが、性に合ってるんです。で、そんな場所、幻想郷には紅魔館しかないですから」
「ああ、そうなのか…………」
魔理沙は美鈴の返事を聞いて、何か考えているようだった。美鈴はにこにこと魔理沙を見ているだけだ。やがて、魔理沙は顔を上げて、いつもの真っ直ぐな笑顔に戻った。
「そうか。悪いな、へんなこと訊いて」
「いえいえ、お気になさらず」
「そんじゃ、ここらでお暇するか――咲夜、またな」
「ええ、またいらっしゃい」
咲夜は微笑を浮かべ、手をひらひらと振った。じゃあな、美鈴、次は弾幕ごっこな、という挨拶に美鈴は、勘弁してくださいよ~、と苦笑しながらも腕を大きく振って見送る。
白黒の魔法使いは箒にまたがり、幻想郷最速と自称する高スピードで魔法の森の住処へと帰っていった。夜のカーテンが掛かりかけた空を飛翔するその姿は、一筋の流星のようにも見えた。
魔理沙の姿が見えなくなると、咲夜は屋敷のほうへと身体を向けた。メイド長の仕事はこれからが忙しくなるのである。だが、その背中を呼び止める声があった。
「咲夜さん」
美鈴だった。咲夜は呼ばれたことに何の疑問も持たず、再び美鈴のほうへ向き直った。
「何かしら、美鈴?」
美鈴は優しげに微笑んでいた。それは咲夜の心の中を見透かしているような微笑だった。
「魔理沙、咲夜さんに視線を向けてましたね」
やはり、美鈴は気づいていたか。咲夜は素直に首肯した。よっこいしょ、と、美鈴は近くにあった大きな石に座った。
「おおかた――咲夜さんにも、どうしてレミリアお嬢様に仕えているのか、と訊いたんでしょう」
美鈴はその穏やかな性格と温和な仕種から、のんびりしていて鈍い人物だと思われがちだったが、その実、とても人の心の機微に敏感な性格をしていた。そして――人の心を正しく誠実に理解するだけの温かい心と強い洞察力を身につけていた。
「他の幻想郷の方々にはわからないかもしれませんが、紅魔館に住んでいる人々――特に幻想郷に引っ越してくる前から、ここに住んでる人々は何かと訳ありの人間が多いですからねぇ」
美鈴は他人事のように笑った。咲夜は歩いてきて、石に座った美鈴の前に立ち、つまらなそうに言った。
「私がここに来たときにはもう紅魔館は幻想郷にあったけど? それに――別に私は人に自慢できるような事情は持ち合わせていないわ」
「そうですか…………まあ、私もそうです。人に聞かせても面白いと思ってもらえるような話はありませんね」
美鈴は、まったく、私には何も財産がないですね、と高笑いした――――不思議にも、見ている人の心が少し痛むような笑いだった。
咲夜は――自分でも思いがけず、美鈴に尋ねていた。
「ねえ、美鈴?」
「はい?」
「美鈴はどうしてお嬢様に仕えているの――?」
咲夜は言った瞬間に、訊くべきじゃなかったか、と少し後悔した。しかし、美鈴はその質問に嫌な顔をせず、逆ににっこりと微笑むのだった。
「そうですね。魔理沙さんには、理由の半分だけ教えましたけどね。もう半分は――特別に咲夜さんにだけ教えて差し上げましょう」
その微笑は、普段の暢気そうな少女のそれではなく――長い時を生きて得ることのできた、老婆の優しい優しい笑顔だった。美鈴は夕焼けのような綺麗な微笑を浮かべ、咲夜に話しかける。
「さて――咲夜さん、もう一つの理由は何だと思いますか?」
美鈴はいきなり解答を提示するのではなく、まず質問から始めた。難しい問題だった。咲夜はしばらく首をひねって考えた後、答えた。
「…………………………………………美鈴がロリコンだから?」
「……は?」
「だから、その……美鈴がロリコンだから?」
「……………………ぷっ。あはははははははははは! それはまた……! なかなかおもしろい答えですね……!」
美鈴は腹を抱えて大笑いした。咲夜は頬を赤くして、弁解する。
「魔理沙は、私がお嬢様に仕えているのはロリコンだからじゃないか、って言ったのよ! だから、それで……」
「魔理沙さんが、咲夜さんに? ぶふっ……あはははははははははははははははははは!! 咲夜さんがロリコン! それはそれは……! あははははははははははははははははは!!」
美鈴は目の端に涙を溜めて爆笑していた。咲夜は真っ赤な顔で、頬を膨らませて、拗ねていることを示した。それでも美鈴はなかなか笑い止まないので、咲夜はぽかぽかと彼女を叩く。
「あはははは…………すいません、いや、なんとも、咲夜さんらしい答えだなぁと。いやぁ、それでこそ、咲夜さんです」
美鈴は訳のわからないことを言って、なんとか笑うのを止めた。涙を拭いながらも、美鈴はちゃんと咲夜に向き合い、そして、話し始めた。
「まあ、そうですね。そう大した理由じゃないんですけど……」
語る美鈴はとてもにこにこしていた。夕焼けの静かな光を横に受けた美鈴の顔は、本当に嬉しそう――――誇らしそうだった。
「紅魔館が好きだから、ですかね」
「…………………………………………」
「レミリアお嬢様はいろいろ無理を申し付けるお方ですけどね。花畑にできたミステリーサークルをもとに戻せとか言ってみたり。しかも無理だとわかって嫌がらせしてるんだから、性質が悪い。正直、咲夜さんよりももっとずっと前から紅魔館にはいましたが、レミリアお嬢様はずっと我が儘でしたね」
咲夜が紅魔館に仕え始めたとき、すでに美鈴は紅魔館にいた。それまでは美鈴がメイド長と門番を兼任していたのだ。それから、すぐに咲夜の実力が認められ、メイド長の仕事は咲夜に移譲されたのだった。しかし、弾幕ごっこが戦闘の主流となっている今だからこそ美鈴の戦闘力は低く見られがちだが、本職の殺し合いにおいては、レミリアに匹敵するほどの力をもっていることが簡単に予想できた。弱点を持たず、接近戦は最強クラス。彼女の気を使う程度の能力も応用が広い。門番長としての仕事ぶりを見ても――彼女自身に昼寝癖があるのはともかく――それまでの紅魔館をまとめてきた実力があるのがわかった。そして何より、彼女に許された姓――『紅』の文字が、紅魔館の主からそそがれる信頼の高さを表していた。
美鈴ははたしてどれほどの時をレミリアと一緒に過ごしてきただろうか。
「だけど、おもしろい方なんです、レミリアお嬢様は。意地っ張りで、自分勝手で、気まぐれで――可愛くて、少し抜けてて、誇り高くて――本当はとても優しくて。紅魔館はそんなお嬢様を中心にできた空間なんです。あの気難しいパチュリー様も――レミリアお嬢様を友人と慕って、同じ屋根の下に住んでいらっしゃるのですから」
現在の紅魔館において最古参の妖怪は、そう言って微笑んだ。美鈴は石から立ち上がって、もうほとんど沈みかけている夕日を見た。
「紅魔館に来た人もいました。出て行った人もいました。ですが、紅魔館は決まって私に居場所を与えてくれました。あの高飛車で我が儘なお嬢様はいつも私に役目を仰せ付けてくれました。逃げることもできました。堂々と屋敷を去ることもできました。ですが、私はそうしませんでした。あるいはできませんでした。あの人は――自分の気に入ったものを、大切に、とても大切に手の中にとっておく人でした。掴んで離さない人でした。私はレミリアお嬢様に選ばれ、仕事を渡され、居場所を与えられました。レミリアお嬢様は――紅魔館という素晴らしい贈り物を私に与えてくれました」
――――幻想郷の山の端に夕日が沈んでゆく。もう夜はすぐそこだった。
「レミリアお嬢様は運命を操る能力をもっていると言われています。ですが、むしろ、私にはレミリアお嬢様が、運命に好まれたのではないかと思うんです。運命があのひねくれた吸血鬼のお嬢様に恋をしてしまったのではないかと」
美鈴は微笑んだ。やはりそれは夕焼けのように美しい笑顔だった。
「何が何であれ、私はレミリアお嬢様がレミリアお嬢様であったことに感謝しているのです。たとえ、お嬢様が聖女でなかったとしても。それどころか、悪魔であっても。私は――その感謝のためにレミリアお嬢様にお仕えしているのです」
夕日は完全に沈んでしまった――夜がやってきたのだ。月はすでに東の空にかかって、穏やかな光をこぼしていた。
「…………どうして、そんなことを私に話してくれたの?」
訊いた咲夜の声はか細かった。美鈴は笑った――いつもの元気付けられる笑顔だった。
「いえ、それこそ特に理由は…………ただ、咲夜さんが何となく寂しそうだったからですが」
「……………………そんな風に見えたかしら?」
「ええ、少なくとも私には」
咲夜は自分よりも少しだけ背の高い同僚の少女を見上げた。にこにことしたその顔は何となく憎たらしくて――とても優しげだった。
「……そろそろ、お嬢様を起こさないと」
咲夜はまだ明るさの残っている、群青色の夜空を見上げて言った。私も持ち場に帰りますか、美鈴はそう微笑って歩き出した。
美鈴が咲夜のところまで歩いて来ると、彼女は思い出したように言った。
「そうそう。そういえば、咲夜さん覚えてますか?」
「何を?」
「咲夜さんが紅魔館に来て、働くのが決まったとき、あなたは従者として何を要望するのか、ていう問いですよ」
「もちろん――覚えてるわ」
咲夜がとにかく食べていくことに必死だった時代だ。咲夜のような異能力者を雇うような人間は少なかった。外の世界から幻想郷にやってきても、やはり咲夜は人里で暮らすことができなかった。仕方なく、咲夜は吸血鬼の館で働くことを決めたのだった。
「『食事と衣服と住居』――私の問いに、咲夜さんはそう言いましたよね。いや、随分、ストイックな人だな、と思いましたよ」
咲夜は苦笑する。美鈴はメイド長を務めていたため、新参者の咲夜と接することが一番多かった。咲夜はまず、美鈴に世話になったのだった。あのときも美鈴は飄々としていて、いつもにこやかに笑っている少女だった。
「で――美鈴は、『私が望むものはこれです』って言ったのよね」
――咲夜は歌うように口ずさむ。
「『よき職場』」
――美鈴が続ける。
「『よき同僚』」
――最後に二人の声は自然と合わさった。。
「「『よき主君』」」
少女たちは拳と拳を打ち鳴らし、明るく笑いあった。
咲夜はドアをノックして主が起きているか確認を取り、それから「お嬢様、失礼いたします」と一言告げ、レミリア・スカーレットの私室に入った。
メイド長の咲夜に与えられているものより何倍も広い部屋。豪奢な家具。
天蓋つきのベッドの上で、レミリア・スカーレットは眠っていた。
ピンクの生地に黒いコウモリの模様がいくつも描かれているパジャマ――咲夜の手製である――は寝乱れ、頭からニットのナイトキャップが外れかけていた。掛け布団からは小さな足が覗いている。紅い悪魔はけっこう寝相が悪い。ベッドから転げ落ちていることも珍しくなかった。
しかし、その寝顔は吸血鬼のものだと思えないほど、安らかで清らかで――まるで天使のように愛らしかった。
――私がロリコンだったら、どうなってるのかしら?
咲夜はふと下らないことを思いついたが、すぐにその考えを頭の中からはじき出した。
肩に手をかけ、眠り姫をゆする。
「お嬢様。起きてください。夜ですよ」
ん~、と少女が唸る。掛け布団を掴み、頭の上まで引き上げて、ごにょごにょと言った。
「ん~、あと五分~」
咲夜は苦笑しながらも、容赦なくその布団を剥ぎ取った。
「だめです。お嬢様、起きてください」
そのまま掛け布団を奪ってしまう。それでもなお、レミリアは寒そうに背中を丸め、睡魔に身を委ねようとした。だが、咲夜はその程度ではめげない。このくらいで諦めていてはレミリア・スカーレットの従者は務まらないのだ。再び肩を揺すって、主を起こしにかかる。
「あまりお寝坊をしていると、フランドールお嬢様に笑われてしまいますよ」
その声で、ようやくレミリアは起き上がった。はしたなくも口を大きく開けてあくびをする。
「わかったわよ……起きるわよもう」
吸血鬼のお姫様は目を擦る。レミリアは妹の名前を出されると、途端に弱くなってしまうのだった。
咲夜は起き上がったレミリアの着替えを手伝う。翼を短く畳んだ少女の身体から素早くパジャマを剥がし、主が寒い思いをする前に平服を着せた。それから手早く、レミリアの蒼がかった銀髪を櫛でセットする。
「本日のご予定はいかがしますか?」
流れるように一連の動作を行いながら、咲夜は尋ねた。
「そうだねぇ…………何か仕事あったっけ?」
「いえ、書類仕事は昨日のうちのしていただきましたので、今日は特に残っておりません」
レミリアも仕事をする。館の仕事をほとんど仕切っているのは確かに咲夜であるが、時折主の判断や許可が必要な場合がある。そのようなときに館の主人であるレミリアにまでその事案が回ってくるのである。
「今日の天気は?」
「満天の星空でございます」
「そうか、じゃあ、散歩にでも行ってこようかな」
「さようでございますか」
咲夜は主の髪を整え終わると、膝立ちの体勢から立ち上がり、主の姿をチェックする。うん、今日も完璧だ。
ありがとう、とレミリアが礼を言った。ありがたいお言葉です、と咲夜が会釈する。
「それでは、フランお嬢様を起こしてから、すぐに食事にとりかかりますので、先に食堂にいらっしゃってください」
「うん――今日の朝食は何?」
レミリアが期待満々の顔で咲夜を見つめる。咲夜は思わず頬が緩んでしまうのを感じた。
「ハムアンドスクランブルエッグ、トースト、ポタージュスープ、サラダ、トマトジュースでございます」
「えー、トマトジュース嫌いー」
「だめです、お嬢様。トマトジュースは身体によろしいんですよ」
「嘘だぁ。咲夜、吸血鬼はトマトジュース好きだって迷信を信じてるんじゃないの?」
「いえ、パチュリー様の書斎にある本に確かに書いてありましたよ。トマトは吸血鬼の健康にいい、と」
「え――本当?」
「本当でございます」
「うぅ……でも、嫌いなものは嫌いだよ」
ぶーぶーと文句を言うレミリアを、咲夜は微笑みながらなだめた。500年生きた吸血鬼のお嬢様は、容姿相応の、幼い女の子でもあった。
――こんな主人だったからこそ、私は紅魔館にいられるのかもしれない。
咲夜は心の片隅でそう思った。
主人との我慢比べに勝利した咲夜はレミリアを食堂に向かわせ、自分はフランドールの眠っている地下室に向かった。
地下数十メートルある階段を下ったところに、フランドール・スカーレットが寝所としている地下室はある。
地下室の扉は魔法で特殊な施錠をしてあった。厚さが数センチもある鉄製の扉であった。
開錠の魔法を唱えると、扉は自動でスライドして開いた。
その中にもう一つの扉があった。
レミリアの私室に備えられているものと同じような木製の扉だった。
姉の吸血鬼が、もうそろそろいいだろう――そう言って、後から取り付けさせたものだった。
咲夜はその扉をノックし、フランが起床しているかどうか確認する。返事がなかったので「失礼いたします」と言って、咲夜はフランの部屋に入っていった。
地下室はレミリアが与えられている部屋とそう差がないものだった。家具は見るからに高級であり、敷かれているカーペットも清潔である。姉と同じく天蓋のついたベッドでフランドールは眠っていた。
本来、もうフランは姉と同じく地上で寝ていても何の問題もない。そもそも、これらの家具も全て、フランがレミリアに地下室の外に出ることを許可されて以降に与えられたものだった。それまでの地下室には、どうせ壊しちゃうんだしもったいないから、と言って、フランが無理にレミリアに送ってこないようにと頼んで、簡単な机と椅子、ベッド、本棚しかなかったという。地下室よりも地上に住んだ方がいい、私の部屋の隣に引っ越して来なさい、と言ったレミリアに対して、
――朝起きたら、お姉さまが死んでたら嫌だから。
そう冗談めかして断ったフランドールの寂しい笑顔が、咲夜はいまだに忘れられなかった。
フランドールはちゃんと掛け布団を被り、安らかな寝息を立てていた。姉と違って寝像が良いらしい。ゆるやかにウェーブした金の御髪がかかった少女の顔は、まさしく天使のそれだった。
布団を揺すり、フランドールを起こす。
「フランドールお嬢様、起きてください」
「ん…………ああ、咲夜。おはよう」
姉と反対に寝起きも良いようだ。フランは起き上がり、咲夜に微笑んで挨拶した。咲夜もにっこりと笑い、おはようございます、と会釈して見せた。
フランドールが、ん~、と伸びをする。黄色の生地に赤いコウモリの模様のパジャマ――これも咲夜の手製――だった。
すぐにベッドから降りたフランドールの着替えを手伝う。パジャマを脱がせ、いつもの服を着せ、ブロンドの髪を整える。
「今日のご予定はいかがなさいますか?」
「そうだね、何をしようかなぁ」
――フランドールは外の天気を訊くことは決してなかった。
「パチュリーのところで本でも読むことにするよ。この間も魔理沙に弾幕ごっこで引き分けだったし、もっと勉強しなくちゃ」
「それは素晴らしいことですわ。ですが――お転婆はほどほどでお願いいたしますね」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと周りに壊れちゃいけないものがないか、確認してからやるって」
「もちろん、ものが壊れないのもそうですが――お嬢様、お身体にお気をつけてくださいね」
「ああ、そっちもね。大丈夫だよ、咲夜。心配してくれてありがとう」
フランは咲夜を安心させるように笑ってみせた。それに咲夜も笑顔を浮かべる。
――本当にフランお嬢様は成長なされたわ。
地下室から出られなかったときから優しい少女ではあったが、最近になって余裕が生まれてきたような気がする。昔はもっと自分のことで必死でどこか危うい感じがあったが、彼女は他人の気持ちを思いやれるくらいに成長していたのだ。今でこそ屋敷の外には出られないフランだが、彼女が姉といっしょに散歩に出かける日は決して遠くないだろう。
咲夜はフランドールの身支度とチェックを済ませた。二人は一緒に地上へ向かう。
地下室の扉を開けたとき、フランは真面目な顔をしていた。
「ねぇ、咲夜、何かあったの?」
咲夜はきょとんとしてしまった。
「何だか、今日は少し元気がないみたいだからさ…………何か悲しいことがあったのかなって思ったんだけど」
フランが心配そうな顔をして、咲夜を見上げていた。
咲夜はとても驚いていた。そして――驚きと同時に喜びも感じていた。咲夜は優しい微笑を浮かべた。
「いえ、お嬢様。咲夜は元気ですよ」
「そう? 私の勘違いかな?」
フランは首をひねった。咲夜は目の前の少女がまた一歩大人に近づいたことが嬉しかった。咲夜は穏やかな声で言った。
「フランお嬢様はとてもお優しい方ですね」
「え、そ、そうかな……………………」
フランドールははにかんで頬を掻いた。咲夜は恥ずかしがるフランの手を握り、腹ぺこで従者の帰りを待っているであろう主のいる地上へ向かった。
フランを食堂に案内してから、咲夜は調理場に向かう。
咲夜は手馴れた作業で吸血鬼の姉妹が食べる食事を作っていった。
その途中、咲夜は特別な施錠をしてある、一際大きな棚の前に立った。
魔法の施錠であり、これを開けられるのは、レミリアとフランドール、そして、前メイド長であった美鈴、現在メイド長である咲夜、そして、魔法プログラムの作成者であるパチュリーだけであった。
開錠し、棚を開く。
中に入っているのはこれまた巨大な樽だった。人がまるまる二人隠れることができるような、大きな樽である。
その樽に取り付けてある蛇口にボールを当て、咲夜は栓をひねった。
――勢いよく、赤い液体が流れ出してくる。
――人間の血液である。
レミリア・スカーレット、フランドール・スカーレットは吸血鬼だ。それゆえ、その食事には人間の血液が必要だった。
咲夜はボールの半分くらい血が溜まったところで、栓を閉めた。
どういう仕組みになっているかはしらないが、この樽は人間の血液の鮮度を長く保ち、凝血を防ぐことができるらしい。
咲夜はボールを流し台に置くと――――手を合わせて、一礼した。
悪魔の狗を自称する今でも――――止めることのできない習慣だった。
血液をとき卵の中に入れ、かき混ぜる。ボール半分にとった血はポタージュスープとトマトジュースにも入れるつもりである。姉妹がトーストに塗るジャムの中にも人間の血は入っていた。さらには食後の紅茶にも人間の血液を混ぜる。
普段は考えないことを咲夜は考えていた。
果たして自分は何者なのだろうか、と。
咲夜は悪魔に仕えるため、彼女らに同胞の血を捧げていた。人間でありながら――人間の捕食者に人間の血を与えているのである。人間ではない誰かのために、人間の血を使った料理を調理していた。
人間は好きじゃない――咲夜はそう思う。
人間嫌いかというとそうでもないのだろう。人里に行くのに特に抵抗はない。きちんと人間とコミュニケーションをとることもできる。魔理沙や霊夢といった人間の友達もいる。自分は決して人間を拒絶しているわけではない。だが、人間という生き物――同胞と言う意味での人間に咲夜は強い関心を持てなかった。
あなたのつめる善行はもっと人間に優しくすることです――幻想郷の閻魔はそう説教した。
悪魔の下でいくら努力しても、何にもなりませんよ――竜宮の使いはそう忠告した。
咲夜は人間に強い関心をもてなかった。だが、自分は人間だと思っていた。たとえ、妖怪すら退ける異能力者だったとしても、その能力を理由に除け者にされたとしても、自分はどうしようもなく人間だと思った。自分は人間として生を終えるのが正しいのだと信じていたし、今も信じている。
竹林の肝試しの夜、不死人と戦った後、彼女は主の、永遠のときを生きよう、という誘いに対して、こう断った。
――私は死ぬ人間ですから、と。
はたして、その言葉の表す意味はどこなのか。
人間でいたいのか、それとも、死ぬ存在でありたいのか――
自分は人間のもとに帰りたがっているのだろうか――
咲夜はその考えを一笑に付した。自分は今の生活に満足している。特に人間が好きなわけでもない。なのにどうして、今更、人間の中での暮らしにあこがれる必要があるのか。
だが、咲夜の中に納得しがたいものが残っているのだ。
理性ではどうしようもできない説明しがたい感情が残っているのだ。
どうして、と思う。
どうして、今更、と咲夜は感じる。
どうして、今更――こんなに寂しい思いをするのだろう。
私は人間のために一切何もできないのだ、悪魔のために同胞を食事の材料に使うことしかできないのだ――
そのことに気づいたとき、咲夜は言いようもない寂しさを感じていた。
ああ、これだったのか、と思う。魔理沙の問いに素直に答えたくなかったのは。
『人間を捌くのは私がやりますよ』
ずいぶん昔、美鈴は優しく――だが、少し悲しそうに――笑って、咲夜に言ったことがあった。
『さすがに咲夜さんにはやらせたくないですからね』
今でも人間を殺すのは、あの朗らかな少女の仕事だ。美鈴が人を殺して抜き出した血を樽に注ぎ、その血を使って咲夜が料理を作る。そういえば、咲夜がメイド長になるとき、美鈴はコックの仕事だけでも受け持とうとしたことがあった。そんなことはもちろん、新しい門番長のシフトに合わなかったので、無理だったのだが。美鈴は彼女なりに咲夜のことを思い遣っていたのだった。
咲夜は調理場の窓から食堂を覗いた。
テーブルに座っているのはレミリアとフランドールだけだった。二人の姉妹は騒がしく話をしていた。どうやらレミリアが何か悪戯をしたらしく、フランが怒って抗議しているようだった。やがてレミリアがぺこぺこと頭を下げて謝ると、フランは頬を膨らませて横目で睨みながらも、姉を許した。そして、姉妹は今度は仲良く別の話を始め、ころころと笑い出すのだった。
とても幸せな風景だった。
咲夜は思う。
ああ、果たして人間とはなんだろうか――
私にとっての人間とはなんだろうか――
私にとって、レミリアお嬢様とフランドールお嬢様は『人間』ではないのだろうか――
私にとって、紅魔館の皆は『人間』じゃないのだろうか――
咲夜は自分が迷っていることに気づいた。最後は自分の問題なのだ。
何を選ぶか――
それが自分の問題なのだ。
今の私にとっては、レミリアお嬢様とフランドールお嬢様、それから美鈴、パチュリー様――紅魔館の皆が『人間』なのだ。
その事実を信じられるかどうか、それこそが問題なのだ。
今日聞いたパチュリーの話を思い出す。
美鈴がしてくれた話を思い出す。
フランドールが心配してくれたことを思い出す。
大丈夫。私は信じられる。
それでいい――咲夜はそう思った。
いつも通りにしていればいいのだ。
いつも、それでやってきて失敗がなかったのだから――それでいいのだ。
こうしてときどき不安になることもあるかもしれないが、そんなのは一時の迷いだ。
それでもし――どうしても避けられない問題が発生するのだとしたら。
そのときはそのときで、戦えばいいのだ。
調理が終わった。湯気の立っているハムアンドスクランブルエッグとポタージュスープ、焼きたてのトースト、瑞々しいサラダ、新鮮なトマトを使ったトマトジュースを台車に載せ、二人の姉妹のいる食堂に向かう。
「おまたせしました」
咲夜は吸血鬼の姉妹の歓声を受けた。テーブルに料理を並べる咲夜の顔には、いつもの瀟洒なる従者の微笑が浮かんでいた。
食事が終わると、レミリアはすぐに散歩に行った。
「今日はちょっと遠出してみるわ」
そう言っていたから、たぶん遅くなるのだろう。咲夜は残っていた仕事を終え、少しの仮眠を取った。フランも暴れることはなく、紅魔館は静かだった。夜明けまで一時間前になったが、レミリアは帰ってこなかった。フランは先に食事をとり、地下室に戻っていった。レミリアが帰ってきたときはほとんど夜が明けていた。咲夜は嫌がるレミリアを引っ張って風呂に入れ、遅めの『夕食』を食べさせた。レミリアは食事を終えると、すぐベッド向かった。
――今日は疲れていらっしゃるようね。
咲夜はレミリアの様子を見て、そう思った。いつもより口数は少なく、夕食時に我が儘をいうこともなかったのだ。
というより、何やら考え事をしているようだった。
風呂場に向かうときも、夕食をとっているときも、私室に戻るときもずっと難しそうな顔をしていた。
だが、何かひらめいたのか、パジャマに着替えているとき、ハッとした顔をして、ピンと翼が立った。
そして、レミリアの顔は一転して上機嫌になった。
ベッドの上のレミリアは脇に控えている咲夜に言った。
「散歩のことなんだけど、今回は魔理沙の家に行ってきたの」
「あら、そうなんですか」
「昨日魔理沙が来てたけど、寝てたから会えなかったじゃない。だから、たまには話をしようってね」
「申し訳ありません。起こすべきだったでしょうか?」
「いや、いいのよ…………まあ、ただ、ね」
レミリアは咲夜の顔を見ると、頬を赤く染めて、右手の人差し指と左手の人差し指をつんつんとぶつけ合わせた。
「その……咲夜ってロリコン、なの?」
「は?」
咲夜は瀟洒なメイドには似つかわしくなく――素っ頓狂な声を上げた。レミリアは慌てて手を振り、咲夜をなだめようとする。
「いや、別に、咲夜がロリコンだからってクビにしようとなんて思ってないし、大丈夫よ! でも、その、えーと…………」
レミリアの咲夜を見る目には熱がこもっていた。
「私にはフランっていう生涯を誓った相手がいるし、だけど、咲夜の気持ちを知って、そのままでいるのも、心が痛むし……………………」
「いえ、お嬢様、お待ちください…………」
「でも、どうしてもって言うなら……………………私、咲夜なら…………いいよ」
「だから、お嬢様、お待ちください!」
顔を真っ赤にして、子供らしからぬ艶っぽい声を出すレミリアに、咲夜は頬をわずかに朱に染めながら、大声を出して制止にかかった。
「私はロリコンではありません! それは誤解です!」
「え、でも、魔理沙は『咲夜がロリコンじゃない可能性はゼロとはわからなかったしなぁ。ひょっとしたら、私は止めてやらなきゃならないのかもなぁ』って真剣に頭抱えていたわよ」
あの白黒何もわかっちゃいねぇ! 咲夜は、思い込みの激しい人間の友人に今度会ったらナイフの二、三本をくれてやることを誓った。
「とにかく! 私はロリコンじゃないです! とんでもない間違いです!」
「…………本当に?」
「本当です!」
「…………まあ、そうだよね」
よかった、びっくりしたじゃない、とお嬢様はのたまった。咲夜は、自分がロリコンだと思われるような要素が日頃の行いの中にあるのだろうかと不安になった。
「でも、咲夜が鼻血を吹いてる絵って、何か様になる気がするんだよね」
「嫌な冗談は止してください…………」
「でも、本当だもの」
そう言って、レミリアはくすくす笑った。
それから、レミリアは散歩の話を続けた。子供が母親に遠足の話を聞かせるような、弾んだ声だった。
「その後、私は竹林に行ったんだ」
「竹林ですか。けっこう遠出しましたね」
「あの永遠亭の姫と不死人が殺しあってたよ。あいつらも飽きないもんだね」
「そうですか」
「それで、思い出したよ」
レミリアは咲夜の顔を真っ直ぐに見た。その目には強い意志の光と――眩いばかりの希望の光が宿っていた。
「咲夜さ、あの不死人を倒した後、私がいっしょに永遠に生きていこう、って言ったの、覚えてる?」
咲夜の胸がズキリと痛んだ。咲夜はそれを悟られまいと、必死で微笑を浮かべ続ける。
「…………ええ、覚えております」
「あのとき、咲夜は『私は死ぬ人間です』とか何とか言って、誤魔化したじゃない。そのときは私も納得したけど、でもいまいち納得できないんだよね」
レミリアがうんうんと自分の言葉にうなずいた。咲夜は動揺を隠すために小首を傾げてみせた。
「――――そうですか?」
「うん。それで思いついたんだ」
少女は輝くような笑顔で、精一杯胸を張って言った。
その言葉は世界に対して、自分に対して、そして何より――咲夜に対して誇るものだった。
「私が頑張って、咲夜が私と一緒に永遠に生きたくなるような、カリスマ溢れる主人になればいいんだって、ね」
「………………………………………………………………」
咲夜は黙ってしまった。黙る以外なかった。心の中には強い強い驚きがあった。そして――その驚きはやがて喜びに変わっていった。咲夜は心の痛みが消えていくのを感じた。
「見てなよ、咲夜」
レミリアはにやりと牙を見せて笑った。少女は誇り高く宣戦布告した。
「咲夜は人間だとか妖怪だとか、そんなことどうでもよくなるような吸血鬼に、私はなってみせるからね」
「それはそれは…………」
ようやく咲夜は声を出すことができた。頬が上がるのを抑えられなかった。
「心から楽しみにしておりますわ」
「うん、絶対だよ。せいぜい楽しみにしておけ」
「では、明日から好き嫌いも言わず、お風呂に入るのも駄々をこねるということはありませんね」
「うっ……………………もちろん、大丈夫、さ……」
レミリアが顔をしかめた。咲夜はくすくすと笑った。レミリアはしばらくむっとしたような顔をしていたが、咲夜のとても楽しそうな笑いを聞いているうちに彼女も笑い出してしまった。
ひとしきり笑った後、レミリアは横になった。しばらくレミリアは咲夜と雑談をしていたが、やがて静かな寝息を立てるようになった。
咲夜はレミリアの上に静かに布団をかけた。
「お休みなさいませ、お嬢様」
咲夜は一礼した後、部屋の明りを消して、静かにレミリアの部屋を去った。彼女の顔には終始幸せそうな微笑が浮かんでいた。
従者に必要なものは他でもない。
よき職場――
よき同僚――
そして、何より、
よき主君――
紅魔館のメイド長は今日も瀟洒に働き続ける。
ギャグかと思って読んでみたら思った以上にいい話でした。この紅魔館は優しさでできたいい紅魔館ですなあ。
>「私がここに来たときにはもう紅魔館は幻想郷にあったけど?
このあたりがおかしな文章になってるので報告。
人間である以上、やっぱり咲夜さんも紅魔館で働くことに悩んだり、揺れたりしたんじゃないかなぁと思います。
確かに公式の咲夜さんは悩んだりしなさそうですけど。
あたたかくて良い紅魔館でした。
それはそうと、美鈴がいいキャラしてるぜ。
>彼らに共通する性格は、誇り高く、自分勝手で維持が悪いということだ。
維持→意地 じゃないかなあと報告です。
>「私がここに来たときにはもう紅魔館は幻想郷にあったけど? それに――別に私は人に自慢あ、
ここもちょっと文がおかしくなってました。
メイド長は瀟洒ダナー。
あと、句点の位置ズレがありました。前段落・前文の句点ですね。
。魔理沙はあとでつれて帰れば良いだろう。
というより、咲夜と美鈴の会話でけっこうな部分がなぜか飛んでいました。メモ帳で書いてから、コピペしたのですが、どうして漏れたんだろう…………致命的なミスでした。以後、気をつけます。
自分としてはタイトルにインパクトをもたせるためにも、『メイド長はロリコンなのか』という題をつけました。つーか、タイトルを決めてから書き始めました。自重しろ、と言われながらも、自分ではそれほど変に感じない私は咲夜さん以上に天然なのでしょうな。
感想ありがとうございました。これからも謹んで努力してゆく所存です。
癒される、咲夜さんやお嬢様たちのやりとりが素敵です。
暖かい家ですね……咲夜さんの悩みもなくなる日がくると良いですね。
彼女には笑っていて欲しいと思います。
面白かったですよ。
こんなメイド長らしい、メイド長をかきやがって…
でもタイトルがw
そんなに遠くはなさそうですねw
どうしてくれる!!
良かったです。
ほのぼの感あふれています。
このSSのテーマはタイトルそのままでキチンと結論が出ているのですが、
咲夜の自己認識についても、せっかくですから掘り下げてもよかったのでは、と思いました。
別作でまた書かれる事に期待します。
いいSSをありがとうございます。
このセリフが全てだと思った。でも、最後の会話はフラン相手かとも思った。口調的にそう感じた。
蛇足ですが、いくつか、追記させていただきます。
52様の『咲夜の自己認識についても、せっかくですから掘り下げてもよかったのでは』
についてですが、このSSにおいては咲夜さんはあまり自分のことが理解できていない、という解釈になっております。それゆえ、咲夜さんは自分の存在のあり方について悩んでいるわけでして――というより、作者である私自身がそれを知っていなくてもよい、と判断します。確かに咲夜さんの思考様式、行動パターンを解釈し、決定しているのは作者ですが、全てを自分が理解している必要はないと考えております。「何かこう動きそうだな」という感じで私はSSを書いているところがありまして、自分としてもそれを重視しております。というのも、キャラクターという存在を書いている作者としてはキャラクターが自分で動き出すのが理想なわけでして、そもそも、自分の頭の中にそのキャラクターが実在している、という感触を得るのがキャラクター小説を書く醍醐味なのではないかな、と思っているのです。むしろ、たとえ自分のオリジナルのキャラクターであっても、作者がそのキャラクターのことすべてを知っているという振りをするのは、傲慢なように思えるのです。偉そうに長々と書いてきましたが、結局は咲夜さんの解釈が不十分だったわけです(←死ね)。本当に本編の解釈は難しい。つーか、本編は時間の経過とともにキャラクターが成長してますしね。かなりこんがらがるところがあります(←作者が馬鹿なだけ)。咲夜さんの自己認識については…………うーん、難しいなぁ(汗)。 謹んで努力いたします。期待していただければ、これに勝る幸せはありません。
55様の『最後の会話はフラン相手かとも思った。口調的にそう感じた。』
自分の実力不足です。申し訳ありません。
レミリアお嬢様の口調ですが、実は結構、「はすっぱ」な口調なのです。
むしろ、「かしら」、「でしょう」、「ではなくて」みたいな女王様口調は本編では少ないように思えます。フランに対する言葉遣いも文花帳の一言だけですからよくわからない。ちなみに自分のレミリアお嬢様の妹様に対する口調は、かなり優しいお姉様口調です。
長々と駄文、失礼いたしました。以上をもって蛇足を締めさせていただきます。
この長さの物語でシリアス・ギャグ・ほんわか
という三大成分を含ませるなんて、・・・無在・・・恐ろしい子・・・
既存のプロ作家よりよっぽど良い作品書いていると思っちゃいましたよ。
価値観は人それぞれですが。
口調うんぬんは、東方という作品と、二次創作のはやり様から、ある程度は仕方ないかなとも
自分は思ってるんですよ。原作に忠実になるのが難しいですよね。東方というものは。
だからこそ自分は大好きなんですが。(いや、理由はそれだけじゃないですよ!)
その辺は描く作品とその作品のタイプで変わってきますがね。
最後に、ごちそうさまでした。
いい話ですb
実にいい作品でしたw
特に、レミリアがカッコよかった。
駄々をこねてても、嫌いなものがあっても、カリスマはあるんですね。
いわゆる二次設定の咲夜さんはちょっと苦手なので、無在氏のキャラ設定はとても安心感があります。若干おぜうさまの方が暴走気味ですがw
今更過ぎますが一つ指摘させていただきたいと…
「憮然」は「腹立たしい」とか「むっとしている」様子ではなく、「失望・落胆してどうすることもできないでいるさま」ですよ。
非常に多くの方が誤用していますが…
レミフラなのかレミ咲なのか………
本当は咲夜がすきなんじゃね?
こういう感じの美鈴が一番似合ってますよね。素敵です。
>>本当は咲夜がすきなんじゃね?
おっしゃるとおりでございます……orz
正直告白しますと、私のレミフラが本格的に始まるのは『友達のつくりかたとQED』以降です。このときはまだ、レミフラ貫徹でSSを書こうとは思っていない時期でした。この意味で、このSSはレミフラよりもレミ咲のほうが要素としては強いと思います。
まあ、今のお嬢様は恋愛的な意味では、完全にレミフラですが……
楽しんでいただけたようで、幸いです。ご感想ありがとうございます。
知り合いから薦められた順に読み進めて、『デザートにあなたを』の後に
このSSを読んだので…。あれ、レ、レミフラが!浮気か!と思ってしまい…(すっかりあなたのレミフラ主義!)
すべてがもし完全に続きものならば、私のように感じる人がいるかも、とだけ。
あなたのレミフラはどこか変わっていて、本当に素敵です。薦められてヨかった。
これはいい紅魔館!
いやー正直これが初投稿だとは思えないですね笑
物語半端でもう心をグッと掴まれました
100満点中100点の作品
やばいっすわ、あんた